(5)尖閣諸島問題
これは、日中国交正常化の際の1972年9月、田中角栄首相と周恩来首相が事実上の棚上げで合意したものである。 これは、今やダマスゴミと化した読売新聞の1979年5月31日付社説も棚上げにするよう論じている。しかし、これを破ったのが2010年9月8日の「中国漁船拿捕」事件であり、拿捕を命じた国土交通相の前原誠司である。「尖閣諸島に領土問題は存在しない」と言い切り、中国を挑発、刺激した。

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その後、日中間の対立を沈静化するため2011年末に野田佳彦首相が訪中、胡錦濤国家主席・温家宝首相との間で日中首脳会談が開かれ、①東シナ海を「平和・協力・友好の海」とする②海洋での危機管理体制を整えるために協議を開始すること③翌年の国交正常化40周年に合わせて相互交流を活発化させることーで合意した。これにちょっかいを出したのがナショナリストを装った実質対米隷属主義者の東京都知事・石原慎太郎である。石原は米国の戦争勢力の代弁機関であるヘリテージ財団で2012年4月16日「東京都による尖閣諸島買い上げ」構想をぶちあげた。

この挑発に乗ったのが「首相」野田佳彦である。野田は同年9月9日にロシアのウラジオストックで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で中国の胡錦濤主席が「国有化はしないで欲しい」と要請したにもかかわらず、9月11日には閣議決定で国有化に踏み切った。一週間後の9月18日は1931年に関東軍の謀略によって満州事変が引き起こされた、中国にとっては「恥辱の日」である。野田や首相補佐官の長島昭久が中国共産党指導部および人民を挑発したことは疑いない。

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その後、自公政権が成立してからの2014年4月24日、日米首脳会談が行われ、バラク・オバマ大統領は尖閣諸島は日米安保条約の対象になり得るとしながらも、「事態をエスカレートさせず、言説を抑え、挑発的行動をとることなく、問題を平和的に解決することの重要性」を安倍に「説いた」。その背景には2014年3月下旬、オランダのハーグで開かれた核セキュリティ・サミットで、「新型の米中関係の強化と構築」の必要性を強調し、「米中関係は最も重要な二国間関係」と事実上の「米中同盟論」を掲げたことがある。これは、中国が欧州、イスラム諸国、ロシアと手を握り、没落真っ最中の「パックス・アメリカーナ」に対峙できる態勢をユーラシア大陸で整えつつあることへの焦りである。早い話が、中国が大量に保有している米国国債を売却すれば、米国の長期金利は急騰、国債と株式の大暴落、ドル暴落が起こり、米国はいくら軍産複合体が頑張ってもどうにもならなくなる。

それはさておき、我が国政府が1970年代の尖閣諸島問題の棚上げ論=領土問題の存在を認め、路線を外交的解に転換すれば、南シナ海・南沙諸島における中国、台湾、ベトナム、フィリピンの領有権争いに対して、サジェスチョンをできる立場に立つことができよう。なお、中国の軍拡問題については、最近の中国企業の株価急落に示されるように、軍拡から内需振興に政策転換を図るべきである。米国の轍を踏んではならない。また、北朝鮮が米国にミサイルないし大陸間弾道弾を発射するなどというのは、合理的に瀬戸際外交を繰り返している同国の採用するところではない。

米国から報復攻撃を受けて、金正恩体制が壊滅するだけである。北朝鮮が日本に対してミサイル攻撃をするとするなら、日本海側に集中している原子力発電所を狙えば良い。別に核弾頭を搭載する必要もない。ところが、山本委員が特別委で明らかにしたように、原発を防御する迎撃ミサイルは何ら設置されていないし、市民・町民の避難計画も策定されていない。安倍一族が「日本国民の生命を守る」などというのは、詭弁に過ぎない。なお、安倍一族は北朝鮮に対する経済制裁を解除しているから、攻撃する理由はあまり見いだせない。現実に考えられるのは、旧共産圏と同じように内部崩壊して、大量の難民が発生する場合だろう。こうした事態に対する準備もせず、血税を使って米国から高い高い兵器を購入、日米共同訓練なるものを行っている。その一方で、日本の経済社会を決定的に左右する少子高齢化に対応するための社会保障費はバッサリ削っている。

「首相」安倍の率いる現政権は今年の4月27日、18年ぶりに米国の言われるまま集団的自衛権行使を強要する憲法違反の「日米防衛協力ガイドライン」を受け入れたが、善意の国民に対して危機意識を煽り、ウソでごまかす安倍政権(もはや安倍一族郎党の類である)には世界の縦糸(歴史)と横糸(地理)を総合的に把握できる政治家は不在だ。米国および中国の世界戦略を見抜きき、最適な内政・外交路線を確立するなどということは不可能であろう。もはや、一刻も早く退陣したほうが、安倍の健康にとっても最も良い。

 ※追記・共産党の「国民連合政府」構想の提示を受け、野党結集加速
今回の戦争法の「成立」(参院安全保障関連法案審議特別委員会での強行「採決」は野党に表決権が与えておらず、厳密には無効だろう)で「首相」安倍晋三はゴルフを楽しんでいる。しかし、本日9月22付の東京新聞は2面の「安保法採決へ野党連携強調」と題する記事で、民主党、生活の党が野党連携に積極的になっていることを伝えている。背景には、共産党が従来の独自路線を捨て「国民連合政権」構想を打ち出したことにある。岡田克也、枝野幸男幹事長ら民主党首脳は野党結集に前向きで、生活の小沢一郎代表は「安保法の扱いは、次の選挙で国民が判断する。(その際、現状では)自公政権に代わる受け皿がなく、野党の連合、連携は不可欠だ」としている。なお、自公対米隷属政権が最も恐れる事態が発生したことで、米国の指示であらゆる謀略を駆使して、国民連合政権樹立阻止工作を展開するだろう。

維新は分裂の最中だが、維新非大阪系には民主党出身のものが多い(実態は、「隠れ小沢派」)から、分裂すればは反自民党(=自滅党)、反公明党(=公暗党)の路線を一段と強めるだろう。大阪系は泡沫政党になる。自公政権は一生懸命遊んでおれば良く、「最後の晩餐」を味わえば良い。

 

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