ウクライナ事変は、米国を盟主とする米欧日諸国側(NATO加盟諸国側)と非米欧日諸国側(非NATO加盟諸国側)との世界的で本格的な軍事・外交・経済覇権闘争に転換したと認識して良いようだ。しかし、ウクライナ事変の発端が米国によるウクライナへの内政干渉(2004年12月の「オレンジ革命」や2014年2月のマイダン暴力革命)による親米ウクライナ政権の樹立とロシア系ウクライナ人への弾圧であったことを考えると、米欧日諸国側には大義がない。結局は、米欧日諸国側が実質的に敗退するだろう。
ウクライナ事変で国際情勢は大転換期に
米欧日諸国側のウクライナ事変についての報道は、米国を中心とするディープ・ステート(DS)がコントロールしているから、解説・論説記事はディープ・ステート(DS)のプロパガンダになっている。
ただし、世界的な情報戦になっているけれども、米欧日諸国側、非米欧日諸国側の公式発表については世界各国のマス・メディアは正確に伝える必要がある。そして、一定の範囲内ではあるが、信用できる内容もあると思われる。そうした公式発表の報道を読む限りでは、ウクライナ事変は、NATO諸国側がウクライナに軍事支援を行っていることで実質的には既に米欧日諸国側(NATO加盟諸国側)と非米欧日諸国側(非NATO加盟諸国側)との世界的で本格的な軍事・外交・経済覇権闘争に転換したようだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220422/k10013591891000.html、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220422/k10013593641000.html)。
アメリカを訪れているウクライナのシュミハリ首相は21日、アメリカのオースティン国防長官と国防総省で会談しました。会談の冒頭、オースティン国防長官は、バイデン政権としてウクライナへの追加の軍事支援(少なくとも20億ドル。人道的支援も含めれば総額150億ドル)を行うことを決めたと伝えたうえで、「新たな支援はロシア軍がウクライナ東部で展開している見境のない攻撃に対抗するためのものだ。ウクライナの自衛に対するわれわれの支援は揺るがない」と強調しました。
これに対してシュミハリ首相は、アメリカによる軍事支援に謝意を示したうえで「この戦いを早く終わらせるにはより強力で近代的な兵器が必要だ」と述べました。
アメリカ国防総省のカービー報道官は21日、記者会見で、来週26日にドイツにあるアメリカ空軍の基地で、NATO=北大西洋条約機構の加盟国など(対米隷属国の日本は陰に陽にNATOを支援している。日本の岸田文雄政権は監視用のドローンをウクライナに提供すると言っているが、監視用でもウクライナの軍事力強化に役立つし、攻撃用ドローンに仕立て上げることも容易で、安保法制による米国への支援容認を対米従属のすべての諸国に拡大する暴挙と言わざるを得ない)関係国が、ウクライナへの軍事支援などを協議する会合を開くと発表しました。会合はオースティン国防長官が主催し、ロシア軍が攻撃を強める東部地域の戦況やウクライナへの安定した軍事支援の取り組みのほか、長期的なウクライナの防衛強化についても議論するということです。
本サイトではウクライナ事変での早期停戦のための交渉の土台として、2015年2月に締結されたミンスク合意Ⅱを活用するべきことを主張してきたが、米国の傀儡政権であるゼレンスキー政権がNATO側に高性能の軍事兵器の供与を求め、NATO側もこれに応じ始めていることから、ウクライナ国民(市民)が被っている被害を拡大させないための早期停戦交渉はもう暗礁に乗り上げ、ロシア・ウクライナ間の戦闘の激化によるウクライナ事変の泥沼化が進んでいると思われる。
さて、米欧日諸国陣営と非欧米諸国陣営との世界的な対立・構想の行方だが、国際情勢に対する鋭い分析・解説で知られ、日本での「政策連合」のブレーンとして活躍されておられる植草一秀氏はメールマガジン第3204号「力による現状変更がネオコン代名詞」で次のように述べておられる。
