NHKの最新の報道(11月19日)によるとロシア国防省は、ウクライナ軍が、想定されていたクルスク州ではなくブリャンスク州を高精度長距離ミサイルATACMSで攻撃したと発表。バイデン政権もこれを認めた。これに伴い、プーチン大統領は核兵器使用基準引き下げを承認したという。ATACMSは衛星システムなどを使用して飛行経路を割り出すハイテク・ミサイルのため、ウクライナ軍では操作できず、実質的に米軍がウクライナでロシア西部のブリャンスク州を攻撃したことになる。これに伴い、プーチン大統領は核兵器使用基準引き下げを承認した。米軍とウクライナ軍が引き続き、ATACMSを使用し続けてロシアに多大な被害を与えると、プーチン政権は核ミサイルを使ったウクライナなどへの報復攻撃を行うだろう。次期トランプ大統領が正しい政権引き継ぎのために、レームダック化したバイデン大統領に再度、直接に会い、選挙期間中の公約に従ってATACMSによるロシアへの攻撃を止めさせない限り、英国が同じく長距離巡航ミサイル「ストームシャドー」を使ってロシア西部を攻撃したこともあって、第三次世界大戦が勃発する可能性を否定できない。
米軍とウクライナ軍が協同でロシアをATACMSで攻撃
NHKは「“ウクライナ軍がATACMSでロシア西部を攻撃” ロシア国防省」と題して、ウクライナから、想定されていたロシア西部のクルスク州の北方にあるブリャンスク州が攻撃されたと報道した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241119/k10014643621000.html)。
ロシア国防省は、ウクライナ軍がアメリカのバイデン政権からロシア領内への攻撃に使う許可を得たとされる、射程の長いミサイルATACMSでロシア西部を攻撃したと発表しました。ロシア国防省の発表によりますと、19日未明、ウクライナ軍がATACMS、6発を使ってウクライナと国境を接するロシア西部ブリャンスク州への攻撃を行いました。ロシア軍はこのうち5発を迎撃しましたが、残り1発の破片が軍事施設の敷地内に落下し、火災が起きたとしています。ただ、火はすぐに消し止められ、けが人などは出ていないということです。
一方、ウクライナ軍は、ブリャンスク州にある弾薬庫を攻撃し、12回の爆発を引き起こしたと発表していますが、使用した兵器については明らかにしていません。ウクライナメディアはウクライナ軍がロシア領内への攻撃でATACMSを使ったのは初めてだと報じています。
また、英国公共放送のBBCも次のように報じ、ウクライナが実質的には米軍の操作でATACMSを使って、ロシア西部のブリャンスク州を攻撃したことを、バイデン政権も認めたとしている。
ロシア政府は19日、ウクライナがアメリカに提供された長距離ミサイルを、初めてロシア国内に撃ち込んだと発表した。アメリカ政府当局者も米メディアに、これを確認した。ロシア国防省によると、ウクライナはロシア時間午前3時25分(日本時間午前9時25分)、アメリカ製「陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)」で、西部ブリャンスク州を攻撃したという。国防省は声明で、ミサイル5基を撃墜し、1基が損害を引き起こしたと発表。落下した破片のため軍事施設で火災が起きたが、すぐに消し止められ、死傷者はなかったとした。複数の米政府関係者も、ATACMSが使われたことを、BBCが提携する米CBSニュースに認めた。(中略)
ロシア国防省がミサイル5基を撃墜したとしているのに対し、米政府関係者2人は、ロシアが迎撃したのはウクライナが発射した8基ほどのうちの2基だけだと話した。この食い違いについて、BBCは独自には検証できていない。ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は、ブラジル・リオデジャネイロで開かれていた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の記者会見で、アメリカが紛争を深刻化させようとしていると非難。「ATACMSがブリャンスク州に夜間、繰り返し使われたことは、もちろん向こう(アメリカ)が事態の深刻化を望んでいるというシグナルだ」と述べた。
