米国のインフレ率高騰=国際的な流通網の混乱と資源価格高騰=で金融引締めが予想されることから、ニューヨーク株式市場ではダウ平均の急落が続いている。しかし、インフレ率急騰はコストプッシュが原因で、総需要を抑制する金融引締めでは解決しない。要するに、米国支配層(ディープ・ステート=DS=)が引き起こした新型コロナウイルス騒動とロシア制裁のブーメランによるものだ。米国一極体制は既に崩壊過程を直進している。
米国でのインフレーコロナと対ロシア経済制裁によるコストプッシュ・インフレ
米国の株式市場が4営業日連続で下落し、13日は先週末金曜日に比べて876ドル5セント安い3万516ドル74セントと、ことしの最安値を更新した。5月の消費者物価上昇率が8.6%と40年ぶりのひどいインフレ経済に突入しているからだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220614/k10013670581000.html)。
13日のニューヨーク株式市場は、記録的なインフレが長引いて金融引き締めが一段と加速し、景気が減速することへの警戒が強まり、ダウ平均株価は一時、1000ドルを超える急落となりました。13日のニューヨーク株式市場は、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が14日から会合を開くのを前に、記録的なインフレが長引いて金融引き締めが一段と加速し、景気が減速することへの警戒が強まりました。
このため、朝方から幅広い銘柄が売られ、取り引き終了にかけて一段と売り注文が膨らんでダウ平均株価は一時、先週末と比べて1000ドルを超える急落になりました。終値は、先週末に比べて876ドル5セント安い3万516ドル74セントと、ことしの最安値を更新しました。ダウ平均株価は、先週末の10日も前日と比べて800ドルを超える大幅な値下がりとなるなど、4営業日連続で下落していて金融市場の動揺が深まっています。
米国のインフレ率(消費者物価上昇率に端的に表れている)は次のように推移している(https://jp.tradingeconomics.com/united-states/inflation-cpi)。
米国の消費者物価上昇率は新型コロナウイルス騒動のころから急激に上昇し、ロシアに対する経済制裁を課した今年2022年2月ころから加速した。米国のインフレ率急騰は米英アングロサクソン陣営の支配層(ディープ・ステート=DS=)が引き起こした新型コロナウイルス騒動とロシア制裁のブーメラン効果により、国際的な流通網が寸断されていることと資源価格が高騰しているためだ。つまり、供給側の要因によるもので、需要を抑制する金融引締め策では解決しない。にもかかわらず、米国の米国連邦準備精度理事会(FRB)には民主党から金融引締め圧力がかかっており、取るべき政策としては間違っている。
これについて、サイト管理者(筆者)が拝読する限り国際情勢解説で日本でほとんど唯一の正論を伝えている田中宇(さかい)氏も05月11日公開の「当事者能力を失う米国」(https://tanakanews.com/220611biden.php、有料記事)で次のように見抜いている。
いま進行中の世界的なインフレの原因は、米国や中国など流通網のボトルネックの詰まりが続いていることと、欧米が対露経済制裁としてロシアからの石油ガス穀物など資源類の輸入を急減する自滅策をやった結果、石油ガスや穀物などが急騰しているためだ。今のインフレは通貨政策と関係ないから、米連銀が利上げしてもインフレは止まらない。米政府がインフレを止めるには、流通網を精査してボトルネックを解消していくこと、ロシアに対する自滅的な経済制裁をやめること、中国敵視もやめて米中経済分離を緩和させていくことなどが必要だ。 (ロシアは中国と結束して延命し、米欧はQE終了で金融破綻) (金融大崩壊への道)
だがマスコミ権威筋は、こうした状況すら正しく報道・指摘しない。米政府のインフレ対策は頓珍漢だ。流通網の詰まりが指摘されても、それをうまく改善する手立てが採られていない。米政府はインフレを止められない。流通網の詰まりや、資源類を高騰させる対露制裁は今後も続き、インフレはひどくなるばかりだ。中国やインドは、ロシアから資源類を買い、欧米に高値で転売して儲けている。これも欧米が資源インフレに悩まされる一因で、これは今後もずっと続く。インフレは米欧経済を不況に陥れ、スタグフレーションを引き起こす。米政府は経済を運営する当事者能力を失っている。 (We Are Hurtling Toward Stagflation) (インフレに負ける米連銀)
なお、日本の株式市場でも平均株価は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを急ぎ、米経済の景気後退を招くとの懸念が高まり、2万7000円台を下回って下落を続けている。06月14日は前日比357円58銭安の2万6629円86銭で引けた。後場はやや堅調な展開になったが、公的資金が買い支えた可能性がある。これらを受けて円相場は13日には24年ぶりに一時1ドル=135円台に下落した。14日は前1ドル=134円台に戻したが、円安に歯止めがかかったとはとても言えない。鈴木俊一財務大臣は「急速な円安進行を憂慮 一層の緊張感持って注視」と実質的に無為無策を続けている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220614/k10013670731000.html)。日本でも消費者物価上昇率が加速していることは確実で、日本の経済は大打撃を被るようになる。
