
トランプ大統領が7月14日、①北大西洋条約機構(NATO)諸国経由でパトリオットなど防空システムを供与する②ロシアが50日以内にウクライナ戦争の停戦に応じなければ、ロシアはもちろん、ロシア貿易を行っている諸国に対しても100%の追加関税を課すーと語ったことから、トランプ大統領は大変節したとの見方が世界中を飛び回っており、国際情勢は荒れ狂った状態に陥っている。しかし、このトランプ発言は、トランプ大統領お得意の芝居、それも大芝居で、実際のところはプーチン大統領にキエフの空爆などによりキエフ政権を解体し、同大統領の望み通りにウクライナ戦争を「停戦」ではなく「終戦」に持ち込むための支援策だろう。
真意を汲み取る必要のあるトランプ発言ーウクライナ戦争終結でプーチン大統領支援か
まず、トランプ発言についてロイター通信の「トランプ氏、ウクライナに兵器供与 50日以内の和平なければ対ロ制裁」と題する記事から引用しておこう(https://jp.reuters.com/world/ukraine/B63WDITM7FIWVNXPRXL6RGJOOA-2025-07-14/)。
[キーウ/ワシントン 14日 ロイター] - トランプ米大統領は14日、ホワイトハウスで北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長と会談し、ロシアの侵攻を受けるウクライナにNATO経由で最新鋭兵器を供与すると明らかにした。同時に、ロシアが50日以内に和平合意に応じなければロシアに制裁を科すと表明。これまでのロシアへの対応を大きく転換させた。
トランプ大統領は大統領執務室でルッテ氏と並んで座り、ロシアのプーチン大統領に失望していると記者団に述べた上で、数十億ドル相当の武器がウクライナに提供されると表明。「最先端の兵器を製造し、NATOに送る」とし、NATO加盟国が武器代金を負担すると述べた。NATO経由でウクライナに提供される武器には 防空システム「パトリオット」ミサイルが含まれる。トランプ氏は「バッテリーを含む完全なセットだ」とし、「数日以内に、極めて迅速に」ウクライナに送られる可能性があると述べた。
また、NHKはロイター通信などの世界的な通信社を参考にして、「トランプ大統領 “ロシア 50日以内に停戦なければ厳しい関税”」と同じような報道を行っている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250715/k10014863391000.html)。
アメリカのトランプ大統領は、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアが50日以内に停戦に応じなければ、厳しい関税措置をとると表明しました。ロシアの製品を輸入する国に対してアメリカが関税を課すとしていて、ロシアに対する圧力強化に踏み出した形です。
また、ロシアが50日以内にウクライナとの停戦に応じない場合「非常に厳しい関税を課す。およそ100%の関税、『2次関税』と呼ばれるものだ」と述べ、新たな関税措置をとると表明しました。トランプ大統領が言及した「2次関税」は、ロシアの製品を輸入する国に対してアメリカが関税を課すというもので、制裁的な意味合いがあるとみられます。この日、トランプ大統領は、「2次関税」の対象など詳細について言及しませんでしたが、欧米の制裁を受けるロシアは、中国やインドなどに原油や天然ガスを輸出して主な収入源としており、こうした国を視野に入れている可能性があります。
このトランプ発言については、いろいろ問題がある。その第一は、既に述べたようにパトリオット・システムをNATO経由でウクライナに供与しても、プーチン大統領率いるロシア軍は超音速ミサイル以上の超高速ミサイルを保有しており、パトリオット・システムを破壊できるということだ。パトリオットでは首都がキエフのウクライナは防ぎきれないということだ。つまり、キエフにパトリオットを配備しても、キエフ政権は破壊される。
なお、現代の戦争では軍事用ドローンが大活躍しており、キエフなどウクライナの主要都市を猛攻撃している。今年2025年上半期には、2万5000機製造したという。従来の約10倍の生産量だ(https://www.youtube.com/watch?v=psO6pBD8Hak)。パトリオットなどを購入してもウクライナの防空システムの構築には役に立たない。ポーランドを始めとした欧州との主要交通機関は、鉄道のままだろう。
第二に問題なのは、パトリオットなどのウクライナの防空システムを構成する軍事兵器はいったん、欧州NATO加盟諸国が輸入して米国から購入しなければならない。英独仏を中心としたNATO加盟諸国は急激なインフレが長期間続いたため、経済的に困窮しているというのが実態だ。だから、ドイツのための選択肢やフランスの国民連合、英国のリフォームUKなどの勢力の台頭が凄まじく、英独仏は司法を利用して政治的弾圧を行わざるを得なくなっている。話を元に戻して、分割にしてもNATO加盟諸国の購入余力は限られている。これらの国々の国民は強く反発するだろう。これらについては、Youtubeの「外交の真実」チャンネルの最新動画「ロシア猛攻にトランプ激怒」(https://www.youtube.com/watch?v=kdW9cJNRasw)に詳しい。
