ファーウエイ製品発売停止の波紋
Horizon Plaza, the office building where the headquarters of the Polish branch of Huawei is located is seen in Warsaw, Poland on January 12, 2018. On Friday a Chinese national, an employee of Huawei has been arrested by the Polish Internal Security Agency (ABW) on suspicion of spying for the Chinese government. (Photo by Jaap Arriens/NurPhoto via Getty Images)

あのアマゾンでも発売が停止されるなど、米中貿易戦争の煽りを受けて中国の華為(ファーウェイ)製品の締め出しが強化され、世界同時不況にもつながりつつある。

米国を中心とした中国企業・華為(ファーウェイ)製品の世界市場からの締め出しが強化されつつある。アマゾンでも同社の発売は中止になったし、大手スマートフォンメーカー・通信事業者などでも新製品のP30/P30Liteの発売は停止ないし無期限延期が発表されている。下図は実質2万円第半ばながら、高性能CPUやトリプルAIカメラなどを盛り込んだP30Lite。

表向きは、ファーウェイの創業者が元中国人民軍に在籍し、中国政府が同社を通じて米国の軍事情報その他法人・個人問わず重要な情報を盗んだため、創業者の娘の最高幹部をカナダで逮捕したなどが伝えられる。ただし、その辺りの情報は詳らかではない。

ファーウェイはAndroid系スマートフォン市場では世界トップクラスのシェアを有しており、その性能には定評があった。それだけでなく、次世代通信の5Gにも積極的に取り組んでおり、中国(政府ならびに人民=国民)には希望の星である。

ファーウェイが狙い撃ちにされたのは、悪化する米中貿易戦争の最初のいけにえにされたのではないか、というのが現時点でのサイト管理者の考えだ。しかし、同社は、Kirinという優れたスマートフォン用CPU(正確にはSystem on Chip=SoC)を有しているが、今回の件からCPUの製造技術の根幹となるARM系CPU(ARM社の親会社はソフトバンク)への情報のアクセスを禁止された。これは、高性能なCPUを製造するのに致命的な欠陥になる。

また、無償かつ誰でもアクセス可能なスマートフォンのOSであるAndroidの情報へのアクセスを開発元のGoogleから禁止されたようである。取り敢えず、ファーウェイはこうした事態を想定し、Androidではない独自OSを開発してはいる。しかし、コンピューターの基本ソフトであるOSはパーソナル・コンピューターでは、Windows/Mac(実体はUnix系のFreeBSD)/Linuxと種類が限られている。

スマートフォン用のOSもWindosPhoneとかFirefox、Ubuntuとか種類が多数あったが、いずれも撤退ないし事実上撤退している。こうした中で、ファーウェイが独自にOSを出しても、アプリケーション・ソフトを開発してくれるソフトメーカーは出てこないというのが、まあ、鉄則だ。つまり、このままで行けば、ファーウェイのスマートフォンは単なる金属の板になる。

ということで、事態はファーウェイに不利な方向に動いている。しかしながら、世界的な相互依存度が極端に深まりつつある中、自国最優先をかかげる米国のトランプ大統領は時代錯誤でしかない。自国の製品は部分を始めとして大半が中国からの輸入製品である。これに25%もの関税をかければ自国製品の価格は上昇するのが必然的であり、折からの同時不況も加わって同国はスタグフレーションに陥る。米アップル社の株価が今年初めに暴落して、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の一角から崩れ落ちたのはその証左だ。

マクロ経済的にもこれと同様のことが起こる。軍産複合体に依存しない初の米大統領として注目されたトランプ大統領もこのところ、軍産複合体の利益優先に舵を切った。同大統領の日本訪問はその表れれであり、TPPで失われたかにみえた軍産複合体の利益実現が狙い。マクロとミクロは異なるが、この観点からすればあながち、ファーウェイの大敗・倒産に帰着すると考えるのはまだ早い。

ファーウェイのファンは、自己責任で必要があれば同社製スマートフォンを買っておいても無駄にはならないだろう。

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