バイデン政権のウクライナでのクラスター爆弾の使用はウクライナ戦争の敗北を意味するー欧米文明は終焉(追記:文明の継承問題)

バイデン政権がウクライナ戦争でウクライナに市民の殺傷能力の強いクラスター爆弾を供与することを表明したが、これはウクライナ戦争での米国を盟主とするNATOの敗北を意味する。

バイデン政権は現地時間の7日、ウクライナにクラスター爆弾を供与することを発表した(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-07-08/RXG8JNT0G1KW01)。

米政府は7日、ウクライナの反転攻勢を支援し減少しつつある弾薬在庫を補充する新たな措置としてクラスター爆弾を供与すると発表した。クラスター爆弾は不発弾が出ることが多く、民間人に重大な危険をもたらすとの懸念がある。バイデン大統領はクラスター爆弾使用に伴うリスクを踏まえると「難しい決断」だったとする一方、ロシアは何カ月にもわたってウクライナに対し大量のクラスター爆弾を使用してきたと述べた。米政府高官によれば、ウクライナ軍は生産を上回るペースで弾薬を使用しており、米国は年内の増産前に供給が尽きないようにする必要がある。

バイデン大統領はCNNに対し、ウクライナは総じてクラスター爆弾による「残忍な攻撃を受け続けている」とした上で、今回の措置について「私は確信するのにしばらく時間を要した」と語った。ウクライナは、このクラスター爆弾はロシア側の塹壕(ざんごう)を標的にする上で役立つと主張している。反転攻勢の開始から約1カ月たったが、これまでのところ大きな成果は上がっていない。米政府高官によれば、ウクライナは戦後に不発弾を除去する方針を表明しており、民間人がいる地域で使用することはない。

ブルームバーグも認めているように、ウクライナのゼレンスキー政権の「反転攻勢」なるものは既に失敗に終わっている。

市民に対する殺傷能力の強いクラスター爆弾は世界で100カ国余りが使用を禁じており(ただし、米国、ウクライナ、ロシアは禁じていない)、日独といった第二次世界大戦での敗戦国で完全に米国に隷属している国は消極的な支持を表明するか、沈黙を守っている(https://news.yahoo.co.jp/articles/5626148d0ec3256d320a51c7f6252496ac15c8f6)。

米国が世界100カ国以上が使用を禁止したクラスター爆弾をウクライナに供与する方針を決めたことについて、英国やスペイン、カナダなど一部の西側同盟国が反対を表明している。

AFP通信によると、英国のリシ・スナク首相は8日(現地時間)、「英国はクラスター爆弾の生産と使用を禁止する『クラスター爆弾禁止条約』(CCM)に加盟している」として、反対の立場を明らかにした。スナク首相は「我々はロシアの不法侵略に対抗してウクライナを支援し続けるが、その役割は重武装戦車と長距離兵器を供与すること」だと述べた。スペインのマルガリータ・ロブレス国防相も「クラスター爆弾のような特定の兵器をウクライナに送ってはならないという『強力な公約』を守る」とし、「ウクライナの適法な防衛には支持を送るが、クラスター爆弾は容認できない」と述べた。カナダ政府は声明を発表し、「クラスター爆弾が長期間爆発せずに地面に埋められ、後で子どもたちに被害を与える潜在的な危険性について特に懸念している」とし、クラスター爆弾の使用に対する反対を表明した。ドイツ政府のシュテフェン・ヘベシュトライト報道官は声明を出し、クラスター爆弾禁止条約の加盟国として、ドイツはクラスター爆弾をウクライナに供与しない方針だが、米国の決定は理解すると述べた。

クラスター爆弾は一つの爆弾の中に多くの小型爆弾の「子弾」が入っているもの。発射後、目標物に到達すれば、爆弾の中にあった多くの子弾が広い地域で爆発し、多くの人命被害をもたらす。特定の軍事目標を狙って打撃するのではなく、無差別殺傷につながるため、非道徳的だという批判を受けている。子弾の多くは不発弾として残り、戦争が終わってからも民間人、特に子どもたちの生命を脅かす。2010年にクラスター爆弾の生産と使用、販売、保管を禁止する国際条約「CCM」が発効した。現在111カ月が加盟しており、12カ国は署名済み。米国やロシア、ウクライナは加盟しておらず、韓国と北朝鮮も軍事的対峙状況を理由に条約への署名を拒否している。

ブルームバーグも認めているように、ウクライナのゼレンスキー政権の「反転攻勢」は失敗している。クラスター爆弾を供与しても、大勢は変わらない。なのに、米国はなぜ、クラスター爆弾を供与するのか。国際情勢解説者の田中宇氏が7月10日に公開した「(米国はウクライナ戦争で)ロシアでなく欧州を潰している」と題する解説記事(https://tanakanews.com/230710europ.htm、無料記事)は次のように解説している。

バイデン政権の米政府は、ウクライナに送る爆弾が払底してきたので、余っているクラスター爆弾M864を(NATOとして)ウクライナに送ることにした。広範囲に飛散し不発弾も多いクラスター爆弾は、民間人を多く殺傷するので禁止条約が作られ、欧州の多くは署名しているが、米国は署名していない。(ロシアとウクライナも未署名)
米国は「ウクライナ軍の対露反攻を加速するため」と称してクラスター弾を送るが、ウクライナ軍の反攻はすでに失敗している。ウクライナ軍がクラスター弾を使っても軍事的な戦況は変わらず、民間人の死者が増えるだけだ。
Ukraine – Biden Again Escalates
US-supplied cluster bombs will not affect Russian military operation – Moscow

