実際、安倍首相の冒頭発言とは異なり、勤労者の実質賃金は15カ月連続でダウンし続けている。安倍政権になってから、健康保険・年金など社会保障がなく、雇用も長期的に安定せず、いわんや給与・賃金水準も低い非正規雇用が100万人増えただけで、正社員は25万人減っている。これに、「成長戦略」として「ホワイトカラーエグゼンプション」が導入することで、全勤労者の非正規化を目論んでいる。

また、内需振興こそが必要なのに、超円安のために、超金融緩和・超円安倒産が多発している。トドメを刺した「アベノミクス」の柱が、今年4月からの消費税率の2%引き上げである。消費税の増税で景気は腰折れ、大不況に突入した。その一方で、消費税増税による庶民からの収奪は、輸出大企業の法人税減税の財源になっている。もっとも、超円安・ドル高で輸出額が水膨れしただけで、輸出数量は増えていない。

安倍首相が最も無知をさらけ出したのは、「今、「アベノミクスに対して、失敗した、うまくいっていない」というご批判があります。しかし、では、どうすれば良いのか。具体的なアイディアは、残念ながら、私は一度も聞いたことがありません」という発言だ。実は、アベノミクスに対峙する政策として、新自由主義の理論的背景になっている新古典派経済学を徹底的に批判され、文化功労賞、文化勲章を受賞された宇沢弘文東大名誉教授(残念ながら、さる9月18日に永眠された)の諸論考を継承されながら、正当ケインズ主義を現代の日本経済に対して創造的に発展させ、日本の経済社会再建の方策を提示された日本金融剤線研究所の菊池英博所長の「日本経済再建の方策」がある。菊池氏は、一般の企業経営者、国民はもとより、国会の予算委員会公聴会など各種の公聴会で国会議員に対して、新自由主義が実のところ、略奪主義であることを正しく指摘された上で、日本の経済社会再建の方策を提示しておられる。そもそも、「デフレからの脱却」という言葉は、菊池理論からこっそり拝借したものである。安倍首相の発言は、「自分を批判するものは、存在を許さない」ということを意味する。

根本的なところでは、安倍首相率いる自公勢力が消費税増税に際して、国民の審判を仰いだわけではない。2012年の総選挙、2013年の参院選挙はダマスゴミを使って、国民の目をそらせたのであり、国民が消費税増税を支持したというわけではない。一般庶民を柱とする国民が消費税増税を待望してのではないのである。前回の総選挙で自公が大勝したのは、民主党連合赤軍派が公約違反を重ね、米官業の支配体制を崩すことができないうえ、福島原発の処理を誤ったことで国民を裏切り、大損害を与えたこと、そして、これに国民が激怒したという民主党のオウンゴールによるものである。また、消費税再増税の延期程度なら解散・総選挙などしなくても、閣議決定さえすれば良いことである。

アベノミクス(アベクロノミクス)というのは、実質的には米国、英国の経済を破壊した新自由主義=新自由放任主義=弱肉強食主義=掠奪主義に他ならない。そして、ここでさらに重要なのは、安倍首相が記者会見で「集団的自衛権の行使容認、環太平洋経済連携協定(TPP)推進、原発再稼働、労働者派遣法の改正(改悪)、秘密保護法(による言論弾圧)」など対米隷属の反動政策を行うことをはっきりと公約に盛り込むと述べたことである。

つまり、自公が過半数を確保すれば、安倍政権はこれらの政策に対して「国民の信認を得た」として、「親米保守主義=対米隷属保守反動政策」を大威張りで展開することになるのである。しかし、亀井静香衆院議員が嘆いているように、「国民は生体反応を失っている」から政治に興味を失い、低投票率になる可能性が大きい。その結果、組織票を持つ自公が過半数を確保する可能性は大きい。また、総選挙の行われる前に第3四半期の国内総生産(GDP)の第二次改定値が発表され、財務省が法人企業統計をいじって設備投資を嵩上げするから、マイナス成長がプラス成長になるだろう。これで、「アベノミクスが成功している証拠」とデマスゴミが宣伝するだろうから、国民はまたしても騙される。これが、総選挙での自公の追い風になろう。その結果として、日本の経済社会は奈落の底に突き落とされる。

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ただし、米国のドルを決済通貨とし、同国がいくらでも借金を重ね、また踏み倒すことを可能にしたブレトンウッズ体制は今や、崩壊を始めている。中国、ロシアなど対米債権振興諸国がのし上がって、ブレトンウッズ体制にトドメを刺す。日本は米国の植民地としてブレトンウッズ体制にしがみついても、未来はない。国民がアベノミクス=新自由主義で奈落の底に落とされたことを実感するとともに、対米隷属のブレトンウッズ体制がもはや時代に合わなくなっていることに国民が目覚めた時、奈落の底から「東アジア共同体の構築」という新時代の希望が湧いてこよう。

