
2025年1月20日にトランプ第二期政権(トランプ2.0)がスタートしたが、トランプ2.0は米国では現代版モンロー主義(米州大陸主義)を推進し、世界においては世界宗教を基盤とした高等文明の多極化時代の本格幕開けになるだろう。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教、儒教を根幹として歴史上、世界各地に成立した文明は、欧米文明が創造した科学・技術と市場経済原理に基づく資本主義経済体制によってブラッシュアップされて、現代版の高等文明へと向かう。共産主義は「裏返しのユダヤ・キリスト教」であることが明確になり、その「煮え湯」を飲まされた旧共産圏諸国は過去の宗教的遺産と各国独自の共産主義思想の経験を止揚して、新たな高等宗教を根幹とした文明を形成するだろう。これらの多極化高等文明は互いに尊重されなければならないし、また、今後は、その調和と統合を帰結することになるだろう。まずは、ウクライナ戦争の行方を中心に欧州・ロシア編を検討したい。
トランプ2.0のMAGAとはユダヤ・キリスト教の本来の目的を達成する大革命運動
サイト管理者の見るところ、二期目をスタートしたトランプ大統領の政策の根幹には、聖書の創世記1章27節「
トランプ大統領のこの考えが、MAGA=Make America Great Againという言葉で表現されていると考えて良いだろう。MAGAには深い意味がある。ただし、MAGAは南北アメリカ大陸とグリーンランドを含めた米州を黄金時代にするという米州主義であり、世界の他の文明領域の地域は、自らの力で新たな次元の文明に高めて(止揚して)、新しい文明を創造するという義務を負うことになる(日本の場合は、MJGA=Make Japan Great Again)。もう、米国には頼ることはできないだろう。ただし、諸文明相互間で協調することは必要であり、不可欠でもある。MAGAの一環として、トランプ大統領は基軸通貨としてのドルを捨てる可能性もある。
例えば、金地金の相場は着実に上昇している。これは、米国の中央銀行システム(不思議なことに日本などと異なり、民間組織だ)が利下げを推進しているように見えることもあるかも知れない(金利が下がると債券に投資資金が流れるため、金地金相場は上昇する)が、それだけではないだろう。将来的に、基軸通貨としてのドルは、その地位を失い、単一通貨に頼らない国際決済システムが必要になる。その傍証として、金地金相場の傾向的上昇がある。三菱マテリアルが公表している金地金相場のチャートは次のような状況だ。
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トランプ氏が大統領に当選してから同氏の考えが読めないことから、金地金相場は乱高下してきたきらいがあるが、このところ1トロイオンス=2750ドル前後まで上昇してきており、今後も上昇を続ける勢いだろう。米国は為替市場価格では世界最大の経済大国であるが、購買力平価では中国に追い抜かれている。米国は世界最大の軍事大国でありながら、巨額の財政赤字と大幅な経常赤字、世界最大の対外純債務国でもある。金融市場で債券価格のバブルを起こして、ドルを自国に還流させない限り、基軸通貨としてのドルの信認は保てない。しかし、いつまでもバブルを起こし続けること(債券価格の高騰=長期金利の低下を演出し続けること)は不可能である。
だから、トランプ大統領はドルを基軸通貨として維持させることを観念しているフシがある。こうした文明史的な脈絡で金地金相場の趨勢を捉えるべきだろう。ただし、トランプ大統領が基軸通貨としてのドルを放棄するなど、米国独立革命以来の根本的な改革を行おうとしても当面、現在のウクライナ戦争やイスラエルとイランなどアラブ民族・諸国の歴史的な紛争などをそのままにしておいて良いというわけではない。また、米国が巨額の財政赤字と大幅な経常赤字、世界最大の対外純債務国に陥った原因を突き止め、その対策も講じなければならない。これらへの対策を着実に行い、現代版モンロー主義=米州主義など文明の多極化政策を推進できる基盤を整えることが必要だ。
ウクライナ戦争の解決には、トランプ・プーチン両大統領の首脳会談が不可欠
