トランプ大統領、米露首脳会談合意事項の受け入れをゼレンスキー氏に迫ったのかー米宇首脳会談ではゼ氏が親露に大転向か

米国のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー氏の米宇首脳会談が米東部時間の18日午後1時(13時間の時差があるため、日本時間では19日午前2時)、から始まった。首脳会談の内容は、トランプ大統領がゼレンスキー氏に対して、それより前の15日に米国アラスカ州の州都アンカレッジ近郊の米軍基地で行われた米露首脳会談でほぼ合意に達したされるウクライナ戦争終結条件(終戦条件)の受け入れを迫ったものとされている。停戦は、ミンスク合意Ⅱのように、欧州とウクライナのウクライナ戦争継続のための立て直しのために使われるから、ウクライナ戦争は終結させることが望ましい。これについて、Youtubeチャンネルの「THE CORE」の最新投稿動画「トランプーゼレンスキー会談 プラス欧州リーダーとの会議【及川幸久】」(https://www.youtube.com/watch?v=86DILg6Eacc)が分かりやすく解説しているから、その要点を紹介したい。及川氏が米露首脳会談でほぼ決まったウクライナ戦争終結条件とは、①ウクライナの国家としての「安全」の問題②ロシアに譲渡するウクライナの州ーの二つに絞られる。

米宇・欧州首脳会談は米露首脳会談によって設定ー国際情勢多極化の流れを確定した米露強調体制は続く

日本のリベラルメディアのNHKでも紹介している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250819/k10014897231000.html)が、リベラル左派の立場に立つ反トランプメディアであることと幸福の科学出身ながら、参政党のブレーンであり、国際情勢アナリストの及川氏の動画による解説の方が簡明だから、今回はそちらを紹介させていただく。ただし、米露首脳会談の全貌が公式的に明確にされているわけではなく、NHKよりも左派度が強い日経新聞社の傘下にある英国のフィナンシャル・タイムズ紙などに基づいており、完全に正しいという保証はない。

さて、米露首脳会談でほとんど決まったことは、第一に、戦況では圧倒的に優位にあるロシアのプーチン大統領が初めて、ウクライナの国家としての存在を「安全保障の確立」ということで認めたとされていることだ。そのある程度の具体的な内容は、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟することは拒否するが、同機構の憲章第五条に準じる内容で、米国と欧州が共同でウクライナの国家としての存続を守るというものだ。

北大西洋条約機構の憲章第五条とは、次のようなものだ(https://worldjpn.net/documents/texts/docs/19490404.T1J.html)。

締約国は、ヨーロッパ又は北アメリカにおける一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する。したがつて、締約国は、そのような武力攻撃が行われたときは、各締約国が、国際連合憲章第五十一条の規定によつて認められている個別的又は集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し及び維持するためにその必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び他の締約国と共同して直ちに執ることにより、その攻撃を受けた締約国を援助することに同意する。前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。

この第五条に準じる内容で、ウクライナの国家としての存続(主権の維持)を守るというのであるから、米国と欧州が仮にロシアからの侵略があった場合、常識的な理解では両勢力が直ちにウクライナを防衛し、ロシアを攻撃することになる。ただし、日米安全保障条約第五条「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」のように、即時的に戦闘行動に出るというのではなく、NATO加盟諸国の全体会議の承認が必要であると理解されている(https://www.youtube.com/watch?v=Y_MVNVVvmho&t=784s)。

ただし、ロシアが敢行せざるを得なかった「特別軍事作戦」からウクライナ戦争に暗転することになったわけだが(注:2022年の春にはロシアとウクライナの間で、戦闘を終わらせる外交交渉が行われ、もう少しで交渉妥結という段階にあったが、当時の英国のボリス・ジョンソン首相が交渉妥結破壊工作を行った)、ロシアが何故、「特別軍事作戦」を敢行せざるを得なかったのかその理由が、リベラル左派メディアでは明らかにされていない。