そして欧州NATO加盟諸国が輸入してから次に、パトリオットなど、その軍事兵器をウクライナに転売するという流れになる。無償供与では、NATO加盟諸国の経済がもたない。もちろん、ウクライナの輸入代金の支払いは分割になるだろうが、財政余力がなく破綻寸前(注:30兆円の対外債務を抱えており、事実上債務不履行に陥っているようだ)とも言われるキエフ政権には、分割にしても支払い余力はない。Youtubeチャンネルの「ニキータ伝〜ロシアの手ほどき」では、世界最大の投資家であるブラックロック(https://x.gd/Yjcht)もウクライナ復興基金から撤退したと言う。なお、ウクライナでは死亡兵士の遺族に対しては法律で、キエフ政権が日本円にして5000万円程度の死亡補償金を支払うことが義務付けられているが、裁判所の許可を必要とするなど受給要件を極めて厳しくしており、事実上、支払わないと見られている。
また、兵士の前線からの逃亡や徴兵拒否で、肝心の前線で戦う軍人の数が極めて少なくなっている。こういう状況の中でウクライナに対し、さほど役に立たない高価な軍事兵器を有償で供与しても、今のロシア軍圧倒的優勢の戦闘状況を劇的に転換できるか、はなはだ疑問である。
第三の問題は、ロシアとロシアと貿易を行う国に対しては、100%の追加関税を課すとのことだが、ロシアと友好的な中国やインドがこれに応じるとは思われない。中国は、米国の高度産業に欠かせないレアアースの対米輸出の禁輸で対抗するという手もある。この追加関税はかえって、BRICSやグローバルサウスの米国離れ、結束をもたらすのではないか。これについても、次を参照してほしい。
オールドメディアの「トランプ大統領、ウクライナ政策根本的転換」の見方に対して、日本の「ドイツのための国民の選択肢」、「フランスの国民連合」、「英国のリフォームUK」とも呼ばれる参政党のブレーンであり、国際情勢アナリストの及川幸久氏はYoutubeチャンネル・THE COREの最新版「トランプがロシアにサプライズ制裁」(https://www.youtube.com/watch?v=1VvKswzkcIU&t=380s)で、トランプ発言の狙いはネオコンを含む共和党の一致結束のための手段だとしている。来年2026年の中間選挙で民主党に勝利するためだ。
既に、日本貿易振興機構(ジェトロ)では政権与党・共和党が不利になるとの見方を示している(https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2025/e3f1de72cba05839.html、https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2025/23710cf2802470f7.html)。
こうした見方に対して、及川氏によると、米国軍長官の元顧問ダグラス・マクレガー大佐は、①表向きウクライナ戦争を支援してきた共和党ネオコン議員(注:リンジー・グラハム上院議員たち)がトランプ大統領に対して、ウクライナに対して時間を与えるように強く迫っているのに対して、トランプ発言は悪くない措置である②米露政権当局者はやはり水面下で、非公式会談を続けているーなどと語っていると言う。
ただし、ネオコンと言えばウクライナ戦争の誘引など、バイデン政権下の民主党を支えてきた勢力であるが、国際情勢解説者である田中宇氏の見立てによると実際は、米英諜報界(ディープ・ステート=DS=)内の「隠れ多国主義者」の傘下にあるという。ウクライナ戦争をわざと長期化させ、ロシアの圧倒的な優位とウクライナの敗北を導いてきたのは、ネオコンである。
注目すべきなのは関税措置の実行までに、50日間の猶予期間を与えていることだ。ロシアのプーチン大統領は7月に入ってから、超音速ミサイルや大量の軍事ドローンでウクライナに対して大規模攻勢をかけ、ドネツク、ルガンスク、ザポリージャ、ヘルソンの併合4州に続いて、スミ州、ハルキウ州などに「緩衝地帯」を設け、事実上の併合地域の拡大を行っている。「50日」の猶予期間というのは、ロシアがネオ・ナチ傘下のキエフ政権を解体して、中立もしくは親露政権の樹立を導き、一時的な停戦を経てすぐに終戦にもちころための期間である可能性もおる。

なお、トランプ大統領は長距離ミサイルによるモスクワ攻撃は行わないように忠告(注:実際は命令)している(https://jp.reuters.com/world/ukraine/ZB6XHZNYJNKHVIZ2XLSHZXCILI-2025-07-15/)。
