エピセンター(感染震源地)制圧が最優先−東大先端研・児玉龍彦名誉教授、新宿区手始めに(大幅補強)

朝日デジタルが2020年7月17日14時26分に投稿した「東京都の感染者、最多の293人『これからも増える』」と題する記事によると、小池百合子都知事から伝えられた17日の東京都内の新規感染確認者数は293人とのことだった。293人というのは過去最多。小池都知事率いる東京都では検査に応じた都民が多く、その中で無症状・軽症の患者、若者の陽性者が多いため、基本的には「自衛」による感染防止を要請している。しかし、東大先端科学研究センターに所属し、新型コロナウイルス抗体測定器協議会で指導者的立場を務める児玉龍彦東大名誉教授は、新型コロナウイルスの変異で「東京型」が発生し、新宿区が感染震源地(エピセンター)になっており、都内全域と全国に拡散していると分析している。そのうえで、新宿区を手始めに精密医学に基づく最大限の全区民検査を行い、陽性患者と陰性者を隔離したうえで、患者に対する適切な医療施設で治療を実施し、経済活動との両立を図るべきだと提言している。そのためには、改正インフル特措法の財源措置も含めたさらなる改正が必要になる。

Youtubeで17日に公開されたデモクラシータイムスの金子勝立教大学特任教授との対談で明らかにした。対談番組は、下記の通り。本投稿記事では概要について、図示しながら紹介し、最後に若干のコメントを行いたい。

7月18日までの新型コロナウイルス感染者数(NHKのサイトhttps://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/より)

多くの識者によると、日本の新型コロナウイルス感染症患者は最初、武漢型のものが発生し、その後欧米から帰国した国民がもたらした欧州型のものが全国に拡大したと言われている。しかし、この欧州型コロナウイルスの拡大は4月下旬には感染拡大がほぼ終了したとの見方が有力だ。児玉名誉教授もその一人だが、同教授はさらに、5月中旬ころから、無症状感染者のウイルスが変異して「東京型」となり、これが飛沫感染、接触感染に加え空気感染することによって、新宿区・豊島区が感染の震源地(エピセンター)になり、都内全域および全国に感染が拡大している可能性が強いという。

これは、最近拡大している新型コロナウイルスのゲノム解析(遺伝子解析)を行っての結果だ。

精密医学に基づく抗体検査やPCR検査を行わない無症状患者が増えると、時間が経つに連れて持続化するエピセンターができる。児玉名誉久寿によると、このエピセンターが新宿区や豊島区に発生、そこを拠点に、飛沫感染・接触感染・空気感染で次第に次第に東京都区内など都内全域と全国に拡大したと推定している。

東アジア地域では、新型コロナウイルスに似たコロナウイルスが以前に発生、これらのコロナウイルスに対する交差免疫が獲得されていたため、世界の他の地域と比べて重症化・死亡化する割合が低かった。しかし、既に「東京型」に変異しており、交差免疫に限界があることとワクチン開発を困難にするADE(ワクチンが開発されたとしても、産生された抗体が人体に悪影響を及ぼす副作用)があることから、楽観はできず、エピセンターになっている新宿区を中心に、職場、学校、養護施設などを中心に最大限、精密医療に基づく抗体・PCR検査を行い、陽性者を正しく確定することが重要だとしている。

小池百合子都知事は、PCR検査数が多くなったから、新規新型コロナウイルスの感染者(陽性者)が多くなっているのはやむを得ない、都が示した対処法によって「自己防衛」をすることを期待しているが、空気感染によって感染が拡大することもあり、従来型の対処法では限界がある。それに日本のPCR検査数は、ジョン・ホプキンス大学の調査によっても100万人当たり4171人と世界最下位レベルの157位だ。

サイト管理者(筆者)の考えでは、東京オリンピックの強行開催のために、厚生労働省や東京都が検査を可能な限り抑制してきた結果だと考えている。オリンピックの来夏開催が決定した後、小池都知事は「ロックダウン」と危機意識を煽り、PCR検査も多少増やして現在は、国内のどの地方自治体よりも多いと自慢している。

東京都のサイト(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)より

しかし、人口1100万人の東京なら、1日4万件の検査をしても世界レベルでは最下位に属する。しかも、問題は検査数自体ではなくて、検査数あたりの陽性者の割合、つまり、陽性判定率だ。東京都では「親しいメディア」にも積極的な開示はしていない(メディアに対しては新規感染者数のみが公表される)が、諸般の公開データを総合すると、陽性率は高くなっているようだ(東京都のサイトでは5月12日の段階でグラフで5.0%だったが、7月17日午後20時段階では6.3%まで上昇している。現在グラフは公表されていない)。

なお、児玉名誉教授によると、無症状感染者がウイルスを排出し、地域のエピセンター化を招くと指摘。このため、日本ではこれまで積極的な抗体検査・PCR検査を行わずにいたことで発見されてこなかった無症状感染者の特定とその対策(本人の了解を得た上でのGPS個別追跡型システムの採用など。管理責任者は米国の疾病予防管理センター=CDC=のような政府から独立した新型コロナウイルス感染症対策センターに置く)が不可欠だ。

取りあえずは、新宿区内で出来得る限り、区民全員に対する精密医療に基づく抗体検査・PCR検査を行い、陽性者を正確に判定して、適切な医療施設で症状に応じた治療をすべきというのが、児玉名誉教授の提案だ。そして、新宿区ならそのための検査機関、検査設備、検査人員は十分に確保できるとしている。

