イスラエルが、イランの支援するヒズボラのカリスマ的最高指導者であるハッサン・ナスララ氏ら最高幹部を空爆などで10人〜20人殺害したことに対する報復として、イランは日本時間で10月2日真夜中、イスラエルに対してミサイル180発程度やドローン攻撃機などで報復攻撃をした。これに対してイスラエルは、ネタニヤフ首相などがイランはイスラエル攻撃の報いを受けねばならないなどと語っていることから、報復攻撃がエスカレートして、第五次中東戦争に暗転するとの見方が強い。しかし、イランのアラグチ外相が2日、SNSへの投稿で、イギリスとドイツ、フランスの3カ国の外相と電話で会談したことを明らかにし、今回の報復について「作戦は完了した」と説明していることから、イランはイスラエルと戦争をするつもりはないと見られる。第五次中東戦争に暗転する公算は極めて小さいだろう。
イスラエルの対イラン報復攻撃、ジェスチャーの公算が大きい
イスラエルは昨年2023年10月7日、ハマス(ムスリム同胞団パレスチナ支部)の自国攻撃を誘い込み、10月中に本格的なガザ地区の攻撃を開始した。その後、イスラエルとイスラム教シーア派との武力衝突は、ヨルダン川西岸地区、レバノン、シリア、イラク、イエメン、そしてイランと7つに上っている。これに対して、イランは今年4月、シリアにあるイラン大使館がイスラエルによるとみられる攻撃を受け、イランの軍事精鋭部隊、革命防衛隊の司令官らが殺害された。その報復として、イスラエルを120発程度のミサイルで攻撃した。ただし、攻撃の規模と地域はイスラエルに実質通告済みで、イスラエルと戦端を開いて、大きくするつもりはなかった。
今回もイスラエルを攻撃したミサイルの数が180発程度に増加したとは言え、「イランのアラグチ外相が2日、SNSへの投稿で、イギリスとドイツ、フランスの3カ国の外相と電話で会談したことを明らかにし、今回の報復について(注:イスラエルが反撃してこない限りの条件付きだが)『作戦は完了した』と説明している」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241001/k10014598141000.html)。このことから、イランとしては第五次中東戦争まで紛争を拡大するつもりはないと思われる。
一方、イラン側は軍事精鋭部隊、革命防衛隊が1日、「イスラエルの中心部の重要な軍事・治安施設を攻撃した」と発表したものの、イスラエルとその同盟国である米国が協力してイランが発射したミサイルを撃墜している。「イスラエル軍は1日、イランがイスラエルに向けて180発を超える弾道ミサイルを発射する大規模な攻撃を行い、大多数は迎撃したものの一部はイスラエル中部や南部に着弾したと明らかにしました。イスラエルの救急当局は、最大の商業都市テルアビブでミサイルの破片にあたって2人がけがをしたと発表しましたが、詳しい被害の状況はこれまでのところ明らかになっていません」(NHK)ということで、イランの第一次イスラエル攻撃と同様に、イスラエル側に重大な被害は出ていないようだ。
なお、イスラエルがイランの石油精製施設を攻撃するなど大規模なイラン攻撃を行った場合、原油などの資源・エネルギー価格が大幅に高騰し、米国でのコストプッシュ・インフレが表面化する。既に、バイデン大統領がその可能性を否定しなかったことで、「国際的な原油の先物価格は一時、およそ1か月ぶりの高値水準となりました」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241004/k10014600601000.html)という状況だ。
これに加えて、米国の9月の雇用統計で、「(景気の先行指標である)農業分野以外の就業者は前の月より25万4000人増加し15万人程度の増加を見込んでいた市場予想を大きく上回りました」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241004/k10014601451000.html)という状況だから、米国の利下げのペースが遅くなることが予想され、趨勢的にはダウ平均の上昇にブレーキがかかるか、もしくは、下落ないし急落に繋がる可能性が出てきた。既に為替市場では日米の金利差の拡大から円相場が急落している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241004/k10014601491000.html)。
これらの状況は、ハリス陣営にとって極めて都合が悪い。バイデン大統領・ハリス副大統領政権はイスラエルに対して、大規模な報復を避けるように説得するだろう。一部に、イスラエル側の被害が大きかったとする説もある(https://www.youtube.com/watch?v=U3qQFvD1ZuI)が、大きくても小さくても、バイデン大統領・ハリス副大統領政権は大規模な報復を避けるように説得せざるを得ない。イスラエルはバイデン大統領・ハリス副大統領政権をバカにしているから、公算が小さくてもイスラエルに大規模報復攻撃を行う可能性は排除できない。単刀直入に言って、ネタニヤフ政権はトランプ氏の返り咲きを支持している。
さて、イスラエルが昨年秋からのパレスチナ自治区で「戦争犯罪」と言われるほどの戦闘行為を行っている背景には、「オスロ合意」の大失敗・破綻がある。オスロ合意とは、1993年にイスラエルとパレスチナ解放機構=PLO=の間で同意された一連の協定で、①イスラエルを国家として、PLOをパレスチナの自治政府として相互に承認する②イスラエルが占領した地域から暫定的に撤退し、5年にわたって自治政府による自治を認める。その5年の間に今後の詳細を協議するーなどを主な内容とする。
