環太平洋連携協定(TPP)は憲法違反ー野党は国会で徹底的追求を

米国のゴリ押しで日本は国益を失った形でTPPを政府間レベルで締結した。焦点は秋の臨時国会に移るが、前から予想されていたとおり、「投資家対国家紛争解決条項」(ISDS=Investor State Dispute Settlement=条項)が含まれていたことが明確になり、国民主権を侵害する憲法違反の「条約」であることが明白になった。

ISDSはもともと、被投資国に投資した投資家の利益を守るものであったが、投資家が被投資国の制度などによって不利益を被ると被投資国政府に対して「行政訴訟」を起こし、判決は被投資国の裁判制度に委ねるというのが主権在民、代議制民主主義法治国家、三権分立制度の筋であり、根幹である。

ところが、TPPでは裁判は主権の及ばない世界銀行の下部組織である「国際投資貿易紛争解決センター」に丸投げになる。ところで、同銀行は戦後のブレトンウッズ体制の根幹であり、米国はワシントンに置き、歴代の総裁は1946年の設立以来、全て米国人である。その米国人総裁(米国行政機関は実質的に、軍産複合体のコントロールを受けている)がISDSの裁判員を任命する仕組みだから、日本政府(日本国憲法上は主権者国民の代理機関。ただし、国民には残念ながらいわゆる「御上」の意識が根強い)が公平な裁判を受けられる保証はどこにもない。むしろ、米国による日本の「植民地化」の完成形態となる。

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このISDS方式は、1994年に米国・カナダ・メキシコ三カ国間で締結された北米自由貿易協定(NAFTA)で設けられたが、協定発行後46件も訴訟が行われた。結果は、米国が訴えられたのはわずか15件で、敗訴はゼロ。逆に、米国の投資企業がカナダ、メキシコに訴えた件数は36件もあり、米国投資企業が賠償金を得たのは6件、請求棄却はわずかに6件。残る24件は何らかの形で和解などに終わったと見られるが、その詳細は不明だ。ISDSが日本の裁判制度を無視し、米国に奉仕する機関であることは明白。日本はこれによって、有益な社会経済的規制は廃止を余儀なくされ、「日本の社会基盤は崩壊させられ、米国型の法律を埋め込んでゆくことに利用される」(菊池英博著「新自由主義の自滅」)のは明白である。

政府はISDSに対して、「4  仲裁は、投資紛争解決国際センター(ICSID)など、中立的な仲裁機関を通じて行われます。ICSIDが世界銀行の傘下であることから、米国に有利な判断が下されるのではないかとの懸念も聞かれますが、そもそも、ICSIDは、仲裁のための行程管理など事務的なものを行い、仲裁の判断は行わないため、そのような指摘は当たりません。また、通常、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)やストックホルム商業会議所仲裁協会(SCC)、国際商業会議所(ICC)など、ICSID以外の仲裁規則・機関を選ぶこともできます」などと反論している。

しかし、この反論は、①ICSIDが単なる事務機関とする誤り②歴史的に米国系多国籍企業が膨大な賠償金を手にしてきた歴史的事実にあえて触れない③日本国憲法と多国間条約との効力の違いについてあいまいで、突っ込んだ検討がなされていない③「アメリカ様」の要求を断って、他の国際仲裁機関を選ぶことは安倍政権の対米隷属性格からして不可能ーなどの意味で、官僚の国民を騙すいつもの手に他ならない。

今回のTPPに対しては、戦争法と同様に「憲法違反」として国民的反対世論を換気していかなければならない。①戦争法廃止②TPP脱退(条約よりも憲法が上位法に当たるから、脱退できるはずである)③核兵器と「双子の悪魔」(原子力専門家・広瀬隆著「東京が壊滅する日」)のひとつのあくまである原子力発電の廃止ーの三項目は分解不可能である。それは、これらを束ねているのが米国を中心とした世界的な軍産複合体と新自由主義であるからである。来夏の参院選ではこの三本柱の政策を柱に、「平和と共生党」を組織し、良識ある政治家を説得して取り込んでいけば、32の1人区(実質、少選挙区)で大勝し、必ず勝てる。

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なお、TPPの問題点を改めて掲げておく。

  1. 政府が、「聖域なき関税撤廃」は農業を始め重要な産業の破壊、死を意味する。
  2. 自動車等の工業製品の数値目標は自由貿易の理念に反する。
  3. 混合診療を推進することで、国民皆保険制度が崩壊、人の命に「格差」が生まれる。
  4. 米国のモンサントなど遺伝子作物を強要され、食の安全安心の基準が守られない。
  5. ISDS条項は憲法違反である。
  6. 政府調達・金融サービス等は米国多国籍業の利益に叶うように改変させられる。

実は、自民党は2012年の師走選挙でこれらの内容を踏まえ、農村地域に「TPP交渉参加反対」の大きな看板を掲げ、農家の票を騙して奪い取った経緯がある。自公政権は、国民を舐めきっていることに主権者は気づかねばならない。

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なお、東京新聞2015年10月7日朝刊によると「首相」安倍晋三氏は、関税品目の撤廃について主権者国民の代表者たる衆参の国会決議も踏みにじった。それによれば、2013年に衆参両院で「コメや乳製品をはじめとする農産物5品目などの関税を維持する」との国会決議を行った。この国会決議を守っておれば、関税撤廃率は高々93・5%、さらに「農産物5品目などの」との「など」の文言を踏まえれば、日本の農業に悪影響を与える品目も含めて90・7%以下に留まるはずであった。

しかし、同紙によると9018品目のうち、「約95%の関税が撤廃されることが分かった」という。これだけでも、国会が国民の代表である当たり前のことからすれば、今回の環太平洋連携協定(TPP)締結が主権者国民の意思を愚弄し、民主主義を破壊するものであることが分かる。

主権者国民は憲法違反の戦争法廃止とともに同じく憲法違反のTPP批准阻止、脱退を推進していかなければならない。

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なお、明日2015年10月8日17時55分から憲政記念会館で「平和と共生オールジャパン」の総決起集会が開かれますので、ご参集お願いいたします。

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