麻生選挙管理内閣下で総裁選挙、菅「危機管理内閣」誕生・年末総選挙かー野党側は理念・政策で対抗を
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安倍晋三首相が首相連続最長在任期間を更新した昨日8月24日も17日の検査結果確認と追加検査のため慶応大学附属病院に行ったことや、検査結果の内容については「また話させていただきたい」と語ったことなどから、自民党内外に健康不安説が高まる中、首相は重大な決意を秘めているようだ。首相辞任である。取り敢えず、麻生太郎副総理兼財務相が首相の代行を務め、実質的に自民党新総裁選出のための選挙管理内閣にしたあと、自民党衆参両院議員総会で新総裁を選出、菅義偉内閣官房長官を新総裁に選出。コロナ禍対策のための「危機管理内閣」を組閣し、11月18日に発表される第3四半期の実質国内総生産が反動増のプラス成長になることを見越して、そうなった場合はただちに衆院解散、12月に総選挙を行うというシナリオが浮上している。自民党の補完勢力である日本維新の会を除く野党は、「無党派層」も納得する政策・理念の「旗印」を明確にし、早急に「野党共闘体制」を構築すべきだ。

◎追記:8月25日の新規感染確認者は、東京都では朝日デジタルによると、午後15時の時点で182人と昨日24日の約2倍になった。推定検査人数は2792人で瞬間陽性率は6.5%。20代〜30代の若者を除く感染者の割合は55.0%。都の基準で重症者は前日比4人減の34人だが、1日の15人の約2.3倍。NHKは感染者のみ報道。全国では午後23時現在718人が新規感染、亡くなられた方は14人。厚生労働省基準の重症者は前日比7人減の252人。23日のPCR検査人数は速報値で8371人で、推定瞬間陽性率は8.6%。

3カ月連続して菅官房長官と自民党の二階俊博幹事長が濃厚な会談を行っているが、安倍首相辞任後の対策のための会談のようだ。安倍首相は周知のように「潰瘍性大腸炎」という持病を持っている。この病気は、大腸の粘膜が炎症を起こして、下痢・腹痛・下血といった症状に襲われる原因不明の難病だ。このため、2007年9月10日に第168回臨時国会が開催され、安倍首相は所信表明演説の中で「職責を全うする」という趣旨の決意を表明したが、9月12日午後2時に突然、「内閣総理大臣及び自由民主党総裁を辞する」と退陣を表明する記者会見を行った。

これで、第一次安倍内閣は崩壊した。ただし、安倍家は安倍首相の父親で外務相、自民党幹事長など要職を歴任し、総理大臣ほぼ確実と言われた晋太郎氏が癌(膵臓癌と言われる)を患い、67歳の若さで1991年(平成3年)5月15日、入院先の東京都文京区の順天堂大学医学部附属順天堂医院で死去した。また、月間総合誌「選択」よると、2018年8月には実兄の寛信氏が安倍首相と同じく慶応大学付属病院で胃がんの手術を受けたという(https://www.sentaku.co.jp/articles/view/18319)。親族の病歴は本人がかかる病気の重要な因子のひとつである。

これらのことを踏まえると、安倍首相の健康不安説にはただならぬものがあると考えて当然だ。政治家、特に内閣総理大臣の病気は最大の国家機密事項である。本来なら主治医を官邸に呼ぶとかの方法で極秘に検査するなどの方法を採る。しかし、このことが大手マスコミや週刊誌の知るところとなり、突然報道されたら、大変な事態になる。このため、慶応大学附属病院に公然と行って診察・検査を受けたのだろう。そして、首相としての政務に専念すると言いながらも、検査結果の内容については「また話させていただきたい」と語ったのは、重大な決意を込めているからだと見たほうが自然だろう。「首相辞任」である。

菅義偉官房長官
菅義偉官房長官(https://parstoday.com/ja/news/japan-i62733)

加えて、前述したように3カ月連続して菅官房長官と自民党の二階俊博幹事長が濃厚な会談を行い、互いを持ち上げていると伝えられている。安倍首相が後継者として考えていると見られている岸田文雄政調会長には人気がない。石破茂氏も地方組織には人気があるが、両院議員総会で次期総裁を選出するとなると、国会議員の間には人気がないから、また蚊帳の外に置かれる。その他、イージス・アショアを断念する代わりに「敵基地攻撃論」をひねり出すことになった河野太郎防衛相や稲田朋美幹事長代行、小泉進次郎環境相らが出馬する可能性はあるが、あくまでも将来に備えて自らを売り込むためのものに過ぎない。

