独裁国家への道切り開く改正インフル特措法可決

日本時間12日午前2時、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染のパンデミック宣言を正式に表明した後の13日、改正インフル特措法案が国会で成立し、同法は14日から施行された。同法は、政府=現在は安倍晋三政権や地方自治体の首長に強力な基本的人権抑制権限を付与する法律であるため本来なら、「国会での事前承認」を法律に盛り込むべきだった。日本共産党とれいわ新選組、それに東大法卒で検察官の経歴を持つ立憲の山尾志桜里衆院議員を除く立憲や国民など「野党」と称する政党は言わば、独裁国家化に手を貸した。現政権のインフル特措法改定は三権分立、国民主権の民主主義政治体制の破壊につながる行為であり、その国民に対して「大逆罪」を犯したことになる。

※お詫び 新型コロナウイルス感染症は1月28日に政府=安倍政権の政令によって、「指定感染症」として指定されていたため、厳密に言えば改正前のインフルエンザ特別措置法が適用できる「新感染症」には該当しておりませんでした。このため、インフル特措法の適用対象にするためには、一部改正が必要でした。このため、以下の投稿記事のうち、誤っている部分は打ち消し線で削除させていただきます。訂正するとともにお詫び申し上げます。ただし、本投稿記事の論調に変化はなくむしろ、強化されたと判断しています。

改正前のインフルエンザ等特別措置法は、本サイトでも指摘したように新型コロナウイルス感染症に対しては論理的に言えば、適用できなかった。同法で表現されている「インフルエンザ等」という言葉の定義には、厳密に言えば今回の「新型コロナウイルス」には含まれていなかったからだ。もっとも、厚生労働省の現場では、「インフルエンザ等」に今回の「新型コロナウイルス」も含まれていると解釈し、同法を援用していた。

なお、政令で「インフルエンザ等」に「新型コロナウイルス」も含まれることを定めれば、それで通用し、改正はではなかった。今回の改正インフル特措法は政令次元で対処することを止め、附則の第一条に新型コロナウイルス感染症に関する特例を盛り込み、「新型コロナウイルス感染症(中略。ただしその概要は中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス=SARS-CoV-2=によって発症する新型コロナウイルス感染症(現在のところ、ヒトの体内に免疫力つけるワクチンが未開発で、治療法も試行錯誤の域を出ていない新型肺炎=COVID-19=など)については、施行の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で指定める日までの間は、(インフル特措法第二条一号)第二条(内容は法律で表記されている用語の定義条項)第一項に規定する新型インフレ等とみなして、この法律及びこの法律に基づく命令(告示を含む。)の規定を適用する」とした。

改正インフル特措法を受けて記者会見する安倍晋三首相=朝日デジタルから

今回、「疑惑のデパート」と化している安倍晋三政権が、政令の発令で済む事項を、新型コロナウイルス感染症を政令で指定感染症と定め、新型インフル特措法の適用できる「新感染症」の範疇から外し、上に述べた形での、新型インフル特措法の一部を改正(実際は附則の追加)するという(やや複雑な)手続きを取って、新型インフル特措法の改正を強行したのは、「インフル特措法改正を強行したのは、ほかに狙いがあったからにほかならないと見られる。それは、インフルエンザ特措法が、政府や地方自治体の首長に「基本的人権」の制約を可能とする「非常事態宣言」を発令できることを改めて周知し、実際に「非常事態宣言」を発令する意志があることを示すことである。

「マスゴミ」と揶揄され、真実を伝えないことで知られるメディアの報道(ただし、発言内容を意図的に誤報することはあまりない)によれば、改正インフル特措法施行日の14日の記者会見で安倍首相は、「➀改正新型コロナウイルス感染症に関する特措法が成立した。緊急事態宣言は私権を制限する面もあり、その判断にあたっては、専門家の意見も聞きながら慎重に行う。現時点での国内の感染状況を踏まえれば、宣言を出す状況ではない②ただし、事態は時々刻々変化している。高い緊張感をもって事態の推移を注視し、国民の命と健康を守るため、必要であれば手続きにのっとり、法律上の措置を実行する考えだ。(非常事態宣言が)宣言された場合には、決定に至った背景なども含め、私から国民に説明をする機会を設けるなど、できる限りわかりやすい丁寧な説明を行っていく」と断言している。つまり、非常事態宣言の発令を視野に置いた改正であることを公言したわけだ。

本サイトでも指摘したように、政府=安倍政権の失政(その根本は、感染拡大阻止に不可欠なPCR検査を徹底的に抑制していること)を主因として、日本国内での新型コロナウイルスによる新型感染症の拡大の脅威は日増しに高まっていることは確かだ。しかし、新型インフル特措法は改正前も今回の一部改正後も、同法に定める「緊急事態宣言」の発令が、日本国憲法の三大基本理念である「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」を制限する内容を持っているため、政権から独立し、国権の最高機関である国会が承認した感染症専門家の会議の判断を尊重するとともに、行政をチェックする機能果たすべき国会での承認の二項を法律原文に盛り込む必要があった。

