国家観のない菅義偉首相の事実上のブレーンになっているデービッド・アトキンソンは、極端な新自由主義者でカジノ誘致とインバウンド(外国人観光客の誘致、輸出に相当)を提言したが、コロナ禍で失敗。今度は「日本の中小企業は生産性が低い」として中小企業の整理=倒産を菅首相に提言している。暴論を見抜かなければならない。なお、東洋経済OnLineで詳細な新型コロナウイルス感染状況について公的機関のデータに基づいてグラフ化しているので冒頭、多少長くなりますが、紹介します。
◎追記:10月5日の新型コロナ新規感染者は、東京都で午後15時の速報値で66人だった。1週間前の9月26日月曜日は78人だった。下図はhttps://www.fnn.jp/articles/-/61484による。感染経路が不明な感染者の割合は50%。国内では午後18時30分の段階で275人、死亡者2人が確認されている。今月1日には速報値で1日に1万9245件のPCR検査が行われているため、推測瞬間陽性率は1.4%。
◎冒頭紹介:東洋経済ONLINEのサイト(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)で、公的機関の「公表値」をもとに、コロナ感染状況を把握するうえで最も重要な実行再生産数、PCR検査人数、陽性化率(検査人数÷感染確認者数)などの指数を公開しているので、照会します。詳細は、サイトに当たって下さい。東京都と全国のPCR検査人数と実効再生産数(1を上回ると、感染者が感染者^実効再生産数と指数関数的に増えていきます。「^はべき乗のコンピューター用記号です」)をキャプチャしました(10月4日更新分)。
全国、東京都ともに実効再生産数は1.0を上回っている。要注意で、さらに今月中旬以降はコロナ第三波の襲来が予想されることから、警戒が必要になってくる。また、PCR検査検査件数(検査人数とは異なる。1人に対して、複数の検査を行う場合もある)は曜日ごとにふれが激しい。こちらのデータと日ごとに公表される「公表値」を見ていけば、新型コロナウイルス感染状況が包括的に掴むことができる。全国の検査人数は10月3日時点で194万2648人で、人口100万人当たり194万2648人÷125.81(×100万人)=1万5441人、東京都では47万228人÷13.98178(×100万人)=3万3778人。定番のhttps://www.worldometers.info/coronavirus/(日本時間10月5日11時6分現在)東京は徐々に増えているが、韓国の4万5872人に約1万2000人及ばない。全国レベルでは依然少ない(世界で150位以下)。死亡率は韓国の1.75%に対し日本は1.87%。全世界では3539万3800人が感染し、104万1780人が死亡、死亡率は2.94%。
※追記:毎日夕刻更新されるようで、10月5日時点での実効再生産数は全国で1.12、東京都も同じく1.12だった。月曜日は週の中でも全国的に新規感染者が最も少ない曜日にになる傾向があり、それが反映されているようだ。
Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%88%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3)によると、デービッド・アトキンソンは英国出身でオックスフォード大学で日本語を習得(下図はhttps://www.marr.jp/marr/category/toku_interview/entry/19665)による。その後、次の経歴を持っている。
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アンダーセン・コンサルティング(アクセンチュアの前身)やソロモン・ブラザーズに勤務し、1990年頃に渡日。1992年にゴールドマン・サックス(金融界では米政府と癒着した投資銀行で、Governmental Saxと呼ばれる)に移ってアナリストとして活動し、(米国にドル暴落阻止のための超金融緩和政策を強いられたことが原因になって生じた1990年代の)バブル崩壊後の日本の銀行に眠る巨額の不良債権を指摘。ほどなく不良債権問題が顕在化し、その名を高める。2006年にパートナーに昇任した後、2007年に「マネーゲームを達観するに至って」退社した[。アナリストを引退して茶道に打ち込む時期を経て、所有する別荘の隣家が日本の国宝や重要文化財などを補修している小西美術工藝社社長の家だった縁で経営に誘われて2009年に同社に入社し、2010年5月に会長就任。2011年4月に社長兼務となって経営の建て直しにあたった。その後は日本の文化財政策・観光政策に関する提言などを積極的に行うようになり、東洋経済新報社の著書『新・観光立国論』で第24回山本七平賞を受賞した。2015年5月より東洋経済ONLINEにて文化財・観光・経済政策に関する題材を中心とした連載を開始。2016年より三田証券株式会社の社外取締役に就任。2017年6月より日本政府観光局の特別顧問に就任。
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カジノやインバウンドによる「日本経済」の復興は、新型コロナウイルスのパンデミックであえなく破綻した。日本の国内総生産(GDP)のうち、大層を占めるのは民間家計最終消費支出で、これと招請の供給力拡大をもたらす設備投資が経済の二大エンジンだ。これに、国土強靭化のための公共投資の拡充によって日本の経済がまともに成長する。次の図は内閣府(https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/gaiyou/pdf/point_20191209.pdf)が発表しているの平成30年度のGDP(確認できる最新の年度)を構成する項目別の実学を名目、実質で示したものだ。