これは、米国のブッシュ大統領とベーカー国務長官が東西ベルリンの壁崩壊時に、当時のソ連のゴルバチョフ大統領とシェワルナゼ外相に対して、NATOの東方拡大はしないとした約束を反故にして、NATOを東欧諸国にどんどん拡大していったことが第一の理由だ。第二の理由は、ウクライナのステパン・バンデラを開祖とするウクライナのネオ・ナチ勢力が、米国のオバマ政権下で50億ドルの支援を受けて親露派政権のヤヌコーヴィッチ政権を打倒する暴力クーデターであるマイダン革命を起こした後、キエフ政権がネオ・ナチ勢力の傘下に置かれ、ウクライナの東部ドンバス地方に住むロシア系ウクライナ人を激しく弾圧・迫害したことが直接の原因になっている。

マイダン革命=https://www.ukrainer.net/ja/songen-no-kakumei/

基本的人権擁護を錦の御旗にしている欧米諸国のリベラル・メディアはこのことを絶対に認めず、逆に、ロシアが東部ドンバス地方のロシア系ウクライナ住民を武装化させて、キエフ政権に抵抗したとしている。例えば、Googleで「ウクライナ戦争は何故起こった」と検索してみると、AIもそのように答えている。「ロシアは、ウクライナ東部のドンバス地方の親ロシア派勢力を支援し、同地域の領有権を主張してきました。また、2014年にはクリミア半島を一方的に併合しました」。Google検索も、中立・攻勢ではないように操作されている。AIも限界か。

これらの解釈が誤りであることは、例えば、キヤノングローバル研究所の小手川大輔研究主幹が明らかにしている(https://cigs.canon/article/20140320_2453.htmlなど)。ロシアがクリミアを一方的に併合したという主張の誤りについても、ロシア在住28年の実業家でロシアからYoutubeチャンネル「ニキータ伝〜ロシアのてほどき」で、ウクライナの政治状況を世界に発信している国際情勢穴リステのニキータ氏が、及川氏との対談で明らかにしている(https://www.youtube.com/watch?v=2p_fP4RKxF4)。

これらのことからすると、プーチン大統領率いるロシアがウクライナを「侵略」する理由は何ひとつない。だから、ロシアにウクライナを侵略する理由は何一つないから、「NATO憲章第五条」のような集団安全保障条約を作成することにプーチン大統領が同意したとしても不思議ではない。しかし、同大統領の一貫した主張は「紛争の根本的原因の解決」であり、プーチン大統領が、核戦争を伴いかねない「NATO憲章第五条」のような集団安全保障条約の作成に本当に賛同したかは明らかでない。

ただし、今回のアラスカでの米露首脳会談の中心的議題は経済協力(北極圏開発など)米露の協調路線への大転換であり、その点からすれば、ウクライナ戦争の解決(戦争終結)はプーチン大統領としても望むところであったかもしれない。けれども、サイト管理者(筆者)としては、同大統領が安易に「紛争の根本的原因の解決」を放棄したのか、理解に苦しむ。「NATO憲章第五条」のような集団安全保障条約はまだ明確になっていないから、核戦争をもたらす第三次世界大戦を引き起こすことのなような歯止めが書き加えられるかもしれない。

次に、米露首脳会談の第二の重要課題は、ウクライナでロシアが占領している領土の帰属問題だ。ゼレンスキー氏は、「クリミアも返還しろ」と騒いでいるが、トランプ大統領はそれならロシアとウクライナの仲介はしないと一蹴しているようだ。米露首脳会談で決まったことはもう少し具体的に、ロシアがその大部分を占領しているルガンスク、ドネツクの2州はロシアへの編入を認め、ウクライナ軍の抵抗がまだそれなりにあり、ロシア軍が州の70%程度を統治しているザポリージャ、ハリコフの2州は戦況によって州を分割するとの案が、首脳会談合意されたようだ。

ただし、これらの州もロシア軍が圧倒的に優勢であり、ウクライナ戦争が集結せず、継続すればいずれは、ロシアの支配下に置かれる。米露首脳会談で上記二点でトランプ大統領とプーチン大統領が本当に合意したのかどうか、不明でもある。以上が、及川氏は、米宇首脳会談の基本的な内容として上記二点を解説しているが、あくまでも推測である。ただし、どうみてもやはりロシア寄りの「戦争終結(終戦)」案である。戦争終結になれば、ウクライナでは戒厳令が解除され、ウクライナ国民のための大統領選挙を行わなければならない。ゼレンスキー氏はこれにも同意しているようだが、同氏は大統領に返り咲くことはないだろう。あまりにも、ウクライナ国民の被害が大きすぎた。

