ロシア対独戦の戦勝80周年を機に、BRICS諸国の団結強化を一段と推進

これに対して、トランプ大統領・政権とともにリベラル左派勢力の一層に取り組むロシアは、ドイツが独ソ不可侵条約を破棄してソ連に侵攻、対ソ戦を開始したことに対抗して、当時のソ連はナチズムと戦う対独戦争を開始し、戦時体制を築き上げて勝利した。ソ連の後継だが、市場経済を導入したロシアは、その80周年記念に、ウクライナへの「特別軍事作戦」を開始して以降、中国の習近平国家主席など最大になる数十カ国の首脳を招き、BRICS諸国の団結強化を一段と推進している。

ロイター通信は、「ロシアで対独戦勝記念式典、プーチン氏は連合国の貢献に謝意示す」と題する配信記事で、次のように述べている(https://jp.reuters.com/world/ukraine/6FOLRZLBEVMPNLBYFVS76MBI4Y-2025-05-09/)。

ロシアは9日、第2次世界大戦における旧ソ連のナチスドイツに対する勝利から80周年を迎えた。ウクライナの攻撃を防ぐために厳重な警備が敷かれる中、モスクワでの式典には中国の習近平国家主席やブラジルのルラ大統領をはじめとする各国の指導者数十人が出席した。また、プーチン氏は習氏と並んで軍事パレードを観覧。パレードには中国軍も参加したほか、北朝鮮軍人の姿も観覧席で確認された。
対独戦80周年記念=ロイター
赤の広場にはウクライナ戦を経験した1500人を含む1万1500人以上の兵士が整列。ウクライナ戦で使用されたドローンが初めて公開されたほか、核弾頭を搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)「ヤルス」や戦車がパレードで披露された。 もっと見る プーチン氏は、第2次大戦勝利への連合国の貢献について、ロシアは常に記憶し感謝すると表明。レジスタンスや連合国軍、「中国の勇気ある人々」による勝利への貢献を高く評価すると述べた。ロシアはナチスドイツを打ち負かしたソ連の決定的な役割を過小評価しようとする試みを決して受け入れないとも語った。

NHKは次のように報道している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250509/k10014800741000.html)。

ロシアでは9日、第2次世界大戦の「戦勝記念日」を迎え、首都モスクワでは中国の習近平国家主席など20か国以上の首脳が出席して記念の式典が行われました。演説したプーチン大統領は「国民全体が『特別軍事作戦』の参加者を支持している」と述べ、ウクライナへの侵攻を正当化しました。

ロシアでは5月9日は第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したことを祝う記念日で、80年の節目のことし、モスクワの赤の広場で開かれた記念の式典には中国の習近平国家主席をはじめ、南米ブラジルのルーラ大統領などあわせて20か国以上の首脳が出席しました。式典ではプーチン大統領が演説し「真実と正義はわれわれの側にある。国、社会、国民全体が『特別軍事作戦』の参加者を支持している。彼らの勇気と決意、それに常にわれわれに勝利をもたらしてきた彼らの強さを誇りに思う」と述べ、ウクライナ侵攻に参加する兵士たちをたたえるとともに侵攻を正当化しました。(中略)

【プーチン大統領発言】
「ロシア全体が『特別軍事作戦』の参加者を支持」
プーチン大統領は演説で「ロシア全体が『特別軍事作戦』の参加者を支持している。彼らの勇敢さを誇りに思う」と述べ、国を挙げてウクライナ侵攻を続ける姿勢を強調しました。

「真実と正義はわれわれの側にある」
ロシアのプーチン大統領は演説で「ロシアはナチズムやロシア嫌い、反ユダヤ主義の支持者にとって不滅の障壁であり続ける」と述べるとともに「真実と正義はわれわれの側にある」と述べ、ウクライナへの侵攻を続けるロシアの正当性を訴えました。

ステパン・バンドラ=Wikipedia

NHKの報道記事を引用したように、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナへの「特別軍事作戦」(ウクライナ戦争)の狙いを、ウクライナ民族主義者組織(OUN)出身で反ソだが、一時、ナチス・ドイツに支援され、ナチスの影響を受けたことのあるステパン・パンドラ(参考:https://x.gd/pCE6t)を開祖とするウクライナ型のネオ・ナチ勢力(アゾフ大隊が代表的な組織。ゼレンスキー政権下でウクライナ軍に正式に編入され、特別扱いを受けている)との戦い(解体)と位置づけている。

なお、法務省の外局である公安調査庁は2021年まではアゾフ大隊をネオ・ナチ組織としていたが、ロシアが「特別軍事作戦」に踏み切った2022年以降、当時の岸田文雄政権がウクライナを経済的・軍事的に支援し続けたことから、アゾフ大隊をネオ・ナチ組織とした従来の見解を否定した(https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000251401.html)。岸田政権が従来の自民党政権と同様、自ら進んでバイデン政権の傘下に入ったことが原因だろう。日本のオールド・メディアやロシアとウクライナに詳しいと紹介されるほとんどの自称「国際情勢アナリスト」がウクライナを養護し、ウクライナ戦争の真実を伝えないのはこのためだと思われる。

