スタグフレーションの泥沼に入りつつある米国(米側陣営経済)−ダウ平均の最高値更新も異常(追記:露中首脳会談)

米国(米側陣営)経済のスタグフレーション化が本格化してきた。米国4月の小売売上高は前月と同水準で市場の予想を大幅に裏切り、景況感を示す消費者物価上昇率は前月と同じ前年同月比3.4%上昇に止まり、不況感を色濃くした。このため、年初の利上げ予想は絞み、ダウ平均は史上最高値を更新した。その一方で、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は米国のインフレ率はまだ高く、高金利政策を続けなければならないと発言せざるを得なかった。つまり、不況下の物価高−スタグフレーション入りが本格化しているわけだ。マネーが金融・資本市場に閉じ込められているから、「インフレ高進」とまでは行っていないが、大幅な財政赤字の中、無理してウクライナの軍事支援を行っているから、今後は過剰流動性が本格化する。これまでのインフレ要因であるウクライナ戦争によるコストプッシュ・インフレに過剰流動性インフレが加われば、スタグフレーションが本格化する。早期利下げ予想で「ダウ平均最高値更新」などと浮かれている事態ではなくなり、ドルの信認が問われる状況に陥るだろう。

コストプッシュ・インフレと過剰流動性で米側陣営はスタグフレーションが本格化

NHKは「アメリカ 4月の小売業売上高 前月と同水準 予想を大幅に下回る」と題して、次のように伝えた(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240515/k10014450541000.html)。

アメリカの先月の小売業の売上高は前の月と同じ水準となりました。(前月比)0.4%の増加を見込んでいた市場予想を大幅に下回りました。およそ23年ぶりの高い金利水準が続く中、堅調だった個人消費が減速した形で、今後もこの傾向が続くかどうか注目されます。

非常に冴えない個人消費だが、インフレは依然として続いている中での個人消費の減速だ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240515/k10014450531000.html)。

アメリカの先月の消費者物価指数は前の年の同じ月と比べて3.4%の上昇となり上昇率は3か月ぶりに前の月を下回りました。個人消費の動向を示す小売統計も市場予想を大きく下回り、市場ではインフレへの警戒がやわらぎました。アメリカ労働省が15日に発表した先月の消費者物価指数は、前の年の同じ月と比べて3.4%の上昇となりました。上昇率は市場予想と同じ水準で、前の月・3月から0.1ポイント低下し、3か月ぶりに前の月を下回りました。また、変動の大きい食品やエネルギーを除いた物価指数は前の年の同じ月と比べて3.6%の上昇でした。上昇率は前の月から0.2ポイント低下しました。

またアメリカの商務省が発表した個人消費の動向を示す小売業の売上高は、先月は7051億8000万ドル、日本円で109兆円余りでした。これは前の月と同じ水準で、0.4%程度の増加を見込んでいた市場予想を大きく下回りました。アメリカでは堅調な個人消費が企業の売り上げを増加させ賃金や物価の上昇につながっていると指摘されてきましたが4月は個人消費が減速した形です。

この記事は、米国の景況が弱い−つまり、同国経済は不況を克服できていない−というものだ。このため、年初の利上げ予想から利下げ予想に逆転し、ダウ平均は史上最高値を更新した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240516/k10014450811000.html)。

ニューヨーク株式市場はアメリカの利下げ時期が早まることへの期待から買い注文が膨らみ、ダウ平均株価は史上最高値を更新しました。15日のニューヨーク株式市場はこの日発表された先月の小売業の売上高が市場予想を大きく下回ったことで個人消費の減速が意識され、FRB=連邦準備制度理事会の利下げ時期が早まるのではないかとの観測から買い注文が膨らみました。

また、先月の消費者物価指数の上昇率が3か月ぶりに前の月を下回ったこともインフレ率の低下による利下げへの期待を高める形になりました。ダウ平均株価の終値は前日と比べて349ドル89セント高い3万9908ドルちょうどで、ことし3月下旬につけた史上最高値を更新し節目となる4万ドルに近づいています。

以上は、米国の景況が弱いという報道内容だが、その一方で米国連邦準備制度理事会のパウエル議長はインフレはまだ高く、高金利政策を維持しなければならないという(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240515/k10014449421000.html)。

アメリカのFRB=連邦準備制度理事会のパウエル議長は今後の金融政策について、ことしの第1四半期にインフレ率の低下に向けた進展がみられなかったとして、現在の高い金利水準を維持してインフレ率が低下するまで辛抱強く待つ必要があるという考えを示しました。FRBのパウエル議長は14日、オランダのアムステルダムで開かれた外国銀行協会の年次総会に出席しました。この中でパウエル議長は去年はインフレ率が大きく低下したものの「ことしの第1四半期には進展が見られなかったことは明らかだった」と述べました。

