上昌広医療ガバナンス研究所理事長「新型コロナウイルス感染第二波の初期段階」−野党は覚悟を決めて臨時国会開会要求を(25日の感染確認者追記)

大型連休2日目の24日、新型コロナウイルスの感染確認者は東京都の260人を始め大阪府では過去最多の149人にのぼった。また、愛知県で63人、福岡県で52人と大都市圏で感染拡大が続き、全国では777人。死亡者数は3人(NHKは2人)になった。医師で医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は、Youtubeで敏腕検事として活躍した郷原信郎弁護士とのインタビュー対談で、「新型コロナウイルス感染拡大第二波の始まり」と指摘し、感染症状に基づく国立感染研究所や地方衛生研究所、保健所など公衆衛生機関と医療保険が使用できる医療機関の融合が必要だとし、PCR検査を国民の目線に立って簡便に受けられる体制の整備・確立が需要だとしている。安倍晋三首相は改正インフル特措法に基づく緊急事態宣言の再発出はしないと記者団に語るのみで、具体的な対処は示していない。野党側は日本国憲法に基づき、覚悟を決めて臨時国会の開会を要求すべきだ。

朝日デジタルが2020年7月24日 21時03分に投稿した「陽性率の上昇、止まらない 重症者が増え専門家に危機感」と題する記事によると「7月に入り、新型コロナウイルスの感染者数が都市部を中心に顕著に増加している。政府や東京都がその理由として説明してきたのが、検査数の増加だ。確かに検査数は一時期に比べて大幅に増えた。だが、検査数が増えれば一般的に下がると考えられる陽性率も上昇し続けているのが今の実態だ」としている。

「東京都のデータによると、過去7日間平均(移動平均)の検査数は2日に2千人を超え、13日には3千人を超えた。陽性率は緊急事態宣言が解除された5月下旬は1%以下だったが、その後徐々に上がり、7月1日に3・9%、21日には6・7%になった」。また、感染経路が分からない人や、若者中心だった感染者の年齢層が次第に広がってきている。

朝日デジタル(https://digital.asahi.com/articles/ASN7S6JVPN7SULBJ003.html)による

◎NHKが020年7月25日 16時34分、小池百合子都知事の貼っ表としてサイトで明らかにしたところによると、25日の都内の新規感染確認者者は295人で、40代、50代にも感染が拡大しているという。朝日デジタル16時48分の投稿記事によると、「感染者数が増える中、医療提供体制も切迫しつつある。入院患者は24日時点で1040人に上り、今月1日時点(280人)の3・7倍まで増えた。入院者数が1千人を超えるのは、5月17日以来だった」。

NHKサイト(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200725/k10012532111000.html?utm_int=all_side_ranking-social_001)より。


全国では18時30分の段階で751人。大阪府132人、兵庫県24人。愛知県は77人。福岡県18人。神奈川県18人、千葉県21人、埼玉県31人。なお、朝日デジタル18時17分の投稿記事によると、在沖米軍の感染者、計225人に 沖縄県内の数191人を上回った。米国からウイルスが持ち込まれ、沖縄県全体の感染者拡大を加速させている可能性が指摘されている。

新型コロナウイルス(CNet:https://japan.cnet.com/article/35149624/)による

これに対して、安倍首相は24日記者団に対して、前回の状況とは異なっている(無症状・軽症の20代、30代の若者が多く、死亡者も少ないなど)ため改正インフル特措法に基づく緊急事態宣言の再発出はしない考えを伝えた。菅義偉官房長官も22日、1日の感染者数が過去最多を更新している大阪府は「Go To トラベル」キャンペーンの除外対象にはしないと語っている。感染拡大防止より、解散・総選挙、オリンピック来夏開催を考慮し、あくまでも経済活動の再開に最大の重点を置く積もりだ。

朝日デジタル(https://digital.asahi.com/articles/ASN7S6JVPN7SULBJ003.html)による

こうした政府=安倍政権の方針に反対する立場から、政府=安倍政権と専門家会議がPCR検査の不要性を広めた初期対応の誤りと今後の見通し・対策を語った上理事長と郷原弁護士とのインタビュー対談が24日、公開された。対談番組は次の通り。

