
このところ、欧州北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国陣営(日本と韓国はパートナー国、かつては米側陣営と言われていた)のオールドメディア(米国のテレビや新聞含む)から、かつての米側陣営から事実上抜け出しているトランプ大統領とプーチン大統領の友好関係が破綻し、トランプ政権がロシアに対してパトリオットなどの防空システムの供与や防空ミサイルの共同開発開発のほか新たな制裁を行うといった報道が洪水のように流れている。しかし、トランプ大統領はウクライナを本格支援するつもりはなく、ウクライナ戦争を長引かせてキエフなどウクライナの主要都市に大規模ミサイル攻撃や軍事ドローン攻撃を行っているロシアを側面支援するとともに、政治・経済・軍事の分野での未来志向の新たな米露関係の構築を本格的に進めるつもりであることを承知しておくべきだ。
ウクライナを支援すると見せかけてロシアを側面支援するトランプ大統領
トランプ大統領とプーチン大統領は7月13日、新たな電話会談を行った。この電話会談は1時間ほど続いたが、主要議題はウクライナ情勢ではなく、イランの核問題を解決して同国を国際社会に復帰する道の検討と、バイデン政権時代に破綻した米露関係の修復と文化(宗教を含む)・政治・経済・軍事面での未来志向の米露関係の構築だ。オールドメディアはウクライナ情勢の協議が会談の中心だったかのように報じているが、国際情勢アナリストの及川幸久氏がYoutubeのThe Coreチャンネルで語ったところによると(https://www.youtube.com/watch?v=7eZ19kYoFB0)、ウクライナ情勢の協議は会談の片隅に追いやられている。

オールドメディアの報道をいくつか紹介しておきたい。まずは、欧米メディアの翻訳作業に勤しむNHKは、13日の電話会談について次のように報道している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250704/k10014854171000.html)。
アメリカのトランプ大統領は、ロシアのプーチン大統領と3日に行った電話会談について、「非常に失望している。プーチン大統領は停戦するつもりはなく、大変残念だ」と述べました。一方、トランプ政権がウクライナへの一部の武器の輸送を停止する中、ウクライナでは3日夜から4日にかけてロシア軍による首都キーウなどへの最大規模の攻撃がありました。アメリカのトランプ大統領は4日、ロシアのプーチン大統領と3日に行った電話会談について、記者団に対し「非常に失望している。彼は停戦するつもりはなく大変残念だ」と述べました。トランプ大統領は、4日に、ウクライナのゼレンスキー大統領とも電話会談するということです。
また、英国のBBCは、「ウクライナで過去最大規模の攻撃 トランプ氏はプーチン氏を批判」と題して、次のように報道している。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9日、ロシアによる過去最大規模の空爆がウクライナ全土を襲ったと発表した。ドローン(無人機)728機と巡航ミサイルまたは弾道ミサイル13発による、複数の波状攻撃を受けたという。ゼレンスキー大統領は、「深刻な攻撃」を非難。「停戦や和平実現に向けて多大な努力が続けられている中で、ロシアだけがそれらを拒み続けている」と述べた。8日夜から9日朝にかけての攻撃は、アメリカのドナルド・トランプ大統領がウクライナへの武器供与を再開すると発表した直後に発生した。米メディアによると、先週発表された武器供与の一時停止について、トランプ氏は事前に知らされていなかったとされる。
さらに、米国のCNNは、「【分析】ウクライナへの大規模攻撃はトランプ氏の批判に対するプーチン氏の反撃なのか」と題する次のような分析記事を伝えた(https://www.cnn.co.jp/world/35235367.html)