ラヴロフ氏はまた、「(ロシアのウラジーミル・)プーチン(大統領)が何度も言っているように、アメリカ抜きでこのハイテクミサイルを使うことは不可能だ」と主張。ミサイルは 「アメリカの軍事専門家 」によって操作されているとの「理解に基づいて行動する」とした。さらに、「私たちはこれをロシアに対する西側の戦争の新たな顔として受け止め、それに見合った対応を取る」と語った。
バイデン政権とロシアで撃墜したATACMSの基数に違いがあるが、ロシアがATACMSを撃墜できる能力を有していることは確かだ。ATACMSの発射基数と受けた被害が、ロシアによる核搭載ミサイルによる報復攻撃の実施判断に影響を与える。下に掲載のATACMSの威力を示すキャプチャ動画(画面左下の▶マークを押すと動画が再生されます)は、Xで公開されている動画で、ATACMSに搭載したクラスター爆弾で、軍事車両を撃破している様子である。ATACMSは通常の爆弾だけでなく、クラスター爆弾や核弾頭も搭載できるらしい(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/09/atacms-2.php)。
ウクライナのゼレンスキー政権による米軍の長距離ミサイル・システム部隊を使ったロシア攻撃に対して、ロシアのプーチン大統領は「核兵器使用基準の引き下げを承認した」という(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241119/k10014643571000.html)。
ロシアのプーチン大統領は19日、核兵器の使用基準について従来よりも引き下げることを承認しました。アメリカのバイデン政権がウクライナに対しロシア領内への攻撃に射程の長いミサイルの使用を許可したと報じられる中、アメリカを強くけん制するねらいがあるとみられます。プーチン大統領は19日、核兵器の使用基準を定めたいわゆる「核ドクトリン」の改定版を承認する大統領令に署名しました。
それによりますと、ロシアに対する攻撃が核兵器を保有していない国によるものであっても、核保有国の参加や支援があれば共同攻撃と見なすとし、核兵器使用の可能性を示唆しています。また、無人機や巡航ミサイルなどが大量に発射され、それらがロシアの国境を越えるという信頼できる情報を得た場合にも核兵器の使用を検討するとしています。ロシア大統領府のペスコフ報道官は、「核の抑止力は潜在的な敵国にロシアやその同盟国を侵略すれば、報復が避けられないと理解させることを目的としている」と述べました。
ロシアのラヴロフ外相も指摘するように、ATACMSは衛星システム使用し、システムによるロシア領土へのATACMSの到達経路(ATACMSの飛行情報)などの取得などを行った上で発射されるハイテク・ミサイルのため、ウクライナ軍では操作できず、実質的には米軍が操作することになる。つまり、ATACMSによるロシアの領土攻撃は、ウクライナ軍と米軍が協同で行ったことになる。プーチン大統領が核ミサイルの使用基準を引き下げたのもやむを得ないことになる。
このため、選挙期間中にウクライナ戦争の早期終結を公約している次期トランプ大統領が、政権引き継ぎのためにレームダック化したバイデン大統領に再度直接に会い、トランプ氏の公約に従ってATACMSによるロシアへの攻撃を止めさせない限り、第三次世界大戦が勃発する可能性は否定できない。なお、両者が最初に会った際に、機密事項と思われるATACMSによるロシア攻撃の許可について、バイデン大統領がトランプ次期大統領に伝えていたかどうかは不明だ。バイデン大統領にとっては機密事項ではないかも知れない。
ただし、トランプ次期大統領の本件に関する正式なコメントは出ていないようだ。正式なコメントが出たら、本投稿記事に掲載します。ただし、レームダックに陥り、任期があと二カ月ほどのバイデン大統領が、実質的にATACMSの使用に踏み切ったことについては共和党を中心に、批判の声が極めて強い。米国誌ニューズウィーク誌は「なぜ今さら長射程ミサイル解禁なのか、ウクライナ戦争をめぐるバイデン最後の賭け」と題して、次のように伝えている(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/11/524834_2.php)。
