米側陣営のメディアでは5月からのウクライナ側の反転攻勢が宣伝されているが、ウクライナ軍の①弾薬不足➁死傷者続出による戦闘要員不足③制空権を持つロシア空軍によるNATO諸国供与の最新軍事兵器の破壊ーなどから、反転攻勢したとしても規模は限られ、成功することはない。ロシア側の「特別軍事作戦」で始まったウクライナ戦争はウクライナの敗北、ロシアの勝利で終わる。ゼレンスキー政権はウクライナ軍のクーデターにより打倒されるか、または、ゼレンスキー政権が中露非米側陣営に入るかのいずれかになる。
本サイトで次のように述べさせていただいた。
ウクライナ戦争に関して(国際情報局長、イラン大使、防衛大学教授を歴任し現在、東アジア共同体研究所長で国際情勢に詳しい)孫崎(享)氏は、①ウクライナでは弾薬や軍事兵器、戦闘要因が非常に不足してきた(注:NATO諸国から供与される兵器は、ロシアがウクライナの制空権を掌握しているためウクライナに入ると破壊される)➁米国の制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長はウクライナ戦争は膠着状態に陥っており、ロシアも勝てないがウクライナも勝てないと発言している③ウクライナ軍部でゼレンスキー大統領を追放する動きが表面化してきているーことなどから、「もはや、ウクライナが勝つことは有り得ないし、世界の各国政府もこのことを(暗黙に)認めている」と断言している。
ウクライナ軍部によるゼレンスキー政権打倒クーデターの情報源は、ロシアのプラウダによるものだが、「火のないところに煙は出ない」。ロシア側の攻撃で大多数の戦闘要員に死傷者が続出しているウクライナ国防軍(2014年2月のマイダン暴力クーデターに関わったネオ・ナチ系は除く)としては、「たとえ一人になったとしても、ウクライナはロシアと戦う」というゼレンスキー大統領の現実無視の発言は、最高指導者としての資質がないと認識せざるを得ない。
米側陣営のメディアのウクライナは勝ち、ロシアは敗北するとの戦況報道は非常に歪んだもので、信頼できない。例えば、NHKが無批判に引用する米国の「戦争研究所」という「シンクタンク」は、マイダン暴力クーデターを指揮し、ウクライナを米国傀儡政権化したビクトリア・ヌーランド国務次官補(現在、バイデン政権下で国務次官)傘下にある。戦争研究所がまともな戦況分析をするわけがない。
ただし、米側陣営のメディアも少しずつウクライナ戦争の正しい戦況報道をするようになった。例えば、ロイター通信の日本語版、産経新聞のWebサイトは次のように伝えている(https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-poland-zelenskiy-bakhmut-idJPKBN2W21PD、https://www.sankei.com/article/20230427-HMSRAJ35A5JVRFWQV6Z4HGCYOM/)
ウクライナのゼレンスキー大統領は5日、訪問先のポーランドで行ったドゥダ大統領との共同記者会見で、激戦が続く東部の都市バフムトから撤退する可能性を示唆した。ゼレンスキー大統領はバフムトがまだロシア軍の手に落ちてはいないと明言したが、包囲される危険がある場合は兵士らを守るために「相応の」決定を下すと述べた。「兵士を失わないことが最重要だ。包囲され、その危険性がある場合は、それに対応する正しい決断が指揮官によって下されるだろう」(注:戦闘要員の不足を暗に認めている)とした。
またゼレンスキー大統領は、欧米のパートナーからより多くの弾薬供給を受ければ、バフムトやその他の地域でより早く反撃することができるようになると述べた。
ロシアによるウクライナ侵略で、ウクライナ国防省メディアセンターは26日、現時点で露軍が約36万9千人の軍人をウクライナに派遣していると発表した。同センターは、露軍の目下の目標は東部ドネツク州全域を制圧することだとした上で、「ロシアは独立国家としてのウクライナを破壊するという最終目標を放棄しておらず、そのために力でウクライナに交渉を迫ろうとしている」と指摘した。