米政府やNATOは「露軍はウクライナ攻撃にクラスター弾を使ったことがある。侵略者の露軍が使ったのだから、ウクライナが自衛のためにクラスター弾を使うのは問題ない」と言っている。だが「露軍がクラスター弾を使った」という話は実のところ、2022年4月8日にウクライナ軍がドネツクのクラマトルスク駅をクラスター弾でミサイル攻撃して市民を殺し、それを露軍の仕業だと言い、米国側の政府やマスコミがウクライナ政府のウソを鵜呑みにして露軍がやったと言っている件だ。
当時は米政府も「クラスター弾の使用は戦争犯罪だ。ロシアは戦争犯罪をおかした」と言っていた。戦争犯罪をおかし続けているのは米国の方だ。
濡れ衣をかけられ続けるロシア
Kramatorsk train station attack: The key to finding the perpetrator lies in this overlooked detail

米国とロシアは相互に「偽悪戦略」をやっている。米国は、諜報界が隠れ多極化策として、クラスター爆弾のウクライナ送付や、冒頭で紹介した殺人者エリオット・エイブラムスの外交宣伝顧問役就任など、偽善的で極悪な策を連発している。米国がウクライナ軍にクラスター弾を使わせて、ロシアが使ったと濡れ衣をかけて喧伝するのも極悪な偽善策だった。
ロシアはこれに対し、濡れ衣をかけられても通り一変の否定しかせず、米国から悪の濡れ衣をかけられ放題にしている。これは、すでに述べたように、米国側がロシアを敵視し続けるほど、ロシアなど非米側が強くなって米国側が弱くなるので、プーチンが意図的にやっている偽悪戦略である。前出の「勝ってないことにする」のも偽悪戦略だ。米国とロシアの二重の偽悪戦略によって、世界は多極化している。
プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類

なお、田中氏は「プリコジンの反乱」について、次のように述べておられる。

プーチンは戦勝や終戦を宣言しなかっただけでなく、プリゴジンの不満を利用して反乱の騒動を誘発し、米国側が「ロシアは反乱が起きるほど弱体化している」と間違った喧伝をするように仕向けた。
プーチンとプリゴジンは30年前からの親密な関係だから、プーチンは「勝ってないことにする」自分の世界戦略をプリゴジンに説明して納得してもらうこともできたはずだ。だがプーチンはそれをせず、プリゴジンが不満をつのらせ、ワグネルの軍勢を引き連れてモスクワに進軍してプーチンと直談判してわかってもらおうとする「義挙」を起こすように誘導した。
義挙は反乱とみなされ、米国側はロシアが反乱で自滅するだろうと糠喜びの大騒ぎをした。1日後、プリゴジンは自らの行動がロシアを弱体化させかねないことを悟って叛旗を降ろし、反乱の騒動は終わった。
プリゴジンは「まじ」だった。プーチンは茶番をやった。私の説は、プリゴジンとプーチンの両方による茶番劇だったという「完全茶番説」でなく、まじなプリゴジンをはめて反乱に誘導する茶番劇をプーチンがやったという「半分茶番説」である。プーチンは諜報界の人だ。プリゴジンはそうでない。プリゴジンの反乱開始で目的が達成された後、プーチンは自分の「勝ってないことにする」戦略がプリゴジンの知るところとなるようにして叛旗を降ろさせたのかもしれない。

クラスター爆弾の供与はウクライナのゼレンスキーの「反転攻勢」を支援するための一時的な戦術ではなく、ウクライナ戦争を長期化し、米側陣営を自滅させ、世界を多極化するための米国ディープ・ステート(DS)の戦略的手段であり、ロシアのプーチン大統領もこのことを周知している。

田中氏によると(https://tanakanews.com/230702brics.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=)、BRICSを中心とした非米側陣営では、中露印ブラジル南アで構成するBRICSが8月に開く年次定例サミットで、米ドルに替わる非米側の基軸通貨としてBRICS共通通貨(注:ケインズがブレトンウッズ会議(第二次世界大戦の連合国44カ国が米国ニューハンプシャーのブレトンウッズで開いた戦後の国際通貨体制を決めるための国際会議)で提唱した金本位制の国際新通貨=バンコール=が源流になっているSDR=特別引出権:国際通貨基金 が加盟国の準備資産を補完する手段として、1969年に創設した国際準備資産、及びその単位=を参考にしている)の創設を決めそうだが、その共通通貨は「(注:国家が管理する)中銀デジタル通貨(CBDC)」になりそうだという。

原油生産大国のサウジアラビアが人民元での原油の取引を決定したことから、サイト管理者(筆者)の考えでは、当然BRICS共通通貨での取引も認められることになると思われる。「ペトロ・ダラー」体制でかろうじて「基軸通貨」の地位を保っているドルは、完全にその地位を失っていくだろう。欧米文明はたそがれの時代に突入する。

クラスター爆弾を供与してでも、ウクライナ戦争を長期化させながら、米国DSと中露を中心に世界の多極化を目指す動き=欧米文明の超克=は一段と強まっているようだ。ただし、基本的人権の尊重や博愛精神の流布など欧米文明が見出した普遍的価値観は継承されなければならない。世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会:略称統一教会)はその使命を担わなくてはならない。


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