(CNN) 米国のトランプ大統領の発言と、ロシアのプーチン大統領による行動との間には直接的な関係があるのだろうか?なるほど、前者の辛辣(しんらつ)な物言いと、ここ数日のウクライナにおける過酷な暴力とを念頭に置けば、答えは関係ありということになりそうだ。最初は、トランプ氏が自身の不満のはけ口をプーチン氏の責任の欠如に向けた。ウクライナとの和平協議について、プーチン氏は真剣に取り組んでいないという認識だ。トランプ氏は8日の閣議で怒りをぶちまけ、「真実を知りたいと思っても、プーチン氏が投げてよこすのはでたらめばかり」「彼は常々大変な好人物だが、そんなことも無意味になってしまう」と嘆いた。
そのまさに翌日、まるでこの発言に激怒したかのように、ロシアは侵攻開始以降で最大規模となるドローン(無人機)攻撃をウクライナに仕掛けた。728機のドローンと13発のミサイルが複数回にわたる波状攻撃によって各都市に撃ち込まれた。ウクライナのゼレンスキー大統領はこれを「示唆的な攻撃」と非難。和平の取り組みを拒絶するタイミングで実施されたと主張した。
CNNはさらに、次のようにも伝えている(https://www.cnn.co.jp/usa/35235300.html)。
(CNN) トランプ米大統領が献金者の集う非公開の場で、ウクライナを攻撃すれば報復として「モスクワを徹底的に爆撃する」と脅して、ロシアのプーチン大統領に攻撃を思いとどまらせようとしたとの発言をしていたことが分かった。CNNに提供された音声で明らかになった。この音声によると、トランプ氏は2024年の資金集め集会で、「プーチン氏に対して私はこう言った。『もしウクライナに入ったら、モスクワを徹底的に爆撃する。言っておくが、他に選択肢はない』と」「すると、(プーチン氏は)『あなたの言葉を信じていない』という趣旨のことを言ったが、10%は信じていた」と発言した。
ただし、このトランプ大統領によるモスクワ爆撃の説話は時期が不明で、そして音声は流れるが、発言の正体は不明だ。そして、ブルームバーグは、「トランプ氏、14日にロシア巡り「重要な声明」発表-制裁も検討」と題する憶測記事を報道した(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-07-11/SZ7P1UDWX2PS00)。
トランプ米大統領は、ロシアを巡り「重要な声明」を発表する考えを示した。米国は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国による費用負担を通じ、ウクライナにさらなる武器を送る準備を進めている。NBCニュースとの電話インタビューで「14日にロシアについて重要な声明を出すつもりだ」と語った。トランプ氏はまた、ロシアによるウクライナへの攻撃が続いていることを巡り、プーチン大統領を改めて批判。トランプ氏の盟友であるグラム上院議員(サウスカロライナ州)が支持する対ロ制裁強化法案について上院で可決されるとの見通しを示した。その上で「非常に重大で非常に厳しい制裁法案を可決するだろうが、それを発動するかどうかは大統領に委ねられている」と述べた。
欧州のNATO加盟諸国が費用を負担するのだろうが、欧州NATO加盟諸国にそのような経済余力があるか疑わしい。また、対露制裁法案が可決されても、最終的な発動はトランプ大統領の意思に委ねられている。本当に米露が本格的な戦争するのかといえば、トランプ大統領とプーチン大統領はなんども電話会談を行っており、国際情勢のさまざまな問題を協議している。一方、4日に行われたゼレンスキー氏との会談では、「高価なパトリオット・システム」の売却や「防空ミサイルの共同生産」など、ウクライナの「防空システム」の強化に協力するとトランプ大統領が発言したと伝えられている(https://www.youtube.com/watch?v=sziI7DBf5EU)。
こうしたトランプ大統領の「プーチン大統領批判」「対露制裁」について、及川氏は「西側メディアの報道の通り、トランプ-プーチン友好関係は破綻か?」と題する動画(https://www.youtube.com/watch?v=7eZ19kYoFB0)で次のように反論している。第一に、パトリオット・システムは非常に高価であり、ウクライナのキエフ政権には将来にわたって、支払い余力はない。トランプ政権としても、米国経済の現状に鑑み(米東部時間8月1日からいよいよ、関税戦争にいよいよ突入するし、米下院も財政赤字を急拡大させるトランプ減税法の延長法案を可決させた)、無償の軍事支援は不可能だ。
