アベクロノミクスの経過(その16)―かなり正解だった白川方明前日銀総裁の離任発言

学者肌の白川方明前日銀総裁は、経済音痴の安倍晋三首相に辞任させられたが、同前総裁離任時の記者会見での発言は、現時点で評価するとかなり正解だった。

白川総裁(当時)は離任にあたっての記者会見で概要、次のように語っている。

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  1. 過去の欧米や日本の数字が示すように、マネタリーベース(現金と金融機関が日銀に預ける当座預金の合計)と物価の関係は断ち切れている。
  2. 消費者物価を2%引き上げても、賃金2%程度の上昇では、生活は安定しない。
  3. 円安だけで(輸出産業の)競争力が高まるわけではない。
  4. (市場の)期待に働きかける(詰まるところ市場関係者の期待をコントロールする)という言葉が、中央銀行が思いのままに市場を動かせるということであれば、私は危うさを感じる(これは正論で、市場原理主義者の本質は、実は統制経済主義者であるということを見逃すべきではない)
  5. 金融政策が財政従属にならないように注意を払ってきた。

というものである。1から4までは全くそのとおりである。ただし、白川総裁(当時)の弱点は、財政主導・金融フォローの政策を時の政府に論理実証的に進言することができなかったことである。「豪腕」を生かしきれなかったところに、同氏の弱点がある。

米国は連邦準備制度理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長が必至になってQE1/2/3(米国流量的金融緩和政策)を展開してきたが、次の失業率を見ると分かるようにまだまだ高水準だ。

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しかも、失業率は非自発的失業者(完全失業者)÷(労働力人口)であって、労働力人口は労働参加率に左右される。失業率がたとえ改善したとしても、分母の労働力人口の減少、つまり、労働参加率の低下によってもたらされているなら、失業率改善の意味はない。ところが、米国の労働参加率は低下しているのである。

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要するに、米国はQE1/2/3にもかかわらず、実体経済は全然良くなっていないのである。これは、①ハイパワード・マネー(マネタリーベース)とマネーサプライ(市場に出回り、実物の消費や投資に使われるマネー)の関係が完全に断ち切れている②多国籍企業が国内の米国人労働者を雇用せず、IT技術を用いて安価な海外労働者を雇用している―ことなどによる。安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁を始めとするアベクロノミクスの信奉者は、このことが全く分かっていないのである。

両者とも即刻辞任すべきであるが、辞任しない場合は「三本の矢」はブーメランとなって日本の経済社会を危機に陥れる。

 

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