ただし、新型コロナウイルス感染症は政府=安倍晋三政権によって、新型インフルエンザ特別措置法改正の際に指定感染症に設定されているため、原則的には行政検査と行政の許可した治療でなければならなくなっている。保健所が全面的にさまざまな処理を行っている理由だが、小泉純一郎政権依頼新自由主義路線が強化されてきたたため、保健所の数が大幅に削減されるなど、処理能力が「パンク」している。

さらに、改正新型インフル特措法でも、感染症の人数が大規模なものに膨れ上がってしまうことが想定されていない。そのうえ、都道府県知事の「自粛要請」とセットでの「休業補償」が設定されていないため、自主的な検査を望む国民が限られてしまい、検査人数には限界がある。このため、改正インフル特措法のさらなる改正が必要だ。

なお、「自粛」ないし「ロックダウン」の繰り返しでは、一時的に感染確認者が減少しても、早急に解除すれば感染者は再び拡大に転じる。武漢市などで行われたのは、ロックダウンが主体ではなく、無症状感染者を含む感染者の隔離と治療である。そのことを下図に示しておきたい。

なお、欧州がなお厳しい状況にあるのは、公的医療保険制度が確立されていないことなどの制度的制約があるうえ、有効な抗ウイルス治療薬の開発が十分でないことによると考えられる。ワクチンについては、ADE作用があるため、短期間に有効なワクチンを開発することは極めて困難と見られている。米国が世界保健機構(WHO)から脱退するというような馬鹿げたことは止め、抗ウイルス薬の開発などで国際協調を進展させることが重要である。

※追記(2020年7月18日0540分)
朝日デジタルが2020年7月17日21時38分に投稿した「全国で新たに594人が感染 首都圏1都3県で407人」と題する投稿記事によると「新型コロナウイルスの国内感染者は17日午後11時50分現在、28都道府県で595人が新たに確認された。東京都は293人で、2日連続で過去最多を更新。埼玉県は4月16日以来の50人超えとなる51人で、千葉、神奈川を合わせた1都3県の合計は407人だった」(最終班と推定)。首都圏での感染者は若者だけでなく、10再以下の子どもたちや40歳以上の壮年、高年齢者層にも広がりを見せている。

のぞみ(東京・大阪間)で車内販売に従事する20代女性が12日に感染したことが17日判明しだが、JR東海では乗客との応対時間は短かったため、濃厚接触者ではないとのことだ。飛沫感染か空気感染の可能性が考えられるが、感染経路不明に分類されるだろう。首都圏や全国レベルで高水準の感染者が続いている。

東京型新型コロナウイルスの感染が再拡大している中、「Go To トラベル」を中心とした「Go To キャンペーン」は危険だ。政府=安倍政権は新型コロナウイルス感染防止対策と経済活動の両立を目指していると語っているが、実際のところは感染拡大を放置して、積極的な経済活動の推進に力を入れているだけだ。経済活動の本格的な再開も、国民の生命が守られてこそ成り立つ。このままでは、「Go To キャンペーン」は「Go To Hell(地獄に落ちて結構)」ということになる。

「Go To キャンペーン」では感染が拡大している首都圏だけでなく東京都への発着旅行だけが対象外となったが、その他「重症化しやすい高齢者、若者の団体旅行は割引対象から除外すると表明した。修学旅行は対象にする」(赤羽一嘉国土交通相)となったが、「修学旅行は対象にする」と支離滅裂だ。対象外にする線引きは22日の強行開始を前になお、検討中だ。環境業界の振興という名目ではあるが、実際のところはステルス選挙運動の一環だろう。「Go To キャンペーン」は即中止し、キャンセル料などは政府=安倍政権が負担すべきだ。

サイト管理者(筆者)としては、やはり少なくとも首都圏や大阪府・京都府・兵庫県には休業補償付きの緊急事態宣言を再発出したうえで、東京都内の新宿区、豊島区などのエピセンター(感染源)では可能な限り最大限の精密医療に基づいた抗体検査やPCR検査を行い、陽性判明者を隔離・治療すべきだと思う。そうでない区民・都民は徐々に経済活動に従事するというのが在るべき「両立」の仕方だ。ただし、緊縮財政路線を取り続けてきた政府=安倍政権には実施は困難だ。

なお、自民党内では、一時的な「消費税減税」をワン・イッシュー(単一争点)に今秋、解散・総選挙を仕掛けてくるとの見方も強まっている。ただし、後に元に戻すか、さらなる増税が待ち構えているうえ、最も必要な「新型コロナウイルス感染防止対策」には役立たない。既に述べた通り、まずは無症状感染者を突き止め、隔離することが極めて重要だ。このまま放置しておくと、解散・総選挙自体が実施不可能な状況に追い込まれる公算が大きい。

また、野党側も枝野幸男立憲民主党代表が、立憲と国民民主党の自発的解散と再合流を求めているが、第一に立憲側は党内でのコンセンサスを得ているのかが問われる。第二に、現在再燃してきたコロナ禍に対して「抜本的解決」に向けた提案をすること、そして、従来からのデフレ不況に今回のコロナ禍が加わり、大不況への暗転が懸念されてる中、弱肉強食の新自由主義とプライマリーバランス黒字化(公債費を除く一般歳出=政策経費を税収以下に抑制すること)に象徴される緊縮財政路線を、抜本的に転換した、共生主義に基づく積極財政への転換を柱とした理念と政策を打ち出すことが必要だ。そうしてこそ、自公両党やその補完勢力である日本維新の会に対抗できる。

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