バイデン政権の決定はすぐに反発を招き、トランプ支持者の一部がX(旧ツイッター)で、戦争の早期終結という公約のトランプに対し、任期残り2カ月のバイデンがウクライナ戦争をエスカレートさせようとしていると非難した。ジョージア州選出の共和党議員のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は、バイデンをこう非難した。「アメリカ国民は11月5日の大統領選投票日に、外国の戦争に資金を提供したり戦ったりすることを望まないという考えを明らかにした。われわれは自分たちの問題を解決したいのだ。もうたくさんだ。こんなことはやめなければならない」
ユタ州選出のマイク・リー上院議員(共和党)がXに投稿した「リベラルは戦争が大好き」「戦争は大きな政府を促進する」というコメントに対しては、実業家でトランプ政権に入る予定のイーロン・マスクが「これは真実だ」と返信した(注:マスク氏はトランプ氏の政権構築の重要参謀になっている)。バイデンの決断についてトランプはまだ声明を出していないが、長男のドナルド・トランプ・ジュニアはXにこう書いている。「軍産複合体は、父が平和を創造し命を救うチャンスを得る前に、確実に第3次世界大戦を起こしたいようだ。何兆ドルもの資金を確保しなければならない。無駄に命が失われる! 愚か者め!」
保守系学生団体ターニングポイントUSAの創設者チャーリー・カークは、Xでこう主張した。「バイデンは第三次世界大戦を起こそうとしている。病的だし、完全に頭がおかしい。アメリカの兵器をロシアの内陸に撃ち込んだりするべきではない!ロシアがアメリカにミサイルを撃ち込むためにミサイルを供与するようなものだ」
さらにこの方針は、北朝鮮が最近、約1万人の精鋭部隊をロシアのクルスク州に派遣したことを踏まえて決定された。ウクライナは今年の夏、国境を越えて予想外の大攻勢をかけ、ロシアとの交渉材料にするためクルスクの一部を占領したが、ロシアは手薄だったクルスク奪還部隊を北朝鮮兵で補強してきたのだ。バイデン政権は、前線に投入される北朝鮮軍の部隊が今後さらに増え、ロシア軍部隊が優位に立つことを恐れている。米国務省のベダント・パテル報道官は先日、記者団に対し、ワシントンはクルスクの動向について「非常に懸念している」と述べた。
当初は、ウクライナのクルスク侵攻はロシアの軍事力の分散をもたらすために行われたとされていたが、ロシアは東部ドネツク州での攻勢を一段と強め、最大の要衝であるポクロウシクは陥落寸前だ。逆に、ウクライナの軍事力がロシア西部とウクライナ東部に分散してしまう結果になり、東部ドネツク州の要衝は次から次へと陥落、最大の要衝であるポクロウシクも陥落前夜まで来ている。そして、トランプ次期大統領はウクライナ戦争の早期終結を米国民に公約して圧勝した。クルスク侵攻は当初の意味を失い、終戦をウクライナ側に有利なものにするための作戦に転化したというのが実情だ。
そのクルスク州も既に、露朝が二国間安全保障条約(軍事同盟)を結び北朝鮮軍がロシアの防衛に参戦したことで、奪還されているという報道もある。毎日新聞のサイトは「ウクライナ東部戦線でロシア軍が攻勢を強めている。米シンクタンク『戦争研究所』によると、露軍は9~10月、約1500平方キロのウクライナ領やウクライナ軍が越境攻撃するロシア領クルスク州の領土を制圧した。ロシアが2カ月で制圧した面積としては侵攻した2022年2月以降で最大だという」と報道している(https://mainichi.jp/articles/20241117/k00/00m/030/090000c)。引用元が米国の好戦的なネオコン系のシンクタンクで、ウクライナ優勢の情報ばかり流してきた「戦争研究所」が言っていることだから、その可能性は大きい。
【追記:11月24日午前8時】NHKによると、ウクライナはロシアのクルスク州への越境攻撃で掌握したロシア側の領土40%以上失ったようだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241124/k10014647841000.html)。
ロイター通信は23日、ウクライナ軍参謀本部の関係者の情報として、ウクライナはことし8月にロシア西部クルスク州への越境攻撃を開始した際、およそ1400平方キロメートルのロシア領土を掌握したものの、その面積はこれまでにおよそ800平方キロメートルまで縮小したと伝えました。ウクライナは、掌握したロシア領土の40%以上を失ったことになり、ロシア軍による反撃が繰り返し行われた結果だとしています。(中略)
一方、ロシア軍の侵攻が続くウクライナ東部ドネツク州の状況については、ロシア軍が要衝ポクロウシクへの足がかりとなる地域で、1日あたりおよそ200メートルから300メートルのペースで前進を続けているとして、ウクライナ軍にとっての脅威となっているという見方を示したということです。