米宇首脳会談ののち、トランプ大統領は欧州の五カ国の首脳と欧州連合(EU)のフォンデアライエン委員長とNATOのルッテ事務総長を含む欧州代表7人と午後3時から夕方まで会談したが、トランプ大統領は途中で中座し、プーチン大統領に電話して、プーチン大統領、ゼレンスキー氏の両首脳会談を設け、二者会談終了後にトランプ大統領も加わって、「ウクライナ戦争終結」に結論を出すことで了解を得たという。すべては、これから二週間以内に決まる。

米露首脳会談の真の狙いは諜報界の一極単独支配体制側(大英帝国系)の壊滅と世界の多極化本格推進にあるー欧州とロシアは新たな安保体制を構築

国際情勢解説者の田中宇氏は、17日投稿・公開した米露強調体制の確立(https://tanakanews.com/250817trump.php、有料版=https://tanakanews.com/intro.htm=)で、「米英独仏の英国系は自滅させられてトランプに立ち向かえない。トランプとプーチンの同盟を壊せる勢力は弱体化した。米露協調は、世界の中心でずっと続く。少なくともトランプ政権が終わる2028年まで続く。その後も米国はトランプ系だろうから、米露はその先も協調し続ける」と主張しておられる。今回の米露首脳の動きは、英米諜報界で実権を握っている多極派が、一国(一極)単独覇権派(英国)を最終的に打倒するための策略かも知れない。

私が見るところ、英国系は、最近どんどん力量が低下しており、逆襲する力を失っている(だから、それを見てトランプがプーチンに首脳会談を提案して実現し、米露協調体制を作った)。Putin-Trump summit ‘erased’ Western narratives - EU state’s leader

米国では、民主党の重鎮であるヒラリー・クリントンが、欧州やロシアに対するトランプの政策を高く評価する発言を8月15日に発している。クリントンは、トランプの意図を意図的に歪曲することで、自らの従来の姿勢を崩さずにトランプを評価する詭弁を行っている。民主党やリベラル派がとても弱くなっているし、ヒラリーはロシアゲートの濡れ衣作りでトランプ傘下の米当局に捜査されそうだし、夫のビル・クリントンはエプスタインの仲介で少女買春した容疑で捜査されそうだ。ヒラリーは、トランプがウクライナを停戦できたらノーベル平和賞に値すると言うなど、媚びを売らざるを得なくなっている。Hell Freezes: Hillary Says Trump Has Been "Great" And Would Nominate Him For Peace Prize

英国では、スターマー政権の不人気が加速し、総選挙を前倒しすべきだという世論が増している。年内に政権転覆され、対露和解や英覇権の解体をやりそうなナイジェル・ファラージとかの政権になるかもしれない。British People Have Had Enough...

ドイツでも、メルツ政権の不人気が増している。露ガス停止、無意味な温暖化対策などの結果、経済はどんどん悪化し、産業が自滅している。エリート支配が嫌悪され、対露和解したい反エリートであるがゆえに「極右」呼ばわりされてきたAfDが最人気の政党になっている。選挙から3か月しか経っていないのに、ドイツの政権交代も時間の問題だ。フランスも財政破綻に瀕している。Merz's Germany: 100 Days Of Economic Deep Freeze

要するに、米英独仏の英国系はトランプに立ち向かえる状態でない。トランプとプーチンの同盟を壊そうとする勢力は弱体化している。米露協調は今後ずっと続く。
少なくともトランプ政権が終わる2028年まで続く。多分その後も米国はトランプ系だろうから、米露はその先も協調し続ける。

実際、時事通信は、「支持低迷、早くも苦境 スターマー首相就任1年―英時事通信 外信部」と題して、次のように人気のなさを報道している。

 【ロンドン時事】昨年の英総選挙で労働党が歴史的勝利を収め、スターマー首相が就任して7月5日で1年。14年ぶりの政権交代で変化を求める国民の期待を集めて船出したが、福祉縮小などの歳出削減計画が反発を呼び、支持は低迷している。身内の与党内からも政権の先行きを懸念する声が上がり、早くも苦境を迎えている。

