東京大学先端科学技術センターに所属し、遺伝子工学詳しい児玉龍彦東大名誉教授(世田谷区在住)は11月20日夕刻公開されたデモクラシータイムスのYoutube(https://www.youtube.com/watch?v=if7MQJPjUv0)でのインタビュー番組に登場。全国の新規コロナ感染者数が最多更新を続けていることを踏まえ、コロナ第三波(実は第四波)の襲来に対する精密科学に基づく対処法を示した。骨子は、➀精密医療科学による第4波の遺伝子レベルでの正確な分析②感染震源地帯を中心とした大規模社会的検査の実施③抗ウイルス薬のさらなる積極的開発やm3RNA型ワクチンの正しい開発による治療体制の確立ーなどだ。精密医療科学に基づく大規模なコロナ対策自体が本格的な経済対策になることを強調された。
11月22日日曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では午後15時の速報値で新規感染確認者は1週間前の15日日曜日の255人より136人多い391人だった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。日曜日の新規感染者数としては過去最多である。東京都基準の重症患者数は前日比変わらず40人だった。前週同曜日と比較して、増加幅はやり大きい。なお、PCR検査数の関係から、一週間の中でも日曜日と月曜日の感染者数が最も少なくなる傾向がある。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は391.0人、PCR検査人数は5435.6人だから、陽性率は7.19%。東京都独自の計算方式でも6.3%。感染者のうち感染経路不明率は63.15%と60%を上回った。
全国では、午後23時59分時点で2168人の新規感染者と7人の死亡者が確認されている。死亡者は2千人を超えた模様(2001人)。2月13日に初めて国内での死亡者が確認され、7月20日には1千人に達したから、増加のペースは速まっていることになる。ただし、高コロナウイルスの投与で、死亡率はやや低下している。このうち、特に維新の大阪府は490人が感染。東京都の人口が約1400万人、大阪府の人口が880万人だから、東京では490×1400÷880=779人相当の感染者になる。コロナの重症者用の病床を一般病床に切り替えており、再度コロナ重症者用に切り替えるのも時間がかかるから、医療体制もかなり逼迫していると推察される。
東洋ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、11月21日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人増の1.28人、東京都では前日比0.04人増加の1.25人となっている。1.0人を超えるとべき乗で増加する。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は406.0人、PCR検査人数は5435.6人だから、陽性率は7.41%。東京都独自の計算方式でも6.3%。感染者のうち感染経路不明率は58.87%だった。PCR検査人数は増えているが陽性率も高まっており、感染経路不明率も60%に迫っておりこのところ、かなり厳しい状況が続いている。陽性率、感染経路不明率とともに危険水域に近づいている。「スラスター対策」ではコロナ禍は解決できないが、その意思はないようだ。
全国では、午後23時59分時点で2596人の新規感染者と過去最多を連日更新し、12人の死亡者が確認されている。首都圏、阪神圏、中京圏の大都市圏の状況が厳しい。
東洋ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、11月20日時点の実効再生産数は全国が前日比変わらずの1.27人、東京都では前日比0.01人減少の1.21人となっている。1.0人を超えるとべき乗で増加する。
なお、11月20日夜に政府コロナウイルス感染症対策分科会がまとめた提言のGo To トラベルの一部中止要請の箇所を下図に示しておきます(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/seifu_teigen_16.pdf)。Go To トラベル、Go To イートは止めて当然だが、持って回った提言しか出来ていない。
【追記22日午後13時】政府=菅政権は21日夜、Go To トラベル政策の見直しを行うことを表明したが、全国の都道府県知事任せのため詳細決定までに時間がかることが予想される。早くても、21日からの3連休には間に合わない。
児玉東大名誉教授は国会で旧立憲民主党から参考人として招致を受け、参院厚生労働委員会で新型コロナウイルスの対策法について陳述した経緯がある。サイト管理者(筆者)の理解では、コロナ禍の正しい処方箋を示しているものの、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長は菅義偉首相だが実質的責任者は西村康稔経済再生担当相)やその分科会(尾身茂座長)では、来夏の東京オリンピック大会の恐慌開催を最優先しており、そのため児玉東大名誉教授らの提言を無視するなど、この期に及んで見当違いで、効果もない「コロナ禍対策」に終始し、政府=菅義偉政権としては墓穴をほっているように見える。児玉教授の提言に基づいて、コロナ禍対策を抜本的に転換し、大規模な財政措置を講じて経済対策の大きな柱のひとつにすべきだ。
