アベノミクスのなれの果てはバブル、正しいコロナ禍対策が最大の景気対策

大蔵省(現財務省)・財務官出身の黒田東彦氏が2013年3月に日銀総裁に就任した直後の2013年4月4日の日銀政策委員会・金融政策決定会合において導入を決定した「量的・質的金融緩和(異次元緩和)」=黒田バズーカ砲(異次元金融緩和)=は、前年比2%の物価上昇率を2年間で達成、デフレ不況を解消するという「大義名分」を実現できなかった。これまで、長期にわたった為替相場の円安をもたらし、現在ではバブルをもたらす惨めな結果に終わっている。財政緊縮・金融庁緩和政策を取り続けたからだ。異次元の積極財政・適正な金融政策への転換こそが求められている。第4波が襲来している今日、コロナ禍対策の抜本的転換による異次元の積極財政に基づく正しいコロナ禍対策こそが最大の経済対策になる。

11月23日月曜日コロナ感染状況
東京都モニタリング指標
東京都モニタリング指標

本日1123日月曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では午後15時の速報値で新規感染確認者は1週間前の16日金曜日の180人より134人多く、PCR検査数の関係から新規感染者数が最も少なくなる曜日の月曜日としては過去最多の314人になった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。東京都基準の重症者は前日比1人増加の41人(下記に記した赤字の注釈参照)。東京都基準の重症者は人工呼吸器やECMOを使用している重症者に限られており、このうち何人がICUに移られたか、あるいは、亡くなられたかは不明。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は441.6人、PCR検査人数は5435.6人だから、推測陽性率は8.12%。東京都独自の計算方式でも6.3%。感染者のうち感染経路不明率は57.84%だった。PCR検査人数は増えているが陽性率もかなり高まっており、感染経路不明率も60%に迫っていめ・かなり厳しい状況が続いている。
全国では、午後23時59分時点で1520人の新規感染者と少なくとも8人の死亡者が確認されている。
東洋ONLINEhttps://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、11月22日時点の実効再生産数は全国が前日比変わらずの1.28人。東京都が同0.01人増の1.26人だった。下げ止まりの徴候が出てきている。 

東京都の新型コロナ感染者数の推移
東京都の新型コロナ感染者数の推移

【追記:23日午後15時30分】東京都は集中治療室(ICU)で治療を受けているコロナ感染症患者を重症者に数えていない。厚生労働省の指示により8月14日からこっそりとICUで治療を受けている患者を加えた重症者を厚労省に報告しているが、それによると11月11日の重症者数は154人だったが、18日には187人に相当増加している。500床の病床を用意しているが、37%が埋まっている(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/medical/detail/detail_57.html)。500床のうち、コロナ感染者以外の入院患者にも使用していると見られ、実際の病床使用率は定かではない。

黒田総裁は、「黒田バズーカ砲」と称して、マネタリーベース(市中に出回っている日銀券と市中金融機関が日銀に保有している日銀当座預金口座の預金残高の合計)および長期国債・ETF(一種の複合株式)などの保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買入れの平均残存期間を2倍以上に延長するなど、日銀マネーを市中金融機関にばらまくという超金融緩和を実施してきた。政府は一方で財政再建原理主義政策=緊縮財政政策を採り続けていた。その象徴は国債の元利返済金を除く国債費を除いた一般歳出を税収による歳入の藩内に抑えるプライマリーバランスの黒字化の達成だが、目標達成年度が当初の2010年代初頭から2020年、2025年へと次々に延長され、今や金融経済関係者は誰もに政府・日銀の言うことを信じていない。

これは、通貨発行権を持つ日銀がマネーを市中金融機関や回り回って企業の株式を購入するだけであり、民間の家計需要や設備投資需要、政府の公共投資需要が全く盛り上がらなかったせいである。日本は消費者物価指数は前年に比べて停滞もしくは下がり、実質国内総生産(GDP)や名目国内総生産は遅々として伸びず、、実質賃金は下がる一方である。その一方で、日銀マネーが出回りすぎているお陰で、日本の市中金利は超低金利が続いている。このため、日本の金融機関は利ざやが取れなくなり、特に地方が疲弊して資金需要がないこともあり、地方銀行は軒並み経営が悪化している。