ロイター通信も、「独メルツ政権発足100日、与党支持率が2位へ転落=世論調査」と題して、次のように報道している。

[ベルリン 12日 ロイター] - ドイツの調査機関フォルサの世論調査によると、政党別支持率で極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が26%で首位となり、メルツ首相の保守政党連合キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は24%と2位に転落した。13日で発足100日目となるメルツ政権は、憲法裁判所の裁判官選任の中止や、イスラエルへの武器輸出停止などで混迷しており、低迷する経済の回復と歳出削減の中でどのように配分するかという難題に直面している。

フランスも財政赤字がひどい。仏2024年の財政赤字、対GDP比は5.8%になった(https://www.parisettoi.fr/news/20250328-002/#:~:text=27%E6%97%A5%E7%99%BA%E8%A1%A8%E3%81%AEINSEE,2.2%EF%BC%85%E3%82%92%E4%B8%8A%E5%9B%9E%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82)。

今年3月27日発表のINSEE速報によると、フランスの財政赤字総額は2024年に1696億ユーロに上り、対GDP比では5.8%に達した。同比率は、前年には5.4%、その前の2022年には4.7%だった。歳入は2024年に3.1%の増加を記録、増加率は前年の2.2%を上回った。国民負担率(対GDP比)は42.8%となり、前年の43.2%から低下が続いた。歳出は3.9%増を記録し、前年(3.7%増)よりも増加の勢いが強まった。公的債務残高の対GDP比は、2024年末時点で113.0%となり、1年前の109.8%から目立って上昇した。

現在の欧州諸国は、英仏独の傘下にあるが、三カ国とも国民の人気のない政権でしかない。世界の多極化を本格的に推進しだしたトランプ大統領、プーチン大統領派、キエフ政権の背後にあるリベラル左派全体主義官僚独裁政権打倒が、今回のホワイトハウスでの大規模会談の最終的な狙いかも知れない。ゼレンスキー氏がトランプ大統領の指示に乗るかどうかはまだ不明であるが、「イエス」と言っても「ノー」と言ってくれても構わないところではあるだろう。領土割譲と「大統領の座」を失うことは、ゼレンスキー氏にとっては致命的になるのではないか。

【追記:8月20日午後15時】そう思っていたら、田中氏は19日に「ウクライナが親露に転向して終戦する(https://tanakanews.com/250819ukrain.htm、無料記事)」と第する記事を投稿・公開し、「トランプとプーチンは、これまでウクライナ戦争の長期化を画策してきたが、今回方針を大転換し、(注:大英帝国後継国で戦後の諜報界の一角を占めた英国による一極=一国=単独世界支配体制を完全に終焉させるため)ゼレンスキーを誘って延命させる代わりに、ゼレンスキーはドンバスとクリミアがロシア領になったことを認め、見返りにロシアなどから(自分と国家の)安全を保障してもらい、ウクライナ戦争を終わらせることにした」(リード文)と、従来の分析の視点(世界の多極化=世界の高等文明の尊重と文明の多極化=)を踏まえて、政治生命だけでなく自身と家族の生命そのものも危うくなっているゼレンスキー氏が親露派に大改宗するとする劇的な見方を提示した。

ウクライナ戦争は東南部(ノボロシア)戦線で、ロシア側が圧倒的に優位に立っていてる。ルガンスク州は全面的にロシア軍に占領されて、ロシアの統治下に入っている。ドネツク州も80%程度がロシアに占拠されており、東部最大の要衝ポクロウシクの状況については戦況情報が錯綜しているが、市街戦が展開されていることは確実な模様であり、いずれ陥落してウクライナの東部方面はロシア軍の支配下に入るだろう。

ロシアの極超音速ミサイル「オレーシュニク」=https://www.vietnam.vn/ja/duc-ta-hoa-truoc-he-thong-ten-lua-oreshnik-cua-nga

やや南部であるが、ロシア系ウクライナ人がやはり多く、ロシア文化の影響も強いやザポリージャ、ヘルソンの二州も75%程度がロシアに占拠されている。ザポリージャの原子力発電所は、ロシアが管理している。ロシアはウクライナの防空システムを突破できる新型軍事ドローンの開発に成功して大量生産を行うとともに、欧州諸国でも撃退不可能なマッハ10以上の高速度で飛行し、パトリオットなど欧州・ウクライナ側の防空システムを粉ポン的に破壊できる超音速中長距離ミサイル・オレーシュニクの大量生産にも成功、ロシアの友好国ベラルーシとともに、ロシアの主要な軍事基地に配備している。