本稿ではまず、インタビューの内容の大要をまとめ。そのあと、野党側に日本国憲法の第五十三条「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」に基づき、新型コロナウイルス再拡大・第二波の阻止に向けて臨時国会の開催を要求すべき理由を述べたい。

インタビュー対談の内容だが、石理事長はまず第一に現状について、東大先端科学技術研究センターに所属し、遺伝子工学の専門家である児玉龍彦東大名誉教授が、変異の早いRNA型の新型コロナウイルスがこれまでの「武漢型」「欧州型」とは異なる「東京・埼玉(首都圏型)」のコロナウイルスに変異し、首都圏から全国に拡大しているとの見方を支持し、「感染の第二波が始まっている」と警告した。感染の拡大具合からみて、首都圏型の新型コロナウイルスの感染力は強いと見ている。

また、政府=安倍政権は死亡者が少ないことを理由に基本的には何の対策も取らないが、石理事長は死亡者数の増加は感染拡大が確認されてから1カ月かかると指摘している。

第二に、日本の政府=安倍政権と政権を忖度してきた「専門家会議」がPCR検査を徹底的に抑制してきことを初動態勢の完全な過ちと批判している。専門家会議では検査の正確さが1%(100回に1回誤判定をしてしまう。陰性なのに陽性としてしまう偽陽性=感度=の問題、陽性なのに陰性と判定してしまう偽陰性の問題=特異度)程度あるため、信頼できないとしていた。

しかし石理事長は、①英国で刊行されているネイチャー(Nature)などの世界で最も権威ある学術論文雑誌では、感染拡大予防対策の一環としてPCR検査を行うことは世界の常識になっている②感度や特異度の問題に対しては、同じ人に複数の検査を行うことで対応することも常識③ウイルスの遺伝子を採取し、拡大するPCR検査法は1980年代に開発された古い検査技術だが現在では、誤判定の確率は1万分の1以下に抑えられている③新型コロナウイルスの発見が公になってからのPCR検査技術の革新は想定以上に早く、検査にかかる時間が大幅に短縮され、検体も喉の粘膜から採取したものと唾液とで遜色がなくなっている−ことなどを指摘。

なお、初期に比べてPCR検査は増えてきているが、増加すれば陽性率は低下するのが普通だが、そうはなっていないことに警戒を示した。

石理事長は、PCR検査を抑制してきたことで、無症状感染者や軽症の感染者を見逃してきたと政府=安倍政権や「専門家会議」の「専門家」を批判している。石理事長はこうした事態に陥ったのは、(新型コロナウイルスが指定感染症第Ⅱ類に指定されており)感染症法上、行政検査(積極的疫学調査)の対象であり、保健所を通して地方衛生研究所や国立感染研究所などで行わなければならないという、現状にそぐわない検査体制になっていることを指摘している。加えて、一般の医療機関で医療保険を適用して検査を受けられるようにはなっているが、実際は地方自治体に申請し、許可を得なければならず、承認を得るのに非常に時間がかかる。実態は、保健所などが一般の医療機関に検査を押し付けている形になっているとも指摘している。

戦前に感染症に対処するための公衆衛生は「衛生警察」に委ねられたし、保健所は元来「徴兵検査」を行うために、設立された経緯があり、戦後も厚生労働省が強く管理している。国民の目線に立てば、感染症法に基づく公衆衛生対策と医療保険が適用可能な一般の病院などの医療機関を融合できる法律改正や政令が必要だと述べている。

なお、上理事長は小池百合子都知事が新宿歌舞伎町などを「夜の街」として、感染拡大の温床などとと諸悪の権化のように名指し、マスメディアも同調報道をしたため、PCR検査を受けることに抵抗を示す国民も少なくないことを経験上、指摘した。感染者は被害者であって、被害者としての立場を考慮すべきことも付言している。