800平方キロメートルというと、28キロメートル四方だ。ウクライナ軍がロシア領土を侵略して掌握する地域は28キロメートル四方になったことになり、普通乗用車で30分以内に到着できる距離にしかならない。ATACMSで攻撃してもほとんど意味はなかったということになる。なお、ロシアとしては自国の領土は、クリミア半島とウクライナ東南部の併合地域を併せたものだ。後者の地域ではウクライナ軍は米軍や英軍の力に頼って長距離ミサイルのATACMSやストームシャドーを使って攻撃したことがあり、ほとんどはロシア軍の防空システムによって迎撃された。うち、一基は完全な撃墜はできなかったが、その際に落下した破片によって、地域の住民が殺傷された。【追記終わり】
ただし、そうでない可能性(依然としてウクライナ軍がクルスク州を掌握している可能性)もある。その場合に、ウクライナのクルスク州侵攻が全く無意味なものになることを恐れて、バイデン大統領が最後の決断を下したということらしい。こうなると、ウクライナの「電撃的クルスク州侵攻」も、バイデン政権が知っていたか、あるいは支配下にあるゼレススキー大統領に指示を出したのかもしれないということになる。なお、ロシア軍の軍事力分散というウクライナのクルスク侵攻は、その目的を達成できていない。
しかし、ATACMSで攻撃したのはクルスク州ではなく、その隣のブリャンスク州を攻撃している。これは不可解だ。露朝合同軍がクルスク州を奪還したとの毎日の報道もあるが、そのせいかも知れない。また、バイデン政権とその傘下にあるゼレンスキー政権が、クルスク州のロシアの軍事施設や北朝鮮が持ち込んだ米軍と同程度の性能・威力を持つと言われる戦車などの軍事兵器も含めて、ATACMSでクルスク州の露朝合同軍を攻撃した場合、北朝鮮がウクライナ戦争に本格参戦するほか、プーチン大統領が報復攻撃として核弾頭搭載ミサイルの使用に踏み切る可能性がある。そのことに、恐れを抱いたからかも知れない。核抑止力は厳然として存在する。
なお、米側陣営のメディアは、バイデン政権下の米国を筆頭とするNATO加盟諸国がウクライナを利用して間接的に長距離ミサイルを使って攻撃し始めたことの理由に、北朝鮮軍のクルスク州奪還への参戦を挙げている。しかし、露朝が二国間安全保障協定(軍事同盟)を結んだことから、国際法上、北朝鮮のロシアに対する支援はあり得ることである。要するに、露朝合同軍の軍事力を恐れているということだ。歴史の常だが、正義は戦争の勝者にある。米国のバイデン政権がウクライナのゼレンスキー政権を傘下に置いて、ロシアを「特別軍事作戦」を展開せざるを得ないように追い込んだことが、そもそもの間違いだ。
次の図は、幸福の科学出身の国際情勢分析家の及川幸久氏が紹介した北朝鮮の大砲を兼ねた最新鋭戦車のようだ(https://www.youtube.com/watch?v=oF1AzSX7UGA)。
なお、Forbes Japan(米国で発売されている経済雑誌の日本語版)は、「攻撃目標になったブリャンスク州の兵器廠に、クルスク州で戦う5万人規模のロシア軍部隊用の弾薬が保管されていたのは間違いない」(https://news.yahoo.co.jp/articles/bf74d29ef40d284337dfb21ee167f4643732a0d9)としている。その場合でも、クルスク州が奪還されていないとした場合、ウクライナ戦争の終戦交渉で有利な立場に立つことを目標に、ロシア軍と北朝鮮軍が同州の奪還に向けて精鋭部隊を使いウクライナ軍を攻略するだろう。上記に追記したとおり、クルスク州は日本時間で11月24日午前8時の段階で、露朝合同軍によって60%は奪還されている。
ウクライナ国営通信によると、「ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は19日、首都キーウでの記者会見で、同国が保有するミサイルやドローン(無人機)などの長射程兵器について『全てを活用していく』と述べた。米バイデン政権が露領への使用を容認したとされる地対地ミサイル『ATACMS』を使用していく考えを示唆した」(https://www.yomiuri.co.jp/world/20241120-OYT1T50044/)。ウクライナのゼレンスキー政権自体はATACMSの使用を明らかにしていないが、バイデン政権が認めた以上、「示唆した」ではなく「明らかにした」だろう。