3月2日の国連総会緊急特別会合における「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議」採択で、賛成した国は193ヵ国中の141ヵ国だった。他方、反対5ヵ国、棄権35ヵ国、意思表示なし12ヵ国だった。メディアは圧倒的多数で非難決議が採択されたと伝えたが、賛成した国と賛成しなかった国の人口数ではまったく違う断面が見えてくる。賛成した国の人口合計は32.2億人。賛成しなかった国の人口合計は45.3億人。世界人口に対する賛成国人口比率は41.5%であったのに対し、賛成しなかった国の人口比率が58.5%だった。(注:国連総会決議では加盟国の人口が考慮されておらず、一票当たりの人口格差が紛れもなく存在する)(中略)
4月20日、米国のワシントンでG20(注:G7は世界の政治・外交・経済・軍事システムをコントロールして世界平和を強化するという本来の役割を既に喪失し、非欧米日諸国陣営の代表国を含むG20がその役割を担っている)財務相・中央銀行総裁会議が開催された。米国はロシアを非難し、ロシアに対する経済制裁強化を決定することを目論んだが失敗に終わった。G20参加国のうち、ロシア制裁に賛成している国は10ヵ国(EUを1ヵ国としてカウント)。ロシア制裁に加わっていない国が、ロシアを含めて10ヵ国である。
ロシア経済政策国(注:ロシア経済制裁国の意味と思われる)10ヵ国の人口は8億9630万人。これに対して、ロシア経済制裁不参加国10ヵ国の人口は38億383万人。人口比では経済制裁参加国が19%、経済制裁不参加国が81%である。これから(注:スタグフレーションと国際金融危機に追い込まれて)衰退する欧米が、これから栄える新興国を抑え込もうと懸命になっている。(対米隷属外交を続ける)日本では欧米の主張がすべてになるが、世界の大きな流れは、衰退する欧米と勃興する非欧米という大きな流れのなかにある。
要するに、今後衰退する米欧日諸国陣営が、米国の一国世界覇権体制を維持するためソ連(後継はロシア)とのNATO東方不拡大の約束を反故にして東方拡大を進め、その最終的到着国家であるウクライナに親米傀儡政権を作り、ロシアをウクライナ事変に誘い込むことによって、これから発展が期待される非欧米諸国陣営を抑え込もうとして躍起になっているというのが、今回のウクライナ事変の深層・真相ということだ。
これについては、国際情勢解説ジャーナリストの田中宇(さかい)氏も同様の見方を示している。「米露の国際経済システム間の長い対決になる」(https://tanakanews.com/220415econwar.php)、「米欧との経済対決に負けない中露」(https://tanakanews.com/220417econwar2.php)などがそれだ。
ロシア政府はウクライナでの軍事作戦によって米国の覇権体制を終わらせるのが目標だと宣言している。これと正反対に米国政府はロシアを弱体化するのが米国の目標だと言っている。米国とロシアは直接軍事的に交戦しているわけでなく、ウクライナでの戦闘だけでは米国もロシアも潰れない。相互に相手を潰すと言っている果たし合いの主戦場は軍事でなく、経済制裁やドル利用回避、金資源本位制への移行の成功など、米国側とロシア・非米側、金融側と現物側が、経済政策を使って相互に相手方の国際経済システムを破壊しようとする経済対決である。この手の対決は簡単に終わらず、決着がつくまでには何年、長ければ何十年もかかる。
ロシアがウクライナで戦争を始めたことにより、世界は、ロシアを徹底的に敵視・制裁する米国側と、ロシアと付き合い続ける非米側に二分された。ロシアを敵視したくない国々は米覇権システムに頼れなくなって非米側に入る傾向だ。世界の79億人のうち、米国側は10億人ほどで、残りの70億人近くは非米側に入る。世界を一つの経済システムで統合していた米国覇権は、世界の8分の1だけを統括する小さな体制に成り下がった。