取り敢えず、麻生太郎副総理兼財務相が首相の代行を務め、実質的に自民党新総裁選出のための選挙管理内閣を演じた跡、自民党衆参両院議員総会で新総裁に菅内閣官房長官を選出。そのうえで、コロナ禍対策(感染拡大制圧、経済再建)のための「危機管理内閣」を組閣し、11月18日に発表される第3四半期の実質国内総生産(GDP)が見込み通り、反動増のプラス成長になることを確認した後、ただちに衆院解散、12月に総選挙を行うというシナリオだ。

ここに来て俄然、次期総裁として急浮上してきた議員秘書、地方議員からたたきあげてきた菅内閣官房長官だ。安倍首相は、新日本製鐵の社長を経て経済団体連合会の会長を務め、現在は般社団法人日本原子力産業協会理事長などの要職に就いている今井善衛氏を叔父に持つ今井尚弥首相補佐官ら経済産業省官僚出身組を側近として用いており、菅氏の力が弱まっていた。しかし、今井尚弥補佐官率いる経産官僚出身組が全国一律学校休校、アベノマスク、持続化給付金で一般社団法人サービスデザイン推進協議会に業務委託したことなどの失敗で、力を失っている。

自民党の補完勢力である日本維新の会を除く野党は、「無党派層」と呼ばれる政治不信層、政治無関心層をも納得するだけの政策・理念の「旗印」を明確にし、早急に「野党共闘体制」を構築すべきだ。ここで、安倍首相との間に隙間風が吹いていた菅氏が再復活。安倍首相が幹事長外しを目論んでいた二階幹事長と結託して、ポスト安倍首相・総裁後に備えていると見られる。

ただし、両者の目論見通りにコトが運ぶかは疑問である。まず、日本型に変異した新型コロナウイルスへの対応がカギを握る。また、米国のポンペオ国務長官はニクソン大統領・キッシンジャー特別補佐官以来の中国抱き込み戦略が大失敗策だったとして、新「米国対中露冷戦」を仕掛けている。このため、日本の親中派は「媚中派」とされ、米国にとっては排除すべき勢力になる。その中に、二階幹事長も入っている。菅新政権が樹立された場合、対米関係の処理が重大な課題となろう。

さて、このところ感染拡大のペースが鈍化してきたように見られる新型コロナウイルスだが、油断は出来ない。昨日23日開かれた厚労省の専門家組織(アドバイザリボード。官邸には新型コロナ感染症対策分科会が設置されており、複数の「専門家集団の頭」がある)では、「(第二波は)7月末がピーク」と結論づけながらも、国立感染研究所長の脇田隆字(たかじ)座長は、「今のところピークが見えるが、(感染拡大の収束につながる)ピークアウトという見解ではない」(朝日新聞25日付1面)と逃げ道を用意している。厚生労働省のサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00093.html)に、会議に提出された資料が掲載されているが、議事内容は公開されていない。ほとんどが、個人名の論文だ。

その中で、気になるところを下図に示すが、基本的には「自己責任原則」を貫き、コロナ感染防止対策は地方自治体と国民まかせで、最近はPCR検査人数が激減しているのに、PCR検査人数の飛躍的拡大については基本的に、だんまりを決め込んでいる。

根本のところは楽観論だが、脇田座長も言うように「一種の保険入り=責任逃れ」もしている。また、看過出来ないのは、ワクチンに全ての期待をかけ、強制接種を推奨しているような見解だ。十分な安全性・有効性が確認されなくても薬事法での規制をすり抜けて承認し、国民が接種を受ける(場合によっては強制接種をする)ことを提言しているかに見える。

効果と安全性は接種後に判断すると言わんばかりの内容だ。本サイトでしばしば述べているように、①新型コロナウイルスは変異しやすく、海外で効果と安全性が確認されてもそれが日本型に変異したコロナウイルスに対応するのかは不明②薬事法に基づく承認の前に、わが国としても第3相の治験をしっかり行っておくべきーなどの重要な問題がある。

新型コロナワクチンの薬事承認について
新型コロナワクチンの薬事承認について

国連保険機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長も、ワクチンの開発に期待は寄せているが、それでも「2年未満の収束だ」と語っている。焦りは、禁物である。このため、取り合えずは「検査・検査・検査」を主張している。これはワクチンの効き目と有効性が人種・民族によって異なることを想定してのことだと思われる。

