英国のブレア元首相、「西洋支配の時代が終わる」と発言ー欧米文明は既に凋落、時代は東洋文明に移行

破綻したマーガレット・サッチャー首相(当時、保守党)の新自由主義政策に影響を受けて現役時代に労働党の綱領を新自由主義路線に改定、「第三の道」を表看板にしたトニー・ブレア元首相07月17日、ディッチリー財団のイベントで「西洋支配の時代が終わる」と発言、中国脅威論を文明史的な観点から打ち出した。本サイトでは、長期的な観点からマックス・ウェーバーの歴史社会学に基づいて、現在は800年続いた欧米文明の時代が終焉し、新たな文明が勃興する歴史的転換の秋(とき)であることを主張してきたが、欧米文明社会でもそのことを公式に明らかにし始めたようだ。

ブレア元首相(在任期間:1997年5月2日 – 2007年6月27日)は現役時代に労働党所属だったが、労働党の党綱領から、生産手段と輸送の国有化を削除して経済政策を自由市場経済に転換する「第三の道」と呼ばれる路線に変更。1997年の総選挙で労働党を地滑り的勝利(659議席中419議席を獲得)に導き、首相に就任した(Wikipedia)。英国に新自由主義政策を持ち込んだのはマーガレット・サッチャー首相(当時)だったが、最後は税収が伸びず、応能原則(担税能力によって納税するという原則)から逸脱した最悪の税制と言われる「人頭税」を打ち出し、英国民の大不評を買って首相を辞任した。

ブレア首相の「第三の道」路線は米ソ冷戦の終焉で世界的な政治・経済思想の新潮流になった新自由主義を労働党の綱領に持ち込んだものと言える。ただし、米英ディープ・ステート(DS)が引き起こしたアフガニスタン紛争とイラク戦争に対して英国がそのお先棒を担いたことから英国民の批判から評価が下がり、欧州諸国で両戦争に起因するテロ事件が多発するとともに英国もその標的になったため(2005年7月7日、グレンイーグルズ・サミット開催中にロンドン同時爆破事件が発生)、2006年9月7日に退陣を表明せざるを得なくなった。退陣後はトニー・ブレア・フェース財団を発足し、一定の政治的影響力を確保している。

ディっチリー財団

そのブレア元首相がディッチリー財団で講演したわけだが、英国版Wikipediaによると同財団は、英米関係に主に焦点を当てた会議を開催する財団。オックスフォードシャーのチッピングノートン近くのディッチリーパークを拠点としています。 1958年に慈善家のデイビッド・ウィルズ卿によって私費の慈善団体として設立されました。 米英ディープ・ステート(DS)を支援するための団体と推測される。

ブレア元首相のディッチリー財団での講演は日本ではあまり報道されていないようだが、例えばロシアの通信社であるスプートニクは日本語版で「西洋支配の時代が終わる=ブレア元英国首相」と題して、次のように伝えている(https://jp.sputniknews.com/20220717/12038436.html)。

英国のトニー・ブレア元首相はディッチリー財団のイベントで、西側の政治的および経済的支配の時代は終わりに近づいており、世界は二極化および多極化に向かって進んでいると述べた。ブレア氏は「今世紀の最大の地政学的変化は、ロシアではなく中国から来るだろう。我々は西側の政治的および経済的支配の終わりに近づいている。世界は少なくとも二極、そしておそらく多極になるだろう」と語った。政治家は中国を「世界第2の超大国」と呼んだ。ブレア氏によると、中国の習近平国家主席は、北京の支配下で台湾を返還するという意図を隠していない。また、ブレア氏は習氏の主導下で中国が積極的に影響力のために戦っていると述べた。ロシアとイランは北京の同盟国になるという。(中略)

さらにブレア氏は、西側は国防費を増やし、軍事的優位性を維持すべきだと述べたが、「ソフトパワー」の重要性を強調した。

これだけでは、欧米文明圏諸国は再結束を行い、軍事費を強化しつつ「(外交力・諜報能力・政界工作能力など)ソフトパワー」を高めて、二極化ないし多極化を認めつつ「欧米文明圏」による世界支配を維持するべきと発言しているようにしか受け取れない。このブレア発言の詳細については、国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏による「多極化を認めつつも自滅する英米エスタブ」と題する論考がある(https://tanakanews.com/220721blair.htm、無料記事)。田中氏はこの中でブレア発言の内容を的確に紹介し、サイト管理者(筆者)の言葉で言えば、米英ディープ・ステート(DS)は自滅的な政策で近いうちに米側陣営諸国は破綻するから、明治維新以来の「脱亜入欧」政策を止めて、「中国と一緒に東洋に入る(属する)べきだ」と主張しておられる。