※参考までに11月17日の小沢一郎・生活の党代表の記者会見を引用させていただく(岩手県での選挙については省略させていただきした)。

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★現在の経済状況と解散について
Q. 今日、7月-9月期のGDP速報値が発表され、年率-1.6%と2期連続のマイナスということになった。この経済状況についてどう思われるかということと、これに関連して、安倍総理は明日にも消費増税見送りとともに解散の意向を表明すると言われているが、この解散についてどう受け止められるかの2点をお聞かせいただきたい。(NHK)
A. アベノミクスという言葉で、国民皆さんに期待を抱かせたけれども、実際の政策は、中身は何もなかった。
現実に行ったことは、日銀が際限なく国債、そして今度は民間の債権まで買い入れるということで、お金をじゃぶじゃぶ印刷することになっているわけだが、その結果は株価が上がった、しかし為替がどんどん安くなって、今日はもう16円何十銭か、もっともっと安くなるであろう。

株のことについては特定の人達の損得という面があるけれども、為替の場合は、輸入に頼っている日本の経済においては、食料品をはじめとして原材料がどんどん高くなるという結果をもたらすだけになっている。石油価格も市場最安値を付けたと言われているけれども、為替が安くなっているからその恩恵も国民には何もないというこであり、結局はアベノミクスはそういう株高と円安、そして円安が輸出を中心とした大企業の空前の利益と言う結果をもたらしただけで、国民所得はまったく増えていない、むしろ減っているという結果になっている。GDPの6割超は個人消費だから、物価が上がり、所得が減って個人の財布が苦しくなれば、消費を手控えるというのは当たり前のことであり、その結果がその速報値に表れているのではないかと思う。

その他に税の問題もあれば、あるいは社会保障関係経費の問題もあれば、いろいろ国民の負担を重くするだけのことであって、アベノミクスというのは失敗というよりも最初から何もなかったという結果が今日だと思う。その自らの政策の無さというのか、あるいは早くその実態を隠すために総選挙を断行するということしか、その理由は見当たらない。

多分、7-9、10-12月、そして年明け来年に向けて、もっと経済は厳しく、すなわち国民生活は厳しくなる一方だと思う。こんな時に安倍総理の保身の為の解散でしかないわけだから、お遊びに700億円の国民の税金を使うというのは、全くもって国民をないがしろにした、ふざけた解散騒動だと思う。

★沖縄県知事選挙、翁長氏当選について
Q.昨日、沖縄県知事選挙の投開票があり、翁長雄志さんが当選された。これについての受け止めをお願いしたい。(IWJ)

A.私どもは、翁長氏を全面的に応援しようということで、地元の玉城議員をはじめ、それぞれが少しでもという勝手連的な応援をしてきた。その結果が大きな10万票の差を持っての勝利。那覇市長選挙はほぼダブルスコア。また、今日玉城君から聞いたが、名護市と那覇市の県議会議員補欠選挙、これも勝利したということであり、これはまさに沖縄の県民皆さんの本音の心情を選挙を通じて吐露したものだと思う。

従って、新しい知事は明確にこれまでの様な基地の存在は必要ない、むしろ沖縄の生活のレベルアップには障害になるとはっきり演説していたけれども、そういう形で県政を進めていくのだろうと思う。だからもちろん、普天間と辺野古の新しい基地への移転ということについては、反対、撤回ということになるだろうから、事実上不可能だと私は思う。アメリカも県民の意向を無視して、がむしゃらにやるという意思はないと、これは国務省かどこかの報道官も話している通りで、政治的な立場で言えば当然な話だろうと思う。

★野党の連携、選挙協力について
Q.野党間の選挙協力の進捗状況について、先ほど日本共産党書記局長の記者会見では、沖縄においては今回の県知事選の枠組みを重視したいということで、生活の党、社民党を含めて選挙協力をすることもやぶさかではないとおっしゃっていたが、生活の党としては沖縄では玉城デニーさんがお出になるだろうが、社民党やあるいは共産党との連携もあり得るのか。(フランス10)

A.野党が協力して統一戦線を組んで候補者を出さなくては選挙戦に勝つことは出来ない。また逆に、統一して戦線を組んで戦えば必ず勝てる。これは、私がずっと前から言っていたことであり、解散という風が吹いて、各党も本気にそれを考えて、現在進行中であろうと思う。時間はもう無くなってしまったけれども、やろうと思えばそんなに時間をかけないでも出来ることなので、全野党結集という訳にはいかないだろうけれども、是非、大方の人たちが力を合わせて選挙戦に臨める、そういう形になるように願っているし、私どももそういうことに協力したいと思う。