ウクライナがバイデン政権の指示の下、衛星システムを使用した高精度長距離ミサイルを大量に使ってロシアに大きな被害を与えれば、プーチン大統領も核搭載ミサイルの使用を決断し、第三次世界大戦が勃発するだろう。ただし、米国が供与できるATACMSの数には限りがある。在庫が沢山あるかも不明だ。また、ドイツなどはバイデン政権とは異なり、ゼレンスキー政権に対して長距離巡航ミサイルなど高精度長距離ミサイル・システムのロシア攻撃のための供与は認めていない(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-26/S9HG3ET1UM0W00)。
ドイツのショルツ首相は26日、長距離巡航ミサイル「タウルス」をウクライナに供与することは認められないとの立場を示した。供与すれば、ドイツが対ロシア戦争当事国の一つになると説明した。(中略)ウクライナは地中施設を貫通する威力を持つタウルスの供給を求めてきた。供与を支持する人たちは、タウルスが戦況を一変させる可能性があると主張しているが、ショルツ首相は従来から供与に否定的だった。
レームダック下にあるバイデン大統領がとち狂って認めたATACMSのロシア攻撃のための使用だが、来年1月20日にはトランプ第二次政権が誕生して、選挙時の早期のウクライナ戦終戦という公約を実行すれば、ATACMSなどの高精度長距離ミサイルは供与しないだろうから、ロシアが核搭載ミサイルでウクライナや米国に対して、報復攻撃をすることには慎重になるだろう。
もっとも、ATACMSなどの在庫が豊富で、バイデン・ゼレンスキー政権がクルスク原子力発電所を何とか攻撃できるとか、米国以外の英国(米国に単独覇権体制のノウハウを伝えたのは英国)を筆頭とする欧州のNATO加盟諸国は、ロシアからの核搭載ミサイルの報復を受けても、自国崩壊を覚悟でウクライナに高精度長距離ミサイルを供与し続ける決意(参考:https://www.ukrinform.jp/rubric-polytics/3926141-sutama-ying-shou-xiangbaiden-mi-da-tong-lingni-duishiteukurainaheno-zhang-she-cheng-gong-ji-xu-ketoyidoru-rong-ziwo-yao-qinghebao-dao.html)をしているようにも見ることができる。
そこで、スターマー首相らがバイデン大統領がレームダックの状態にあり、2カ月後に成立する次期トランプ政権の意向を無視して、そのように動けば、第三次世界大戦が勃発する。ただし、米国抜きの「第三次世界大戦」になるだろう。ウクライナを支援してきた日本はどうするのか。
上記の英国が長距離ミサイルをロシア攻撃に使用することもあり得るとの予想を裏付けるように、ブルームバーグは20日(日本時間では21日)、英国のスターマー政権がバイデン政権から衛星システムによる飛行情報の提供を受けて、ゼレンスキー政権とともに、英国製の長距離ミサイル「ストームシャドー」(注:イギリスとフランスが共同開発した空中発射型の巡航ミサイルで、フランスでは「スカルプ」と呼ぶ)を使ってロシアのクルスク州を攻撃したと報道した(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-20/SN96UEDWRGG000)。
ウクライナ軍はロシア領内の軍事目標に対し、英国製の長距離ミサイル「ストームシャドー」を初めて発射した。ロシアによる侵攻が1000日を超えて新たな局面に突入する中、ウクライナは欧米から提供された長距離兵器の使用を(注:バイデン政権からの宇宙システムによるミサイルの飛行経路の情報を得て)拡大させている。ストームシャドーによる攻撃は、ロシアがウクライナとの戦争に北朝鮮兵を投入したことへの対応として英国が認めた。取り扱いに慎重を要する問題だとして当局者が匿名を条件に語った。英国はロシアによる北朝鮮兵の戦線投入について、戦争をエスカレートさせる行為と見なしているという。(中略)
軍とつながりを持ち、130万人を超える登録者を持つテレグラムのチャンネル「Rybar(ライバー)」によると、ストームシャドーの破片がロシアのクルスク州で見つかり、黒海沿岸クラスノダール地方の港湾都市エイスク上空で2発のミサイルが迎撃されたという。この情報については独自に検証できていない。