直近の全国消費者物価指数
直近の全国消費者物価指数
実質賃金指数の低下
実質賃金指数の低下

実需に回らない日銀マネーは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による国債、株式の買い取りも加わって、金融・資本・不動産市場に流れ、バブルを引き起こしているというのが偽らざるところだ。慶應義塾大学経済学部名誉教授で立教大学大学院の金子勝特任教授は、次のように株式バブル、不動産バブル(地価バブル)の惹起を指摘し、バブルの崩壊を非常に懸念している(https://www.youtube.com/watch?v=if7MQJPjUv0&t=1697s)。日銀の地方銀行への貸付が異常に拡大している。

日銀の金融緩和
日銀の金融緩和

長年のアベノミクスの金融大緩和・超緊縮財政政策という長年のアベノミクスの失敗で、かつては「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれていた日本の中核企業も事業の高度化に失敗している。電気自動車の技術革新・開発に大幅に後れ(2030年以降は世界各国でハイブリッド車を含めガソリン車の新規購入・走行を禁止する)、日本の自動車業界には約束された未来がない。

大都市圏への一極集中化を防ぎ、近年は技術革新が猛烈なスピードで進行している再生エネルギーの研究開発・施設の設立も、「電力自由化」に疑惑があるとの見方も強いため、思うように行かず、企業・産業の地方への移転による分散革命もままならない。その一方で、悪魔に取り憑かれたように、世界からはエネルギー価格の高さと高度の危険性を指摘され、既に過去のものになっている原発の再稼働・新規建設を目指す菅義偉政権の国策のため、日本を代表する日立、三菱重工業、東芝にはこれまた、もはや未来がない。IT産業では、クラウド化に遅れているため、NTTを始めとした電機産業・企業の国際競争力は衰退が激しい。

スマートフォン(Android、iPhone)は中国に本体の生産に不可欠の精密部品を輸出し、中国で生産、日本を含む全世界に輸出しているが、中国も科学技術の発展が目覚ましく、中国自身で自主開発する時代になっている。次世代通信網技術では、5Gの特許件数は欧米から閉め出されているものの、中国ファーウエイが最も多く、日本では外資系企業になったシャープがわずかに特許を保有しているに過ぎない。

産業構造の転換・高度化に遅れた中で、コロナ禍に見舞われた。日本は、黒田バズーカ砲とはやしたてられている間に、バブルの種を蒔き、為替相場の円安誘導を行っていたために、ある程度のインバウンド(海外からの観光客)で潤った面もあるが、今やインバウンドは蒸発。当てにしていたカジノも米国を中心にしたラスベガス・サンズ、マリーナベイ・サンズ、日本のオリックスとコネのあるマリーナベイ・サンズなど主要カジノ会社は大打撃を受けている。今や、ITを利用したバーチャル・カジノの時代に移行しつつある。大規模な施設は不要だ。

日本の大手観光・旅行会社でJTBが6500人の雇用削減(退職による自然減、希望退職、大卒新規採用停止などによる)を発表したように、雇用の悪化が次第に深刻になっている。こうした中で、株式相場や不動産相場が持ち直し、上昇に転じるなどのことは、尋常ではなく、バブルに他ならない。これでは、リーマン・ショック時のように、何らかのきっかけでバブルが崩壊してもおかしくはない。金子特任教授は(仮に東京オリンピックの開催が強行開催されるとして、その直後を懸念している。というよりも、政府=菅政権が、東京オリンピックの強行開催を取り敢えず訴え続けることによって、バブル崩壊を防いでいると言って良いかもしれない)。その後は、「あとは野となれ山となれ」だ

こうした中で、官房長官時代に秘密警察の「責任者」まがいのことを行った菅首相は、竹中平蔵氏やデービッド・アトキンソン氏、高橋洋一氏らと組んで、コロナ禍対策はそっちのけに、いや、むしろコロナ禍を利用して、日本を外国に売り飛ばし、日本の地方銀行、中小企業を整理・淘汰しようとしている。これについては、本サイトの次の記事を参考にして頂きたい。

