ウクライナ事変、米英ディープ・ステート(DS)陣営が捏造報道ープーチン政権逆利用か(追記:ウクライナ事変の行方)
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現在のウクライナ事変について、米欧日諸国陣営のマスコミが連日捏造報道をしているようだが、ロシアのプーチン政権はドル基軸通貨体制(ブレトンウッ2)破壊のためわざと捏造報道に反論しない情報戦争を進めている可能性が強い。国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏が5月3日公開の「ウソだらけのウクライナ戦争」(無料記事)で明らかにした。

米国の「大本営化する」米欧日陣営のマスメディア

「ウソだらけのウクライナ戦争」(無料記事)はこちらのURL(https://tanakanews.com/220503ukrain.htm)でご覧いただけます。なお、田中氏の投稿記事の根拠については、根拠にした記事へのリンクを張っておられます。

米欧日諸国陣営のマスコミに対して捏造情報を提供している主な機関は、田中氏によると、米国のホワイトハウスの安全保障会議に設けられた「タイガーチーム」らしい。タイガーチームの主な任務は、①「極悪戦争犯罪人のプーチン大統領」がロシア軍に命じてこれまた「極悪非道の残虐行為(戦争犯罪)」を行わせている②ロシア軍が生物・化学兵器を使用したとの捏造報道(注:田中氏によると、英国はロシア側が生物・化学兵器を使ったとの捏造情報を流すためのプロの情報工作機関である「タイガーチーム」傘下の「白ヘルメット」部隊を現地入りさせている)を流し、米国を盟主とする北大西洋条約機構(NATO)が直接、ウクライナを「支援する」ための機会を創出するーというものだ。

なお、NATOが捏造情報を利用してウクライナに介入してきた場合のロシア軍の対応は今のところ、予測できない。田中氏はサイトのトップページで閲覧できる記事のリード文を次のように投稿しておられる。

2月末のウクライナ開戦から2か月あまりがすぎたが、この戦争に関する米国側(米欧日)のマスコミ報道はウソだらけのままだ。「ロシア軍は戦略的に大失敗して、残虐行為や過激な破壊攻撃といった戦争犯罪をウクライナで繰り返しつつ、ウクライナ軍の果敢な反撃を受けてキエフ周辺から撤退し、ロシア系が多い東部のドンバスにいったん引きこもり、そこからゆっくり南部に再侵攻しようとしている」といった感じの報道になっているが、露軍は大失敗していないし、残虐行為も過激な破壊も戦争犯罪も犯していない(注:サイト管理者(筆者)の知人はウクライナに住んでいるが、LINEアプリなどによる日本居住者とのメッセージの授受は可能で、ロシア軍がインターネット回線を含めた社会インフラを破壊しているようにも思えない。米国のイラク侵略の際にはイラク国民が10万人以上虐殺され、社会インフラも徹底的に破壊された)。ウクライナ軍は露軍に包囲されており、ほとんど反撃できていない。露軍は4月初めにキエフから撤退したが、それはキエフ周辺のウクライナ軍の施設を大体破壊したからだ。 (市民虐殺の濡れ衣をかけられるロシア) (ロシアが負けそうだと勘違いして自滅する米欧

わが日本では、露軍は4月初めにキエフから撤退したが、それはキエフ周辺のウクライナ軍の施設を大体破壊したからだとかの報道は一切ない。一部しか報道されないロシア側の報道内容を丹念に拾っていけば、現在のウクライナ事変の情勢は、一定の限界があるにしても全く別の視点で把握できる。

ただし、例えばNHKのネット報道を見ると、ロシア側の主張に対しては必ず、「一方的に」と主観が入った枕詞(まくらことば)が付く。違和感を感じられる閲覧者も少なくはないのではないか。また、当初は日本の法務省の外郭組織である公安調査庁が「アゾフ大隊」はネオ・ナチ勢力として警戒していたのにこれを削除し、今やNHKはネオ・ナチ勢力の主力部隊である「アゾフ大隊」を英雄視し、同大隊が牛耳ってきたアゾフ海の港湾都市であるマリウポリの製鉄所で、ロシア軍からの攻撃から守るため「マリウポリ市民」をかくまっているというのも何だか納得が行かない。

