失政で新型コロナ感染を拡大させた安倍政権が特措法改正、非常事態宣言で独裁懸念

大型豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号で乗客・乗員全員3711人に対するPCR検査の遅れなどが致命的になり、香港で下船した1人の外国人から711人が新型ウイルスに感染、外国人を含む12人が死亡するなど、同ウイルス感染拡大に失敗した安倍晋三政権が今度は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の改正を行い、衆参での数の力を使って私権制限をより強化すると見られる同「特別措置法」の改正を行う。3月10日にも「緊急事態宣言」を行う予定だ。

「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の改正問題に入る前に、政府=安倍政権の新型コロナウイルス感染拡大に何故、失敗したのかを改めてまとめておきたい。

3月1日に開かれた新型コロナ感染症対策本部=朝日デジタルによる

3月2日に開かれた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議がまとめた報告書によると、北海道が3月4日時点で76人と飛び抜けて他の都府県よりも多いことについて、「(新型コロナウイルスに感染しているが)症状の軽い人も、気がつかないうちに、感染拡大に重要な役割を果たしてしまっていることです。なかでも、若年層は重症化する割合が非常に低く、感染拡大の状況が見えないため、結果として多くの(心臓疾患や糖尿病など持病を抱える)中高年層に感染が及んでいる」と指摘している。

このことからすれば、新型コロナウイルス感染拡大阻止のための根本対策は感染対策の根本である抗ウイルスワクチンの開発には1年以上の相当の時間がかかる現状からすると、国民が早急に全国で900施設あると言われている民間検査会社を総動員して従来型のPCR検査やスイスの製薬会社ロシュの開発したハイテク検査ツールを使ったPCR検査を受けられるようにする体制を整備することである。

病院や高齢者養護施設など緊急にPCR検査が必要とされる機関を優先させることは当然であるが、PCR検査を希望する国民に対しても、保険適用かつ政府の一部助成(政府=安倍政権のザル対策の失敗も考慮)で、一般の医療機関の医師の判断で同検査を民間検査会社に発注できるようにすることである。なお、4日のニューヨーク株式市場は、米大統領選に向けた民主党の候補者選びで穏健派ジョー・バイデン前副大統領が優位に立ったことを受け、主要企業でつくるダウ工業株30種平均が前日比1173・45ドル高と急反発したが、新型コロナウイルスの感染拡大に対し、米議会の与野党が9千億円規模の財政措置で合意に達した影響も大きい。

ところが、政府=安倍政権は夏の東京オリンピック、パラリンピックが中止に追い込まれないようにするため、新型コロナウイルス感染者数を見かけ上、少なくすることを「対策」の根本に据えている。ところが、3月4日22時22分の朝日デジタルによると、「新型コロナウイルスの感染を判定するPCR検査をめぐり、日本医師会は4日の記者会見で、医師が必要と判断しても保健所が認めずに検査を実施できなかった例が全国で30件あまり確認されたと明らかにした。集計途中といい、13日以降に最終結果をまとめる」という。現時点で30件だが、これは氷山の一角だろう。

これは、PCR検査の順序が次のように検査を抑制する仕組みになっているからである。第一に、発熱持続などの症状が出ている国民は全国各地の保健所に相談しなければならない。第二に、保健所がPCR検査の必要性を判断した患者に対して、国立感染症研究所または地方衛生研究所などの「帰国者・接触者外来」を持つ医療機関での診察を許可する。しかし、この「帰国者・接触者外来」を持つ機関は、全国11万程度の医療機関のうち844機関に過ぎない。

1都道府県に対して18機関しかない。このため、植草一秀氏のメールマガジンなどによると、この「帰国者・接触者外来」での受診を認められた患者は、2月1日から3月1日の1ヵ月間の総数で、1機関当たり2.6人である。1日当たりの受診者数でなく、1カ月間の合計の受診者である。この数字は既に述べた日本医師会の調査数とも符合する。

3月4日23時(午後11時)の段階では、国内で確認された感染者1035人で、このうち死亡者の方は12人だがこれは、➀風邪の症状が37.5度以上の発熱が4日間以上続いている(解熱剤を飲み続けなければならない)②強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある(高齢者や持病のある方は、上の状態が2日程度続く場合)に該当する国民、つまり、新型肺炎に罹患していると思われる国民が医療機関に緊急入院し、PCR検査を受けた結果である。つまり、新型コロナウイルスに感染し、深刻な新型肺炎に罹患している患者に対してPCR検査を行った結果の数字であることに留意が必要だ。

新型ウイルスに感染しても、症状がないか軽い若者を中心とした国民は少くないと見られる。このため、あの政府の広報機関と揶揄されるNHKでさえ、

「国の新型コロナウイルスの専門家会議のメンバーが2日に記者会見し、厚生労働省の対策班のメンバーの1人、北海道大学の西浦博教授は、シミュレーションの結果として先月25日の時点で北海道全域で感染した人はおよそ940人に上っていた可能性があるという見方を示しました」と報道している。しかし、厚生労働省のこの日の正式会議報告では、NHKが報じた専門会議報告の内容からこの部分がすっぽり抜け落ちている。時期はやや異なるが、北海道の現時点での新型コロナウイルス感染確認者の12.4倍である。