それから、沖縄だが、別に社共と連携するという話ではなく、玉城君も我々も、翁長氏が政党推薦とか政党のどうのというのはしないということであったので、さっきも言ったように、ボランティア的な、勝手連的な応援をしたということである。それで、他の2区、3区は野党が取っているが、1区も4区もいい候補者があれば私どもとしては、別に生活の党でなくてももちろんいいけれども、野党として出していけば十分勝てると思う。

Q.野党の連携の話だが、具体的に生活の党としては、野党の連携というのはどういう風に考えてどう動いていくのか。後もう一つは、小沢代表自身が具体的に他党党首と会ったり、そういう形で何か、既にやられているのか、今後やられるのか。その辺りを教えていただきたい。(日刊ゲンダイ)
A.野党の統一戦線というか、選挙協力。これは、社民、共産も同じグループにという訳には多分いかないだろうから、そうするとその他の野党でやるということになると思う。全野党が一緒になって新党を作り選挙戦に臨むということであれば、それがベストだけれども、必ずしもそうはいかなくても、ほぼ大勢の人たちが新しいグループを作ってやるということになれば、国民の皆さんも自公に変わる一つの受け皿としての認識を持つことができるのではないだろうかと思うので、国民皆さんがそう思ってくれるような塊、受け皿を作っていくということだろうと思う。

私が直接何かするといろいろとあるので、私自身は直接はやらないけれども、うちの他の人たちは、仲間を通じてそういう目標に向かって協力して、努力しているものと思う。

Q.一つの受け皿になれば、国民が自民党に代わるものであるという認識を持つということだが、その新しいグループというのは新党の様な形なのか、それともどういうイメージがあるのか。(日刊ゲンダイ)
A.統一名簿とか、いろんなことを言うけれども、新党にしなければ意味が半減してしまう。というのは、180の比例議席があるから、これを今のままの社民、共産も合わせれば7つの党か、それで分けるということになると、これはドントだから、圧倒的に自民党が有利になって、比例議席はこの前の選挙より更に自民党は増えるだろうと思う。維新や民主が今のままでは、この前のように取れないということになりかねない。

だからそういう意味で、新党でやらないと完全な戦線統一にはならない。そしてまた、国民も一つの政党というイメージでないと、なかなか受け皿とはみなさないと思うので、当然、統一名簿という言葉を使っている人も含めて、新しい政党を作って選挙に臨むということだろうと思う。

★新党結成について
Q.新党について伺いたい。先ほど小沢代表もあまりにも解散までに時間がないとおっしゃったと思うけれども、それが間に合うのかというのがまず第一点と、先週の金曜日くらいに噂で終わってしまったのだが、前原氏が橋下氏たちと組むのではないかという噂があった。それが、今小沢代表がおっしゃったような新党への布石として、いろいろ水面下で動かれていることと解釈していいか。(フライデー)

A.新党を作るには、時間がないのでドタバタにはなるけれども、その気になればそんなに難しいことではない。それぞれ参加したい人がそれに入って、選挙の時に届け出ればいい話だから、もちろん候補者と選挙区の調整や、実務的には大変だけれども、新党を構成するということ自体はそんなに長時間は要しない、決断一つだと思う。

それから、前原さんと橋下さんのことは、私は分からないけれども、新党という形だと、既存の党がどうのこうのというのではない。党全体が新党へという意味での「党」というのはあるけれども、新しい党の党員に政党がなる訳ではない。皆個人が党員になる訳だから。だから、そのグループに影響力のある人の意向というのは非常に大きいけれども、党として参加する、しないという問題ではないので、それぞれの議員が、あるいは候補者が自分の判断で参加するということで十分だと思う。

Q.新党については代表がお考えになっているのはやはり、常におっしゃっている民主党を中心としたグループという理解でよいか。(岩手日報)
A. 民主党がもう少し新党について自己抑制的でありながら積極的な努力をすれば、もっと早く出来上がったであろうと思う。試験勉強にも一夜漬けというのがあるけれども、日本人というのはなかなかその場にならないと皆本気にならないから、だから仕方ないだろうけれども。それは、私がずっと言うように、民主が積極的に自分を捨ててでも、野党再編を成し遂げ、政権を変えるという見識と意欲と行動を持っていただく事が一番いいと思ってしゃべってきたことは変わらないが、もう時間がないから、とにかく速やかにそれを実現させることが第一だろうと思う。

Q.小沢代表は新党を作るべきだと繰り返しているが、小沢代表ご自身も新党が出来た場合はそこから出馬されたいというご意向でよろしいか。(産経新聞)
A.私自身は、あまりどうこうと自分のことは考えていない。もちろん野党の議員の一人として、もう少し皆と一緒にやりたいとは思っているけれども、私自身よりも、そのグルーピングが出来ることを願っている。

 

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