ウクライナの東部ドンバス地方ロシア系ウクライナ住民を虐殺してきたアゾフ大隊が、マリウポリ市民を「人間の盾(人質)」に取っているから、ロシア軍が攻撃できないとの見方も成り立つのではないか。また、当初はウクライナへのNATO加盟を諦め、ウクライナの安全保障システムの確立を条件に早期停戦交渉を行っていたゼレンスキー政権が突如、米欧日諸国から最新の軍事兵器の供与を極めて強く主張するようになり、「徹底抗戦」の構えを見せて強硬路線に転じた理由も不明だ。

田中氏は「タイガーチーム」について、次のように述べておられる。

タイガーチームは、イラク戦争を起こしたブッシュ政権中枢のネオコンと同様、政権と覇権の中枢に陣取って、自分たちと異なる分析や戦略案を出してくる諜報界のまっとうな他の勢力からの提案を潰す役目も果たしている。以前に紹介したスイスの諜報専門家であるジャック・ボーは「昨年来、ウクライナの状況を正確に把握している欧米の諜報機関がまったくなくなってしまったことに驚く。多くの諜報機関は、マスコミが報じているインチキと同じものをウクライナに関する諜報の結論にしてしまっている」と言っている。NATO諸国の全体で、タイガーチームに楯突くまっとうな分析を出してくる諜報員は潰される仕組みが作られているのだろう。ジャック・ボーの怒りは当然だが、彼は欧州人だし元当局者なので、米中枢の仕組みに関する深読みをしていない(彼はもともと軍産・権威筋内部の専門家で、今回は諜報界(注:軍産、権威筋、諜報界という概念は、実質的にはサイト管理者(筆者)の指摘しているディープ・ステート(DS)のことと思われる)がひどい状態になっていることに対する義侠心から表に出た)。バイデン政権は、トランプと違うやり方で、予定通り順調に米国覇権を自滅させている。 (Jacques Baud: “The Military Situation In The Ukraine”) (ウクライナ戦争で最も悪いのは米英

タイガーチームのような組織は、巨額の裏金・裏の予算を持っている。ウクライナ開戦後、米国は臨時の予算を組んで(注:130億ドル規模)ウクライナへの軍事支援を急増させている。しかし、米政府が米国内の軍事産業に作らせてウクライナに送り込んだことになっている巨額の兵器群のほとんどが、実際にウクライナ軍の現場に届いているのかどうか確認できず、追跡手段も作られていない。ウクライナ軍部隊の多くはすでに露軍に包囲され、米国などが兵器を送っても受け取れる状況にない。米国がウクライナに送ったはずの兵器の大半は、たぶん兵器の製造すら行われておらず、米政府が払った資金を軍事産業が管理して、それがタイガーチームの下請けのシンクタンクや実働部隊に分配されているのだろう。 (US weapons for Ukraine disappearing into ‘black hole’

ホワイトハウス

 

なお、バイデン政権が、トランプ(前大統領)と違うやり方で、予定通り順調に米国覇権を自滅させている、という見方はサイト管理者(筆者)としては慎重に考慮しなければならないと思われるが、ディープ・ステート(DS)内部で米国一極支配体制を死守しようとする勢力と、米国一極支配体制の維持には巨大なコストがかかるため、多極化した世界を望む勢力が対立しているということはあり得ると思う。ただし、バイデン大統領が「隠れ多国主義者」であるというのは、買いかぶりではないかと思っている。

話を元に戻すと、「タイガーチーム」による米国でのマスメディア・コントロール作戦は次のようなもので、太平洋戦争当時の大本営発表と同じようなものだ。

ウクライナ戦争の大ウソを維持するため、米政府は言論統制をどんどん強化せざるを得ない。米政府は4月に入り、新たな試みとして、米マスコミの中でCNNとブルームバーグ通信の編集者を大統領府(ホワイトハウス)の安全保障会議に出入りさせ、大統領府直結で記事を書けるようにしてやる代わりに、書いた記事を大統領府の担当者が確認し、不都合な言い回しやニュアンスを替えさせてから報道させる新しい検閲体制を組んだ。この新たな検閲体制により、米国のマスコミは政府との一体化を増大させられている。日本の戦争中の「大本営発表」をもっと巧妙にしたものだ。White House Holds CNN and Bloomberg ‘by the Throat’ Greenlighting Fakes About Russia, Source Says