なお、サイト管理者(筆者)はPCR検査の抑制は、今夏開催予定だった東京オリンピック開催を強行するためでもあったと見ている。政府=安倍政権の思惑と検査利権の喪失を恐れる厚労省傘下の国立感染研などの利害が一致したものと見られる。これについては、本サイトの投稿記事「期待できない安倍政権の第二次新型コロナウィルス感染対策」を参考にしていただきたい。

第三に、ワクチン開発と症状悪化を食い止める治療薬について。まず、ワクチン開発には①安全性を確認する「第一相」と抗体が産生される「第二相」、多数の治験が必要なウイルスに対して抵抗力のある抗体が産生されるかを調査する「第三相」の段階を通過しなければならないが、「第三相」で失敗するケースが多く、開発には1年以上はかかるとのこと。また、ワクチンには強い副作用(ADE)があることにも警戒が必要としている。

英国のケンブリッジに本社を持つアストラゼネカが新型コロナウイルス用のワクチンを開発したとして、世界各国の政府がワクチンの「購入権」を買っているが、実際には特効薬でもなく、10%程度の期待しか持てない状況だという。

ただし、新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ抗ウイルス薬には優れたものが開発されており、レムデシベルやデキサメゾン、イベルメクチンなどが有効だとしている。

第四に、今後については国民の誰もが医療保険でPCR検査などを受けられるように法整備と財政措置を伴う民間医療機関の整備(ならびに大学や民間の検査機関の活用)を行い、当面は医療機関、介護組織、警察、交通機関関連など社会インフラを担う方々の全員検査をはじめ、大規模な検査を行う。そして、感染拡大防止に留意して早期に抗ウイルス剤で重症化、死亡者の増加を抑えることがまず必要と提案している。検査と治療を優先すべきで、経済活動の再開は二の次、徐々に行っていくというのが基本的スタンスということである。

第五に、医療専門家で来夏のオリンピックを開催できると思っている人は一人もいないと強調。マスコミの世論調査では国民も70%は来夏の再開に反対している。郷原弁護士も、東京オリンピック・パラリンピックの開催が不可能なことは、政府=安倍政権も認識しているが、莫大な資金(血税とスポンサー企業の寄付金が原資)を投入し、来夏への延期も相当規模の費用が嵩むため、公言できないでいる状態だと賛同している。なお、スポンサー企業も、コロナ禍による大不況で追加の支援金がなくなっており、開催不可能表明はカウントダウンの情勢になっている。

以上、石理事長と郷原信郎弁護士のインタビュー対談の大要だが、詳細は上記動画を視聴して下さい。さて、こういう実態だと、野党側は腹くくって日本国憲法第五十三条に従って、新型コロナ禍第二波対策または内閣総辞職を勝ち取るための臨時国会開催を求めるべきだ。立憲民主党の枝野幸男代表は24日、政府=安倍政権に臨時国会の 召集を要求したが、疑惑の総合デパートと化し、コロナ禍対策に失敗している政府=安倍政権が応じるはずがない。

立憲と国民民主党は再合流で競技中だが、必ずしも順調には行っていないようだ。解党のうえでの再合流のためには、党代表を含む執行部同士の政策協議が必要なはずだが、政策協議はそっちのけで、数合わせに終止しているようだ。現在では、幹事長レベルで再合流の協議を行っているが、代表抜きというのでは首を傾げる。安倍内閣の支持率は低下しているが、解散・総選挙に持ち込まれれば、理念・政策一致なき「野合の野党共闘」では国民の理解と支持を得られず、コロナ感染拡大のため投票率は低調に終わり、政権は奪取できないだろう。

まず、立憲と国民の主要政策についての考えを見る。朝日新聞7月21日付4面「消費税・憲法で一致を」の記事を参照(朝日デジタル2020年7月21日 5時00分「玉木氏逆提案、合流の鍵? 立憲と新党構想「消費税・憲法で一致を」 「交渉のカードか」/不信感も」)。

朝日デジタル(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14556679.html?iref=pc_ss_date)

