新型コロナウィルスで重篤な肺炎を発症、国内初の死亡者が出たことが本日14日のニュースで大きく報道された。日本国内での感染は実態のわからぬまま拡大の一途をたどっているようだ。大型クルーズ船のダイヤモンド・プリンス号の乗客・乗員上陸拒否という初動対策が二転三転したことなどから、世界保健機構(WHO)などから、日本政府=安倍晋三政権への対応に批判が強まっている。感染拡大が終息しなければ、7月24日から開かれるオリンピック、その後のパラリンピック開催にも重要な影響が出てくるだろう。
朝日新聞2月14日朝刊によると、厚生労働省が公式に、神奈川県在住で中国への渡航歴がないのに新型コロナウィルスに感染、重篤な肺炎に罹患した80代の女性が死亡したことを発表したという。また、和歌山県では医師が新型コロナウィルスに感染したことも明らかになった。
二人に共通することは、中国への渡航歴がなく、感染経路が不明であることだ。政府=安倍政権は新型コロナウィルスへの対策の見直しを迫られている。同紙の報道では、2019年度の予備費103億円を含む総額153億円の予算で、➀チャーター機や大型クルーズ船で帰国した日本人などへの検査費を国が負担する②検査能力を強化する③ワクチンの開発支援など、医療関連費用を負担する-などだ。
しかし、新型コロナウィルスの感染症の発生は昨年12月以降、中華人民共和国湖北省において、新型コロナウイルス感染症の発生が複数報告されており、2月12日までに
・中国 感染者44,653名、死亡者1113名
・中国以外 感染者516名、死亡者2名
・確認された国と地域:日本、タイ、韓国、台湾、米国、香港、マカオ、ベトナム、シンガポール、フランス、オーストラリア、マレーシア、ネパール、カナダ、カンボジア、スリランカ、ドイツ、アラブ首長国連邦、フィンランド、インド、フィリピン、イタリア、イギリス、ロシア、スウェーデン、スペイン、ベルギーと世界的な広がりを見せている。
※追記 本日2月14日付けの東京新聞1面では、中国政府が診断方法を変更したことによって、13日現在で新型コロナウィルスの感染者(肺炎=COVID19に罹患する)が武漢市のある湖北省で前日比1万4840人も急増したことから中国全土で5万9840人、死亡者が1367人になったと伝えた。死亡率は2.28%。高齢者や子供のほか、心臓病や糖尿病などの罹患者はもっと高くなるとみられるが、詳細な統計は不明。なお、これまで検査した中国国民に対して、新しい診断方法での再検査はしないため、中国全土での感染者はかなり多くなる可能性が高い。
中国政府とWHOの初動対策に問題があったことは確実だが、日本政府=安倍政権の情報収集能力、初動態勢にも問題があったことは確かだ。例えば、大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号。横浜港から乗船した乗客が香港で下船した際、新型コロナウイルスに感染したことが判明した。このため、ダイヤモンド・プリンセス号が那覇を経由して横浜港に入港したものの当初、3711人の乗客・乗員全員の下船・上陸を禁止した。また、全員にコロナウィルス感染の検査をせず、発熱等の症状が出ており、新型コロナウィルス感染の疑いが否定できない乗客・乗員273人にのみ検査をするにとどまった。
しかしその後、同クルーズ船で新型コロナ感染者は増加の一途を辿っている(最初に273人だけPCR検査した際は感染者数は63人だったが、2月13日時点で218人に急増)。このため、政府=安倍政権は、➀窓がないか開閉しない客室で生活している乗客②心臓病や糖尿病などの持病がある-のいずれかに該当する80歳以上の高齢の乗客と同室者の下船・上陸を認めるように変更した。その後、疲労困憊に陥っている乗客・乗員のために、全員の下船・上陸を認めるようである。要するに、その場しのぎの対応に終止してきたのである。
これについて、14日付の朝日コラム(2面、公的機関の公式発表や外国のメディアの内容に関して、メディアが嘘の報道をすることはあまりない)によると、WHOは日本政府が大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の入港や乗客・乗員の下船・上陸を拒否していることについて、「根拠に基づいたリスク評価がない」として、船舶の自由な入港や上陸を認めている国際保健規則を適用するよう求めた、という。また、米紙ニューヨーク・タイムズは11日付で、日本政府=安倍政権の対応を「公衆衛生の危機対応で『こうすべきではない』という教科書のような(柔軟性を欠いた)対応」と批判し、乗客・乗員を対象とした検査を行わないことや限定的な情報開示(極めつけは、大型クルーズ船の日本人感染者の数を日本人感染者の数に入れなかったこと)が、乗客・乗員の不安を増幅していると指摘したという。
