プーチン大統領だけを「悪人」に仕立てているのは米国の軍産複合体ーバイデン大統領に指示か

今回のウクライナ事変について、世界の大手メディアは情緒的な報道を繰り返している。戦況の真相は不明だが、ロシア軍がキエフを制圧し、ぜレンスキー政権が打倒される可能性もある。プーチン大統領が「軍事侵攻」を強行した真の理由を知らなければ、ウクライナ事変の真の解決にはならない。米国のバイデン大統領もその理由を前提にロシアとウクライナの軍事紛争停止のための調停に努力すべきだが、むしろ、軍事衝突拡大にいそしんでいるようだ。背後には、米国のディープステート(軍産複合体)の指令があると思われる。

ウクライナ事変は米国の軍産複合体が画策か

東アジア共同体研究所理事長の鳩山友紀夫元首相が主催するYoutube番組「UI」チャンネルに、外務省時代に同省条約局局長、欧亜局局長、オランダ駐箚特命全権大使を歴任、外務省出身者きっての欧州、ロシア問題専門家で知られる東郷和彦元外交官(現在静岡県立大学グローバル地域センター客員教授,静岡県対外関係補佐官)が出演された(https://www.youtube.com/watch?v=jNY2mvGtdIE)。

東郷氏はロシアのウクライナ「軍事侵攻」に対して、プーチン大統領指揮するロシア軍に対して強い憤りを見せておられ、軍事衝突を早急に終わらせ、停戦に持ち込む必要性を強調しておられる。そのためには、プーチン大統領があえてウクライナへの「軍事侵攻」を決断した真の理由を理解する必要があるとして、結論的にはウクライナの「中立化(要するに北大西洋条約機構=NATO=への加盟を断念すること)」が必要だとの持論を述べておられる。

サイト管理者(筆者)としても理解できる内容だ。ただし、国際紛争解決の最終的手段は通常兵器による戦争しかない。だから、非情だが、ウクライナ史を多少でも紐解くと、プーチン大統領の行動に、理解は可能だ。ただし、一刻も早く停戦に持ち込まなければならない。また、核戦争は人類の滅亡を意味し、紛争解決の最終的手段にはならない。そのはずだが、バイデン米大統領は「選択肢は二つある」とし、その二つとは第3次世界大戦と大規模な(経済)制裁であると述べており、首をかしげる。

第三次世界大戦となると、通常兵器はもちろん核ミサイルの使用も検討に入るのは当然だろう。核戦争しかないのは当然だろう。ロシアのラブロフ外相が言明したことだは、欧米日諸国に対する牽制や威嚇ではなくて、その通りだろう(https://digital.asahi.com/articles/ASQ332CJ1Q32UHBI04M.html)。要するに、バイデン大統領は停戦に奔走するどころか、ウクライナのぜレンスキー政権と結託してロシアとウクライナの軍事衝突をエスカレートさせているだけなのだ。

ロシアのラブロフ外相が中東カタールの衛星放送局アルジャジーラのインタビューで、第3次世界大戦が起これば、「核戦争以外にない」と述べた。ウクライナに侵攻したロシアに対し、バイデン米大統領が「選択肢は二つある」と、第3次世界大戦と大規模な制裁を挙げたことに反発した。ロシア外務省が2日、インタビューの内容をサイトで公開した。

東郷氏はプーチン大統領が「ウクライナ侵攻」を決断せざるを得なかった理由について、下図のように要点をまとめておられる。サイト管理者(筆者)の言葉で言えば、NATOは元来、冷戦の遺物である。本来なら冷戦の終結とともに、ワルシャワ条約軍と同様、解体させてしかるべきだったと思われる。そして、ロシアも含む汎欧州安全保障機構を発足させるべきだったのではないか。

いわゆるソ連末期のゴルバチョフ書記長(後の大統領)が打ち出した「欧州共通の家」構想だ。これを無視したのが、米国のディープステート(闇の帝国:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)で、NATOは東方に拡大を続けてきた。東欧諸国が自発的にNATO加盟を申請してきたため、その求めに応じて来たと言われているが、それよりも「欧州共通の家」構想の実現に向けて努力すべきではなかったか。

ここに、今回のウクライナ事案の原点がある。要するに、NATO加盟諸国はロシアを騙し続けてきたのだ。この経緯を東郷氏は次のようにまとめておられる。

これらの図からも分かるように、NATOの改革なしに東方拡大を続けてきたことが、プーチン大統領の激怒を招いたと思われる。しかも、ウクライナには東部(主に、ドネツク、ルガンスク両州)にはロシア人が居住しているが、これらのロシア人は歴史的にウクライナ政府から弾圧を受けてきた。2010年、大統領選挙で親ロ派のヤヌコーヴィチ政権が誕生したが、2014年のウクライナ騒乱で同政権は崩壊する。

実は、このヤヌコーヴィチ政権を崩壊させたのが、第二次オバマ政権のバイデン副大統領とビクトリア・ヌーランド国務次官補(当時)で、ネオ・ナチの極右・ネオナチ集団があくまでヤヌコヴィッチ打倒を掲げ、手薄になった大統領官邸に押しかけて力づくで政権を打倒したというのが真相だ。この両氏はその後、大統領、国務次官になり、ウクライナ事変を煽る役割を果たしている。バイデン大統領の大統領とは思えない行動の原点がここにある。

ビクトリア・ヌーランド国務次官

 

