懸念される世界経済景気後退の加速化

米中貿易戦争が6月1日から広範囲に及ぶようになったことで、世界経済の景気後退加速化が懸念される情勢になった。

米中貿易戦争=輸入関税率の25%引き上げ品目の大幅拡大が6月1日から拡大された。その結果、関税引き上げ品目は両国合わせて合計2600億ドル(29兆円)規模に膨らんだ。これで、米国の物価水準のさらなる上昇は必至の情勢である。保護主義はスタグフレーションをもたらすが、同国経済のスタグフレーション化は避けられない。

中国は強気で、加えて現代の先端産業に必要不可欠なレアメタルの対米輸出規制も考えているから、米国は消費分野はもちろん、製造分野も大きな打撃を被る。米国の対中貿易は同国側の大幅赤字であるから、米中貿易戦争は基本的に米国に不利である。そもそも、「米国第一主義」というトランプ米政権の基本方針は、世界の経済政治社会の相互依存の深化の中、根本的に間違っている。

評価できることといえば、選挙公約をそのまま実施していることである。政治家ならば、消費税増税はしないと訴えて政権交代を果たした民主党(当時)が政権奪取後、消費税増税路線に転じたことや、TPP廃止を訴えていた自民党が政権を奪取するといとも簡単に前言を翻し、米国の軍産複合体を利するTPP積極参加・実現に前のめりになったことは、国民を騙すものであり、恥ずべき行為と認識して当然である。この点、トランプ政権は選挙公約をそのまま実施しているから、そのこと自体は評価できるが、政治家の要諦は、➀選挙戦での正しい理念と政策の提示②その着実な断行-であるから、評価できないのは当たり前である。

米中貿易戦争は、中国に先端産業の製造部品を輸出している日本の産業界にも深刻な打撃を与えている。経済産業省が5月31日に4月の鉱工業生産指数とともに発表した今年6月の生産予測指数は前月比4.2%減と比較できる2013年1月以降で最大になった。令和元年は景気後退が世界で明確になり、日本もその例外ではいられなくなる年になる。

今夏に参院選挙があるが、単独かダブルか。考えられるケースとしては、➀10月からの消費税増税強行、参院選単独②景気悪化に伴い、消費税増税のさらなる延期を名目にした衆参同日選挙③景気悪化に伴い、消費税減税・税制の大改革を争点とした衆参同日選挙-がある。第一のケースは、自公政権大敗が予想される。第三のケースを安倍自公政権が打ち出してくる可能性も出てきているが、その場合はダブル選挙を乗り越えることができようが、これまでの政策と整合性を欠く上、財務省を筆頭官庁とする霞が関から見限られることになる。

第三のケースは、真性野党が理念・政策で一致し、共通項として打ち出すべきものである。ところが、野党は自分党に成り下がっており、現時点では明確な展望が開けていない。このままで行けば、国民に対する背信行為になる。

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