立憲と国民は、2017年9月15日に小池百合子都知事(第一期)が当時の民進党の前原誠司代表と国政進出を目指して地域政党「都民ファースト」を土台に結成した「希望の党」との合流時に、記者会見でジャーナリストの横田一氏が「合流に際し、民進党のリベラル派議員を排除するのか」との質問に対して、小池都知事が「排除する」と口を滑らせたことで小池新党の動きが失速し、民進党が分裂して出来た政党。

排除されたリベラル派議員の多い立憲は枝野氏が中心となって設立し、2017年(平成29年)10月22日の衆院議院総選挙で55議席を獲得、野党第一党になった。希望の党は50議席にとどまったが、党としては消滅、国民民主党になった。確かに、立憲には憲法改正問題などリベラル派の議員が多い。

ただし、どちらの政党も日本労働組合総連合会(連合)が支援組織になっていることには変わりはない。連合は日本経団連の御用組合で、原発を推進する電力会社の御用組合の電力総連、多額の消費税が還付される大手輸出企業の御用組合である自動車総連、電機連合らが力を持っている。このため、連合としては原発再稼働推進、消費是増税賛成の立場だ。要するに、政府=安倍政権、自公政権の政策を支持している。

このため、国民は電力総連の圧力を受けて「脱原発」には消極的、立憲は自動車総連や電機連合などの支援が強いと思われ、消費税減税にははっきり言って反対だ。両党とも、非正規労働者の増加や最低賃金の引き上げについても消極的なところがある。憲法改悪については、国民が前向きであることから、立憲も「憲法改正」自身には反対していないし、日本国憲法をより民主化するのかそうでないのか、「改正の方向」も不明だ。いずれ国民と同じような立ち位置になる可能性がある。

こうした連合傘下の立憲と国民が再合流しても、かつて国民の期待が集まった民主党が内部から崩壊し、国民の野党勢力に対する不信を助長させた過去の経験からして、「無党派層」と呼ばれる政治不信層、政治無関心層からの支持を得ることはできないだろう。

日本共産党は、安倍政権批判・対決政党としては「確かな野党」ではあるが、「野党共闘」の一角を形成し、政権を奪取した場合の連合政権入りを果たすことを最大の目標に置いている。何よりも、「史的唯物論」とか「資本論」という言葉が並び、スターリン主義を彷彿させても、それを止揚する先進国型「共産主義」というものを提示できないでいる。最も根本的なところは、党綱領にも関係するが、ユートピア社会を実現する「生産手段の社会的所有」が何を指すのか。全く不明である。

これでは、立憲、国民、日本共産党に社民党が加わり、野党共闘をより強固なものにすると言っても、無党派層を含む反安倍政権勢力および中間勢力の広範な支持を得られるとは考えにくい。こうした野合の「野党共闘」に反旗を翻して昨夏の参院選で国政政党になったれいわ新選組に期待が集まったが、次期参院選出馬予定だった大西恒樹構成員の「優性思想」を彷彿させるYoutubeでの発言に対する処理が遅れ、重大な局面に立っている。

サイト管理者(筆者)の見るところ、れいわ新選組は基本理念として「共に生きることが喜びとなる社会の構築」=共生主義を打ち出し、政策には時代遅れのプライマリーバランス論に象徴される「財政再建」を大義名分に推進されている緊縮デフレ政策に対抗できる「現代貨幣理論」に基づく財政政策の大転換を主要な柱とした政策を打ち出している。決していわゆる大衆受けのする人気取りのポピュリスト政党ではない。

れいわ新選組が原点に立ち返って、再生していくことが求められるが、道は平坦ではない。野党側がこうした状況だから、安倍政権が、予想の強まっている9月臨時国会召集・冒頭解散を行い、10月25日に解散・総選挙を行えば、野合共闘には国民の期待には応えられないことと、コロナ禍のもとで投票率は下がり、疑惑のデパートと化し、コロナ禍対策にも失敗した安倍政権が再浮上することになる。ただし、現在の新型コロナウイルス再拡大がオーバーシュート(感染爆発)すれば、安倍首相の構想通りには行かない可能性がある。

れいわ新選組の再建と理念・政策の一致を柱とした「政策連合」の結成しか野党に残された道はないだろう。

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