トランプ2.0の展開を検討するうえで、まず問題になるのは、ウクライナ戦争に直面している欧州とロシアの動向だ。トランプ大統領が選挙中と選挙後、第二期大統領に就任してから公約していたように、ウクライナ戦争は6か月以内に、ウクライナ・北大西洋条約機構(NATO側に戦力を補強するための時間的余裕を与える)一時停戦ではなく、終戦に至るのか。トランプ大統領は当初、バイデン大統領(当時)が許可した長距離精密誘導ミサイルのATACMS(米国製)やストームシャドウ(英国とフランスが共同開発)によるロシア攻撃について、戦争を激化するだけだと同大統領を強く批判、ロシアのプーチン大統領をある程度擁護していたフシがある。
二期目の大統領への正式就任後は、ウクライナ戦争を早期に終結させることに意欲を示していることには変わりがないが、「プーチン大統領はウクライナ戦争を継続することによって、ロシア経済をインフレに陥らせるなど破壊しており、ロシア国民を苦しめている」「ウクライナのゼレンスキー大統領はウクライナ戦争終結に向けて取引に応じるつもりだが、プーチン大統領には取引に応じるつもりはないようだ。プーチン大統領が取引に応じなければ、さらに高い関税をかけ、経済制裁を追加する」「OPEC諸国に対して原油価格の引き下げを要請する」「中国に対してウクライナ戦争終結のための仲介を依頼する」旨の発言などを行い、プーチン政権に厳しい態度を取るようになった。なお、バイデン前政権がロシアに対して最高に厳しい経済制裁を課しており、現在のロシアの主な対米輸出品目は、リン酸肥料とプラチナくらいなものだ(https://www.bbc.com/japanese/articles/cly5gpv0lgeo)。
ただし、1月23日、スイスが会場の世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)でオンライン形式で演説したトランプ大統領は、発言の重点を「ロシア経済の破綻」ではなく、「ウクライナ戦争で失われる生命をこれ以上、増加させないこと」にやや力点を置き換えた。そして、ロシアのプーチン大統領と近いうちに会談し、ウクライナとの戦争を終結させたいと述べた(https://jp.reuters.com/world/security/THIMLCGULJPOTCPUPONHLCSM54-2025-01-23/)。
その背景には、さらなる対ロ経済は効果がないし、世界が米側陣営と非米側陣営に事実上、分裂していることとと、中露同盟を崩すことができるか疑問があること、それに、原油価格が安くなっても、ロシアは天然ガスや原油の輸出数量の増加で、経済への打撃を食い止められることなどからのように思われる。その代表的な例が、中国本土向けの大規模天然ガスパイプラインである「シベリアの力」だ。
トランプ米大統領は23日、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)でオンライン形式で演説、ロシアのプーチン大統領と近いうちに会談し、ウクライナとの戦争を終結させたいと述べた。トランプ氏は「経済やその他の観点からではなく、数百万人の命が失われているという観点からの考えだ。われわれは本当にこの戦争を止めなければならない」と述べた。
2019年6月、大阪で撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque) その上で、和平に向けた取り組みが現在進められていると示唆したが、具体的な内容には言及しなかった。トランプ氏は核軍縮に取り組む意向も表明。ロシアと中国も核能力削減に応じる可能性があるとの見方を示した。米中関係は極めて良好との認識を示し、中国がロシア・ウクライナ戦争の終結に協力することに期待を表明。「中国は大きな影響力を持っている」とし、「共に力を合わせ、この事態を終わらせることを望む」と語った。