もっとも、ロイター通信によると、ロシア側の発表では、「過去24時間に英国製の長距離ミサイル『ストームシャドー』2発を撃墜した」(https://jp.reuters.com/world/ukraine/643TOZLWQ5MD5GAG4KRW2MNFCA-2024-11-21/)という。ATACMSやストームシャドーは最新鋭の軍事兵器でないから、取りあえずは、ロシア軍にはバイデン政権下の米国を盟主とするNATO加盟諸国の高精度長距離ミサイルを撃墜する能力があるようだ。
ただし、ロシア軍にNATO諸国の高精度長距離ミサイルの撃墜能力があるにしても、実質的にNATO軍が大規模攻撃をすれば、ロシアに甚大な被害を与える可能性はある。こうした状況を予測して、プーチン政権のバイデン政権下の米国を盟主とするNATO加盟諸国に対する対決姿勢は一段と強まった。NHKは、「ロシアのラブロフ外相は『プーチン大統領は、射程の長いミサイルの使用が承認されれば、われわれの立場がどう変化するかについても警告した』とけん制していて、ロシア側は欧米への対決姿勢を一層強める構えです」と報じている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241121/k10014644761000.html)。
その証拠に、ウクライナ側の報道によると、「ウクライナ空軍は21日朝、ロシア軍がウクライナ東部の都市ドニプロにある重要施設に対してさまざまな種類のミサイルによる攻撃を仕掛けたとした上で『ICBM1発』がロシア南部アストラハン州から発射された」と発表」したという(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241121/k10014645651000.html)。もっとも、プーチン大統領は同じ21日、「ウクライナ東部への攻撃で新型の中距離弾道ミサイルを使用した」と明らかにし、ICBM=大陸間弾道ミサイルを発射したというウクライナ側の発表を、事実上、否定した。
これについて、バイデン政権下の国防総省のシン副報道官は21日の記者会見で、「『ロシアが発射したのは実験的な中距離弾道ミサイルだ」と指摘、ゼレンスキー大統領らの「ICBM説」を否定したうえで、「『ICBM=大陸間弾道ミサイルをもとにつくられた』」もので、「『戦場に投入された殺傷能力の高い新たなタイプの兵器であり、懸念している。このミサイルが戦場で使われたのを確認したのは初めてだ』」と語ったものの、「『このミサイルの発射に先だって、ロシアからアメリカに対して通告があった』」という(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241121/k10014645651000.html)。
ウクライナに供与された長距離ミサイルでロシアの重要な軍事施設や主要な都市を攻撃するのは、実際はウクライナに展開しているバイデン政権下の米軍だ。ロシアのプーチン政権がウクライナを攻撃するのにICBM(大陸間弾道ミサイル)を使う必要はないと思われるが、今回の新型中距離弾道ミサイルによるウクライナ東部の攻撃という事実は、ゼレンスキー政権が実質的にはバイデン政権下の米国を盟主とするNATO軍に頼って、長距離ミサイルでロシアの重要な領域を攻撃し、甚大な被害を与えた場合は、核搭載ミサイルによるウクライナ及びNATO加盟諸国に対する報復攻撃も辞さないことを強く示唆している。
さて、ゼレンスキー政権は、欧米諸国がウクライナに供与した長距離ミサイル使って最大限、クルスク州を中心にロシアへの攻撃を始めたことから、ロシアのプーチン政権が核搭載ミサイルを使って報復し、「第三次世界大戦」が勃発する可能性が一段と大きくなってきたと言える。ただし、次期トランプ大統領が選挙期間中にウクライナ戦争の早期終結を公約しているだけに、NATO加盟の欧州諸国も不安を隠せない。ブルームバーグは先の報道記事で、「一方で、ホワイトハウスに来年1月に復帰するトランプ次期米大統領が短期間での戦争終結を公約に掲げたことで、ウクライナと支援国には新たな危機感が生じている」と報じている。
