林官房長官は、午前の記者会見で「一般市民へのテロ攻撃を断固として非難する。遺族に対し、心からの哀悼の意を表するとともに、犠牲となったロシアの人々への連帯を表明する。なお現時点までに邦人被害があったとの情報には接していない」と述べました。また、モスクワにあるアメリカ大使館が自国民に対し、今月7日からおよそ2日間にわたって大規模な集会への参加を避けるよう伝えていたことに触れ「在ロシア日本大使館から在留邦人にも領事メールを発出し、警戒情報を周知した」と述べ、日本政府としても、現地の日本人に安全に留意するよう、随時、呼びかけていたことを明らかにしました。
さる3月22日にモスクワのコンサートホールに対して行われたテロ攻撃は、バイデン政権が計画しウクライナに実行させたもののようだ。最後の悪あがきのひとつだろう。バイデン政権がロシア側に対して、コンサートホールへのテロ行為があることを通達していたことが怪しい。
このテロ事件で少くとも144人が死亡、551人が負傷した。亡くなられた方には哀悼の意を表し、負傷された方に対してはお見舞いとともに早期の回復をお祈りさせていただきたい。さて、何よりも不思議なことは、この大規模なテロ事件に対してバイデン政権がプーチン政権に警告を通達していたことだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240403/k10014411331000.html)。
ロシアの首都モスクワ郊外で先月起きたテロ事件で、アメリカ政府が実際に標的となったコンサートホールの名前を具体的に挙げて、テロのおそれがあるとロシア側に事前に伝達していたと、アメリカの複数の有力紙が伝えました。(中略)
アメリカの有力紙、ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズは2日、複数のアメリカ政府当局者の話として、アメリカ政府が実際に標的となったコンサートホールの名前を具体的に挙げて、テロのおそれがあるとロシア側に事前に伝達していたと伝えました。アメリカ政府はこれまで「コンサートなどが標的となる可能性のあるテロ計画に関する情報をロシアに伝えた」としていますが、詳細については明らかにしていません。
何故、バイデン政権がモスクワのコンサートホールへのテロ攻撃を知り得たのか、サイト管理者(筆者)としてもどうも納得ができなかったが、国際情勢解説者が4月2公開した「ロシア強化のため米国がやらせたモスクワのテロ」(https://tanakanews.com/240402crocus.htm、無料記事)を読むとすっきりする。まず、テロ攻撃の実行とその後、犯人がロシア側に捕らえられるまでの経過について、次のように述べておられる。
3月22日の午後8時、モスクワ郊外のクロックスシティホール(Крокус-Сити-холл、6600人収容)で、ロシアの人気ロックバンド「ピクニック」の満員コンサートの開始直前に、武装して迷彩服を着た4人のテロリスト(タジク人の男)たちが押し入って銃を乱射し、火をつけてホールを炎上させた。144人が死亡し、550人が負傷した。(Russian FSB Chief Says US, UK, and Ukraine Could Have Been Involved in Moscow Terror Attack)
事件後、実行犯たちは自家用車で逃走した。露当局は早期(事前?)に犯人たちの車を割り出し、高速道路上の監視カメラでナンバープレートを判読するデータベースから車を追跡した。犯人たちの車は、モスクワからウクライナ国境に向かうM-3高速道路を走った。
途中の街ブリヤンスクでベラルーシに向かう高速道A-240が分岐するが、犯人たちがA-240に入らず、M-3でウクライナ国境に向かい続けることが確定した後、露当局は現地の部署に連絡して車を止め、犯人たちを逮捕した。逮捕の際、犯人たちはあまり抵抗しなかった。(Ukrainian ‘Caliphate’: What the West prefers not to notice when blaming ISIS for the terrorist attack in Moscow)
なお、日本もこのバイデン政権側のプーチン政権側への通達を信頼性の高いものとして、在ロシアの邦人に対して警戒を発している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240325/k10014401621000.html)。
林官房長官「現時点で邦人被害の情報には接していない」
バイデン政権が3月7日以降、在ロシア米国人に対して、モスクワで重大なテロ事件が起きることを警告していたことや、日本の林官房長官がこの警告を信憑性の高いものとして捕らえていたことからすれば、バイデン政権が最後のあがきのひとつとしてウクライナに対してテロ計画を立案し、ウクライナに対してテロの実行を行うように指令したものと考えた方が妥当だ。
テロを行った動機は、イスラム教の教義(聖戦に参加して生命を落とせば天国に行ける、と言われているもの)に基づくものではなく、金銭の獲得が目当てだという現実・現世主義だ。余談だが、自爆テロも殺人であり、殺人罪を犯したものが天国に行けるなどのことは有り得ない。サイト管理者(筆者)は、生前の行為によって死後の世界(霊界)での位置が定まる」と理解しており、殺人罪にふさわしい霊界に行くことになるだろう。テロ事件の犯人たちの金銭獲得およびテロ実行の訓練は、次のようなものだ。
実行犯たちがウクライナに逃げ込もうとしていたことから、ウクライナ当局がテロ事件の黒幕であることが見て取れる。好戦発言が多いゼレンスキー側近(Oleksiy Danilov)は事件後、テレビ出演した際に「われわれは今後もこういう事件をロシアで起こしてやるぞ」と発言してウクライナ黒幕説を肯定してしまい、ゼレンスキーに更迭されてしまった。(Escobar: It’s War – The Real Meat-Grinder Starts Now)(Why Does Zelensky’s Cabinet Reshuffle Bring Focus on Crocus City Hall Attack?)