また、ロシアには極超音速ミサイル「アレーシュニク(オレーシュニク)」ほどではないが、パトリオット・システムを破壊できる超音速ミサイルは保有している。ウクライナはロシアに制空権を握られており、どんなに努力しても防空システムの再構築による制空権の奪回などは不可能だ。だから、ロシアは超音速ミサイルを含む多数のミサイルと無人攻撃機の軍事ドローンを使って、キエフなどウクライナの主要都市、主要州を大規模攻撃している。それに、防空ミサイルの共同生産については、実現するにしても、実際に実現するのは何年もあとのことだ。ウクライナが効果的な防空システムを再構築を必要としているのは今この時であり、このことを考慮すると防空ミサイルを再構築するのはもはや不可能だ。
ところで、3日のトランプ・プーチン両大統領の会談の主な目的は、第一に、イランに影響力を持っているロシアと協力し、ウラン濃縮を原子力発電など核分裂反応の平和利用に限ることで、イランを国際社会に復帰させるとともに、アブラハム合意を完成させて、イスラエルとサウジアラビア、イラン、トルコなど中東諸国が自らの手で中東諸国の関係改善と和平を確立させることだ(文明の多極化)。実際、共同通信によると、シーア派の盟主であるイランのアラグチ外相は7日、スンニ派の盟主であるサウジアラビアを訪問している(https://www.chunichi.co.jp/article/1096516?rct=world)。さまざまな訪問目的が飛び交っているが、米露の支援の下に、近い将来、新たな中東世界を構築することにあるのだろう。
会談の第二の目的は、米露の関係改善と未来志向の文化・政治・経済・軍事面での協力だろう。西シベリアの豊富な天然資源の共同開発や、ベーリング海峡プロジェクトもある。及川氏によると、プーチン大統領の側近の一人であるウシャコフ大統領補佐官(https://x.gd/IhtN9)の説明では、米露はエネルギーと宇宙分野を含む数多くのプロジェクトの実現について、米露首脳は非常に前向きに取り組んでいるとのことだ。
第三に、ウクライナ戦争について、トランプ大統領はプーチン大統領が戦争終結しか念頭になく、そのためには、①ロシアに「特別軍事作戦」を引き起こさせた原因の(ネオ・ナチ勢力傘下のキエフ政権によるロシア系ウクライナ住民の大弾圧)除去②ウクライナ戦争の現状を踏まえたうえでのウクライナの領土の分割③ウクライナでの攻勢な選挙の実施ーなどが必要であることは熟知していると思われる。欧州側陣営のオールド・メディアはトランプ大統領の片言隻句しか報道せず、また、ウクライナ戦争の真の原因についても諸国民に知らせないから、一貫性を欠く報道になる。海千山千のトランプ発言の真意を正しく報道すべきだ。
そして、会談のひとつの目的として競技されたウクライナ情勢については、バイデン前政権下でウクライナに軍事支援を行った安全担当補佐官のジェイク・サリバン氏(https://x.gd/TwA9g)が、トランプ大統領のウクライナ政策について、次のように発言していると言う。
サイト管理者(筆者)としては、トランプ大統領は、ウクライナ戦争をロシアに優位な状態にさせ、キエフ政権の政権転覆を狙っているような気もする。今のキエフ政権が、戦士した兵士への遺族に対する5000万円相当の死亡補償ほ行わないなど、ウクライナ国民の幸せにつながっていないことは明らかだ。ウクライナでキエフ政権に対立する勢力が台頭しつつあることについては、ロシア在住28年の日本人実業家で、ロシアから見た国際情勢アナリストのニキータ氏が、Youtube「ニキータ伝〜ロシアの手ほどき」(https://www.youtube.com/watch?v=NyXGcIbEI3M)で、世界最大の投資会社・ブラックロック社(https://x.gd/8n8Wq)の「ウクライナ復興唐基金」からの徹底を交えて紹介している。