その上で「インフレ率は誰もが予想していたよりも高い水準だ」としておよそ23年ぶりとなっている現在の高い金利水準を維持してインフレ率が低下するまで辛抱強く待つ必要があるという考えを示しました。

景況感が悪い−つまり、不況−というのに、パウエル議長の認識ではインフレ率はまだ高いから高金利政策を維持しなければならない、というのである。これは要するに、米側陣営の総本山である米国で不況下の物価高−つまり、スタグフレーション−が深刻化し始めたということである。金融・資本市場では不況だから利下げを督促しているが、時を同じくしてパウエル議長は金融引き締め策を継続すると発言しているのである。

米国の市場関係者の認識に一貫性がなくなっているわけだが、スタグフレーションに特効薬は難しい。しかし、その原因がウクライナ戦争に伴う、米側陣営にない資源・エネルギーの不足によるコストプッシュ・インフレであることを考えると、ウクライナ戦争を早期に集結させるしか道はない。しかし、米国は下院が超党派でウクライナ戦争を長期に継続させるための軍事支援を承認した。米国は、大幅な財政赤字の国だが、その米国経済の宿痾(根本問題)の中で、大規模な軍事支援を行うということは、日本の太平洋戦争中の戦時経済体制を彷彿させる。これは、連邦準備銀行がドル紙幣を刷って、軍事兵器を生産するということだから、行き着くところはヘリコプター・マネー、つまり、過剰流動性である。

コストプッシュ・インフレに過剰流動性が加われば、スタグフレーションはますます深刻化する。スタグフレーションは、サウジアラビアが中国との関係を深めたことで、「ドル原油本位制度」を弱体化させ、ドルに対する信認の大幅低下に直結する。つまり、米国を総本山とする米側陣営の経済体制、金融・資本・為替市場は今後、大幅に弱体化するということである。ウクライナを北大西洋条約機構に加盟させるという動きも活発化しているようだから、米側陣営では軍事と経済に密接なつながりがあるということが分かっていないらしい。

これに対して、国際情勢解説者の田中宇氏は、「CBDCとBRICS通貨=https://tanakanews.com/240505CBDC.php、有料記事(https://tanakanews.com/intro.htm)=」サウジアラビアやイランなど中東産油国も加盟し始めたBRICSを中心とする非米側陣営では、豊富な資源・エネルギーを前提に、政府系企業がデジタル通貨決済を行える仕組みも利用した緩やかな国際決済体制の構築を急いでいるという。

共通通貨を作るなら、発行者はBRICSが持つ新開発銀行(NDB)になる。同行は本部が上海で中国の影響が強く、共通通貨も中国の影響力が強くなる。共通通貨はBRICS加盟国の諸通貨の経済力の加重平均になるが、その点でも最大規模の中国が強くなる。中国をライバル視する印度はこれを嫌う。共通通貨を作ったら既存の各国通貨を廃止して共通通貨に統合するのであれば、大国であるBRICS各国は高プライドで国家主権の制限に敏感なだけに、困難がさらに増す。BRICS weighs in on using stablecoins in settlements, Russian official says

これらの要因があり、BRICS共通通貨の創設はとりあえず見送られている。代わりに、現行のように各国通貨をそのまま貿易に使い、まず各国通貨の決済をやりやすくするシステム(BRICSブリッジ)をBRICSが作る案が最近決められ、推進されている。Russia gives mixed signals about common BRICS digital currency

BRICSは、各国が自国通貨のデジタル版(CBDC)を新設し、複数のデジタル通貨の取引をつなげて相殺できるBRICSブリッジを新設して、BRICS諸国間の貿易決済を円滑にする構想だ。BRICS諸国の多くはCBDCをまだ持っておらず開発中だ。中国やUAEは持っているが、ロシアは来年から実用化する。CBDCを持っていない国は、既存の銀行間送金(SWIFT代替システム)で決済するが、その資金もBRICSブリッジで相殺できる。柔軟に作られている。BRICS announce a blockchain-based payment system to create a common currency

非米側陣営は、政治・軍事的な関係を深めていくだけでなく、経済的な協力関係も深めていくのだろう。折しも、非米側陣営の中核である中露関係では、ロシアのプーチン大統領が大統領就任の初の外国訪問先として中国を選び、目下、主要閣僚らを連れて中国を訪問中だ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240516/k10014450601000.html)。

国営の中国中央テレビによりますと、会談で習主席は、プーチン大統領の5期目の任期が始まったことに祝意を示したうえで「あなたの指導のもと、ロシアが国家の発展と建設により大きな成果をあげられると信じている」と述べました。そして「私とプーチン大統領は40回以上会談し、緊密な意思疎通を保ってきた。両国関係の安定的な発展は、両国の根本的な利益に合致するだけでなく、地域と世界の平和や安定、繁栄のためにもなる」と述べ、ロシアとの協力をさらに強化していく考えを示しました。