露当局によると、ウクライナの諜報機関が(米諜報界の助けを借りて、米諜報界の傀儡である)ISISの系統のSNSを使い、実行犯をやってくれそうな若者たちを集め、事前の手当てとして25万ルーブルを払った。ウクライナ当局に命じられ、実行犯の主犯格(Shamsidin Fariduni)が事前にトルコのイスタンブールに行ってISIS(注:イスラム国を意味するIslamic State of Iraq and Syria)系の人物(聖職者)と会い、テロのやり方などを教わった。ISISやアルカイダがテロをやる時は、信心深い者に「聖戦(テロ)をやると天国に行ける」と思い込ませて実行犯に仕立て、無償で自爆テロをやらせる。実行犯は、死ぬ(天国に行く)のが目的なので、爆弾のついた自爆用ベルトを着用したり、射殺されるとわかっていて当局に向かっていき、犯行現場での即死(昇天)を目指す。(Terror mastermind told attack suspects to flee to Kiev – investigators)(Investigators establish link between Moscow terrorist attack suspects and Ukrainian nationalists)
だが今回の実行犯は違う。彼らの目的はカネだった。ウクライナ当局は、テロを成功させてウクライナに逃げ込んだら25万ルーブルの成功報酬を出すことを約束し、ロシアからウクライナに越境する方法も教えてあった。実行犯は国境の100キロ手前で逮捕されたが、その時もISISテロリストのように死のうとせず、露当局に逮捕されて生き延びる道を選んだ。(Ukrainian ‘Caliphate’: What the West prefers not to notice when blaming ISIS for the terrorist attack in Moscow)
ウクライナのゼレンスキー大統領は3月26日、安全保障政策の中心となってきた政府高官であるオレクシー・ダニロフ書記を解任すると発表した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240327/k10014399561000.html)が、これはゼレンスキー政権の内部分裂を象徴すると同時に、このダニロフ書紀がウクライナの関与を示唆したようであり、これも解任の理由になっている。読売新聞のサイトは、「ウクライナ国営通信は26日、ロシアのモスクワ郊外のコンサートホールで起きたテロに関連し「ウクライナの関与」を 捏造ねつぞう するための偽情報がSNSで拡散されていると報じた」として、テロ事件に対する「ウクライナ関与説」を「偽情報」として取り扱っているが、「偽情報」ではないようだ。
バイデン政権が今回のテロ事件をウクライナ側に指示した理由について、田中氏は次のように述べている。
今回のテロはロシアを、米英ウクライナと闘う方向で結束させた。今回のテロは、ウクライナ戦争が、欧露間の長い低強度戦争(冷戦)に転換していくタイミングで起きている(昨日の有料記事で書いた)。露軍は間もなくオデッサなどに進軍すると米欧政府も予測している。(欧露冷戦の再開)(Western Nations ask citizens to leave Kharkiv and Odesa!)
これからの長い欧露の新冷戦は、欧州や米覇権体制を自滅させる。資源類の利権が米欧から非米側に移り、露中など非米側が世界の中心になって台頭・成長していく。世界の多極化が確定する。ロシアは、その流れの誘導役になっている。ウクライナ戦争が終わるころ、ロシアは今よりかなり発展しているはずだ。それまでの間、ロシアが結束し、プーチンの人気が維持されている必要がある。今回のテロは、ロシアの結束とプーチン支持を強めるものになっている。だから発生が容認された。(Russia Announces ‘Substantiated Evidence’ Of Ukraine Link To Crocus Hall Terrorists)(多極型世界システムを考案するロシア)
今回のテロ事件で犠牲になったロシア国民を中心とする方には申し訳ないが、国際政治の現実は冷徹だ。結論として、田中氏は本投稿記事紹介のリード文で、次のようにまとめている。
今回のテロは、ロシアの結束とプーチン支持を強める。だから発生が容認された。ウクライナの諜報・軍事活動は全て米諜報界に監視誘導されている。今回のテロも米国が考案したものだ。実行犯の後ろにウクライナ諜報機関がおり、そのまた後ろに米諜報界がいる。これは失策でなく、意図通りの成功である。米諜報界を牛耳る隠れ多極派は、ロシアを強化して中国と結束させて、世界を多極化・非米化したい。彼らは大成功している。
過激なネオコンが支配的になっている米諜報界=ディープ・ステート(DS)はバイデン政権を傘下に納め、米側陣営の日本を含む対米従属国を自滅させているというのが、田中氏の解説の中心だ。ディープ・ステート(DS)が多極化を推進する論理は軍事(軍産複合体の利益になること)ではなく、資本の論理ということであるが、サイト管理者(筆者)としては既に述べているように、米国は世界最大の財政赤字、経常赤字、体外累積債務残高であることから、米国単独での一極派遣体制はもう続けることが不可能になっていることを最大の理由と見ている。
日本の政治情勢は岸田文雄政権が自民党を支えてきた安倍晋三元首相(狙撃テロ事件で殺害)が中心となっていた清和会潰しを行っているという複雑怪奇な状態に陥っているが、国際政治はもっと冷酷だ。「ウクライナは最終的に勝利する」のプロパガンダごときを軽信していては、国際情勢の真相・深層は見えない。