これに対して、プーチン大統領の側近はニューズ・ウィークで、軍事需要の大幅増から、ロシア経済に大幅なインフレが生じていると述べたようだ(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2025/01/533956.php)。ただし、ルーブル紙幣の無制限の増刷で、ハイパー・インフレが生じるような状況ではない。非米側陣営諸国は、資源・エネルギー大国が米側陣営諸国よりもはるかに多いから、中露同盟の結束強化によってインフレを乗り切ることは可能だろう。実際、時事通信によると、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は、トランプ氏の大統領正式就任後の21日、「オンラインで会談し、中ロの結束を強化していくことで一致した。また、今年が両国にとって第2次世界大戦の『戦勝80周年』に当たることも踏まえ、戦略的意思疎通を継続することで合意した。中ロ両政府が発表した。名指しを避けながらも、トランプ米大統領の就任を受け、対米共闘で連携することを確認した形だ」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2025012101095&g=int)。
さらに、ブルームバーグによると、プーチン大統領は24日、トランプ大統領との首脳会談に前向きな姿勢を示した(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-24/SQLNECDWX2PS00)。
ロシアのプーチン大統領は24日、トランプ米大統領と会談し、ウクライナ情勢や原油価格などについて協議する用意があると述べた。 国営テレビで放映された発言の中でプーチン氏は「実際に会って、今の現実を踏まえた上で米ロ両国にとって関心ある分野について冷静に話すのが良いだろう」と述べた。さらに「われわれは準備ができているが、全ては現在の米政権の決定と選択にかかっている」と続けた。
トランプ大統領のウクライナ戦終結作について見解を述べるプーチン大統領 同氏は原油について「話し合うべきことはたくさんある。これ以外にも共に関心を抱いているであろうエネルギー問題もある」と述べ、「たとえ対ロシア追加制裁の可能性について耳にしていたとしても、トランプ氏が米国経済に打撃を与えるような決定を下すとは思えない」と続けた。
産経新聞によると、プーチン大統領はまた、トランプ大統領の新たな対ロ制裁についても、打撃を受けるのはトランプ米国だと切り替えしている(https://news.yahoo.co.jp/articles/b7b0871ad1f0d247e32a5ace4520992bf8a2bdd9)。
(トランプ大統領の対ロ強硬)発言はトランプ氏流の交渉術に過ぎないとの見方を示した形。また、ウクライナとの交渉の実現には、まず米国がウクライナに圧力をかけ、対露交渉を禁じた政令を撤回させる必要があると注文を付けた。プーチン氏は1期目のトランプ米政権が対露制裁を強化した結果、米国も大きな損失を被ったと主張。一方で、自身とトランプ氏の間には「常に実務的な信頼関係」があったとし、トランプ氏が米露首脳会談を早期に行う考えを示していることに「ロシアは常にオープンだ」と対話に応じる姿勢を改めて示した。
ウクライナ戦争について、トランプ大統領とプーチン大統領の間には、認識の相違があるようだ。プーチン大統領はトランプ大統領と直接あって首脳会談を行い、ロシア側のスラブ民族としての歴史的、文化的、民族的な立場から、ウクライナ戦争に対する正式認識を述べておきたいようだ。このことについては、ロシア在住の日本人・ニキータ氏がロシアの政治学者で、社会学者・哲学者・地政学者でもあるアレクサンドル・ドゥーギン氏の発言を引用して、Youtubeで伝えている(https://www.youtube.com/watch?v=l7OTEbIfLlM)。

プーチン大統領はアレクサンドル・ドゥーギン氏らと見解を同じくしている。スラブ民族の歴史性からプーチン大統領は、副大統領時代からの前バイゼン大統領とゼレンスキー大統領によるによるウクライナでの、①ウクライナのネオ・ナチ勢力によるマイダン・暴力クーデターの不当性②東部ドンバス地方のロシア系ウクライナ住民に対する不当な大弾圧の不当性③東部ドンバス地方のロシア系ウクライナ住民とロシアとのスラブ民族・ロシア正教信奉者としての一体性ーなどをトランプ大統領に対して伝えた上で、「特別軍事作戦」の正当性を説明するだろう。
そして、「特別軍事作戦」の目的は、①東南部4州(ドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州)のロシア併合の国際的承認②ウクライナのNATO加盟の放棄③ウクライナのネオ・ナチ勢力の一掃ーにあることを示すだろう。首脳会談の日時としては、ロシアの対ナチス戦勝記念日の5月9日が良いのかも知れない。