[ワシントン 15日 ロイター] - トランプ米大統領は15日、ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアの首都モスクワを攻撃するべきではないと述べた。ホワイトハウス南庭で行われた記者団の質問に応じた。英紙フィナンシャル・タイムズはこの日、トランプ氏がウクライナにロシア領内への攻撃強化を内々に働きかけ、ゼレンスキー大統領に対し、米国が長距離兵器を提供すればモスクワを攻撃できるか質問していたと報じた。トランプ氏は現在ウクライナ側に立っているのかと聞かれ、「私は誰の側にも立っていない」と強調。「殺りくを止めたい」ことから「人類の側」に立っているとの考えを示した。ロシアのプーチン大統領は50日以内に停戦に合意すべきで、さもなければ制裁が発動されると改めて表明。50日という期限について「それほど長いとは思わないし、それより早くなる可能性もある」とした上で、「50日後に合意に達していなければ、状況はひどいものになるだろう」と述べた。ロシアとの合意形成に向けて何らかの協議が計画されているかについては言及しなかった。
反トランプで紙面を作成している日経新聞のサイトでも、「トランプ氏『モスクワ標的自制を』 と題する記事を報道している。
【ワシントン=坂口幸裕、ウィーン=金子夏樹】トランプ米大統領は15日、ウクライナへの軍事支援をめぐり、ウクライナのゼレンスキー大統領に「(ロシアの首都)モスクワを標的にすべきでない」と自制を求めた。ウクライナへの軍事支援で長射程兵器を供与する計画はないとの考えも示した。
ウクライナへの武器供与めぐり、モスクワへの攻撃や、これに関して長距離ミサイルの供与を否定したりしているトランプ大統領の発言が事実であるとすれば、意味慎重な発言である。さて、及川氏は最新動画でさらに、トランプ発言後のロシアの情勢について、次のように述べている。モスクワ証券取引所の株価上昇は、グラハム上院議員が500%の対露制裁関税を課すと公言していたが、トランプ大統領が100%に抑えたため(後述のニキータ伝による)。
ここで、迅速な措置とはウクライナ戦争をもう引き延ばすことを止め、早期に終戦に持ち込むことだ。その後は、米国と文化・政治・経済・軍事関係での協調を実現することである。トランプ大統領は海千山千の大統領であるが、サイト管理者(筆者)としては、政策の一貫性は有していると見ている。トランプ発言は真意を汲み取る必要がある。
ウクライナ戦争を欧州NATO加盟諸国に丸投げしたトランプ発言
Youtubeチャンネル・「ニキータ伝〜ロシアの手ほどき」最新版「トランプ発言を深掘り〜50日間の意味とは⁈」(https://www.youtube.com/watch?v=uuLPIrHv5Eg)によると、トランプ発言はウクライナ戦争を欧州NATO加盟諸国に丸投げしたものだということである。つまり、欧州連合(EC)に対して30%の関税をかけたうえ、ECのNATO加盟諸国にパトリオットなどの軍事兵器の代金を支払わせて、ウクライナの面倒を見させる。そして、EC加盟諸国50日間の猶予期間の間は、ロシアは徹底してウクライナに対する攻撃を行うことが出来るようにして、ロシアを側面支援したということだ。
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50日間の猶予期間は、ロシアがウクライナに対して超高速ミサイルや軍事用ドローンで徹底的に攻撃することが出来る。これは、キエフ政権にとっては深刻な打撃になる。英独仏を主要国とするNATO加盟諸国には、このロシアの猛攻撃を阻止する手立ては恐らくないだろう。キエフ政権は、英独仏を主要国とするNATO加盟諸国から、憲法で禁じられている内閣改造を命じられ、強行しようとているようだが、それでもキエフ政権に対抗する勢力はウクライナ国民の間に支持を広げるだろう。軍事的敗北と国内政治分裂を予想して、プーチン大統領は、年・ナチ勢力の一掃という最終目的からずれることなく、ウクライナ戦争の早期終決に転じたのかも知れない。
なお、ロシア政府が後援しているスプートニクJapan(https://x.gd/tdoVX)はXに次のように投稿している。
【私は人類の側に立つ……ロシアとウクライナ、いずれの味方でもない=米大統領】
🕊️トランプ大統領は15日、ウクライナ紛争への関与を巡り質問された中で、「誰の味方でもない」、「私は人類の側に立つ」と答え、人命保護を最優先とする考えを示した。🇷🇺またウクライナ情勢を解決したいというロシア指導部の意欲を信じるとも強調した。💬「彼(プーチン大統領)はよく平和を望んでいると言っている。そして彼がそう望んでいると思うし、そう願っている。すぐに分かるだろう」
❗️そのほか、トランプ大統領による主な発言。
🔸ウクライナ情勢の猶予として定めた50日以内に双方は合意を形成できる。形成できない場合、米国はロシアに対して追加制裁を発動する。
🔸ウクライナに長距離ミサイルを供与する計画はない。
🔸プーチン大統領と会談する可能性は残されている。
🔸米軍がウクライナに駐留することはない。
金地金国際相場は比較的安定、日本の金地金相場は自公政権の大敗予想で上昇傾向
三菱マテリアル(https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/)によると、金地金国際相場は比較的安定、日本の金地金相場は自公政権の大敗予想で上昇傾向になっている。自公政権は崩壊し、今後は政策実現のための部分連合を繰り返す政治情勢になりそうだ。
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