これまでのようなホワイトハウス「高官」によるリークでは、マスメディアがホワイトハウスの狙い通りの記事を書いてくれないために、さらに踏み込んで検閲体制を敷いているというわけだ。ウクライナ事変に関して真実、深層・真相を語る者は「極悪人」扱いにされ、ホワイトハウスが垂れ流す偽造情報を「正しく報道する者」は「真実」を語る勇気ある言論人として高く評価されている。「タイガーチーム」は、英国の作家ジョージ・オーウェルが近未来小説として1949年に刊行した「1984年」に登場する「真理省(注:事実を歪曲・捏造し、大義を独裁的に決める政府の機関)」を彷彿(ほうふつ)させる。要するに、米英を支配するディープ・ステート(DS)傘下の米欧日諸国陣営では今や、言論・報道の自由がその重要な根幹をなす基本的人権(良心・信仰・思想の自由、生存権)が破壊され、ネオ・マッカーシズムが吹き荒れているということだ。

問題ないし疑問は、ロシア側がこうした捏造報道に対して、強く反論していないことだ。これについて、田中氏は次のように述べている。

ウクライナ戦争がウソだらけなのは、米英が作っているウソをプーチンのロシアが根強く訂正せず、ウソを放置しているからでもある。何度も書いているが、ウクライナ戦争が長期化するほど、この戦争で作られている米国側と、露中など非米側との決定的な対立構造が長く続き、資源や食料を握る非米側が優勢になり、米国側はインフレが金融崩壊に発展して破綻・敗北していく。米英が作ったウソの構図をロシアが放置した方が、この戦争は長期化する。それを知っているプーチンは、露政府にウソをあまり訂正させず放置している。露軍はウクライナでの戦闘をゆっくり展開している。これも長期化のためだ。米国側のマスコミ権威筋は、戦争は急いで終わらせないと失敗なので露軍は負けているとしたり顔で言っているが、全く間抜けである。 (米露の国際経済システム間の長い対決になる) (Pelosi’s ‘Victory’ Rhetoric During Surprise Trip To Kiev Making Some Allies Nervous

真の正しいジャーナリストなら、ウクライナのゼレンスキー政権の主張だけでなく、ロシアのプーチン政権の主張にも耳を傾けるはずだが、そうした勇気あるジャーナリストは今や、排除され、言論は抹殺される状況になっている。しかし、「天網恢恢疎にして漏らさず(天の網の目は荒いように見えるが、結局、真実は明らかになる)」という有名な格言がある。世界はもう既に大激動期に入っている。

ウクライナ事変の行方についてーウクライナ分割の可能性も

ウクライナ事変の行方について、前述の田中宇氏が本日5月5日「同盟諸国とロシアを戦争させたい米国(無料記事)」と題する大胆な見通しを公開された(https://tanakanews.com/220505russia.htm)。サイト管理者(筆者)の読み方を述べさせていただくと、第一に、米国は決してウクライナに自国軍(米軍)を派遣しない(注:派遣するとロシア軍が報道とは異なって反転攻勢するため米軍の犠牲者が多くなり、米国民に厭戦気分が高まると同時に、秋の中間選挙でバイデン大統領の民主党が大敗北する)。

第二に、米国はこのため、北大西洋条約機構(NATO)加盟の欧州諸国にロシアと戦争をさせたがっているが、大陸欧州諸国のうち、ドイツとフランスはウクライナ戦への参戦を尻込みしている。一方で、かつて現在のウクライナの西部を支配していたポーランドやモルドバ東部の汎ドニエストル地方=事実上、ロシアが支配下に置いている=を支配下に置こうとしているルーマニアがロシアに対して宣戦布告する可能性があるが、ロシアの狙っている「ノボロシア」(ウクライナの東南部と汎)構想の実現の障害にはならず、結局のところ、ゼレンスキー大統領率いるウクライナは分割される。なお、ロシア軍は実際はウクライナとの戦闘で優位に立っているので、戦術核兵器や生物・化学兵器を使う必要はない。だから、第三次世界大戦にはならない。