ここで、ウクライナ、米国のトランプ政権側近、ロシアそれぞれのウクライナ戦争停戦ないし終戦の条件を見てみる。読売新聞オンラインの「『トランプ頼み』のウクライナ、前線で苦戦強いられ妥協も容認か…プーチン氏も対話に前向き」(https://www.yomiuri.co.jp/world/20250122-OYT1T50002/)がよくまとまっているので、出発点にさせていただく。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は20日のトランプ氏の就任直後、SNSに投稿した。トランプ氏が掲げる「力による平和」が「長期にわたる公正な平和を実現する機会をもたらす」と強調。停戦交渉でウクライナの意向を可能な限り反映してほしいとの期待感をにじませた。ゼレンスキー氏がトランプ氏に頼らざるを得ない背景には苦しい戦況がある。ウクライナ軍は東部で露軍に押し込まれており、昨年8月に越境攻撃を始めた露西部クルスク州でも反攻され、露国防省はウクライナが一時制圧した露領土の6割超を奪還したと公表した。同州では露軍を支援して北朝鮮兵が参戦している。
ウクライナ・トランプ大統領側近・ロシアのウクライナ停戦ないし終戦案
そうした実情を踏まえ、ゼレンスキー氏はトランプ氏主導の停戦交渉に備え、現実路線に傾きつつある。2年以上ウクライナの全領土奪還を掲げてきたが、領土は停戦後に「外交手段で取り戻すことが可能だ」と述べ、軟化しつつある。また、北大西洋条約機構(NATO)への即時加盟を主張してきたが、トランプ政権が慎重な姿勢だとみるや、安全を確保するため英仏が協議する有志国軍による平和維持部隊のウクライナ派遣案も容認する姿勢を見せ始めた。
読売新聞オンラインの上記記事中、「米国案」として示されているものは正確には、退役中将であるケロッグ特使らトランプ大統領の側近案である。トランプ大統領自身の終戦案はまだ示されていない。また、ウクライナ案は停戦案、ロシア案は終戦案だが、ウクライナ案には「ウクライナからのゼレンスキー大統領などネオ・ナチ勢力の一掃」が抜けている。ウクライナ案は時間稼ぎでしかなく、ロシア案は鉄則案だ。これに、ロシア案のネオ・ナチ勢力の一掃が含まれていることを考えると、妥協は不可能だ。
特に、ロシアのプーチン政権が、敗戦が確定しているウクライナ・ゼレンスキー政権に譲るものはなにもない。世界各地での紛争の戦闘状況をウオッチしているブログの「航空万能論」のサイトでは23日、「ロシア軍が クルスクで領土を奪還、(ウクライナ側の東部最大の要衝である)ポクロウシクでもT-0504を遮断寸前」(https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/russian-forces-retake-territory-at-kursk-nearly-cut-off-t-0504-at-pokrovsk/)など、ウクライナ戦争の戦況が圧倒的にロシア優位に進んでいることをを報じ続けているからだ。
【追記2025年01月28日午後16時】読売新聞オンラインはこのほど「ロシア軍、ドネツク州南西部の集落(注:ベリカノボシルカ)を制圧…ウクライナ反転攻勢の起点まで押し戻す」と題する記事を投稿した(https://www.yomiuri.co.jp/world/20250127-OYT1T50042/)。ベリカノボシルカは、東部戦線で焦点となっているドネツク州の要衝、ポクロウシクの南西約50キロに位置する。
ロシア国防省は26日、ウクライナ東部ドネツク州南西部の集落ベリカノボシルカを制圧したと発表した。ベリカノボシルカは、ウクライナ軍が2023年夏の反転攻勢で起点としていたが、露軍が戦線を押し戻した。(中略)
ベリカノボシルカは、露軍の占領が及んでいないドニプロペトロウシク州との州境から約20キロ・メートルに位置している。露軍がさらに西進し、戦線が拡大すれば、ウクライナ軍の防衛がより困難になる恐れがある。
