徹底検査でエピセンターを制圧せよ、財源はMMTを日本に応用・調達を−28日感染者数を過去最多に訂正、29日も過去最多更新

連休中の7月28日はPCR検査が通常に比べて少ないと推察されるのに、NHKのWebサイトでは2020年7月29日午前零時12分報道で981人と過去に並んだ。朝日デジタルでは2020年7月29日午前零時時41分982人で過去最多の新型コロナウイルス感染確認者数になっているから、投稿時間から見て、過去最多になったのだろう。東大先端科学技術センターで抗体検査協議会のリーダーである児玉龍彦名誉教授の予測が次第に的中してきている。マスメディアでは「感染集積地(エピセンター)」という言葉は出てこないが、明らかにエピセンターが首都圏を中心に発生している。首都圏、政令指定都市を中心に地方自治体ではエピセンターを追跡し、エピセンターではPCR検査を全員に対して行い、そうでない地域ではまず抗体検査を行い、場合によってはPCR検査を行うという方式で検査を徹底的に行い、新型コロナ感染者の隔離・保護・治療と防疫に注力すべきだ。当然、大規模な財政措置が必要になるが、現代貨幣理論(MMT)に基づくマクロ経済政策で財源を措置すべきだ。

朝日デジタルによると、「新型コロナウイルスの国内の感染者は28日午後11時半現在で、新たに982人が確認された。23日の981人を超え、1日あたりの感染者として過去最多となった。東京都は266人で2日ぶりに200人を超えた。大阪府の155人、愛知県の110人はいずれも過去最多を更新。各地で感染拡大が続いている」状態。東京新聞Webでも2020年7月29日 08時24分 (共同通信)で、「過去最多の982人の新型コロナウイルス感染者が確認された」としている。

児玉東大名誉教授は、前回の第一波は「武漢型」「欧州型」の新型コロナウイルスという「火の粉」が「湿った森」に落ちたようなもので、燃え尽きることが出来た。ここで、「湿った森」というのは、東アジア地域では風邪コロナやSARSなど多種類のコロナウイルスが散発したためこの地域に住む国民に産生された「交差免疫」のこと。この交差免疫が東アジア諸国で死亡者が少ない原因とされている「ファクターX」の正体と推測される。


しかし、今回の新型コロナ感染症は、感染しても無症状の患者が発生し、しかも、無症状感染者は新型コロナの感染拡大をしない感染患者と感染力の強い感染患者のニタイプの感染者に分けられることが知られている。しかし、東京オリンピックの強行開催にこだわったことと国立感染症研究所を中心とし、傘下に地方衛生研究所、保健所(実務的な管轄は政府または地方自治体)を置いた体制で、隔離のための「積極的疫学調査」という「行政検査」を行うという手法を取ったため、世界各国に比べPCR検査は極度に少ない。これは法律的には、指定感染症への対処法でいる感染症法が今回のような感染力の強い新型コロナウイルスに対応できていないことがある。

この放置された無症状感染者が周囲に新型コロナウイルスを拡散してしまい、「感染の震源地(エピセンター)」になり、東京都の新宿区や豊島区、大阪のミナミなど首都圏、政令指定大都市で発生、これが改正新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言の終了とともに営業活動の自粛と行動の自粛が解除されたために、全国に飛び火しているというのが児玉教授の見方だ。

恐らく、児玉名誉教授の見解を取り入れたのが日本共産党の志位和夫委員長で同委員長は28日、児玉氏の見解を踏まえて政府の実務的なコロナ禍対策実務総責任者の西村康稔経済再生相に申し入れを行った。これについては、7月27日の次の投稿記事で紹介した。

志位院長は、地方自治体がエピセンターの把握と公開を求め、PCR検査などの検査の大規模な実施を要求しているが、検査にも適切な検査の方法がある。上記のYoutubeの対談動画によると、①エピセンター地域では即刻、外部の検査機関の応援でPCR検査を実施し、隔離・保護・適切な施設での治療を始める②非エピセンター地域では会社や学校、自治体の健康診断の機会に精密抗体検査を行い、陽性判定の出た国民を対象にPCR検査を実施する−などの方法を提唱されている。

次の図は、「感染の震源地(エピセンター)」についての説明だ。その後の図については、図の中に説明があります。 なお、児玉名誉教授は「感染集積地(エピセンター)からは検査の結果を待って移動する」必要があると指摘。暗に、政府=安倍政権の「Go To トラベル」の前倒し実行を問題視している。

 

 

もちろん、医療機関従事者や各種介護施設、電力・ガス・水道・優美ななどの社会インフラを担う人々に対しては、全員検査が必要だ。さらに、供給に制約が出ないよう、農林水産業、製造業に勤務する勤労者の検査が優先されることは言うまでもない。また、日本は食糧を始め海外に供給を依存している農産物・製造品の自由貿易体制を維持することが欠かせない。そうしないと、供給にボトルネックが生じて、かなりのインフレが生じる可能性がある。特に、財政措置を講じなければならないから、場合によってはスタグフレーションを引き起こす可能性も否定できない。