以前から、ウクライナの制空権はロシアが掌握していると言われてきたが、軍事ドローンとオレーシュニクなどのミサイルにより、ウクライナの防空システムを完全に無力化し、ウクライナの制空権を完全に掌握することに成功している。欧州からキエフには、鉄道でしか行くことができない。

Adobeによる

このため、制空権はロシア軍が握っているから、ウクライナは挽回が不可能だ(Youtubeチャンネル「外交の真実」の投稿動画「欧州に広がるパニック!ゼレンスキー孤立危機、欧州首脳が異例の同行へ」https://www.youtube.com/watch?v=r9xM_uCZU_M&t=45sなどに詳しい)。要するに、ウクライナは英仏独を中心とする欧州NATO加盟諸国(英仏特を中心とした欧州リベラル左派完了独裁政権)から支援を受け続けても、欧州支援国の経済情勢が悪化して、政権に対抗する右派勢力の勢力拡大によって政権交代が起きるだけで、戦況を好転させることは不可能だ。

田中氏の調べでは、「実のところ、スターマーにも選択肢はなかった。就任から3か月しか経っていないのに、スターマーの支持率はどんどん落ちており、英国は総選挙の前倒しが求められている。諜報界のリクード系(反英派)が英国の左翼やイスラム主義者(移民)を過激化して社会の破壊を進めた結果、英国は草の根右派と左派・イスラム過激派との内戦が近いと指摘されている。英国自身、米国抜きでウクライナを支援してロシア敵視を続ける余力はもうない。British Army Colonel: Civil War Is Coming」とのことだ。

ロシアは欧米諸国(米国というのはバイデン政権下の米国ということだ)が過去最大の経済制裁を行っても、石油や天然ガス、それに一部のレアアースを含むレアメタルなどの天然資源の中国やインドなどのBRICS諸国やグローバルサウス諸国への売却や、旺盛な軍需と内需で経済はへこたれない。

プーチン大統領は軍事、経済の両面で自信を深めており、戦争を止めたいトランプ大統領もこれを認めざるを得ない。だから、米露両国の首脳会談がアラスカで開かれ、ロシア東部(北極圏)に埋蔵されている天然資源の共同開発や、ベーリング海峡プロジェクトの展開などで合意して、経済面での協力関係を深めることにより、これまで打破できなかった冷戦体制を乗り越える新たな国際秩序構築で合意した。もっとも、トランプ大統領、プーチン大統領ともに諜報界の「多極派」である。こうしたことから、田中氏は、新たな分析を展開したものと思われる。

ウクライナ戦争は、長期化するほど、これまで米覇権の黒幕だった英国やその傀儡である西欧(総称して英国系)が政治経済の両面で自滅していく。そのため、既存の米覇権体制を壊して世界を多極型に転換させたいトランプとプーチンは、ウクライナ戦争を早く終わらせたいと言いつつ、実際は長期化するつもりだと私は分析してきた。8月15日のアラスカでの米露首脳会談についても、私はその線で見ていた。だが8月18日、ゼレンスキーと英仏独伊など欧州の首脳たちが大挙して訪米してトランプと話し合った後のトランプやゼレンスキーの言動を見ると、今回の米露首脳会談に関する私の分析が間違っていたと感じられる。米露首脳会談を今やる意味

ゼレンスキーは、自分の政治的・生物的な延命を最重要に考えている。トランプとプーチンは、これまでウクライナ戦争の長期化を画策してきたが、今回方針を大転換し、ゼレンスキーを誘って延命させる代わりに、ゼレンスキーはドンバスとクリミアがロシア領になったことを認め、見返りにロシアなどから(自分と国家の)安全を保障してもらい、ウクライナ戦争を終わらせることにした。これから、戦後のウクライナの安全を保障するため、国連P5(米露中英仏)を中心とした多極型の国際機構を新たに作る。冷戦型(露敵視)のNATOでなく、多極型の新機構がウクライナに安全を与える。新機構の主導役はロシアだ。要するに、戦後のウクライナはロシアの傘下に戻る。ゼレンスキーは当面、戦後のウクライナの大統領として延命する。Europe Demands 'Security Guarantees' For Ukraine ... Russia Can Give ThosePutin has agreed to ‘security guarantees’ for Ukraine - Trump