米国のABCテレビは、「(横浜港が武漢市に続く)第二の感染拡大の震源地になる恐れがある」という専門家の意見を紹介している。ロシア外務省のザハロフ報道官も10日、ラジオ番組で「日本の対応はカオス(混沌)で場当たり的」と酷評している。
本サイトでも紹介したように、遺伝子(DNA)を検査するPCR法を使えば、完全とは言えないにしても新型コロナウィルスに感染しているか否かがある程度分かる。陽性か陰性の結果は出る。陽性の患者は病院・施設に隔離して、適切な医療の措置をしなければならないが、陰性の結果が出た場合はひとまず、自宅待機を懇願するというのが当然の対策で、乗客・乗員全員に対して初めからPCR検査を行うべきだった。
PCR検査に医療検査器具が必要なことはもちろんだが、中国湖北省の武漢市で感染が明確になったのは昨年12月。新型コロナウィルスについての情報収集が早ければ、医療検査器具の生産増加、外国からの輸入で入手・確保できるはずだ。大型船であってもクルーズ船の乗客・乗員全員の検査に必要な量の医療検査器具の確保ならなおさらである。
政府=安倍政権は、森友・加計学園疑惑から始まって、桜を見る会前夜祭、桜を見る会、カジノを含む統合型リゾート事業(IR)での贈収賄、河井克行前法務大臣と妻の河井案里参院議員の公職選挙法違反疑惑など「疑惑のデパート」になっているから、安倍首相夫妻自身を含む身内の防衛に必至で、国民生活の安全のことを思う余裕がなかったのだろう。
こうした事態が続けば、7月24日から開かれる予定のオリンピック、その後8月25日から開かれる予定のパラリンピック開催にも重要な影響が出てくるだろう。なお、フクシマ第一原発の放射能汚染問題について安倍首相はアルゼンチンのブエノスアイレスのブエノスアイレス・ヒルトンまで出かけ、第125回国際オリンピック委員会で、フクシマ第一原発の事故に関して、事故による放射線放出問題は「Under control(政府の関連機関によって完全に管理されているので心配は不要)」と大見得を切った。しかしながら実態は、放射能汚染水を貯蔵するタンクを増設する余裕がなくなり、「専門家の検討機関」と称する汚染水処理に関する委員会が事実上、福島県沖に汚染水を排出する見解をまとめ、安倍首相を長とする内閣に提出した。放出自身が環境に多大の悪影響を及ぼすが、この委員会やマスコミの議論では海水放出による「風評被害」をいかに食い止めるかに終始している。そしてしかも、放出に期限はないのが実際のところである。
「事故から8年以上経った今でも、どこかにあるであろう焼け落ちた炉心に向けてひたすら水を注入している。そのため、毎日数百万トンの放射能汚染水が貯まり続けている。東京電力は敷地内に1000基近いタンクを作って汚染水を貯めてきたが、その総量はすでに100万トンを越えた。敷地には限りがある。近い将来、東京電力は放射能汚染水を海に流さざるを得なくなる」(小出裕章著「フクシマ事故と東京オリンピック」44頁、2019年12月第一刷)の指摘の通りになっている。なお、フクシマ第一原発事故による「緊急事態宣言」は未だに解除されていない。
フクシマ第一原発の自己処理として現在考えられるもっともマシな方法は、原子力発電所の安全な廃炉について長年研究を行ってきた京大原子炉助教を務め、退官した小出氏の見解によると、フクシマ第一原発全体を、1986年4月26日1時23分(モスクワ時間)に起こったチェルノブイリ事故の際にソ連政府(当時、ミハイル・ゴルバチョフ書記長)が採用した巨大な石棺(せきかん)に封じ込める方法であるという。膨大な費用がかかるので日本の政権=安倍政権は採用しない。こうした解決に向けての意欲のない政府=安倍政権のことだから、新型コロナウィルスの感染拡大の阻止にも期待できない。
水際で阻止するという対策から、次の段階の対策を講じる時に来ている。会社など各種の法人や学校、行政機関、自治体など全国規模での早期発見が必要である。そのための、特別財政措置を取るべきである。問題の根本的な解決には、ワクチンの開発が不可欠だが、朝日デジタルによると、「世界保健機関(WHO)は12日、新型コロナウイルスによる肺炎の拡大について、4種類のワクチンが開発中だと明らかにした。実用化されて普及するには12~18カ月はかかる」という。