NATO加盟の欧米諸国が製造し、ウクライナに供与した高精度長距離ミサイルは、バイデン政権が航空宇宙システムによるミサイルの飛行経路を提供しなければ、ウクライナのゼレンスキー政権は使用することが出来ない。レームダックのバイデン政権がNATO加盟の欧州諸国に高精度長距離ミサイルによるロシア攻撃を指示し、第三次世界大戦を引き起こして無責任に退陣するのか。それとも、欧州諸国も結局、トランプ次期政権の外交政策を踏まえて、高精度長距離ミサイルによるロシア攻撃がロシアに重大な損害を与えないうちに、ウクライナ支援を打ち切るのか。現状では、いずれかの選択が残されている。しかし、正しい選択は自ずと明らかである。
なお、日本の林芳正官房長官(宏池会の岸田文雄氏の後継者)は、「わが国は唯一の戦争被爆国としてロシアによる核の威嚇、ましてや使用はあってはならないと考えている。日本の立場は機会あるごとにロシア側に伝え、国際社会にも訴えてきており、今後も取り組みを続ける」と閣議後の記者会見で語っている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241119/k10014643571000.html)。
それなら何故、ロシアを核ミサイルを使わざるを得ないようにさせる(事実上は)バイデン政権が仕掛けたATACMSによるロシア攻撃を暗に容認するのか、一貫性に欠けるのは明らかだ。日本の石破政権は、レームダックに陥った時期に、苦肉の策を決断した単独覇権派の軍産複合体、ネオコン傘下のバイデン政権にここまで隷属するのか。石破政権のレームダックにあるバイデン政権への隷属は、トランプ次期政権が米国民から負託された公約の実現を妨害するものであることは明らかであり、いかかがなものか。
また、トランプ次期大統領は、石破茂首相には適当な理由をつけて故意に会わなかった(イスラエルのネタニヤフ首相には会っているし、連絡もよく取っている)が、トランプ次期政権はウクライナに対する支援を止めることを選挙で公約にしており、現在は、不法移民対策に全力を挙げて取り組んでいるようだ。石破茂首相はトランプ次期米国政権とどのような哲学をもって外交政策を展開するのだろうか。
バイデン政権とゼレンスキー政権は癒着し、不当な取引をしている
ロシア在住の日本人・ニキータ氏が「ニキータ伝ーロシアの手ほどき」というYoutubeチャンネルを公開している。その中の11月16日に公開されたチャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=7wN5LFIAPPc)で、本サイト流に言えば、米国ディープステートの米国単独覇権派(軍産複合体と好戦的なネオコン派)の傘下にあるバイデン政権は、ゼレンスキー政権と癒着し、不当な取引をしている、とのことだ。
トランプ次期大統領から国家情報省長官に指名された元民主党下院議員で、現在は共和党員になり先の大統領選でもトランプ前大統領の応援に回ったトゥルシー・ギャバード氏は、ウクライナのゼレンスキー政権が築き上げている国家について、「政敵を投獄し、野党も禁止、独立した全てのメディアを封鎖して言論の自由を破壊した国家で、民主主義国家を装っているが、実は独裁国家か権威主義国家に(非常に)似ている」と厳しく批判しているようだ。
政府効率化委員会のトップの一人に指名されているイーロン・マスク氏も、「ゼレンスキー政権が米国の(民主党系)政治家に送った賄賂や、バイデン政権がゼレンスキー政権支援のために提供した資金の使い道について、(次期トランプ政権下の)ホワイトハウスで(厳しく)追及する時が来た」と語っているという。なお、国内総生産が2023年で1788億ドルのウクライナは現在、主として日本を含む米側陣営諸国に対して1500億ドルほどの対外債務を抱えており、深刻な経済危機に陥っているという(軍事支援はタダで受けるというわけにはいかない)。
ゼレンスキー大統領は、「米国の支援を失えば、ウクライナはウクライナ戦争に敗北するが、『民主主義』を守るために敗北はあってはならないから、トランプ第二期政権が誕生してもウクライナを支援しろ」との内容の発言をしている(https://www.bbc.com/japanese/articles/c05z24dr1j2o)。しかし、ウクライナ戦争の真の原因(バイデン政権とミンスク合意Ⅱ=ウクライナのドネツク、ルガンスク両州に高度な自治権を与えることを取り決めた=の実施を反故にしたゼレンスキー政権が、東部ドンバス地方のロシア系住民を大弾圧し、ロシアを挑発して「特別軍事作戦」を引き起こしたことが、真の原因)と戦況の真の経緯、そして、バイデン政権とその傘下にあるゼレンスキー政権の癒着と公金横領の実態などが、いよいよ白日の下にさらされる時が来た。