デフレ不況脱却なしに消費税大増税を強行する安倍政権―メディアが提灯報道

2013年08月12日のNHK(イヌ・アッチ・ケー)は午後21時の定例ニュースで、消費税大増税恐慌に向けたキャンペーンを開始した。政府と与党幹部の二人を登場させ、如何にも慎重派(段階的税率引き上げ)と積極派(即時8%への引き上げ)の言い分を代弁させ、公平な報道をしているかに見せかけているが、当然二人とも消費税大増税強行派だ。国民の利益、日本経済の再建のために議論を戦わせるというのなら、消費税増税反対陣営の中から論客を選び、出演を依頼すべきだ。大増税強行派の二人に、増税の仕方について議論をさせても何の意味もない。

今年4―6月期の国内総生産(GDP)の増加率は実質で前期比0.6%増(年率2.6%増)、名目 0.7%(年率 2.9%増)だった。1997年度にデフレ不況(恐慌型デフレ)に陥って以後、重要なのは名目GDPの増加率、GDPデフレーターの動向である。名目でのGDP増加率はマイナス(つまり、経済規模の縮小)が続いていたが、3・四半期連続プラスになっている。あたかも、デフレ不況から脱却しつつあるように見えるが、実態はそうではない。次の内閣府の公式ドキュメントがそのことを物語っている。

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[4]デフレーターの動向
GDPデフレーターは、季節調整済前期比で 0.1%と 3 四半期ぶりの上昇となった。国内需要デフレーターは季節調整済前期比 0.0%と横ばいであったものの、輸出デフレーターの上昇等から外需デフレーターがプラスに寄与した。
前年同期比でみたGDPデフレーターは▲0.3%の下落であった。2009 年10-12 月期以降 15 四半期連続の下落ではあるが、前期(▲1.1%)に比べて下落率は縮小した。内需デフレーターが▲0.1%と前期(▲0.8%)から下落率を縮小させたことが寄与した。

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言い訳を付け加えているが、GDPデフレーターは前年同期比でまだマイナスというのが実態である。多少デフレ脱却に向けての動きが出ているように見えるのは、①アホノミクスとかアベコベノミクスと呼ばれるアベノミクス(アベクロノミクス)による円安(ただし、現在の円安はアベクロノミクスによるものではなく、米国の量的金融緩和政策QE3の終了予測で同国の金利が上昇、日米金利差が拡大してきたためである。もっとも、米国が本当にQE3を終了させることができるかどうかは不明である)で輸入物価が上昇している②4―6月期のGDP統計が良くなるように、マスメディアを使った「財政危機の喧伝」とは矛盾する2012年度の13兆円規模の大型補正予算を編成し、かなり遅らせて執行した―からである。

それにしても、イエール大学の名誉教授なる浜田宏一氏が失望していた(これは、半分演技で半分ホンネ。基本は、安倍晋三首相に「苦渋の決断をした」とマスメディアに報道させるための演技だが、失望感も隠せなかったと思われる。だいたい、アベクロノミクスで経済が良くなるなどと信じこむのは、曲学阿世の輩に過ぎない)ように、大掛かりりな舞台装置を作った割りには、年率換算で名実とも3%に届かないというのは、冴えない情況である。

しかも、市場制資本主義経済体制の発展の原動力である設備投資は全く勢いがない。

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民間住宅については、実質▲0.2%と 5 四半期ぶりの減少となった。名目では前期に引き続き増加(前期比 0.9%増)したものの、資材価格の上昇等を背景に民間住宅デフレーターが上昇しており(前期比 1.2%増)、実質では前期比マイナスとなった。
民間企業設備についても、実質▲0.1%と減少した。減少率は前期よりも縮小しているものの、6 四半期連続のマイナスとなった。船舶や自動車等に対する設備投資の動向が減少に寄与したとみられる。

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円安の「恩恵」を最も享受できるはずの自動車業界の設備投資が悪化したというのは、自動車業界首脳も円安は長く続かないと思っている証拠である。今後、マスメディアでは実質2.6%が高いか低いかということで、「激論」が交わされ、安倍首相は「苦悩の中で財政再建を最も重視せざるを得ず、来年4月からの消費税率引き上げ(5%➤8%)の苦渋の決断を行った」というように「報道」していくだろう。

しかし、人頭税に次ぐ大衆課税である消費税の大増税(税率1%の引き上げで2.5兆円―3.0兆円の増税)では国民の所得が大幅に召し上げられ、消費税の税収が多少増えても所得税と法人税が激減(しかも、効果はないのに法人税は減税することになっている)し、かえって税収は減る。1997年度(平成11年度)に橋下龍太郎政権が財政状況が全く危機でもないのに消費税率の3%から5%への引き上げと保険料の引き上げ、社会保障支出の削減など総額11兆円規模の超緊縮財政を組み、恐慌型デフレ不況に突入したことを思い出さねばならない。

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そもそも、現在の恐慌型デフレは簡単に克服できるものではなく、今年4-6月期の経済統計のみで消費税増税の可否を判断すべき性格のものではない。

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また、日本経済が長期停滞ないし縮小不均衡過程に陥っていることは、次の図より明らかである。

zu052 日本経済の不調の真の原因は、正しい経済学を学んでいない東大法学部出身者で占められた財務省の経済政策の失敗―米国発で世界各国の経済を苦境に落としていれている悪魔の「経済学」である新自由主義政策の米国からの強要にある―にある。日本国憲法で公僕と位置づけられている財務官僚は、その何たるかをわきまえず、省益と昇進のみを追求し続けてきた。そして、自ら立案した政策の失敗のツケはすべて国民に負わせてきた。

彼らの一部は、日本金融財政研究所の菊池英博所長と交流し、その失敗を認めている。にもかかわらず、性懲りもなく過ちを繰り返そうとしている。かつ、消費税大増税や環太平洋連携協定(TPP)参加、原発推進策への回帰などが日本の経済社会に何をもたらすかを熟知している。だから、これからは国民の不満を抑えるために憲法を改正させ、統制経済社会に移行する準備をしているのが実態である。麻生太郎財務相の「ナチス発言」はこの過程で必然的に出てきたものである。

 

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