これらのことは、まだ発表されていないが、あちこちに片鱗が見える。首脳たちが「ウクライナはNATOに加盟しないが、NATOの5条のような形でのウクライナへの安全保障の付与は行う」と表明している。8月18日のトランプとゼレンスキーらの会合の主な議題が、終戦後のウクライナへの安全保障のやり方についてだったことも報じられている。'Security guarantees' take center stage at White House meetingsZelensky White House meeting today could spell end of the war

ロシアとウクライナのイスタンブール和平交渉を英国系単独覇権派の指示で破壊したジョンソン英首相=Wikipedia

新機構を作ってウクライナの安全を保障する案は、開戦から1か月後の2022年3月末にロシアが提案し、ウクライナもいったん同意したが英国の横やり(注:当時のボリス・ジョンソン英首相)が入って拒絶に転じた「イスタンブール協定」(注:米露はトルコのイスタンブールでの協議を両国政権高官によるものに格上げしたい考えのようだ)の中に、すでに盛り込まれていた。Main Provisions of the Treaty on Ukraine's Security Guarantees (Istanbul Communiqué) (2022))(中略

トランプは、ウクライナの戦争終結に関するプーチンの要求をすべて入れた終戦案を自分の案としてゼレンスキーや英欧に提示した。ドンバスとクリミアの公式なロシア領化、ウクライナの非武装化と中立化(露側が言うところの非ナチ化)、ロシア主導の多極型国際機構によるウクライナへの安保付与などだ。トランプはゼレンスキーや英欧に対し、この案に沿って終戦するか、この案を拒否して米国抜きで(米国から高価な兵器を買い続けて)ロシアと戦争し続ける(そして英欧は財政破綻する。米国は諜報面でロシアを支援する)のか、二者択一を迫った。米国抜きで、英欧は勝てない。英欧とゼレンスキーは、トランプ案を受け入れて終戦する道を選んだ。An Offer He Can't Refuse

プーチン大統領はウクライナ戦争で余裕があるから、ゼレンスキー氏が親露に大転向してくれれば、ゼレンスキー氏のウクライナは「ウクライナ戦争の根本原因」を除去することになる。その場合、場合によっては欧州のリベラル左派全体主義官僚独裁政権とウクライナ国内のネオ・ナチ勢力が猛反発し、欧州NATO加盟諸国が傘下に収めているネオ・ナチ勢力とともに、内戦に持ち込む可能性もある。ただし、プーチン大統領率いるロシア政権とロシア軍がゼレンスキー氏の勢力を守ることになるだろう。

それに、ワルシャワ条約機構軍が解体したから、冷戦型NATOの存在意義はなくなった。冷戦型NATO主導のウクライナ内戦は国際社会の強い批判を受け、欧州(西欧・東欧・北欧)とユーラシア大陸の中心になっているロシアは、新たな包括的安全保障体制を構築することになるだろうし、米国を始めとした国際社会もこれに積極的な賛同を示すだろう。

1989年12月2日、3日、地中海のマルタ島でアメリカのブッシュ(父)大統領とソ連のゴルバチョフ最高会議議長兼党書記長(1990年から1991年までソ連大統領)が、第二次大戦後の冷戦の終結を宣言したが、ブッシュ大統領がNATOを解体せず、ゴルバチョフ大統領をだましたため、第二次世界大戦後の冷戦体制は実際は終結しなかった。冷戦が集結したのは、今年2025年8月15日に米国のアラスカで行われたトランプ大統領とプーチン大統領の米露首脳会談においてである。冷戦体制の本格終了後の新たな世界的理念が必要になってくる。サイト管理者(筆者)の私見とウェーバー=大塚史学の辺境革命を中心とする「歴史社会学」(https://xs986663.xsrv.jp/2020/08/16/historical-sociology-2/)では、世界平和統一連合を創設された文鮮明氏の「頭翼思想」(One Family under God)だろう。一神教への理解がないと、国際情勢の本当のところは分からない。

 

 

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