ところが、立憲、国民など「野党」と呼ばれる政党は、法的拘束力のない改正案の付帯決議に「国会に事前に報告する」という文言を盛り込むことで簡単に妥協し、政府=安倍政権が「緊急事態宣言」を発令することに協力した。首相は記者会見で専門家の意見を聞くとは言っているが、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長も述べているように、現在の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議も首相の考えを忖度し、在籍組織の利権を守り、強化するための通常の諮問会議に過ぎない。

こういう状況だから安倍首相は、国会に配慮することなく、さらに言えば国会を無視して、独断で「緊急事態宣言」を発令できる。これは、基本的人権を強権で制限する独裁国家への道を突き進むことに等しい。この暴挙に対して日本共産党、れいわ新選組以外で批判したのが、東大法学部を卒業し、検察庁に在職、検察官経験のある立憲の山尾志桜里衆院議員だ。

立憲の安住淳国対委員長は11日、「少数である野党に法案をひっくり返す力がない以上、賛否を採決する『事前承認』も、ただ報告するのみの『事前報告』も事実上同じだ」という趣旨の発言を行った。これに対して同じ立憲所属の山尾 志桜里衆院議員は、野党議員が承認に加わってもどうせ覆らないと言ったら、野党議員のいる意味はない」と痛烈に批判した。これらのやり取りは、民主党政権時代の悪徳七人衆のひとりとして知られる安住国対委員が、➀手段に過ぎない政権奪取の目的である、理念と政策の大転換の意志はない②このため、政権を奪取しても日本経済を大混乱に陥れた安倍第二次政権の基本理念である新自由(放任)主義を継続する-という意味で、自公両党の補完勢力の代表人物であること、また、立憲内部にはそうした考えを批判する勢力が一定程度存在することを意味している。余談だが、自民党内部にも、消費税減税に賛成する若手議員のグループが存在する。

さて、安倍政権は原子力非常事態宣言がいまなお解除されていない中、WHOのパンデミック宣言後も、東京オリンピック、パラリンピックの開催を強行する構えだ。しかし、日に日に強行開催の延期もしくは中止に追い込まれている。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は従来の開催強行姿勢を改め、WHOの意見を尊重する考えを表明した。また、日本オリンピック委員会(JOC)にも延期を主張する組織委委員が出始めた。

国際政治の中では、米国のトランプ大統領がロイター通信に東京オリンピックは延期するべきだとの見解を表明したのをはじめ、各国政府としても選手団の日本派遣に懸念を抱いているのも明らかだ。なお、トランプ大統領自身も、新型コロナウイルス感染者と接触しており、PCR検査を受けておくべき事態に至っている。

聖火を採取するギリシャでも、聖火リレーを見学する市民が多数現れ、感染拡大が警戒されるとして、同国内での聖火リレーの中止に踏み切った。聖火は日本に空輸され、原子力緊急事態宣言が解除されない中、フクシマ第一原発の被害地域でリレーが行われる予定だ。しかし、政府=安倍政権は大きな大会やイベントを事実上中止させている。こうした中、聖火リレーにどう対応するのか。WHOのパンデミック宣言が解除できるまでの期間も、数カ月程度ではない。解除できない中を果たして、オリンピック開催を強行できるのか。マスコミは、マスゴミと揶揄されたくなければ、この点を正しく追及すべきだ。

決定的なことは、国民にPCR検査を受けさせないという致命的な失政を続け、新型コロナウイルス感染者確認者数をできるだけ抑え込むことが最大の眼目である「新型コロナウイルス感染症基本対策」が根本的な矛盾をはらんでいることだ。(追記)これに関連して、朝日デジタルは3月14日21時30分に、世界的な流行を意味する『パンデミック』に詳しい、米ジョンズ・ホプキンス大のジェニファー・ナゾ上席研究員に取材した内容として、「『(実際に行う)検査(数)をどう拡大できるかを見極める、各国の努力が絶対的に重要だ』と語った。日本の検査人数は少ないとして、『検査拡大に努めるべきだ』と述べた」との記事を掲載している。具体的には、感染を判定するためのPCR検査実施人数は、厚生労働省によると日本では13日時点で1万2060人。ナゾ氏は「韓国は、現時点で約20万以上。(日本の)数字は低い」と批判した上で、「検査に積極的な韓国や、感染報告や情報共有の透明性が高いシンガポールは、日本の手本になるとの見方を示した」と言う。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議も認めているように、PCR検査を行えば陽性と判定される患者で、自覚症状がないかある程度軽い患者が、公共交通機関や務め先で、無自覚なまま新型コロナウイルス感染の拡大に大きな「役割」を果たし特に、持病のある高齢者を中心に重症の罹患患者を発生させていることは今や、公然の事実になっている。PCR検査に障害を設ければ、適切な新型コロナウイルス感染症対策を打ち出せないことは、誰の目にも明らかである。政府=安倍政権の新型コロナウイルス感染対策なるものは、矛盾の極みである。そして、矛盾していることや内容には、永続性がない。

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