黒田東彦総裁率いる日銀が2016年1月29日の日銀政策決定会合で、金融機関が日銀に預ける日銀当座預金の一定の残高に対して、従来プラス0.1%の金利を付与していたのをマイナス0.1%の金利を付与する(資金の保管料を取る、金融機関からすると預け損になる)奇策を決定、広義の金融市場は大荒れになった。取りあえずは世界的な株高になったが、日銀はこれまでベース・マネー(市中に流れている現金残高と日銀当座預金残高の合計)を増やせば、企業や個人の資金需要が活性化し、市中のマネー・サプライ(マネーストック)が増えて景気は良くなると言っていたのだから、この理屈と反対のことを行ったわけだ。これは、「黒田バズーカ砲」の論理的破綻を意味する。日本の経済はいよいよ「未踏の世界」に迷い出ることになる。

2013年3月に日銀総裁に就任した黒田東彦氏は、2年間でマネタリー・ベースを2倍にし、消費者物価上昇率を2%に引き上げるとともに、名目国内総生産(GDP)を3%にするとの「黒田バズーカ砲」の第一弾を放った。しかし、世界的な不況を主因とする原油価格の激落などから物価上昇率目標が達成できないと見るや、2014年10月31日に「マネタリー・ベースの残高を2015年末までに350兆円まで増やす」と第二弾を放った。

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日銀が市中金融機関の保有している長期国債を大規模に買い上げ、市中金融機関はこれを日銀当座預金として日銀に預けているから確かに、マネタリーベースは大規模に増加している。しかし、消費者物価上昇率は消費税率の5%から8%への引き上げ分を調整した消費者物価上昇率はゼロ%程度で低迷している。要するに、デフレ不況はまだ厳然として続いているのである。

実際、マネタリーベースは「2013年3月135兆円」→「2014年3月209兆円」→「2015年3月で296兆円」と大規模に増価したものの、マネーサプライ(マネーストック)はそれぞれ、「1150兆円」→「1174兆円」→「1177兆円」と2年間でわずか22兆円しか増えていない。民間の資金需要がないことの証拠である。民間需要が活性化し、民間の投資需要、消費需要が活性化しない限り、マネタリーベースを増やしても民間の資金需要は出てこない。こういう場合には、財政出動とその乗数効果が経済政策の王道である。

ところが、安倍政権と財務省は緊縮財政を強化している。いくら、黒田バズーカ砲を撃っても効果がないのである。だから、経済は活性化せず、消費者物価上昇率も2%に達しない。そこへもってきて、今度はマネタリーベースを減少させる第三弾を撃った。やることが、国家の中央銀行である日本銀行としては、まるでちぐはぐすぎる。もはや、日銀総裁として黒田東彦氏は市場から信用されなくなるだろう。アベノミクスの破綻は今後、日本経済を未踏の領域に入れるだろう。

※取りあえずは、金融機関が資金の運用に困り、海外へのマネーゲーム投資(投機)→円売り(日本売り)→株高になろうが、日本の経済社会が活性化することはない。むしろ、①マネーゲームの横行(GPIF=公的年金積立金運用独立行政法人=のポートフォリオの一層の株式への傾斜など)とその破綻②銀行経営の悪化による貸し渋り、貸し剥がしなどでの中小企業の経営悪化、金利低下の悪影響による住宅ローン金利への転嫁(住宅ローン金利の高止まり)④円安による輸入原材料価格の上昇―などによる、日本の経済社会の破壊が起きる。

参考までに、日刊ゲンダイ紙の見方を転載させていただく。

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