これに対し、プーチン大統領は「ロシアと中国は、実践的な協力関係を築き上げてきた。両国の協力は、国際社会を安定化させる重要な要素の1つだ」と述べ、経済や文化などの分野で両国関係をさらに深めたいという認識を強調しました。習近平国家主席とプーチン大統領らの会談は非公式会談も含め、公表される内容もあれば、非公開の内容もあるが、田中氏の分析したようなデジタル通貨も利用した非米陣営側の国際経済決済体制の構築も当然、含まれるだろう。

NHKは露中首脳会談について、「一方、プーチン大統領は会談の冒頭で『私たちは多極的な現実を反映した正義と民主的な世界の原則のために立ち上がる』と述べ、欧米主導ではない国際秩序の形成に向けて中国との連携を一層強化する考えを示しました」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240516/k10014451621000.html)と伝えている。露中の下には、サウジアラビアなどの中東産油国も結集し出したし、独自の民主主義国家と言われるインドも、中印問題は棚に上げて両国に接近している模様である。インドは両生類のような国だが、中露ともちゃんと接近している。対米隷属国の日本などとは全く異なり、外交面で主体性・独立性を有している。

今年秋に行われる111月5日の米国大統領選挙で、どちらかと言えばキリスト教徒(教会)を支持基盤とするトランプ陣営と安易に中絶を認めるなど反キリスト教の立場に立つバイデン陣営との対決の結果がどうなるかで、米国を盟主とする米側陣営の帰趨は決まるが、同国としては、本来のキリスト教国家としての姿を高次元的に取り戻したほうが良さそうだ。5月5日時点では、「激戦7州すべてで共和党のトランプ前大統領が民主党のバイデン大統領に先行する」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN273QJ0X20C24A4000000/)という。トランプ候補の裁判問題よりも、バイデン政権の経済政策の成否が大統領選挙に重大な影響を与えるだろう。

なお、NHKの「ウクライナ 軍の一部部隊が事実上撤退か 大統領は外国訪問延期(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240516/k10014450621000.html)」によると、ロシアがウクライナ東部ハルキウ州の重要戦略地帯を掌握し、ゼレンスキー大統領は対応に追われているらしい。

ロシア軍が国境を越えて侵入したウクライナ東部ハルキウ州ではウクライナ側の一部の部隊が事実上撤退したとみられ、ロシア軍が攻勢を強めています。ゼレンスキー大統領は予定していたすべての外国訪問を延期したと明らかにし、厳しい戦況を受けて対応に追われているものとみられます。(中略)。さらに、ロシア国防省はウクライナの南部ザポリージャ州でも集落のロボティネを掌握したと発表しました。ロボティネは去年行われたウクライナ軍による大規模な反転攻勢で、ウクライナ側が奪還に成功した拠点の1つで、ウクライナ軍はロボティネから交通の要衝トクマクへの進軍を目指していましたが、その後、反転攻勢が失速し、周辺では激しい戦闘が伝えられていました(註:ネオコン系でウクライナ戦争の戦況を歪めて伝えている戦争研究所の「分析」は入っていないようだ)。

ウクライナ戦争はウクライナの敗北で結果が確定している。何よりの証拠は、米側陣営ではウクライナ戦争が終結しない限り、ウクライナをNATOに加盟させる交渉はしないと言っていたが現在のところは、戦争中でも、ウクライナのNATO加盟の動きを活発化させる動きを強め始め出したことだ。これは、NATOに加盟する以外にウクライナに勝機は残されていないことを如実に物語っている。しかし、ウクライナがNATOに加盟しても露中を盟主とする非米側陣営に勝てるかは不明である。露中を盟主とする非米側陣営は何よりも人口が多く、核大国でもあるので、核対応能力は保有していると思われる。

こうした中で、オランダでは、対米従属外交に批判的で基本的にはウクライナに対する軍事支援を拒否する民衆政党の自由党が中心となる民衆政権が政権競技による妥協の末、誕生することになったようだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240516/k10014451191000.html)。フランスなど、対米従属外交を進めるだけのエスタブリッシュメント勢力に対する欧州の民衆の反発は強い。こうした欧州諸国での民衆政権の樹立・発足は、欧州の政治的趨勢になっていくだろう。

金地金相場の動向−下落から反騰に転換か

金地金相場がこれまでの下落(ただし、1トロイオンス=2280ドル割れはなかった)から反騰に転換した公算が大きい(https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/#gold_5year)。

 

 

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