コロナの第三波(四波)に見舞われている今日、ただしいコロナ禍対策は、次のようなものだ。➀革新装置を取り入れた社会的検査により大規模PCR検査、抗体検査の実施で無症状感染者を保護・隔離すること(医療機関、高齢者両用施設、教育機関を優先する。感染経路不明者は基本的に大規模社会的検査が必要、感染経路判明者については濃厚接触者の多数のトレーサーを確保・訓練し、トレーサー業務を行う)②抗ウイルス薬の開発の進展を利用し、無症状・警鐘感染者を治療できる施設を確保して重症化しないように治療すること(家庭での保護は無理)③改正インフルエンザ特措法に休業補償協定を盛り込み、柔軟な運用を行うこと➃コロナ対策特定支援金を続けること、雇用調整助成金(休業補償金額に特例措置を設けて、過去3カ月間の平均賃金の60%ではなく100%にする)の拡充と継続、中小企業を対象にした持続化給付金の延長、大企業に対しては決算剰余金=内部留保(現在470兆円程度)を利用し、解雇を防ぎ、大卒新規採用を行うーなどの措置が必要である。

これは国債を使った異次元の積極財政にならざるを得ない。

また、消費税については大企業・富裕層優遇の税制の抜本的改革を行い、利権支出をなくしたうえで、今後は保留ないし廃止し、社会保険料は免除するなどの措置が必要である。これに似たコロナ禍対策を掲げているのが、日本共産党とれいわ新選組である(https://reiwa-shinsengumi.com/covid-19-policy202008/)。日本共産党は、➀大規模な面的検査の必要性②濃厚接触者のトレーシング調査③休業補償とセットにした改正新型インフル特措法の改正を主張している➃消費税減税と消費税代理納税者である中小企業に対しては、基本的に2020年、2021年の代理納税を猶予ではなく免除するーなどを訴えている。

大阪1区から出馬予定のれいわ新選組衆院立候補者・やはた愛氏
大阪1区から出馬予定のれいわ新選組衆院立候補者・やはた愛氏

また、れいわ新選組は、➀大規模な検査と無症状者の保護(生活保証含む)を徹底しながら社会をまわし、感染者数増などの推移によってはまた緊急事態的な制限を加える②本当に健康被害がなく効き目がある特効薬が望めばすぐ手に入る状態が訪れた時には、正常化に向けて、みんなで一丸となり社会全体を立て直していく③国(政府と日銀を合わせた統合政府)が「通貨発行権」を使い、徹底した政府支出を行い、「大胆な給付と徴収の免除」を大々的にやることが、政治の使命である③消費税は廃止する➃コロナ収束まで毎月1人当り10万円支給する➃社会保険料は納付したことにして免除するほか奨学金徳政令を実行する⑤飲食店、フリーランス、個人事業主、中小零細への迅速な補償を行う⑤コロナ禍の全国拡大を災害指定するーなどを挙げている。

似たような政策だが、調整して野党共闘の目玉政策にすべきだろう。なお、政府から独立した防疫学、遺伝子工学、計測工学、IT工学の専門家を連ねた日本版疾病予防管理センター(CDC)を設置し、責任の所在を明らかにするため、最高責任者を選任もしくは任命することが重要だ。野党第一党の立憲民主党は執行部の枝野幸男代表ー福山哲郎幹事長ー安住淳国対委員長会談と一部の立憲議員にやる気がない。新55年体制を築き、議員特権を享受することだけを考えている。ただし、中には「国民生活第一」の立憲議員も存在する。25日からの国会審議の経過とコロナ第四波の今後の状況次第だけれども、政府が来年1月8日に通常国会を開くなら、立憲良識派と日本共産党、れいわが執行部を突き上げなければならない。

これが出来なければ、秘密警察を使った菅独裁政権が樹立されてしまうだろう。



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