朝日デジタルによと、3月4日午後11時半時点の新型コロナウイルス感染者数は1035人だが、これは感染確認者の数であり、実際の感染者数はこの数字よりはるかに多い可能性が高い。このため、地方自治体の保健所や「帰国者・接触外来」などという検査障壁を撤廃し、PCR検査を望み必要な国民が一般の医療機関で簡易に検査を受けられる体制を早急に構築し、陽性と判定された患者に対しては適切な医療措置と休業補償を含む適切な措置を講じる必要があるのは当然だ。

また、独断で保護者や給食提供農家・食品事業者への打撃の大きい全国一律の小中高校を中心に学校休校措置を採るとか、キャンセル料の支払いで損害を受ける主催者やコンサート、ライブに出演する演奏家などフリーランス(個人業主相当)に打撃の大きい、出席人数多数のイベントや大会・集会の自粛(実際は強制)を要請しながら、休業補償には差別を設けるなどの不平等措置は行うべきではない。また、そうした措置を講じながら、3月1日に行われた東京マラソンには沿道での声援(7万人ほどが集い、互いに密着した状態で声援を送った)を認めるなどは、大きな矛盾である。

新型コロナウイルス感染拡大防止策のためには、相当規模の財政措置が必要になる。日本よりも新型コロナウイルス感染確認者の少ない米国でさえ、取り敢えず約80億ドル(1ドル=108円)として約9000億円の財政措置を採ることで与野党が合意した。しかし、日本では2019年度の予備費2700円と1兆4400億円程度しかない雇用保険料の積立金を原資として休業補償を行うに過ぎない。また、既に述べたように小学校などの保護者には給付、企業に対しては雇用調整助成金制度の活用、個人業主やフリーランサーに対しては政策金融公庫からの貸付(金利1.9%と現状の超低金利からすれば相当高い)で対処するなど、補償措置が大いに不平等である。

新型インフル特措法改正についての党首会談の後に記者会見に答える安倍首相=朝日デジタルより

こうした大矛盾の中で、大規模な財政措置を含む「新型コロナウイルス感染症および感染拡大予防対策案」を策定するというのならまだ話が分かる。しかし、政府=安倍政権は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を改正する。東京新聞3月5日付によると改正案の柱は、政府が「緊急事態宣言」を出し、強制力を持つ措置を取ることができるようにすることである。安倍首相は2月25日の新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長=安倍首相)で発表したここ1-2周間がヤマ場とした最終日に当たる3月10日にも、個人の権利の大幅制限につながる「緊急事態宣言」を行うようだ。

野党は現在の同特措法でも、適用の対象が➀当時の新型インフルエンザ②再興型インフルエンザ③新感染症-とあり、新型コロナウイルスは三番目の新感染症であるから改正の必要はないと主張する。しかし、政府=安倍政権は、「原因となる病原体が特定されていること」などから現在の特措法では対処できないと主張し、改正すると断言する。真実を見る国民には納得できない屁理屈としか受け取れない。

安倍首相は2年限りの時限立法とするなどと言っているが、モリカケから「桜を見る会前夜祭」、「桜を見る会」に至るまで、政府=安倍政権は疑惑のデパートである。また、前法務大臣の河井克行衆議院議員とその妻である河井案里参議院議員の秘書が選挙宣伝カーの選挙運動員(ウグイス嬢含む)に法令で定められた上限を超えて報酬を払った容疑として広島地検から逮捕されたのに、安倍首相は自民党総裁としての明確な謝罪もしない。連座制が適用される状態になれば、議員辞職しなければならない。

現行の「新型インフルエンザ等特別対策措置法」で可能になる主な措置。改正でさらに強化される見込み=朝日デジタルによる

こういう内閣が私権をさらに大幅に強化すると予想される「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の改正を強行したらどうなるのか。既に、「疑惑のデパート」から国民の目をそらしてきた黒川弘務東京高検検事長を検事総長に据えることにしており、日本国憲法では内閣が最高裁の長官・判事を事実上任命する規定になっているから、政府=安倍政権は事実上、三権を完全に掌握することになる。この先に見えてくるのは、日本の「与えられた民主主義国家」から「独裁国家」への移行である。

野党と称する政党がいくら対抗するにしても、自公両党が衆参で絶対安定多数(与党が衆参の両院での全ての委員会で委員会議長を出せる議員数を確保していること)を握っている限り、国会ではこれを阻止することは非常に難しい。世界保健機構(WHO)や国際オリンピック委員会(IOC、トーマス・バッハ会長)の正しい判断が期待されるが、政府系のメディアとして知られる読売新聞社のサイトによると、IOCのトーマス会長は3日、東京五輪へ「成功に全力を尽くす。すべてのアスリートに全速力での準備を促す」との声明を発表している。

WHOやIOCは今や世界的な利権組織と化しており、情勢を正確に把握し、適切な判断を下すことを期待するのは難しい。しかし今や、その正しい判断を期待せざるを得ない状況に追い込まれている。現状、諸外国は日本からの入出国を厳格に管理し、自粛を求めている。果たして、見かけではなく本当に新型コロナウイルス拡大防止は終息するのか。正しく終息しなければ、諸外国からくるエリート選手たちばかりか、観戦外国人にも大きな被害が及ぶ。また、各国の政府が自国のエリート選手団の派遣を認めるのか。IOCは正しく、適切な判断をせざるを得ない状況に追い込まれよう。最終的には、日本国民が真実に耳目を集め、新型コロナウイルス蔓延防止と適切な行動に立ち上がることを期待せざるを得ない状況になってきた。

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