本年初の大型選挙である京都市長選挙の投開票が目前に迫ってきた。野党のふりをした守旧派の隠れ自公勢力と確かな野党との戦いであり、その勝敗、投票率、得票率が今年の衆院解散・総選挙に大きな影響を与える。

選挙管理委員会が発表した期日前投票者数・不在者投票者数の累計は1月31日の段階で、有権者の9%に相当する累計11万7,681票と前回比132.45%増だ。即断はできないが、選挙に関して市民の関心は高まっていると思われる。勝敗の行方は、投票率である。投票率が高ければ高いほど、日本共産党と令和新選組の推薦する福山和人候補が有利になる。立憲民主と国民民主は自公の推薦する門川大作候補を押しているが、国政で自公を「批判」しながら、政令指定都市である京都市で自公の推薦する門川候補を推薦するのでは、支持者の理解を得られない。実際、立憲の支持層のうち、かなりの割合の支持者が福山候補に流れているとの報道もある。

京都新聞はもちろん、全国紙、共同・時事二大通信社、NHKが期日前投票の出口調査を行っているだろうが、これまでの累計投票者からすれば傾向はかなり鮮明になっているはずだ。「京都市長選情勢」との名の下、マスコミが流す「門川先行、追う福山」とは異なった情勢が展開している可能性も強い。

その証拠に、門川候補の選対本部が26日の地元京都新聞に1面を使って掲載した福山候補、福山候補と日本共産党を事実上誹謗する大広告である。

選挙というものは、公約またはマニフェストを掲げて、政策での論争を行うものだ。にもかかわらず、京都市民が持つ「共産主義」に対する負の感情を利用してレッテル張りで福山候補を批判するのは、間違っている。これは、門川陣営が相当焦っていることを示すものだ。

いわゆる共産主義がその前段階としている社会主義は、共産主義だけの専売特許ではない。自由放任主義から生まれてきた資本主義の弊害(貧富の格差の拡大)を除去する思想として社会主義という思想が出てきたのであって、人道的社会主義思想もあれば宗教(キリスト教)に基づく社会者着思想もある。広い意味ではケインズ政策を柱とした修正資本主義(財政・金融政策や所得の再分配によって適切な経済成長と富の再配分を行う)やゴーデスベルク綱領で階級闘争・暴力革命を至上原理とする共産主義と決別した社会民主主義も社会主義の系譜に属すると言って良いだろう。

これらの社会主義思想に対して、「空想的社会主義」と批判し、「科学的社会主義」と銘打って登場してきたのが、マルクス・エンゲルス・レーニン・スターリンと連なる戦後冷戦時代の社会主義である。しかし、かつてのソ連や鄧小平以前の中国で実現した社会主義体制なるものは、市場原理を無視したまさに「非科学的社会主義」であって、空想的社会主義のそしりを免れないものであった。

冷戦で敗北したのは、スターリンが基盤を築いた「ソ連型社会主義」、つまりスターリニズムであって、それはスターリニズムこそが非科学的社会主義であったからだ。日本共産党は、コミンテルンの日本支部として設立されたが、その後の時代の推移とともにスターリニズムを排し、1月の党大会ではさらに中国の覇権主義を批判した党綱領の改定を行った。また、社会主義にとっても「市場経済は不可欠」との認識を示すように変わってきている。

もちろん、日本共産党も党是とする「生産手段の社会化」の意味するものも含めて重要な問題を国民の前に明確にしなければならないことは当然である。しかし、冷戦の終結とともに世界を覆ったのは、グローバリズムと称する新自由放任主義だった。レーガン大統領、サッチャー首相、中曽根首相がこれを取り入れたがその結果として、世界の経済情勢はリーマンショック以降、大変厳しい時代になっている。それは、新自由放任主義が、「いまだけ、カネだけ、自分だけ」の「三だけ」主義をもたらし、人間の本性とも言える「共に」そして「為に」生きるという精神を破壊し尽くしてしまったからだ。

このことをより深く認識している政党が、日本共産党と令和新選組である。立憲と国民の合流話しは取り敢えずは頓挫したが、両党とも新自由放任主義基づく政策については明確な批判がない。例えば、消費税の実態を踏まえた消費税の減税・廃止や所得再分配政策、天下りの廃止や会社法人・団体献金の根絶など利権政治との決別、対米従属政策に対する批判とその代案となる外交政策の展開などがその例である。要するに、野党という名を付けるにはあいまいすぎるし、はっきり言えば自公両党の補完政党でしかない。だから、京都が選挙区の立憲・福山哲郎幹事長や国民・前川誠司衆院議員の票が欲しいという自分中心主義の要求を聞いて、無節操に自公の応援をしているというのが実のところではないか。

こうした「野党」という名の政党は、国民には必要がない。自公と合流した方が筋が通るのではないか。日本に今必要な政党は、自公の新自由放任主義に対抗できる理念と政策体系を持った「確かな野党」である。そして今のところ、その確かな野党は日本共産党と令和新選組しか存在しない。両党は確かに、自公の政策体系とは正反対の政策体系を有し、政権奪取を狙う野党である。

京都市民には、レッテル貼りに惑わされるのではなく、両候補の打ち出している政策理念・体系を比べ、国民主権・地方自治の理念を現実に生かすべく、投票所に足を運んでもらいたい。2008年2月17日投開票の京都市長選挙(投票率37.02%)は、弁護士で、「いま正義を・京都市政を刷新する会」(「市政刷新の会」)の中村和雄候補(53)=無新、日本共産党推薦=が、「オール与党」4党(自民・公明、民主・社民府連)が推した門川大作候補(57)=前市教育長=を951票差、得票率で0.2ポイント差まで追い詰めた。投票率が高ければ、2008年京都市長選挙と逆の結果になる可能性もある。

中京区のJR二条駅西口に立った「つなぐ京都2020」の福山和人候補=京都民報Webより

京都市長選挙管理委員会によると、令和元年12月2日時点での有権者数は男性547,346人、女性 624,942の併せて 1,172,288人ということになっている。棄権という対処もあるが、それでは無条件一任ということになり、国民主権、地方自治に積極的に参加できない。是非、積極的に投票所に行き、投票をお願いしたい。

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