まず、ブレア発言の内容について田中氏は次のように述べている。

(1)中央銀行群のQEによる経済歪曲、新型コロナへの対策(超愚策)、ウクライナ戦争による資源危機によって、西側(欧米日=米国側)経済が破綻し、市民の生活水準が大きく下がった。(2)QE(注:QEとはQuantitative Easyingの略で、量的金融緩和、中央銀行が国債を発行して民間金融機関に売却、その後民間金融機関から資金から国債を買い入れることや民間保有の証券を買い入れて市場に資金を供給政策)のバブル膨張が資産家だけを肥え太らせ、貧富格差が拡大した結果、欧米でポピュリズムが勃興し、SNSに扇動されて、醜悪で非生産的な政治対立が激化して、米国は内政混乱で覇権運営どころでなくなった。 (Tony Blair’s Speech: After Ukraine, What Lessons Now for Western Leadership?

(3)米欧が衰退した半面、中国が経済台頭して米国と対等になり、近代史上初めて西洋と東洋が肩を並べる。中国は台頭しただけでなく、国家体制や市民生活のあり方について米国側と異なるシステムを構築して対抗してきている。今後の世界は2極化、もしくは(露イランインドなど他の非米大国も台頭して)多極化する。これは第2次大戦、冷戦終結と並ぶ歴史的大転換だが、前の2つが米国側(米英。民主自由体制)の勝利になったのと対照的に、今回の大転換は米国側の敗北、もしくは勝てるかどうか不明な状況になっており、かなりヤバい。Tony Blair believes the West’s dominance is coming to an end. Here’s why

(4)米国側の諸国は団結し、非米側に流されていく国の増加を阻止する必要があるが、中国を敵視したり、米国側と中国側の経済を分離する策をとるべきでない。米国側は、中国の(非リベラルな)姿勢を改めさせる努力を続け、中国の動きを見据えつつ協調関係を続けねばならない。米国側は、中国が対抗姿勢を改めないままさらに台頭して世界の2極化・多極化が固定化した場合に、自分たちの民主自由体制をどう守るかを考えねばならない。 (Era of Western dominance ending – Tony Blair

(5)米国側は、軍事費をもっと増やして(中露に対する)軍事的な優位を維持せねばならない。コロナやそれ以外の感染症に対する(インチキな)ワクチン開発と世界への普及を進めねばならない。米国は、共和党がコロナワクチン接種拒否を扇動する状況を改めねばならない。われわれは、人類に対する(インチキな)温暖化人為説の刷り込みを続けねばならない。

私が知る限り、英米の著名なエスタブ権威筋の指導者が、ここまで明確に米国側の覇権自滅と多極化、米国側が中国に負ける可能性が大きい点について述べたのは初めてだ。これまで米覇権の崩壊や多極化は、未来の懸念事項として表明されてきた。今回のブレアは、すでに米覇権は崩壊していて米中2極化や多極化が不可避だという論旨だ。英米エスタブの世界では、自分たちの文明が中国・非米側に負けると明言すると袋叩きにされる。だからブレアは「負けるか、もしくは勝てるか不明な状態」などと言っているが、彼の本音は多分「米国側は中国・非米側に負ける」ということだろう。米国が英国を無力化する必要性

プレア元首相を始め米英ディープ・ステート(DS)(注:ユダヤ系が掌握している軍産複合体と新自由主義=マックス・ウェーバーの意味での歴史とともに古い金儲けしか頭にない賤民資本主義=勢力)は、自らの陣営が敗退しつつあることを認識せざるを得なくなっているのだろう。このことはウクライナ事変勃発以降、本サイトでも再三再四繰り返してきたところだ。そこで、田中氏の結論部分は次のようになる。

日本からみると気になることがもう一つある。ブレアは今回の演説で「近代史上初めて東洋(East)が西洋(West)と肩を並べうる状態になった」と言っている。ブレアは同時に、日本を西側民主諸国の一つに列挙しており、日本は西洋(米国側)の一部という認識らしい。しかし、ふつうに考えて日本は「東洋」である。戦前の日本は、東洋の新興国・地域覇権国として、西洋をしのぐ存在になろうとしていた。日本は冷戦時代に「西側(親米側)」だったが、それと「東洋・西洋」の区分は違う。日本は、漢字文化圏だし儒教っぽいし、神道や仏教や稲作に包まれており、理性より情緒で、一神教がはびこる西洋と異なるやおよろずの東洋の国である。日本は民主主義国を自称するが、実のところ誰が議員になっても官僚が実質的に支配する官僚独裁の国だ。ほとんど企業や学校は、表向きだけ民主主義で、実は権威主義だ。戦後の日本は対米従属策として、なんちゃってな西側民主主義をやってきただけだ。自民党と中国共産党は、意外と似ている。 (米国の中国敵視に追随せず対中和解した安倍の日本