これに対して、朝日デジタルが2020年8月24日18時23分に公開した「全ての介護・保育職員ら2万3千人PCR検査 世田谷区」と題する記事では、世田谷区(2020年8月1日現在の人口は92万3410人)の保坂展人区長(社民党副幹事長出身)は、遺伝子工学専門家の東京大学先端科学・技術センターの児玉龍彦東大名誉教授らの助言を受け入れ、「発熱などの症状の有無にかかわらず、区内すべての介護施設や保育所・幼稚園の職員ら計約2万3千人を対象に、新型コロナウイルスのPCR検査を行う。(中略)10月以降には複数の検体をまとめて検査する『プール方式』を採用し、1日あたり1千件の検査規模を目指す。(中略)約2カ月間で2万3千人を検査した後、感染状況などをみて対象施設の拡大などを検討するという」と大規模PCR検査を行うとしている。

対面販売による新型コロナ感染
対面販売による新型コロナ感染

上図のように、感染震源地(エピセンター)では対面販売でも、コロナに感染することがあることは実証済みだ。日本のPCR検査検査人数は、最近の検査人数の激減を考慮すれば世界150位程度と、わが国が世田谷区方式で採用するPCR検査技術など高度な検査技術を保有していることを考慮すれば、PCR検査などの軽視は、国際ルール違反ではないのか。
※注:東アジア諸国では、人口100万人当たりPCR検査人数はシンガポール29万8083人、中国6万2814人、韓国3万5608人、フィリピン21300人に対して日本は1万551人。死亡者はフィリピンの27人に対して9人(サイトhttps://www.worldometers.info/coronavirus/。ジュネーブ時間8月25日午前5時54分現在)。

また、コロナ禍に伴う失業者の急増(休業が失業に転化する事態が起こる)などで日本経済の悪化は今後、本格化する。立教大学の金子勝特任教授は、「V字型回復は夢」だと強調している。ここは、世界の標準基準に基づいた対応を行うべきだ。しかし、なお新自由主義に基づく自公政権にはアベノミックスの破綻はまったく顧みず、支持業界に血税をバラマキしては、実質的な「買収工作」を展開している。

野党はこれに対して、①世界標準のコロナ禍対策に基づいた抜本的なコロナ対策の転換②消費税の廃止を柱とした不公平税制の抜本的改革③休業と補償をセットにすにした新型インフル特措法の再改定③緊縮財政政策の「異次元」の財政出動政策への抜本転換④原発依存の地方自治体の新産業育成対策と原発事業従事者の雇用補償を前提にした「原発ゼロ社会の早期実現(日本の産業構造の大胆な転換)⑤子ども手当ての抜本的見直しなど、少子高齢化対策を柱とした社会保障政策の充実ーなどを打ち出し、団結すべきだ。なお、自己矛盾であるが、自公民側も消費税減税を打ち出してくる公算が大きい。

ひとつのカギは、国民民主党の玉木雄一郎代表の動向だろう。玉木氏はユーチューバーであり、れいわ新選組の山本太郎代表を招いた動画を配信していおり、注目される。ジーナリストの横田一氏はデモクラシータイムスのインタビュー番組で、玉木代表が日本維新の会に鞍替えする可能性を伝えている。

しかし、玉木氏と山本氏の動画対談を見ると、玉木氏は新自由主義の緊縮財政政策には乗らないと思われる。国民新党は立憲合流組と玉木派組、非玉木派組みに三分裂するようだが、このうち前原派組が日本維新の会と合流するのではないか。また、政党助成金が原資であるが、国民時代のパーティーで集めた軍資金もある。総額50億円くらいだ。玉木氏は立憲民主党に欠けている軍資金では優位に立ち、政策での一致を野党共闘の前提にする可能性がある。

お馴染みの山尾志桜里衆院議員に加え古川 元久衆院議員や高井崇志衆院議員、立憲離党表明した須藤元気参議員が玉木新党に合流すれば、政党要件は満たすことが出来る。加えて、軍資金はある。馬渕澄夫衆院議員は立憲に合流し、合流新党で不公平税制の改革を訴えていく可能性がある。

玉木新党とれいわ新選組が統一会派を組み、革新的な理念と政策を打ち出せば、連合に支配されずに立憲・国民合流新党も無党派層の支持を得られるようになるのではないだろうか。「原発ゼロ社会実現」は極めて重要だが、それだけでは弱い。第一に重要な政策は、正しい経済政策(財政気金融、税制政策)を打ち出すことである。今は右翼とか左翼とか言っている時代ではない。翼があっても、頭がなければ鳥は飛べない。今や、完全な「鳥」の姿になって飛び出す時代に入っているのではないだろうか。玉木代表の「改革中道」という言葉が、自公補完勢力になることを意味するのではなく、このことになることを期待したい。




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