さらに、ウクライナ軍に有利な戦線状況を伝えてきたForbes(米国で発行されている金融・経済雑誌)の日本語版は、「ウクライナ軍の別の新旅団も崩壊 東部要衝に「必要な訓練受けず」投入され大損害か」と題する記事を投稿、東部最大のウクライナ側の要衝ポクロウシクに実戦能力のない機械化旅団を送り込んで、大失敗指定との記事を投稿した(「https://news.yahoo.co.jp/articles/fe34a97699a5298cfc32e21f9552132b1c71156d?page=1」)。
ロシアにとってドネツク州の要塞都市ポクロウシクの占領は、ウクライナに対する全面戦争が4年目に入ろうとする現在、最重要目標のひとつだ。ウクライナにとっては、ポクロウシクを防衛することが最重要目標のひとつである。それだけに、ウクライナ軍がポクロウシクを第155独立機械化旅団、第157機械化旅団という機能不全の部隊で補強しようとしてきたことに、多くの観測筋は衝撃を受けている。
【追記終わり】
また、米国案は朝鮮半島方式だが、設置する「非武装地帯」の長さは1500kmを上回る長距離に及び、国際情勢解説者の田中宇氏によると、交代要員を含め、45万人が必要だという(「まだ続くウクライナ戦争」=https://tanakanews.com/250104ukrain.php、有料記事ーhttps://tanakanews.com/intro.htmー=)。トランプ大統領は多極主義者で、非武装地帯の監視要員は欧州のNATO諸国が出すべきという考えだから、欧州NATO諸国から派遣するしかないが、軍事・経済の両負担を考慮すると、まったく割に合わない。だから、バルト三国くらいは出すかもしれないが、とても任務をまっとうできない。
こうしたことから、欧州のNATO軍では、「ウクライナ向け米製兵器は欧州が費用負担、NATO事務総長表明」ということになり、今までのようにウクライナ戦争が続くことになる(https://jp.reuters.com/world/ukraine/NIC5LLUW7RL3JGI2KHUF42SJPI-2025-01-23/)。
北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は23日、米国にウクライナ向け兵器供与を継続するよう求め、その費用は欧州が支払うと表明した。スイス・ダボスで開催中の世界経済フォーラムのイベントで講演し、NATOは防衛支出を増やし、防衛産業の生産を拡大し、ウクライナ支援にかかる費用をより多く負担する必要があると述べた。
「ウクライナについては、米国も関与し続ける必要がある」と指摘。「もしトランプ新政権が米国の防衛産業基盤からウクライナへの供与を続けるつもりなら、そのツケは欧州が払う。私はこのことに完全に納得しており、われわれは喜んでそうしなければならない」と語った。トランプ米大統領は今週、欧州連合(EU)はウクライナを支援するためにもっと努力すべきだと発言した。
しかし、ルッテNATO事務総長の提案には難点が二つあって、その第一は、トランプ大統領は米州主義を推進する構えであり、ウクライナ戦争の問題は基本的に欧州諸国が解決すべき問題であるという考え方があることだ。第二は、欧州NATO加盟諸国もウクライナ戦争のための経済的・軍事的負担には耐えられなくなっていることだ。次のウクライナ支援費の図はYoutubeのイエアンドライフ・チャンネルによるものだ(https://www.youtube.com/watch?v=qsfC_8Etl-Q)。キール研究所(キール世界研究所)はドイツのシンクタンク。
フランス下院議会選挙で大敗したマクロン大統領は、この動画によると結構うまくやっていて、ゼレンスキー大統領を大統領就任前にトランプ氏に会わせながらも、ウクライナ支援は結構うまくやっていて(つまり、まともにやっていないで)、日本よりも少ない。米国は欧州に位置していないのに、もっともウクライナを支援していて(注:その6割が米国の軍需産業や政治家の懐に流れ込むと言われている)、米国民は大変な経済的被害にあっている。
次に支援しているのは、第二次世界大戦で敗戦したドイツ。第二次大戦を引き起こし、ユダヤ民族を虐殺したことを理由に、ウクライナ支援を強要されたものと見られる。次いで、確信犯的にウクライナを支援している、大英帝国建設のノウハウを有し、米国に単独覇権体制の構築と維持策を伝授した英国だ。これらの欧州NATO諸国は、ウクライナ支援で国内経済が疲弊している。だから、米国ではウクライナへの軍事・経済支援に反対する共和党から大統領選に出馬したトランプ氏が、激選7州で全勝するなど大勝して、大統領に返り咲いた。大統領に返り咲いた大統領は、米国史上トランプ大統領を除くと、第22代と第24代を務めたグローバー・クリーブランド(民主)しかいない。