児玉名誉教授によると、新型コロナウイルスは変異しやすく、日本では異なる型のコロナウイルスによる感染の波が起こっている。それによると、➀中国湖北省で発生した武漢型ウイルスによって引き起こされた第一波②欧米で猛威を奮ったミラノ型のSARS-CoV-2-D614G4ウイルスが海外から日本に持ち込まれて拡大した第二派③日本の東京・埼玉県を中心に全国に広がった東京・埼玉型のウイルスによってもたらされた第三波➃欧州諸国のバカンス中にスペインを訪問した欧州各国国民が感染し、自国に持ち帰ったスペイン型のコロナウイルスが日本にも入り込み、日本型とスペイン型のコロナウイルスの襲来に見舞われている第四波ーの4つの感染拡大期があるという。
つまり、児玉教授は現在は、第三波が完全に下火になららないうちに、スペイン型のコロナウイルスが日本に伝わり、双方の相乗効果によって第四派が襲来しているとの見解だ。新型コロナウイルスに対して免疫力を獲得できる場合があるが、新しい型の新型コロナウイルスが襲来すると、それまでに獲得された免疫力がリセットされ、効かなくなってしまう。ドイツでは第ニ波のミラノ型のウイルスには効果的な対策打てていたが、スペイン型のコロナウイルスが到来し、第三波が襲来してしまった。このため、獲得免疫が効かなくなり、ドイツもスペイン型に変異したウイルスに簡単に突破された見ている。世界保健機構(WHO)でも約60人の国際官僚が感染している有様だ。
スペイン型に変異したコロナウイルスは相当に「凶暴」な性格を持つ。このスペイン型のコロナウイルスはスペイン北部の農業地帯で変異したもので、欧州のバカンス客がスペインに避暑にやってきた際、感染したようだ。ただし、当初は無症状感染者がほとんどだったようだが、冬の到来でウイルスが「活動」しやすい時期に入った。このスペイン型のコロナウイルスは感染力が強く、毒性も強いために死者も急増しており、従来の対応では抑制できない。ドイツや韓国でもスペイン型に変異したウイルス流入で感染者が急増している。また、このスペイン型コロナはヒトとともに動物(獣)の双方に感染し、デンマークでは養殖ミンクが大量に感染し、少なくとも1700万匹が殺処分され、飼育係も約200人が感染した。
このように、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2))はRNA型の遺伝子構造を持つため。変異しやすい。また、誘発される新型コロナウイルス感染症(/COVID-19)は新型肺炎など重篤な病気を引き起こし、どうも、季節性インフルエンザとは次元の違う症状を引き起こすようだ。また、当初は無症状感染者であっても、重篤化が遅く、安心している間に免疫細胞がヒトの正常な細胞を大量に攻撃するサイトカインストーム(免疫暴走)が起きることがある。感染が確認してから平均して16日目にこのサイトカインストームの現象が表れ、2%の確率で突然死亡することがある。児玉名誉教授によると、この確率はほとんど変わっていないとのことだ。
新型コロナウイルス感染の悪循環は次の図で示されるような形になる。
この悪循環を断つためには、第一に、空港検疫での高度なPCR検査を複数回行い、感染していないことが確認されてから、実際の入国を認める「水際」対策が欠かせない。政府=菅政権では東京オリンピック強行開催のために、検査を精度の低い抗原検査にしたうえで、2週間の検疫期間を廃止し、公共交通機関の利用も許可することにしているが、これでは全く「水際対策」にならない。スペイン型のコロナウイルスが増加することを防止するためには、サイト管理者(筆者)としては東京オリンピック大会の来夏開催は早々に中止を打ち出すべきだと思う。既にそうした動きも水面下ではじまっている。
国内での悪循環を食い止めるためには、基本的には技術革新が進んでいるPCR検査や抗体検査などの検査を感染集積地(エピセンター)とその周辺地域、非エピセンターとの違いを考慮に入れた検査を行うことが必要で、併せて、新規感染者を発見した場合は、保護と隔離・症状に応じた治療施設での治療が必要だ。とりあえずは、医療機関、高齢者介護施設の職員(エッセンシャルワーカー)や入院患者、入所者への全員検査、小中高校大学など教育機関での児童・生徒・大学生(院生)の(社会的検査)が必要になる。無症状感染者がコロナウイルスを拡散して、大量のクラスター(感染者集団)を発生させないようにするためだ。もっとも、クラスター(集団感染)が発生することは避けられないが、発生してから検査を行っても、医療機関の対策、救急・外来患者拒否など医療行為に重大な悪影響が出てしまい、最悪の場合は医療体制の崩壊が起きてしまう。
こうした事態を阻止するためには、PCR検査、抗体検査体制を「点と線(新規感染者の行動追跡)」から面まで広げていく必要がある。未だにPCR検査を妨害する輩が居るのは驚きだ。