実質値で見ると、民間家計最終消費は 291兆3313億円、設備投資は85兆7410億円で、名目GDP全体533兆6679億円のうちそれぞれ54.6%、15.5%で、合計すれば70.5%。外国人観光客が日本で購入した財貨・サービスが含まれる財貨・サービスの輸出額は92兆8730億円だが、輸入が 94兆6183億円で差し引き1兆7453億円の赤字だ。かつては、外需(輸出ー輸入)が日本の経済成長に重要な役割を果たしたが、今は昔。このところ、外需は傾向的に赤字であり、黒字の場合もあるが、GDPに占める割合はプラス・マイナス0.3%前後で、GDPにとっては極めてマイナーな項目に過ぎない。
しかも、輸出に占めるインバウンド(外国人観光客の日本での外貨・サービスの購入額)の割合は輸出全体の額に比べて、小さい。そもそも、インバウンドを経済成長のてこにするなどの考えは全くの見当違いである。カジノ(サイト管理者=筆者は反対)を加えてもたかが知れている。こういうインバウンドやカジノで日本の経済成長、経済発展を促すことを安倍晋三前政権に「提言」したのが、一見、日本の伝統文化を尊重するフリをして近づいてきたアトキンソンなのだ。しかも、令和2年度はコロナ禍のため、インバウンドは雲散・霧消してしまい、米国のカジノ業者も日本進出どころではなくなっている。
そこで、アトキンソンが持ち出してきたのが、中小企業の整理・淘汰だ。「中小企業は生産性が低いため、日本の経済成長・発展を妨げておりこれを整理しなければならない」などと、政策の分からない菅首相に吹き込んでいるのだ。
デービッド・アトキンソンのこの言葉を受けて、菅首相は日本の企業の99.7%を占める中小企業の大整理(破産・倒産に追い込むこと)を進めている。
しかし、日本の企業のうち99.7%を占める中小企業を倒産に追い込めば、企業経営者、幹部とその家族だけでなく、大量の失業者が発生することは当然の帰結だ。菅政権側は生き残る中小企業が失業者を吸収すれば良いと言うだろうが、労働者にとって職場の移動は簡単ではない。新型コロナウイルス拡大のせいで、有効求人倍率が急激に低下している今日なら、なおさら、再就職は困難だ。なお、長期にわたる金利の低迷で、地銀が経営困難な状態に置かれている。菅政権は、地銀の統合を進める意向だが、その際には経営が悪化している中小企業は見捨てられることになる。重大な事態が発生する。
中小企業の生産性が低いなどと言われると、「そうか」ともヘンに感心してしまう。ここで、「生産性」の定義を日本生産性本部のサイト(https://www.jpc-net.jp/movement/productivity.html)から引用してみると、「生産性の代表的な定義は「生産性とは、生産諸要素の有効利用の度合いである」(ヨーロッパ生産性本部)というもの」であり、特に、労働生産性が重要で、その定義は「労働生産性は『労働投入量1単位当たりの産出量・産出額』として表され、労働者1人当たり、あるいは労働1時間当たりでどれだけ成果を生み出したかを示すもの」ということになる。簡単な算数の式で述べれば、企業の総生産量を労働者全体の数で割ったもの(総生産量÷労働者数)ということになる。
しかし、最も重要なことは、生産しても売れなければ意味がない。それで、生産性の現実的な定義は、総売上高÷労働者数ということになる。マイルドなインフレの好況期の際に、こちらの意味での労働生産性が低ければ労働者に技術力がないため、製品の質が悪く、売れないということが問題になる。しかし、現在のように20年以上もデフレ不況が続けば、消費需要、投資需要が凍えるほど弱まっているために良い製品を生産しても、あるいは品質の良いサービスを提供しても売れないということになり、総売上高÷労働者数で計った労働生産性は見かけ上、低くなるということになる。
しかし、デフレ期の労働生産性の低下は、労働者の技術力・サービス品質に問題があるのではない。消費需要、設備投資需要が冷え込んでいるという点に最大の問題があるのだ。だから、好況期の労働生産性の低下の対応策を、長期デフレ不況期にも当てはめるなどというのはとんでもない間違いだ。関西学院大学の林勝俊教授も次のように反論されている。
実際のところ、現状は下図のようになっている。
また、富裕層を相手に付加価値の高い高額商品を売れば、労働生産性は上昇した形になる。
国家観がなく、政策も分からない菅首相の言葉に騙されてはいけない。菅政権はかつての小泉純一郎政権、安倍晋三政権よりも悪質な警察独裁国家を目指している。政権に批判的な企業団体、知識人、サイトは内閣調査室でデータベース化するとともに、別件逮捕で抹殺する意向だ。
なお、もうひとりの実質的なブレーンである慶応大学教授を務めた竹中平蔵パソナ会長は、「ベーシックインカム論」を提唱しているが、これがまたひどい。
ヤフーニュース(https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20200925-00200025/)によると、「注目を集めているのは9月23日に放送されたBS-TBSの『報道1930』での同氏による提案だ。竹中氏はこの番組の中で、『毎月7万円のベーシックインカム』を導入することで『生活保護が不要になり、年金もいらなくなる。それらを財源に』と大胆な提案を行った。ベーシックインカムで浮いた財源だろうが、何の財源にするのか不明だけれども、建前としては「財政再建」の財源にするというのだろう。しかし、竹中会長の狙いはこれまで建前として散々言い続けてきた消費税増税の大義名分であった「社会保障制度」を破壊するための観測気球をあげたことだろう。竹中氏がデービット・アトキンソンとともに菅首相のブレーンになったことで、社会保障制度の廃止は国民の立場からも実務的にも容易ではないが、強行する可能性は大いにある。
なお、ベーシックインカム論は「労働と所得を切り離す」ところにその狙いがあると言われるが、①労働者の勤労意欲をなくし、経済全体の生産性が低下する②これまでの社会保障制度を解体するーという重大な問題を引き起こす。すべての問題は、政府が超少子化を食い止めることに無策を続けていることにある。子どもを産まない。または産めない夫婦は保護の対象にしないという暴論も出ているくらいだが、道はある。別に投稿します。
日本の経済社会はとんでもない事態に陥る。菅首相は、朝日新聞社、東京新聞社、京都新聞社以外の首相の番記者を接待し、菅政権への批判をしないように要請したらしい。自分に歯向かうものはすべて抹殺して、独裁政権を確立するというのが同首相の狙いであることに、野党も国民の皆さんも気づいて欲しい。