なお、ロシアとウクライナは当初、早期の停戦交渉を進めていたが、4月4日に大問題になった「ブチャ虐殺」と、4月8日に起きた「クラマトルスク駅攻撃」事件を契機にして早期停戦交渉が頓挫した。ブチャ虐殺については次の投稿記事を参考にして頂きたいが、ウクライナのネオ・ナチ軍隊組織の自作自演だろう。田中氏によると、「クラマトルスク駅攻撃」事件もウクライナ側の自作自演である可能性が高い(https://tanakanews.com/220421kramatorsk.htm)。
ミサイルの着弾地であるクラマトルスク駅と、胴体の落下地点である市内の小公園をつないだ線を延長していくと、45キロ先のドブロビリアの近くに、ウクライナ軍で唯一のトーチカUの保有部隊である第19ミサイル旅団の基地がある。ウクライナ軍の第19ミサイル旅団がトーチカUを発射してクラマトルスク駅で子供たちを殺したことはほぼ間違いない。地上軍以外がとても貧弱なウクライナ軍にとってトーチカUは貴重な兵器であり、第19ミサイル旅団は軍や政府の上層部と直結する指揮系統にある。クラマトルスク駅攻撃を命じたのはウクライナ政府の上層部だろう。
次のヤフーニュースの「クラマトルスクで発見された極超音速ミサイルというデマ(https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20220329-00288816)という投稿記事も参考にして下さい。
ウクライナ当局は同国東部クラマトルスクで発見した「不発の短距離極超音速ミサイル」だという写真を公開して、西側メディアはCNNやReutersなどの大手メディアもそのまま報じました。しかしその写真を見た瞬間に、これは絶対に極超音速ミサイルではないと断言できます。「これはトーチカU弾道ミサイルという見慣れた兵器です」(中略)
トーチカは短距離弾道ミサイルとしても小振りで、後期型でも射程120~185kmほどです。最大速度はマッハ3.2程度で、極超音速(マッハ5以上)には到達しません。兵器の分類上、マッハ5以上なら何でも極超音速兵器というわけではありませんが、マッハ5に到達すらしていない兵器は極超音速兵器と呼ぶには無理があります。(なおマッハ5以上の弾道ミサイルも珍しくないが極超音速兵器とイコールではない。)そもそもトーチカは初期型が登場してから50年近く、後期型が登場してから30年も経った少し古い兵器です。旧式と呼んでもよいでしょう。そんな古い時代にはまだ実用化された極超音速兵器はありませんでした。
ウクライナ東部のドンバス地方でのロシア系ウクライナ人の大量虐殺事件に鑑みると、アゾフ大隊などのナオ・ナチ「民営準軍事組織」なら、「ウクライナ国民(市民)」を人間の盾にしたり、攻撃してロシア軍が攻撃したようにみせかけるという非人道的な犯罪を犯すことに抵抗はないと見られる。アゾフ大隊の拠点になっているアゾフ海に面した港湾都市のマウロポリの製鉄所にマウロポリ市民を匿っているというのも常識的に考えておかしい。普通なら民間人の犠牲を防ぐため、ロシア側の提案を含むあらゆる手段を使って、マウロポリ市民はより安全な地帯に退去させて当然のことだ。
なお、「クラマトルスク駅攻撃」事件がウクライナの(恐らくは、ネオ・ナチ軍事組織)が起こしたことの証拠や傍証として田中氏は)、①トーチカUは弾頭の着弾地より少し手前に胴体部分が必ず落下する仕組みになっている。トーチカUで攻撃されたクラマトルスク駅と胴体部分を結んだ延長線上に45キロ先のドブロビリア(Dobropillia、Dobropolye)の近くに、ウクライナ軍で唯一のトーチカUの保有部隊である第19ミサイル旅団の基地がある②落下したそのトーチカUの胴体には、白い手書き文字のロシア語で「子供たちのために」と書かれているが、ロシア軍が発射したという情報戦争を展開するのなら、むしろ「ウクライナ語」で書くのが偽装工作を行ううえで当然のことだと思われる③ロシア軍は既に2019年末にトーチカUを使うのをやめており、より高性能なイスカンデルを短距離弾道ミサイルとして配備していて、今回のウクライナ戦争でトーチカUを使っているのはウクライナ軍だけであるーことを指摘している。