現代貨幣論の提唱者の一人でシュンペーターの孫弟子のランダル・レイ

さて、上記のような大規模検査を行うには、相当規模の財政措置が必要だ。まずは、①「Go To トラベル」などの「Go to Trouble」キャンペーンを出来得る限り廃止し、1兆7000億円の財源を可能な限り検査のために回すこと②2020年度第二次補正予算に盛り込まれた違法な予備費10兆円を用途を明確にして、直ちに執行すること−が当面の措置として必要だ。ただし、それだけでは賄えない財政措置が必要になる場合があるだろう。その場合は、現代貨幣経済論(MMT)を日本に対して創造的に応用すべきだ。

MMTについての日本での最良の著作は、ニューヨークのバード大学教授である兼レヴィ研究所城跡研究員が著した「現代貨幣経済論入門」(東洋経済刊行)だろう。日本語翻訳版で立命館大学の松尾匡(ただす)教授が巻末解説「MMTの命題は『異端』ではなく、常識である」で次のように記している。

①通貨発行券のある政府(注:政府と中央銀行を合わせた統合政府)に(注:国債の)デフォルトリスクはまったくない。通貨が作れる以上、政府支出に財源の制約はない。インフレが悪化しすぎないようにすることだけが制約である(注:今回のコロナ禍では経済の供給面に制約が出てくる可能性があるから、これは何としても阻止しなければならない)
②租税は民間に納税のための通貨へのニーズを作って通貨価値を維持するためにある。総需要を総供給能力の範囲内に抑制してインフレを抑えるのが課税することの機能である。だから、財政収支の帳尻をつけること(注意:財政均衡が必要だとする財政再建・緊縮財政)には意味はない(注:財政支出を国民生活の安定化と向上、経済成長に寄与するために行うことを否定しているわけではない)。
③不完全雇用の間は通貨発行(注:国債発行を意味すると思われる)で政府支出をするばかりでもインフレは悪化しない。
④財政赤字は民間の資産増(貯蓄超禍)であり、民間への資金供給となっている。逆に、財政黒字は民間の借り入れ超禍を意味し、失業存在下ではその借り入れ超禍(貯蓄不足)は民間人の所得が減ることによる貯蓄減少でもたらされる(注意:財政再建論・緊縮財政政策・消費税増税はデフレ不況を長期にわたってスパイラル化する)。

京都大学大学院工学研究科准教授で現在、政治経済思想評論家の中野剛志(たけし)氏は、本書翻訳版の巻頭解説「『現実』対『虚構』MMTの歴史的異議」で、MMTが20世紀初頭のゲオルグ・クナップ(歴史的・実務的に通貨の本質を追求した経済学者)、ジョン・メイナード・ケインズ(古典派理論では20世紀初頭の世界大恐慌が救えないことを明らかにし、「ケインズ革命」をもたらした経済学者)、ヨーセフ・シュンペーター(「経済循環論」や「資本主義・社会主義・民主主義」などで知られる経済思想の大家)らを源流として、発展・深化し、1990年代に経済理論として姿を著してきたことを述べている。なお、ランダル・レイは、シュンペーターの孫弟子。

そのうえで、世界中の経済学者や政策担当者(注意:主流メディア)が受け入れている主流派経済学が大きな間違いを犯していることを、MMTが暴いてしまったと指摘し、主流派経済学が提唱してきた「金融政策中心のマクロ経済運営は、金融市場の不安定化(資産バブルとその崩壊の繰り返し)や低成長、あるいは所得格差の拡大といった結果をもたらした。とりわけ、2008年の世界金融危機、その後のユーロ危機、あるいは日本の長期デフレによって、主流派経済学が処方する金融政策中心の幕無経済運営は失敗に終わったということが白日の下にされされたのである」と見抜き、財政政策主・金融政策従への経済政策の転換を求めている。

日本の政界では、れいわ新選組がMMTを政策の柱にしている唯一の政党だが、日本共産党も取り入れる可能性がある。なお、自民党の中にも税制調査会幹事の西田昌司参院議員(京都府選挙区、3期)などMMTを取り入れるべきだとの国会議員が増えてきている。コロナ禍は克服に莫大なコストがかかるが、旧来の発送に囚われていては克服できない。

◎追記:NHKのWebでの報道によると午後7時現在、全国の新規感染確認者は1133人に上っている。東京都は250人、大阪府は221人と初の200人台大幅超えになった。岩手県では2人の陽性が確認され、初めて感染確認者が生じた。朝日デジタルが2020年7月29日19時10分に投稿した記事によると、東京都、大阪府、愛知県、福岡県の「4都府県とも感染経路が分からない人の割合が上昇している。東京都は7日までの1週間は39%だったが28日までの1週間は59%に。28日までの1週間は愛知県63%、大阪府66%、福岡県51%といずれも半数以上を占め、クラスター対策だけでは追い切れない状況が起きている」。明らかに、複数の無症状感染者が大量の日本型の新型コロナウイルスを発生する「感染震源地(エピセンター)」が首都圏や政令指定大都市を中心に多発発生している。「Go To トラベル」キャンペーンが全国に感染を拡大している可能性も否定できない。

政府=安倍政権の「クラスター対策」は完全に失敗したことが明らかになった。このため、野党側は与党側に対して憲法53条の規定により臨時国会の召集を求める方針で一致した。近く、衆参両院議長に招集要請状を提出する。

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