露軍は現時点で、ドネツク州の面積の約6割超を支配下に置いているとされる。同センターは、露軍が同州内で制圧を狙っている主な都市として、最激戦地のバフムトや、親露派武装勢力が支配下に置く州都ドネツク市近郊のアブデエフカやマリインカを挙げた。また、露軍が48個の旅団、122個の連隊、戦車など5900の兵器を戦線に投入しているとした。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は26日、中国の習近平国家主席と同日に行った電話会談に関し、「公正で安定的な平和を確立するための相互協力」について協議したと交流サイト(SNS)で説明。
産経新聞のWebサイトのこの報道について、「ロシアは独立国家としてのウクライナを破壊するという最終目標を放棄しておらず、そのために力でウクライナに交渉を迫ろうとしている」の部分は、額面通りに受け取るわけにはいかない。ウクライナ戦争の目的はウクライナに住むロシア系ウクライナ住民を米国の傀儡政権化したウクライナ軍の虐殺から保護するということだったからだ。ウクライナ戦争は、米国が暗躍し、新ロシア国家のセルビアからコソボを「独立」させたコソボ紛争の逆を行くものだ。
ただし、①ロシア側がロシア系住民の多い東部ドンバス地方の制圧に向けて尽力していること➁ゼレンスキー大統領が、中露を中心とした非米側陣営の主導国としてロシアとの結束を強めつつある中国に助けを求めているーことなどは事実だろう。
本社がカタールのドーハにあり、アラビア語と英語でニュース等を24時間放送している中東の衛星テレビ放送局・アルジャジーラによると、現在のウクライナでの戦況・勢力地図は次のようになっている(https://www.youtube.com/watch?v=z-ck4rruhoE)。
ロシア系のウクライナ市民の多い東部ドンバス地方のドネツク、ルガンスク州、クリミア半島はもちろん、南部のヘルソン州などウクライナ東南部はロシア側が掌握している。ウクライナはカトリックを信じるウクライナ系市民とロシア正教を信じるロシア系ウクライナ市民からなる複合国家である。多民族国家であり州政府の権限が極めて強い米国のように、ロシア系ウクライナ市民が多数を占める州に高度な自治権を与えないと、国家として成り立たない(2015年2月11日に締結されたが守られなかったミンスク合意Ⅱの目的)。ロシアが「特別軍事作戦」を開始したのもそのためで、その目的はもう達成している(ノボロシア構想)。
このため、ウクライナ戦争で露軍を支援してドンバスなどで戦っているロシアの愛国的な民兵団(傭兵会社)ワグネルの指導者であるエフゲニー・プリゴジンが4月14日、ロシア政府に対し「ウクライナ戦争(特殊作戦)の目的が達成されたので勝利宣言して作戦を終了すべきだ」と提案した
。(https://tanakanews.com/230426ukrain.php)時事通信社は次のように報道している。
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」創設者プリゴジン氏は14日、ロシアがウクライナ侵攻で東・南部一帯を占領していることを踏まえ「作戦の終了を発表し、ロシアが計画した結果を達成したと周知することが、理想的な選択肢」と主張した。一方で「(敵との)合意は不可能。戦うのみだ」と述べ、ウクライナ軍の反転攻勢に備えるよう訴えた。
ゼレンスキー大統領が表向き、5月の反転攻勢にかけ、敗北を認めないため終戦交渉は不可能になっているため、尾ひれがついた報道になっているが、最早ウクライナに勝ち目はなく、敗北あるのみだ。森喜朗元首相の「ロシアが負けるはずはない」という発言は正しい。だから、ゼレンスキー大統領は結束した中露のうち中国に対して、「停戦交渉」という名の「終戦交渉」の仲介を求めている。実際のところ、ゼレンスキー大統領は最早、米国を明主とするNATO諸国を信頼していない。
ワグネルのプリコジンの発言を通して国際情勢解説者の田中宇氏は4月26日「決着ついたウクライナ戦争。今後どうなる?」と題する解説記事を公開している(https://tanakanews.com/230426ukrain.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=)。基本的には、ゼレンスキー政権はウクライナ軍のクーデターにより打倒されるか、または、ゼレンスキー政権が中露非米側陣営に入るかのいずれかになるとの見方だ。いずれの場合も、ウクライナ西部はポーランドの実質的な支配下に入る。最初に、誰でも閲覧できるリード文相当を紹介させていただきたい。