(米国の軍事専門家)スコット・リッター=戦争前のイラクの大量破壊兵器を査察した一人。ただし、査察は十二分に行われることはなくブッシュ・ジュニア政権が原油利権確保のためイラクに侵略、少なくとも10万人のイラク国民が生命を落とした。イラク戦争でのイラク国民の窮状はSNSの時代ではなかったとは言え、西側のマス・メディアは黙殺した=は、ウクライナ軍の第19ミサイル旅団がトーチカUを発射してクラマトルスク駅で子供たちを殺したことはほぼ間違いないと結論づけている。地上軍以外がとても貧弱なウクライナ軍にとってトーチカUは貴重な兵器であり、第19ミサイル旅団は軍や政府の上層部と直結する指揮系統にある。クラマトルスク駅攻撃を命じたのはウクライナ政府の上層部だろうとリッターは言っている。 (Kramatorsk train station attack: The key to finding the perpetrator lies in this overlooked detail)
世界の大きな流れは、衰退する欧米(注:中心はアングロサクソン陣営の米英両国。大陸欧州のドイツ、フランス両大国は対米隷属国。だから、ディープ・ステート(DS)は24日のフランス大統領選挙の決選投票で、陰に陽にマリーヌ・ルペン候補に大圧力を加えている)と勃興する非欧米という大きな流れ(植草氏)だが、最終的には非欧米陣営側が勝利するだろう理由はロシア、中国、中東諸国、イランなど非欧米側が原油や天然ガス、金、IT産業に不可欠な貴金属などコモディティ生産大国であり、また、巨大な人口を擁しており、貧富の格差をなくして内需拡大に力を入れれば、インドに象徴されるように急速な経済発展を実現することが可能だからだ。
そのためには、ドル基軸通貨国際決済システム(ブレトンウッズ2)に代わるコモディティ本位制の国際決済システムを構築する必要があるが、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平主席は水面下で、国際決済システムの新たな構築(ブレトンウッズ3)に向けて動いている公算が大きい。
Googleの検索エンジンも、ディープ・ステート(DS)の指針に向けて改造されていると思われる。だから、真実を伝えるサイトは検索ランキングの上位に示されなくなっている。
ウクライナ事変の深層・真相を理解し、今後の見通しを展望するためには、①欧米日諸国のマス・メディアの報道を鵜呑みにすることから脱却して、(世界諸国、特に日本)の国民一人ひとりが自分で情報を収集し、自分の頭脳で事態を分析できる能力を身につける「エッセンシャル・リセット」(植草氏)が必要である(一般的には国民は日々の生活の糧を得なければならないから、そうした専門家のサイトに目を通すことが現実的と思われる)②差し当たっては、欧米日諸国陣営の資源価格インフレ(コスト・プッシュインフレ)の動向に気をつけながら、国際金融情勢(金価格などコモディティ相場など実物資産価格とともに債券や株式など証券価格の推移)に目を配り、金融・財政政策の監視(QT=Quantitative Tightening、市場から中央銀行が資金を引き揚げること=を正しく行っているか否か、不正QTの影で隠れ、こっそりと大量の中央銀行マネーを市中に流して証券価格を吊り上げる隠れQE=Quantitative Easing=を行っていないかどうかを見極めることーが大切だ。
ただし、サイト管理者(筆者)は何度も指摘しているように、欧米日諸国陣営がディープ・ステート(DS)の手によって破壊されることは全く望んでいない。米国では民主党も共和党もディープ・ステート(DS)の傘下にあるが、共和党のトランプ前大統領はディープ・ステート(DS)に属さない稀有な人物であり、トランプ氏以外にもディープ・ステート(DS)に属さない保守主義者や革新勢力も存在する(https://www.youtube.com/watch?v=cZaG81NUWCs)。こうした勢力と日本の真正野党勢力が協調していく必要がある。ただし、近現代欧米文明で確立された基本的人権(良心・侵攻・思想・言論・結社の自由と生存権)はどのような体制であったとしても、保証・保障されなければならない。