一応の無用論と反論を記しておく。➀物理的に検査能力がない→機械化で検査能力は確保できる(海外諸国では機械装置を使っており、政府=菅検査技師の手を使って行うのは日本だけ)②無症状の国民には検査する意味がない→無症状感染者がコロナウイルス拡大の震源地になっていることを無視し、また、感染症状が表面化してから行う行政検査とコロナ禍被害を極小化するための社会的検査と混同している(新型コロナウイルス感染症は第Ⅱ類相当の指定感染症として政令指定されており、行政検査の発想になるが、実際には行政検査の柔軟な運用=ホテルなどでの経過観察と治療の容認=が行われており、政令指定も令和3年2月6日までのはず)③プール方式の技術進歩の否定→PCR検査を自動化してノイズ(正常な検体ではないこと)を下げ、感度(偽陰性判定を防ぐこと)を変えずに、多数、安価、迅速に出来る。検体の取り直しやプール検査の再実施は不要ーなどだ。
政府=菅政権(菅首相の意向を忖度した厚生労働省は世田谷区が予定していたプール方式を拒否し、誰でもいつでもどこでもPCR検査、抗体検査を行うようにすることを完全に拒否している。田村憲久厚労省は社会的検査の必要性を認識しているが、菅首相を恐れて諌言できない。これは、東京オリンピックの強行開催のため、日本のコロナ感染状況を正確に把握させないための国民に対する犯罪的措置。オリンピックは、諸国民の健康の増進と参加国の友好の強化・平和な世界の実現を目指して行われるものである。だから、政府=菅政権はいつまで権力維持のために東京オリンピック開催最優先を掲げているのだろうか。
以下、とりあえず世田谷区モデルを紹介する。政府(厚労省)がプール検査を拒否しているために当面はPCR検査で検査を行わざるを得なくっているが、世田谷区の保坂展人市長は引き続きプール方式の大きなメリットを説き、厚労省を説得していくつもりだ。
このように、PCR検査の革新を利用して、行政検査ではなく社会的検査の規模を拡大していくことが非常に重要だ。こうすれば、新型コロナ感染拡大を防ぐための行政検査・社会検査は次のように推移し、日本全体のコロナ感染状況に役立つはずだ。➀点で防ぐ(感染の起こったクラスターの検査、濃厚接触者の検査も含む)②線で防ぐ(悪循環サイクル化している保育所、学校、医療機関、介護施設の希望者全員検査)③面で防ぐ(東アジア型、コロナ感染の増大した地域の希望者全員検査)。これらの大規模検査の実施には、相当額の財政支援措置が必要であるが、統合政府(政府と通貨発行権を持った日銀)が経済対策も兼ねて大規模に実施すれば、当面はコロナ禍対策が最大の経済対策になり、日本経済の悪化を食い止め、デフレ不況脱出につながる。2020年度は第一次、第二次補正予算で58兆円を計上しており、巷間伝えられる第三次補正を組み合わせると、最低でも70兆円規模になる。プライマリー・バランスの実現はもはや無理であり、安倍、菅政権の財政再建原理主義政策=緊縮財政政策と利権支出拡大政策は既に破綻した。
さて、次に検査後の治療について要約しておきたい。抗ウイルス薬の開発が急ピッチで進んでいるが、児玉教授は巨大製薬会社(メガ・ファーマ)のファイザー・ビオンテック、モデルナが開発したワクチンとしては新種の遺伝子型(RNA)型ワクチンについて、「アデノウイルスなどを使うベクター型と比べて予想外の副作用は少ない」と期待はしておられる。しかし、➀新しいタイプのワクチンのため効果の持続性②持続性に疑問があるため、複数回の接種が必要であり、その場合のヒトの健康への副作用についての治験が必要③コロナ・ウイルスが治験の時点から変異した場合の副作用については検討しなければならないーなどとして、有効性と重篤な副作用がないことを確認することを前提として、普及は早くても来年後半になるーなどの見方をしておられる。取りあえずは、既存の抗ウイルス薬をさらに改良して症状のステージに応じたきめ細かな治療法の確立が必要だ。
※なお、レムデシベルの効用については、WHOは否定的な見解を出している。
いずれにしても、治療と再感染防止のためには遺伝子工学、計測工学、IT工学を組み合わせた精密医療が欠かせない。ところが、政府の新型コロナ感染症対策分科会の専門家と称する方々はこれらの最先端医学に詳しくない。むしろ、政府からはやや独立した専門家会議から分科会に格下げされる際に、これらの分野の専門家は外された。菅政権の意向を追認する会議に成り下がった。そういうことで、「マスク会食」(菅首相)、「ふんどしを締め直す(決意)」(尾身幸次分科会会長)、「会食は是非『小人数』。できれば『小一時間』。『小声』で楽しんで、料理は『小皿』に分けて、『小まめ』に換気や消毒をしていただく』。5つの小を合言葉にして、感染防止対策の徹底をお願いします」(小池百合子東京都知事)といった、現実的的でない「エチケット」や戦艦大和の「大和魂」しか「打ち出せていない」。かつての太平洋戦争時に「神風が吹く神国日本」に頼ったようなものだ。
ジョージア州の再開票でもやはりバイデン氏の勝利が確実と報道され、2020年1月6日午後1時に各州選出の選挙人による開票結果が確定してから、バイデン次期大統領の誕生が正式に決定し、1月20日に大統領就任式を迎える。バイデン氏はすぐに世界保健機構(WHO)に復帰し、世界各国と共同歩調を取ると公言しているが、各国が新型コロナウイルスへの遺伝子情報解析を含めたコロナ感染症対策の推移を提供しなければならなくなるだろう。日本の政府=菅政権がどう対応するか、注目すべきところだ。
なお、真正野党側は遺伝子工学、計測工学、IT工学を組み合わせた精密医療を指導でき、個人情報管理も徹底できる指導者者の選任・確保と政府とは独立した米国の疾病予防管理センター(CDC)の日本版を創設するよう、準備しておくべきだ。いずれにしても、確かな大規模コロナ禍対策が最大の経済対策になる。