もうウクライナが勝てないことは確定している。事態を軟着陸させて漁夫の利を得るために和平提案した習近平が勝ち組に入っているのも確定的だ。ウクライナが西部だけ残ってポーランドの傘下に入る可能性も高い。米国と西欧の崩壊が顕在化し、東欧は非米側に転じ、NATOが解体する。ウクライナの国家名はたぶん残る(その方が和平が成功した感じを醸成できる)。ゼレンスキーが生き残れるかどうかは怪しい。EUも解体感が強まるが、国権や通貨の統合を解消して元に戻すのは困難だ。EUは再編して存続する可能性がある。
本論考の重要箇所を若干引用させていただきたい。
日本など米国側のマスコミは、これからウクライナ軍の大規模な反攻が再開され、露軍やワグネルが敗走しそうなので、その前に露政府に勝利宣言してもらって停戦したいのだろう、などといった露側の敗北の隠蔽作戦だと「解説」している。 私が見るところ、その説明は大間違いだ。米側マスコミは開戦直後から、米諜報界が注入した意図的な歪曲情報を鵜呑みにして、ウクライナ側の優勢・露側の敗北という、事実と正反対のことを喧伝し続けている。今回もその延長だ。 (Ukrainian Official: ‘We Don’t Have The Resources For Counteroffensive’) (Kennedy speaks about Ukraine losses)
実際は、露側が着々と勝っている。ウクライナ軍は、米欧から兵器類を大量に送られても苦戦し続け、5月の再開が予測されている大反撃が成功したとしても30キロぐらいしか前進できない。 ウクライナ軍は、戦闘経験がある兵士の大半が戦死もしくは負傷して戦えなくなり、残っている兵士は戦場でほとんど使い物にならい未経験者ばかりだ。ウクライナはもう勝てない。勝負はついた。 露側の目標はウクライナの完全壊滅でなく、東部の露系住民の保護だ。それはもう達成された。だから露側は勝利宣言して戦争を終わらせるのが良いとプリゴジンは言っている。 (Ukraine’s EU backers skeptical of counteroffensive – Bloomberg) (Ukrainian commander laments state of army)(中略)
米政府はまだ表向き「ウクライナが勝つまで支援し続ける」と言っているが、裏ではすでにウクライナの負けで戦争が終わる展開に対する準備を始めている。 5月に予定されている「反撃」をウクライナ軍が延期するか、挙行しても成功せずに終わった場合、米政府がウクライナ戦争を失敗とみなして「敗北後の戦略」に移行する。その戦略がどんなものなのか、まだ明確でない。 (Biden prepares for Ukraine failure – Politico) (Russia And NATO Agree – The War In Ukraine Will Continue)
ウクライナが勝てずに戦争が事実上終わったら、バイデンの米国は一昨年夏にアフガニスタンでやったような稚拙で大失敗な全面撤退をウクライナでもやらかしそうだという見方も出ている。 米国は、アフガニスタンに米軍を本格的に駐留していたが、ウクライナでは特殊部隊や諜報要員を秘密裏に配備しているだけだ。 米国のアフガンからの撤退は、劇的な全面敗走になり、アフガンのガニ米傀儡政権が全崩壊して政権がタリバンに戻った。対照的にウクライナでは、米国側勢力の撤退が隠然と行われる。しかし、残されたゼレンスキーの米傀儡政権が全崩壊に直面する点はアフガンと同じだ。 米側マスコミは崩壊局面を正しく報じないだろうから、大半の人々は事態の本質を知らないままになる。 (Ukraine given Afghanistan-style warning from US – Politico)
なお、著名なジャーナリストであるセーモア・ハーシュ氏によると、NATO諸国がウクライナに供与しようとしてきた高性能軍事兵器は、ウクライナの制空権を保持し続けるロシア空軍によって破壊されるため、軍事兵器のブラック・マーケットに転売されているという。対ロシア強硬派のポーランドなどは、このブラック・マーケットで儲けてきた。ウクライナはポーランドが事実上支配する西部とロシアが併合する東南部に分割される可能性もある。