山上徹也容疑者が狙撃テロで暗殺したとされている安倍晋三元首相は、プーチン大統領と20回以上、直接会っていたから、ウクライナ戦争の真実を掴んでいた。ロシア政府系の日本語サイトであるスプートニクは、次のように報じている(https://sputniknews.jp/20220529/11385401.html)。話はそれるが、山上容疑者の公判が安倍元首相の暗殺から3年近く経っても始まらないのは、狙撃テロ事件に岸田政権(特に、奈良県立大学附属病院の救命チームの福島英賢教授らの見解を否定した警察庁)が深く関わっていたからだとも推察できる。

日本の安倍晋三元首相はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領のNATO加盟に関する姿勢とドンバスでの紛争解決の拒否が、ロシア軍による特殊作戦が始まった原因であると表明した。
安倍氏は英誌エコノミストとのインタビューで(注:https://www.economist.com/AbeInterview)「ゼレンスキー大統領に対して自国がNATOに加盟せず、ウクライナ東部の2つの地方に自治権を与えると約束させることができた場合、軍事行動は回避できただろう」と述べた。

安倍元首相が英誌エコノミストから受けたインタビューの内容は、ミンスク合意Ⅱのことを言っているが、同合意締結に関与したドイツのメルケル首相(当時)は、ミンスク合意Ⅱはウクライナがロシアに対抗できる戦時体制を構築するための時間稼ぎに過ぎなかったと述べている(https://jp.reuters.com/article/markets/japan/-idUSL6N32Z0A5/)。要するに、欧州はロシアを騙したわけだ。話を元に戻すと、ウクライナ戦の停戦・終戦について、田中氏は既に述べた「続くウクライナ停戦の茶番劇」で次のように分析している。

プーチンのロシアは、4月20日の復活祭と、5月9日の戦勝記念日に際し、2-3日間ずつウクライナの戦闘を停戦した。これは、トランプ就任時に米露で決めたウクライナ停戦の日程が、復活祭までに停戦交渉の本格化、戦勝記念日までに停戦の実現、となっていたからだ。実際は、西欧にウクライナ戦争の主導役を押し付けて自滅させる策のため、停戦は進まなかった。プーチンは、ウクライナ軍が建て直せないほどの短期間である2-3日ずつの象徴的な停戦を設けた。1週間以上停戦するとウクライナ軍が反撃を強めて露軍に被害が出るので2-3日にしたのだろう。ウクライナ停戦に乗り出すトランプ

トランプとプーチンは、ウクライナで英EUを自滅させる策をとりつつ、自分たちは非米側を安定強化する策を進めている。それは、たとえば北朝鮮だ。トランプは最近、金正恩とまた会いたいと言い出している。プーチンは、クルスクでの北朝鮮軍の活躍を発表して称賛し、ロシアが北朝鮮に最新鋭の軍事技術を伝授していることを明らかにした。いずれトランプが金正恩と会い、ロシアや中国とも協力し、韓国と北朝鮮の対話を再開させようとする。欧州は自滅し、他の世界は安定していく。White House preparing for possible Trump-Kim talksFirst Video Showing Russian Instructors Training North Korean Troops

プーチン大統領は北朝鮮を同盟国として重要視しており、「ロシア国民は、北朝鮮の特殊部隊兵士たちの功績を決して忘れない」と謝意を表し、招待した北朝鮮軍の首脳も赤の広場で行われた軍事パレードに参加した。北朝鮮も同じだ。「キム・ジョンウン(金正恩)総書記はこの日、首都ピョンヤンにあるロシア大使館を訪れ、両国の同盟関係を絶えず発展させていく立場を表明しました」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250510/k10014801681000.html)。

マックス・ウェーバー

なお、トランプ大統領は記念式典には出席しなかったが、「ロシア大統領府のウシャコフ補佐官は、9日、プーチン大統領とアメリカのトランプ大統領が、それぞれの側近を通じて、第2次世界大戦の戦勝記念日を祝うメッセージを交換したと明らかにしました」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250510/k10014801681000.html)とのことだ。また、トランプ大統領とプーチン大統領、習近平国家主席は、オールド・メディアを中心に悪側の世界「三大皇帝」と揶揄されているが、これについて、Youtubeのイエアンドライフ・チャンネルでは、私服を肥やして国民を不幸にする悪徳官僚を粛清していることでは一致していると、「三大皇帝」を評価している。

なお、西欧のプロテスタンティズムは、教条主義的な「絶対予定説」で近代の「官僚制度」を生み出すことになったが、現代は民主主義と官僚主義の戦いが熾烈でもある。

サイト管理者(筆者)なりの見方では、これまで、第二時世界大戦後の世界を支配してきた諜報界(ディープ・ステート=DS=)は、資本主義の原則(市場経済による資本の論理の重視)と中東の安定(広義には世界の高等宗教の調和と統一)を最優先する多極化勢力が、英米英米一極単独覇権派を打倒し、世界は多極化文明の実現とそれらの調和・統一の時代に入りつつある。今こそ、マックス・ウェーバーが「世界宗教の経済倫理」の「序論」で述べた、文明の転轍手としての高度な「理念」の出現が、時代の要請になっている。

 

 

 

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