となりの中国は覇権を拡大しており、ブレアも暗示しているように米英は中国・非米側に敗北することがほぼ確定している。米国が衰退すると、対米従属は無意味になる。すでになっている。これから米国で共和党が復権したら、同盟諸国に対する軽視が激化する。米国が衰退して中国が台頭するなら、日本も、対米従属とか西側民主主義をこっそり捨てて、中国と同じ「東洋」の側に入るのも「あり」になる。

サイト管理者(筆者)は、日本は米国が第二次世界大戦(太平洋戦争)の戦利品として獲得した国だが、日本の歴代首相は田中角栄や鳩山由紀夫首相=小沢一郎幹事長(いずれも米側に潰された)を除いて、自ら対米隷属政策を展開してきた。これについては、外務省国際情報局長、駐イラン大使、防衛大学教授を歴任して外交評論家として活躍されておられる孫崎享氏の名著、「戦後史の正体」に非常に詳しい。

「戦後史の正体」によると、その筆頭が戦後、「国葬令」が廃止されたにもかかわらず初めて葬儀が国葬として執り行われた吉田茂である。吉田は旧安保条約に調印した張本人で、対米隷属政策(国是)の元祖と言っても良い。その旧安保条約の「不平等条約」性を少しでも改定しようとしたのが、岸信介である。岸は60年安保闘争で失脚したが、同著は60年安保闘争を背後で操ったのは米側であると結論づけており、岸を一定の程度、評価している。「昭和の妖怪」とされる岸としては対米隷属を改め、対中接近を行おうとしたフシがある。岸の孫であり、狙撃射殺された安倍晋三元首相も対米隷属の制約の下で、二階俊博幹事長と組んで米中両属、新露政策を展開してきた。安倍元首相には数々の汚点があり、葬儀は国葬にすべきではないと思うが、内政・外交について岸とともに、徹底した再評価が必要だ。

さて、その孫崎享氏が07月18日、東アジア共同体研究所の理事長である鳩山友紀夫氏主催のUIチャンネルに登場(https://www.youtube.com/watch?v=hPGt3nIec1M)し、ロシアに対する米側諸国の経済制裁措置に効果が出ていないこととともに、米国バイデン大統領の人気が相当低下していることを力説している。なお、鳩山友紀夫氏は今回のウクライナ事変の真相について正しい情報を発信している数少ない人物である。

さて、文明の歴史的転換には通常、長い時間がかかるが当面の焦点は今年秋の米国の中間選挙だろう。トランプ共和党が上院、下院ともに過半数を獲得すれば、その時点でバイデン大統領はレームダック化する。そして、2024年秋に大統領選挙が行われる。トランプ前大統領が共和党候補になる可能性は低くないが、いずれにしても米国は対米隷属政策を国是として採用している諸国の切り崩しを図るだろう。ブレア氏の講演が示唆するように、米国は激しいインフレで経済が極めて厳しくなっており、対米隷属諸国の切り離し=自立を促すだろう。自公与党にとっては「黄金」の三年間が終わり、2025年夏には国政選挙としての参院選を迎える。

今後の日本の行く末については、①自公政権が憲法に非常事態条項(ナチスの全権委任条項に相当)を盛り込んで独裁体制を強化し、国内外の混乱に対して独裁体制を敷く②自民党内に対米隷属策の転換を行う勢力が強力に台頭する③変な言葉だが反政府系野党の間で、立憲民主党の解体を前提として共闘体制の再構築が行われ、文明の歴史的転換を踏まえた国難を乗り切ることのできる骨太の政策体系を国民に提示し、政権掌握に向けて本格的に動き出すーの三つのシナリオが考えられる。

歴史社会学的には、このような文明の転換期の時代にあっては、それにふさわしい思想(マックス・ウェーバーが宗教社会学論文集で述べた「歴史の転轍手」)が創造されるものである。「世界宗教の経済倫理序論」(みすず書房)には次のように記載されている(https://www.it-ishin.com/2020/08/16/historical-sociology-2/)。
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人間の行為を直接に支配するものは利害関心(物質的ならびに観念的な)であって、理念ではない。しかし、「理念」によって創りだされた「世界像」は、きわめてしばしば転轍手として起動を決定し、そしてその軌道の上を利害のダイナミックスが人間の行為を推し進めてきたのである。
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「歴史の転轍手」としての理念は、欧米文明が想像した普遍的価値観・制度(基本的人権の保障や男女平等、博愛精神、三権分立制度、市場経済制度、複式簿記、科学・技術システムなど)東アジア共同体研究所がメインのテーマにしているように、東アジア共同体の構築こそが今後の急務の課題であり、上記のマックス・ウェーパーのテーゼはこの文脈の中で再検討しなければならないだろう。



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