なお、こうした事態を承知しているため、フランスのマクロン大統領は中国との関係改善に努め、欧州の同盟諸国は米国の従属国家ではないと言明し始めた。広島サミットでのマクロン大統領の対応が注目されるが、威勢のよい共同声明が発表されたとしても、事態は変わらない。ウクライナ戦争でのウクライナの敗北は、欧米文明の凋落と非米側陣営の興隆、統一文明の形成に向かわざるを得ない。
日本は最悪の対米隷属国家に過ぎないが、狙撃テロで暗殺された安倍晋三元首相とともに中国との関係を深めてきた二階進元幹事長が、超党派の日中友好議員連盟の会長に就任した。高齢であるため、中国との関係を断絶すれば、日本の経済が壊滅すること(例えば、岸田文雄政権は半導体製造装置を中国に輸出することを禁じた、日本の半導体製造装置の輸出シェアは中国が第一位で31%、約8千億円から1兆円である)を熟知している経済産業省の力を利用して、日中友好のための実務責任者を育てる狙いがあると思われる。
なお、北朝鮮の核ミサイル開発、偵察人工衛星打ち上げ問題などで、表向き日韓米の協力関係強化が取り沙汰されているが、韓国が一人あたりの国内総生産(GDP)で日本を追い越したのは対中貿易の拡大(対中輸出の強化)に努めたからだ。韓国の保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領も裏では歴代の政権が進めてきた対中関係改善強化に努めるだろう。中露が北朝鮮を経済的に支援し、北朝鮮内部の親米派を打倒しつつ、軍事優先から経済テクノクラートを登用、改革・開放路線に大転換する可能性も囁かれている。その場合は、在韓米軍撤退が前提となり、東アジア共同体の形成に道を開くことになる。新しい文明がそこまで来ている。
【追記:04月28日午後18時30分】京都大学在学中に国家公務員上級試験に合格、外務省に入賞して英国ケンブリッジ大学に留学後、キューバ大使、ウクライナ大使を務めた後、退官して防衛大学教授などを歴任、現在、ディープ・ステート(DS)を中心に国際情勢について分析・研究されている馬渕睦夫氏の「馬渕睦夫が読み解く2023年世界の真実」(ワック株式会社刊行)の25頁には次のような解説がある。
結論から言えば、北朝鮮のバックにアメリカーもっといえば、国際金融資本、ネオコン、CIA(注:いずれも軍産複合体傘下にあると見てよいだろう)ーがいるから、北朝鮮は存続を許されているわけです。トラブルメーカーとして利用できる北朝鮮、テロ、麻薬、偽札、マネーロンダーリング等々自分たちにとって必要な悪行を代わりにやってくれる国として利用できる北朝鮮。何故、独裁者の金一家が金融王国スイスに留学するのか、そのことを考えるだけでも北朝鮮の秘密のベールをはがす第一歩になるわけです。
なお、馬渕氏の言う「ネオコン」のルーツとは、①ロシアに潰されたハザール王国から東欧に亡命したディアスポラのユダヤ人➁「世界同時革命」を主張して「一国社会主義革命」を優先したスターリンに路線闘争で敗北、亡命先のメキシコでスターリンに暗殺されたトロツキーの思想を受け継いだユダヤ系トロツキストたちーのことだ。ネオコンが反ロシアになるのは毛騎士的な理由がある。サイト管理者(筆者)としては、馬渕氏の反中・嫌中思想には問題があると思うが、ディープ・ステート(DS)論には一考の余地があると思う。
ネオコンとは本来、ネオ・今サーバーティブ(新保守主義、経済的にはユダヤ系移民の子孫であり、米国流ケインズ経済学=ポール・サミュエルソンらの新古典派総合経済学=を根本から否定したミルトン・フリードマンを元祖とする新自由主義=新自由放任主義)の略で、英国のマーガレット・サッチャー首相、米国のロナルド・レーガン大統領、日本の中曽根康弘首相に始まる政治・経済思想を指すが、馬渕氏は反ロシアで好戦的なディアスポラのユダヤ人をネオコンのルーツと見ている。両者には、一定のつながりがあると見られる。ヌーランド国務次官の夫であるロバート・ケーガン氏は、馬渕氏の意味でのネオコンの「理論家」として知られている。
一般に流布されている「常識」からすれば「陰謀論」扱いされるが、北朝鮮の金正恩政権、特に同政権を背後で操っていると見られる軍部が米国ディープ・ステート(DS)の傘下にあることは間違いないだろう。しかし、ディープ・ステート(DS)が北朝鮮軍部を傘下において、朝鮮半島(韓半島)に緊張状態を意図的に創出しているのは間違いないと思われる。