環太平洋連携協定(TPP)について東京新聞が2月2日でスクープ記事を投稿した。まずは、記事を紹介させていただく。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201602/CK2016020202000136.html

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交渉参加国による署名式を四日に控える環太平洋連携協定(TPP)をめぐり、国を相手に違憲訴訟中の弁護士らが協定案の英文を分析し、すべての農産品の関税が長期的に撤廃される恐れがあるとの結果をまとめた。他の経済協定にある関税撤廃の除外規定が、聖域と位置付けたコメなどの「重要五項目」も含め、ないことを指摘。聖域確保に関する条文上の担保がなく、将来的に「関税撤廃に進んでいく」と懸念している。

分析したのは「TPP交渉差し止め・違憲訴訟の会」の幹事長を務める弁護士の山田正彦元農相、内田聖子・アジア太平洋資料センター事務局長、東山寛北海道大准教授ら十人余りのチーム。

協定案の本文では農産品の関税に関し、参加国に別段の定めがある場合を除き「自国の表に従って、漸進的に関税を撤廃する」(第二・四条の二項)と明記している。日豪の経済連携協定(EPA)など他の経済協定では、同様の条文で「撤廃または引き下げ」と表現する。TPPは規定上は引き下げの選択肢を除いている。それでも関税が維持された日本のコメや牛肉などの重要五項目の扱いは、付属文書の記載が根拠になっている。

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だが付属文書でも、TPPと日豪EPAなどの経済協定には違いがある。日豪EPAなどには「除外規定」が設けられ、コメは関税撤廃の対象外。TPPには除外規定はなく、逆に発効七年後に米、豪などの求めがあれば、日本のすべての関税に関し再協議する規定がある。

外務省も協定案に関税の除外規定がないことを認める。一方で「関税引き下げにとどまっている品目は事実上、除外を勝ち取ったと解釈している。再協議でも撤廃が義務付けられているわけではない」(経済連携課)と強調する。

分析チームは、協定案の条文から重要五項目も再協議で撤廃を前提に協議され、「長期的に関税が撤廃されていく仕組みになっている」と指摘している。

◆関税維持 猶予7年間
 <解説> 違憲訴訟に取り組む弁護士らのチームが行った今回の分析で、ニュージーランドでの署名式を控えるTPP協定案は「聖域なき関税撤廃」の基本原則が、明確に貫かれていることが浮き彫りになった。安倍晋三首相は一月に国会で行った施政方針演説で、TPPに関し「重要品目は関税撤廃の例外を確保した」と明言した。
確かにコメなどは今回の関税撤廃の対象から外れた。二国間交渉の結果、関税の撤廃でなく、引き下げなどが付属文書で認められたためだ。だが、これは重要品目が関税撤廃の例外として担保されたことを意味するのではないことが、今回の分析で示された。協定案には、本文にも付属文書にも関税撤廃の「除外規定」を認める文言はない。

関税撤廃率は他の十一カ国が99%か100%なのに、日本は95%と突出して低い。それでも重要五項目の三割は既に関税撤廃に追い込まれ、残りも七年後に再協議が待つ。協定締結後も各国の圧力は強まるとみられる。関税を維持したのは「七年間の猶予」を得ただけ、との見方もできる。 (金杉貴雄)
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ただし、TPPの最大の問題点はやはり、投資家対国家紛争処理条項(ISD=Investor State Dispute Settlement=)である。これは要するに、「米国の投資家(企業、個人)が日本で不当な扱いを受け、当初期待した利益が上がらなかったと判断すれば、日本政府を訴えて、当初見込まれた利益を賠償させることが出来る」という条項。

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紛争の処理機関は、米国人が総裁になる世界銀行内の投資紛争解決国際センター(ICSID)で、米国の投資家に有利な「調停策」が決定される。国際条約は法律の上位に立つから、米国の投資家に取って不利になる日本の福祉制度(国民会保険=健康保険、公的年金制度など=)がTPP違反となり、制度の「改革=廃止」を求められることになる。要するに、日本の法律がISD条項によって、米国が決定的に日本の主権を米国がもぎとることになる。

自公政権はTPPの批准を今国会で強行しようとしているが、仮に野党がだらしなくてこれを阻止できなければ、日本の経済社会は「地獄行き、途中下車無効のバス」に乗ることになる(亀井静香衆院議員)。

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