消費税増税後初の四半期国内総生産(GDP)統計が本日、午前8時50分発表されたが、実質経済成長率は年率換算で6.8%減。しかし、意図せざる民間在庫の積み上がり(売れ残り)を除いた国内民間最終需要は、家計最終消費支出の落ち込みが年率換算19.2%になるなど厳しく同14.4%も激落した。その反面、全般的な物価動向を示すデフレーターは前期のプラス0.1%から同1.7%と大幅に上昇し、日本の経済が完全にスタグフレーションに陥ったことを示している。ただし、安倍晋三政権は7ー9月期のGDP統計での多少の改善を屁理屈に、11月中にも来年10月からの追加消費税率引き上げを強行決定する公算が大きい。しかし、今回のGDP統計はアベノミクス(アベクロノミクス)が完全に破綻していることを如実に物語っている。安倍政権の早期退場とともに、経済政策を抜本的に転換する必要がある(最終稿2014年8月14日07時40分)。

まず、モーニング・スターの予測記事を引用する。

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 2014年4-6月期GDP、前期比年率9.3%減という大幅マイナス予想も

あす13日午前8時50分発表予定の14年4-6月期実質GDP(国内総生産)第1次速報は大幅なマイナスになるとの見方が多い。市場予想の中心値は前期比年率7.2%減と、東日本大震災が発生した11年1-3月期に匹敵するマイナス成長が見込まれている。

各証券会社、シンクタンクなどによる予想レンジは6.0-9.3%減。これほどのマイナスとなる理由は、4月に消費税を17年ぶりに引き上げたことで3月末に駆け込み需要が発生し、1-3月期GDPが6.7%増と急伸した反動が出るため。特に個人消費は落ち込みが激しく、消費税引き上げに伴う消費者マインドの冷え込みも加わり7四半期ぶりの減少が見込まれている。住宅投資は9四半期ぶりの減少となりそうだ。

一応、市場は大幅マイナスを織り込み済みとは思われる。ただ、大和総研(9.3%減)や三菱UFJリサーチ&コンサルティング(9.2%減)などは市場予想の中心値を大きく上回るマイナスを予想している。市場予想をあまりに大きく下回る結果となった場合、株式市場には当然ネガティブ・サプライズとなる。また、為替市場では株安からドル・円が下落する可能性は否定できない。

みずほ証券は8日付リポートで、「ドル・円相場にとっては下押し材料」とする。

<7-9月期はプラス転換>7-9月期のGDP成長率に関しては4-6月期の落ち込みをカバーするほどの勢いはなさそうだが、プラス転換するとの予想が多い。耐久消費財については緩やかな増加にとどまるが、「非耐久消費財やサービス消費が個人消費の増加を後押しする」(大和総研)という。

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【内閣府の発表】

内閣府の発表によると、2014年 4~ 6月期の実質GDP(国内総生産・2005暦年連鎖価格)の成長率は、▲1.7%(年率換算▲6.8%)となった。また、名目GDPの成長率は、▲0.1%(年率換算▲0.4%)となった。市場予想の平均値に近い数字になった。

景気悪化の中身も全く冴えない。経済成長の主役である民間家計消費、企業設備投資、民間住宅投資は大幅に落ち込んでいる。このうち、民間最終消費支出は、実質▲5.0%(年率換算18.6%減、1~3月期は2.0%)、名目▲3.2%(同12.1%減、1~3月期は2.0%)となった。

そのうち、家計最終消費支出は、実質▲5.2%(年率換算19.2%減、1~3月期は2.1%)、名目▲3.3%(同12.6%減、同1~3月期は2.0%)となった。家計最終消費支出(除く持ち家の帰属家賃)は、実質▲6.2%(同22.6%減、1~3月期は2.4%)、名目▲4.0%(同15.1%減、1~3月期は2.4%)となった。

民間住宅は、実質▲10.3%(年率換算35.3%減、1~3月期は2.0%)、名目▲8.0%(同28.4%減、1~3月期は2.6%)。民間企業設備は、実質▲2.5%(同9.6%減、1~3月期は7.7%)、名目▲1.8%(同7.0%減、同1~3月期は7.6%)。

民間在庫品増加の成長率に対する寄与度は、実質 1.0%( 1~ 3月期の寄与度は▲0.5%)、名目0.8%(1~3月期の寄与度は▲0.4%)となった。これは、要するに出荷(売れ行き)が悪くて、意図せざる在庫の積み上がりが生じ、これが成長に寄与したということであり、好ましくないパターンだ。

この在庫品増加の影響を除くために、国内総需要から在庫品増加を差し引いた国内最終需要の落ち込み幅を計算すると前期比3.8%減、年率換算14.4%もの減少になる。こちらが、消費税増税、前年度13兆円規模の補正予算剥落、社会保険料負担の増大の悪影響をよく示している。

さらに気になるのは、景気の落ち込みを支えるため公共投資の前倒し執行をしているはずだが、公的固定資本形成は、実質▲0.5%(年率換算2.0%減、1~3月期は▲2.5%)、名目1.1%(1~3月期は▲2.2%)となったことである。

また、外需は、財貨・サービスの輸出は、実質▲0.4%(1~3月期は6.5%)、名目▲0.6%(1~3月期は5.3%)となった。財貨・サービスの輸入は、実質▲5.6%(年率換算で24.4%減、1~3月期は6.4%)、名目▲6.8%(同30.1%減、同1~3月期は6.2%)となった。これは、国内景気の大幅な落ち込みで輸入が激減し、その結果、外需の経済成長に対する寄与度が皮肉にもプラスになったということを示している。

要するに、4月の消費税の大増税と緊縮財政による公共投資の削減→家計消費、住宅投資の大幅な落ち込みとそれによる設備投資の不振→輸入の大幅な落ち込みによる見かけ上の景気大幅悪化の抑制、という構図である。第一次速報値では、消費大不況で落ち込んでいる設備投資の動向が正確には反映されないため、第二次速報値(9月8日発表)では、統計内容がさらに悪化する。

注目すべきは、GDPデフレーターが前期比1.7%(1~3月期は0.1%)の大幅上昇となったことだ。これは、わが国の経済が景気の大幅な悪化の中で、物価がこれまた大幅に上昇するというスタグフレーションに陥ったことを示す。

ロイターなどは、4-6月期のGDP統計が悪ければ、①追加金融緩和の実施②消費税再増税の見送りーなど、政策転換がなされると見ているが、安倍政権は国民の生活向上よりも自分たちの利益の増大を図っているから、消費税再増税の見送りはないだろう。日本の経済社会は撃墜される。

今回のGDP統計は、金融緩和・緊縮財政・規制緩和という新自由主義をそのごとく実践しているアベノミクス(アベクロノミクス)が完全に破綻していることの証明である。安倍政権の退場に加えて、経常収支が大幅に悪化する前に経済政策を抜本的に転換することが必要である。

 

 

 

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