その後、2014年6月にぺトロ・ポロシェンコ政権が誕生し、ロシア系ウクライナ住民に対する弾圧が再開されるようになったが、これに反発してロシアがクリミア半島を併合したことをきっかけに、両州の反ウクライナ政府運動が活発化した。このため、ウクライナ政府による東部住民の弾圧が強化された。この弾圧を阻止するために結ばれた合意がミンスク合意Ⅰ(2014年9月)だったが、このミンスク合意Ⅰはすぐに破棄された。

このため、2015年2月、ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの4カ国とドネツク、ルガンスク両州代表による首脳会談で停戦に合意。ウクライナの隣国ベラルーシの首都ミンスクで合意案がまとめられ、停戦協定として署名された。これが、ミンスク合意Ⅱ(ウクライナの東部地方を特別自治区とすることなど)である。しかし、ぺトロ・ポロシェンコ政権のあとを継いで2019年にウクライナの大統領に就任したウォロディミル・ゼレンスキー政権はミンスク合意Ⅱを全く守らなかった。東郷氏が指摘したように、ドネツク、ルガンスク両州代表は「テロリスト」呼ばわりされた。

このゼレンスキー現政権は2021年3月、クリミア半島の占領解除とウクライナへの再統合をめざす国家戦略を承認し「クリミア・プラットフォーム」(一種の「軍事安全保障戦略」)を発足させて、クリミア半島奪還をめざす計画を進めきた。この「軍事安全保障戦略」には、国際的な枠組みとして「ロシア連邦との地政学的対決において、国際社会がウクライナを政治的、経済的、軍事的に支援すること」が盛り込まれ、ウクライナのNATO加盟方針が事実上、盛り込まれている。この「クリミア・プラットフォーム(軍事安全保障戦略)」が、プーチン大統領を激怒させたと見られる。

これが、今回のウクライナ事変の真相・深層であり、米国のディープステート(闇の帝国:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)が指示しているものと見られる。東郷氏が上図で指摘したように、プーチン大統領がウクライナに「侵攻」した最終目的は、ゴルバチョフ書記長が提案した「欧州共通の家」を構築するためだろう。NATOは冷戦の遺物でしかない。それよりも、「欧州共通の家」を模索・構築する方が、ロシアを含む汎欧州の構築の方が時代にかなっている。しかし、「戦争の共和国」である米国のディープステート(闇の帝国:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)は、これを求めていない。自らの利益が失われるからだ。

ただし、米国のディープステート(闇の帝国:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)は、致命的な戦略的失敗を犯した。第一に、中露の関係を深めさせることになったからだ。第二に、主敵であるはずの「中国」の軍事包囲網の形成に手が回らなくなったことがある。また、どうやらウクライナ事変の戦況はウクライナ側に不利になってきているようだ。朝日デジタルが3日報道した「『ロシア軍が南部ヘルソンを占領』と米紙 事実ならウクライナに打撃」は次のように述べている(https://digital.asahi.com/articles/ASQ332S23Q33UHBI00Y.html)。

米紙ニューヨーク・タイムズは2日、ロシア軍がウクライナ南部の人口約30万人の都市ヘルソンを占領したと報じた。ウクライナ当局者が「プーチン(・ロシア大統領)の軍隊によって征服された最初の主要な都市」と述べた、としている。ただ、ロイター通信によると、ウクライナ側は占領を否定しているという。

事実、ヘルソンは陥落したようだ(https://digital.asahi.com/articles/ASQ33671DQ33UHBI02L.html?iref=comtop_7_01)。

マスコミは「お涙ちょうだい」式の情緒的な報道に終始している。米国の無謀なイラク戦争の際の報道とは完全に異なる。イラク戦争でも多数の子供を含む民間人が殺害されたが、民間人が被害を被ったとの報道はほとんど皆無だった。しかし、国際政治は冷厳な現実に目を向ける必要がある。そうした報道が必要だ。選挙で選ばれたヤヌコーヴィチ政権は、第二次オバマ政権のバイデン副大統領とビクトリア・ヌーランド国務次官補(当時)によって「暴力」によって打倒されている。国連憲章に定められた「民族自決」の精神を尊重するなら、言語道断である。また、ウクライナの歴史からしても、現在のウクライナに対して「民族自決」が正しいとするのは、無理がある。

国際政治経済評論家の植草一秀氏はメールマガジン第3164号「ぜレンスキーを大統領にしたのは誰か」で、次のように述べておられる。

支持率低下に直面し、秋の中間選挙での民主党大敗の危機に直面するバイデン大統領にとって、ロシアが端緒を開くウクライナ紛争は、一石三鳥、一石四鳥の打ち出の小槌の意味合いを有している。①米国産天然ガスの販売を拡大する②軍事産業に利益をもたらす③国民の目を外に逸らす④ロシアを悪者に仕立て上げる。そして、⑤子息が関与するエネルギー企業疑惑に対する検察の捜査を闇に葬る。こちらの側の視点を欠くと、ウクライナ紛争の実相を正確に理解することはできない。

東郷氏が危惧しておられるように、日本は米国の言いなりになっていると1956年に鳩山一郎首相(当時)が命がけでまとめてきた「日ソ共同宣言」以降の外交努力がすべて崩壊してしまう。ロシアから相手にされなくなるだろう。加えて、ウクライナ事変、対ロシア制裁が跳ね返り、日本はコロナ禍の中、原油価格の高騰による大規模なスタグフレーションに見舞われるだろう。自動車社会の今日、原油がすべての産業の基礎になっていることも加えて、家計や企業には大打撃だ。岸田文雄政権はこれらの惨事にすべての責任を負わなければならない。真正野党も、事態を正しく見抜く必要があり、そうすることによって、巨大与党に反転構成をかけるべきだ。


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