本投稿記事はバイデン大統領が当事者能力を失っていることを克明に解説するとともに、これまでの米国一極支配体制が崩壊し、世界は資源大国を中心とする多極化時代への突入が本格的に進んでいることを伝えている。なお、ロシアの「ウクライナ侵攻」は単刀直入に言ってロシアの正当防衛である。これについては、国際情勢に詳しい植草一秀氏がメールマガジン第3242号の「大統領弾劾に直面するバイデン」で次のように解説している。
ウクライナ内戦を収束させるために協議が行われミンスク合意が制定された。2015年に制定されたミンスク2において東部二地域に対する高度な自治権付与が決定された。2019年に大統領に就任したゼレンスキーはミンスク合意履行による東部和平の確立を公約に掲げた。ところが、ネオナチ勢力に代表されるウクライナ民族主義者はミンスク合意履行に強く反対した。2020年米大統領選でバイデンが当選すると、ゼレンスキーのスタンスが明白に変質した。
ゼレンスキーはミンスク合意履行による和平確立の方針を撤回。ミンスク合意を破棄してロシアと軍事対決する方針を明示した。2021年3月に発出した大統領令で軍事安全保障戦略を決定。ロシアとの軍事対決路線を鮮明にするもので、クリミア武力奪還の方針を示すものだった。同時にウクライナはNATO加盟の方針を鮮明にした。2021年10月にはドローンによる東部二地域に対する軍事攻撃も実行した。ウクライナが善でロシアが悪という図式は現実に適合しない。ウクライナの対ロシア軍事対決路線を尖鋭化させ、ロシアの軍事行動を誘発した影の主役は米国である。
米英アングロサクソンのディープ・ステート(DS)の傀儡政権であるゼレンスキー大統領率いる正当性のないゼレンスキー政権がギリシア正教を信じるロシア系ウクライナ住民に対して、バイデン氏が大統領に就任した2021年01月21日以降、同住民の大量虐殺を含む戦闘行為を激化したのである。米欧日諸国陣営側が「大本営発表」のように垂れ流す「ロシア軍によるウクライナ侵攻」は、広い意味でのロシア民族の安全を保障するための正当防衛であるとみなすべきである。加えて、世界の主導権は米欧日諸国陣営から非米英陣営に移りつつある。田中氏の先の投稿記事も次のように指摘している。
トルコは(注:クルド族問題で)米国を信用しなくなった分、ロシアとの結束も勝手に強めている。北欧の方は黙ってしまった。米国の言葉を信じたことを後悔しているのだろう。北欧は貴重な200年間の中立の実績を一瞬で失った(注:永世中立国を放棄し北大西洋条約機構のNATO加盟を申請したスウェーデンとフィンランドは非常に後悔しているようだ)。6月末のNATOサミットの様子しだいで、トルコは本当に北イラクに再侵攻する。クルドはこれまで米英の傀儡だったが、すでに米英からの支援が減っており、ロシアの仲介で仇敵だったアサド政権と和解し、アサド+クルドvsトルコという新たな対立軸になっている。それを仲裁するのがロシアとイラン。米英の役割は大幅に減った。米国は中東でも覇権国としての当事者能力を失っている。 (US-Backed Kurds Offer To Work With Assad Government To Resist Turkish Invasion) (Playing games in NATO, Turkey eyes its role in a new world order)
この手の話はほかにもいろいろいある。ネタニヤフが復権しそうなイスラエルが米国に頼らずサウジアラビアと仲良くしていること。ベネズエラなど中南米の対米自立。ウクライナのゼレンスキーも米国を頼れなくなっている。これらの話はあらためて書く。 (Israelis begin doing deals in Saudi Arabia) (Losing Latin America)
なお、ウクライナ事変もロシア側が有利に進んでいる模様だ。あのNHKでも次のように伝えている(https://www3.nhk.or.jp/news/special/ukraine/)。なお、クリミア半島は現時点では住民投票によりロシアに帰属している。
ウクライナ東部・ルハンシク州の激戦地セベロドネツクでは、砲撃で橋が破壊されるなど、ロシア軍の攻勢がいっそう激しさを増しています。ルハンシク州の知事は12日、ロシア軍がセベロドネツク掌握のため近く予備の部隊をすべて投入するだろうとの見方を示し、警戒を強めています。
ロシア側は、すでに掌握したと主張するウクライナの東部や南部で、ロシアの記念日を祝う行事を行うなど、支配の既成事実化を進めようとしています。
米欧日諸国陣営側でも旧日本軍の「大本営発表」並みの報道を続けることは難しくなっているが、事実・真実、深層・真相は伝えていない。こうした「報道」を鵜呑みにしたり軽信したりしてはいけない。ただし、日本は第二次世界大戦における米国の「戦利品」であり、裏返せば対米隷属外交を戦後、一貫して続けており、その状態で7月10日投開票予定の参院選に突入する。現状では確かな野党側の大敗北は免れない。参院選で立憲民主党が大敗し、同党の真正野党組の政治家とれいわ新選組、日本共産党、社会民主党が真の意味での野党共闘体制を確立する以外に日本が生き残る道はない。