トランプ氏が大統領に返り咲いた米国と似たようなナショナリズムの右派勢力の動きは、ドイツやフランス、それに、英国でも進行している。なお、イタリアでは初の女性首相であるジョルジャ・メローニ首相が2022年10月に誕生し、現在まで右派政権が続いている。これらについては、後に述べる。欧米文明圏が凋落してしまったのは、リベラル左派全体主義独裁政権が長く続いたからだ。ウクライナ戦争はそのリベラル左派全体主義独裁政権が、自らの私的権益を懐に入れるために、ウクライナの東部ドンバス地方の、ロシア正教を信じるロシア系ウクライナ人を大弾圧することによって、ロシアのプーチン大統領率いるロシア政権に「特別軍事作戦」を起こさせて開始したものだ。
結局、ウクライナ戦争は、プーチン大統領とトランプ大統領が直接会って虚心坦懐に話し合い、トランプ大統領が、プーチン大統領から「特別軍事作戦」が領土的野心から始まったものではなく、ロシア正教を信じるスラブ民族を守るために開始されたものであることについて、詳細に聞く以外に真の終戦の道はないだろう。このため、両大統領とも、直接の首脳会談を望んでいる。戒厳令下にあるとは言え、憲法上、大統領としての任期の期限の切れたゼレンスキー大統領は、三大通信社の一角を占めるフランスの通信社・AFP通信によると、両大統領首脳会談開催の動きについて、「プーチン氏はトランプ氏を『操る』つもりだと警鐘を鳴らした」という。ゼレンスキー氏の本性が表れている。
トランプ大統領が、プーチン大統領の真意を読みそこねた場合、歴史的なトランプ革命は最初からつまずく可能性があることに留意しなければならない。
【追記:2025年01月25日18時】ロシア在住の日本人ニキータ氏が同日公表したYoutubeチャンネル「ゼレンスキー氏のダボス会議発言を分析」(https://www.youtube.com/watch?v=4xW5at--kjk)、米国と欧州NATO諸国がウクライナへの軍事・経済支援についやした支援学はそれぞれ1770億ドル、1340億ユーロで、総計は日本円換算で総額49兆円であるが、セレンスキー大統領は欧州諸国に対して、ロシアの欧州諸国への軍事侵攻の恐怖をまだまだ煽り、追加支援を要請しているとのことである。
また、ウクライナ戦争の停戦のためにはプーチン大統領との交渉が必要であると言明しておきながら、和平交渉を禁じた大統領令を撤回する動きは見せておらず、ミンスク合意Ⅱのような時間稼ぎの一時停戦を画策しているだけであり、時が来たら再度、欧州諸国とともにロシアと交戦するつもりだと見ているという。トランプ大統領は、ゼレンスキー大統領は無視して、ウクライナ戦争の終結に向けてプーチン大統領と首脳会談を行うようだとも述べている。ロシアの戦勝記念日である5月9日に中国の習近平とともにトランプ大統領も招待する可能性が高いとも述べた。

なお、ニキータ氏は、「トランプ大統領は『ゼレンスキー大統領は合意する準備が出来ている』と発言したが、ゼレンスキー政権とトランプチームとの間で何らかの合意が出来ていることは確認できていないのであって、『交渉する準備が出来ている』と発言したわけではない」と語り、この発言はゼレンスキー大統領は「ゼレンスキー政権の意向を反映しないトランプ大統領の発言であると考えられる」として、自らを無視して、トランプ大統領がゼレンスキー大統領を無視して、ウクライナ戦争の終結についてプーチン大統領と首脳会談を行う容易があることを示すもの恐れているとした。
要するに、トランプ大統領はゼレンスキー氏のウソを見抜いているということだ。バイデン前政権の末期に米国製の英国製のATACMSやストームシャドウという長距離ミサイルを使って、戦争をエスカレーションさせたのは、プーチン政権との和平交渉を妨害するためであったことは、トランプ大統領もよく知っていると思われる。トランプ大統領は、ゼレンスキー大統領よりもはるかに、プーチン大統領のほうが信用できると思っているのだろう。