米国自身は決してウクライナに派兵しない。米大統領府がウクライナの戦況を歪曲して実際と全く違う「露軍の大敗北」の話にしているからだ。今のように戦況をわざと大間違いして議会や国民に信じ込ませ、諜報界に正しい調査をさせないまま米軍を派兵すると、米軍は失敗して無駄な戦死者を出し、厭戦気運が高まってバイデンの人気がますます下がる。米大統領府が戦況分析を故意に大間違いしている限り、米軍は派兵されない。大間違いの戦況分析を正しい方向に転換するのは困難なので、米国は今後もずっとウクライナに参戦しない。ポーランドや独仏に参戦しろとせっつくだけだ。

NATOの盟主である米国が参戦しないので、ポーランドがウクライナに進出して露軍に潰されても、(大陸欧州二大国の)独仏が外交的に右往左往するばかりで軍事的に動かず、米国も傍観するだけだと、ポーランドは見捨てられて大敗北になってしまう。その場合、NATOの5条(注:NATO加盟国の1つに対する攻撃はNATO全体への攻撃とするという原則)が空文であることも確定してしまう

(最近ロシアの政府筋は「米国側が激しく攻撃してきたら核兵器による反撃も辞さない」といった感じのことを言い続けている。それを受けて米国側の人々は「ロシアが核戦争を起こしそうだ」と言っている。米国側では「ロシア軍は、核兵器に頼らねばならないほど追い詰められているんだ。やっぱりロシアはウクライナで負けている」といった見方も出ている。私が見るところ、これらは間違いだ。ロシアは、米国側の人々を怒らせて、より強い対露経済制裁を仕掛けてくるよう誘導するために、核兵器使用をちらつかせている。米国側の人々が激怒し、ロシアからの石油ガス資源類の輸入停止など対露経済制裁を強くやるほど、その制裁はロシアでなく米国側諸国の経済と国民生活に大打撃を与え、米国側が自滅していく。実際のロシア軍は余裕があり、核兵器を使う必要がない。ロシア側がブチャ事件など戦争犯罪の濡れ衣を放置しているのも、米国側の人々を激怒させ、米国側に自滅的な対露経済制裁を強めてもらいたいからだ。米国側のマスコミ権威筋は、ロシアをこっそり支援する米中枢の隠れ多極派に誘導されている) (Russian TV Warns Britain Can Be ‘Drowned In Radioactive Tsunami’ By Single Nuclear Sub Strike)(中略)

米国は沿ドニエストルを新たな戦場にしたいらしく、ルーマニアに兵器をどんどん送り込んでいる。戦争を拡大したがっているのはロシアでなく米国側だ。ゼレンスキー大統領のウクライナ政府も、自国民のことより米国傀儡として戦争を拡大することを最優先にしている。ウクライナ政府を支援するのはやめるべきだ。対米従属もできるだけ早くやめた方が良い。中立国になれば石油ガス資源類にも困らないですむ。 (US sending more troops to Romania – president Iohannis

要するに、ロシアはノボロシア構想を実現させ、ポーランドはウクライナの西部を占領するだろうから、最終的にはウクライナは分割されるということになる。ウクライナの最高責任者であるゼレンスキー大統領の大統領としての見識が疑われる事態だ。なお、欧州連合(EU)がロシアからの天然ガスや原油の禁輸に踏み切るとの報道がなされても、欧州大陸諸国は簡単に天然ガス・石油資源のロシア依存から脱却することはできない。ウクライナ事変の今後を展望する上で、田中氏の論考は貴重な論考だ。

なお、米欧日陣営諸国のマスメディアは、「台湾海峡有事論」を唱え始めたようだ。これは、ロシアや中国、中東諸国、イランなどコモディティ大国の非米側陣営を利することになる。



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