日経平均は8月8日、前日比454円安の大急落になり、1万4778円で引けた。バラク・オバマ米大統領がバグダッドへの限定空爆を承認したと伝えられたことが直接の原因だが、冷戦後の1990年台以降の米国の世界戦略が破綻したことがその背景にある。そして、無節操に米国に追随してきた広い意味でのアベクロノミクス(アベノミクス)の破綻も災いしている。

1991年1月17日にイラクの空爆で始まった湾岸戦争は、米国手動によるものであるが、国連が派遣した多国籍軍が制裁の主体であった。要するに、民主主義対共産主義の冷戦で機能しなかった国連安保理が初めて機能し、多国籍軍の派遣になったのである。

米国は湾岸戦争勝利後、ユニラテラリズム(単独主義)に陥ることなく、平和維持軍を中心に国連の機能を充実、強化させ、世界平和に貢献すべきであった。ところが、新自由主義に基づく市場原理主義が共産陣営に打ち勝ったと思い込み、新自由主義で世界を席巻しようとした。

9.11に対する報復、大量破壊兵器を破壊するための先制的集団的自衛権の行使などとして、アフガニスタン、イラクへの侵攻もその一環である。しかし、新自由主義とは要するに国民の血税を搾取する掠奪主義に過ぎず、そういう掠奪主義で冷戦後の新世界秩序を創出できるはずがない。

だから、その咎が祟って、米国は内政、外交とともに最悪の状態に陥っている。米国の味方と言えば、家来同然の日本だけである。結局、日本の「財布国家化」と「傭兵化」の圧力を強めてくるだろう。安倍晋三政権はごもっともと、すべての要求に応えることしかできない。その結果として、日本の経済社会はボロボロになるだけである。既に、4月の消費税増税であの「日本語用経済新聞」ですら、景気の悪化を認めざるを得ないほど、在庫率の上昇と鉱工業生産の落ち込みが激しくなっている。こちらも、日経平均の急落の大きな要因になっている。

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米国と対米隷属の安倍政権の悪巧みを阻止し、日本の経済社会の再建と世界平和の再構築に貢献するためには、海江田代表に民主党を分党させ、再び生活と組んで自民党の中道リベラル派を糾合、自民公明党に対抗できる政権担当能力のある野党を再編、来たるべき総選挙で政権を奪取するしかない。

【追記】
NY株は大幅上昇したから、週明けの東京市場は反発するだろう。しかし、地政学的リスクが去ったわけではなく、日本の景気の先行きも暗いから、日経平均、各種銘柄の株価の下方トレンドは続く。

日本の今年上半期の経常収支が初めて赤字に転落した。この統計は市場が始まる前の8時50分に発表されたため、市場には衝撃が広がり、午前9時半時点でおよそ200円急落。その後、NY市場での取引が終了した日本時間の午前10時半、バラク・オバマ米大統領がイラクへの限定空爆を発表、下げを加速した。経常収支の赤字への転落は、新自由主義=掠奪主義の政策を取り続けてきた結果であり、その衝撃は大きい(2014年8月11日午前2時加筆)。

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【注】

  • 第一次所得収支  対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示す。 
      (第一次所得収支の主な項目)
      直接投資収益:親会社と子会社との間の配当金・利子等の受取・支払
      証券投資収益:株式配当金及び債券利子の受取・支払
      その他投資収益:貸付・借入、預金等に係る利子の受取・支払

  • 第二次所得収支  居住者と非居住者との間の対価を伴わない資産の提供に係る収支状況を示す。

    官民の無償資金協力、寄付、贈与の受払等を計上する。

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