しかし、オスロ合意を進めたイスラエルのラビン首相(労働党党首)の暗殺(1994年11月4日)で、同合意は大失敗・破綻してしまった。つまり、ラビン暗殺以降、イスラエル国内では、ガザとヨルダン川西岸にパレスチナ自治区を認める動きが次第に消滅していき、ヨルダン川西岸にイスラエル人の入植が相次ぐとともに、水面下では、三枚舌を使った英国が進めた「パレスチナ国家構想」そのものを崩壊させる動きが強まっていった。
そして、その好機が昨年のガザ地区を支配するハマスのイスラエル攻撃の誘い込みだ(注:イスラエルはエジプトの警告を無視した。もっとも、世界随一と言われるイスラエルの諜報機関・モサドは見抜いていた可能性がある)。なお、ウクライナ戦争の発端も、バイデン政権とその傀儡政権であるゼレンスキー政権が、ロシア正教を信じる東部ドンバス地方のロシア系住民を大弾圧することで、ロシアを「特別軍事作戦」に誘い込んだものでしかなかった。
リクードを中心に成立したネタニヤフ首相(リクードの第5代党首)を中心とする右派政権の最終の狙いは、次のようなものだろう。イスラエルにはまことに都合の良い話だがとりわけ、ガザ地区とヨルダン川西岸地区を「人道犯罪」とも言える徹底的な攻撃で崩壊させて「パレスチナ国家構想」自体を消滅させる。このことによって、エジプト、ヨルダンを中心とした中東地域に地域の信頼が厚いムスリム同胞団(政治・軍事・経済・社会の機能を持つ統合組織)に新しい「アラブの春」を呼び起こさせ、これらの国はもちろん、サウジアラビアを盟主とした中東諸国家と外交関係を修復し、中東地域に和平を実現するというものだ。
とてつもない「非道」な荒業だが、アブラハム合意(注:2020年8月13日に、トランプ政権下でサウジアラビアの傘下にあるアラブ首長国連邦とイスラエルの間で締結された外交合意である)に見られるように、アラブ諸国家の盟主でモハメッド・ビン・サルムーン(MbS)皇太子兼最高実力者らサウジ政権もイスラエルと外交関係を修復し、中東和平を実現したいと考えている。トランプ大統領(当時)も、イスラエルとアラブ諸国家との外交関係修復による中東和平の実現を望んでいる。こうしたことから、今回のイランによるイスラエル攻撃が、第五次中東戦争に拡大する公算は極めて小さいだろう。
これについて、国際情勢解説者の田中宇氏は2日投稿・公開した「ヒズボラやイランの負け」(https://tanakanews.com/241002iran.htm、無料記事)で、次のように分析・解説しておられる。
ヒズボラは今回、人的、兵器的な資産をイスラエルにかなり破壊され、大幅に弱体化した。イランがヒズボラに加勢しないと宣言したので、イランからの兵器の補給もしばらくは低調だ。イスラエルは、高度な諜報力を維持する限り、イランからヒズボラへの兵器供給を監視し、必要に応じて破壊できる。(Israel: Settler group advertises new properties in southern Lebanon)(中略)
イスラエルは、7月にハマスの(注:最高指導者の)ハニヤを殺した時も、テヘランでハニヤがどこに滞在しているか知っているぞと諜報力の高さを示してイランに警告する目的があった。イスラエルは、シリアやイエメンでも、イラン系の勢力が構築した軍事拠点を空爆し、諜報力の高さをイランに示している。これらを受けてイランは、イスラエルと本格戦争しない姿勢になっている。イスラエルは諜報力の高さを誇示しつつ、ヒズボラをガンガン潰している。イランが手を出すと、イスラエルはイラン本土を攻撃してくる。イランは、イスラエルと果たし合いの戦争をしたくないので、最低限の沽券(こけん)維持のミサイル攻撃だけしつつ、最愛のヒズボラが潰されていくのを黙認している。イランは、ヒズボラの破壊を黙認せざるを得ないぐらいだから、シーア派でないハマスをイスラエルが潰す(ふりをしてパレスチナを抹消する)ガザの戦争を黙認し続ける。中東で最も果敢に米イスラエルと対峙してきたイランがこんな感じだから、ずっと米傀儡でやってきたアラブ諸国や、口だけポピュリストのエルドアン(大統領)のトルコなどは、もっと黙認だ。(こっそりイスラエルを助けるアラブやトルコ)
イスラエルは、米覇権が残っているうちに、パレスチナを抹消して独立戦争を完結し、イスラエルを軍事攻撃してくる中東のすべての勢力(すべてイランの傘下)を攻撃して弱体化させたい。それが、ネタニヤフが今やっている「7正面戦争」の意図だ。この戦争を完遂した後も、イスラエルは敵性諸国が軍事復活しないよう監視し続けねばならない。だが、強硬姿勢を保ったまま和解していくことはできる。追い出したハマスがヨルダンを乗っ取ってパレスチナを名乗ったら、イスラエルは東エルサレムへの通路を譲歩しつつ、MbSのサウジと和解できる。ロシア政府は、ガザやレバノンでの戦争を批判しつつ、イスラエルの安全を守ると宣言している。米覇権が衰退して世界が多極型に転換したら、ロシアや中国がイスラエルの存在を肯定してくれる。(Netanyahu’s ‘War On Seven Fronts’: Expanded Attacks On Yemen, Syria, Central Beirut)(中略)
米軍はイスラエルにとって役立たずで有害だ。米国の兵器や資金はイスラエルに必要だが、米軍は要らない。今回イスラエルは、米国に諮らずに戦争遂行している。ナスララ殺害時は、決行の数分前に米国防相(長官)に電話して通報し、数分では対応できないと激怒された。イスラエルは米軍を馬鹿にしている。イスラエル(や他の同盟諸国)は、米国に頼らず独自の諜報力を磨いて使った方がうまくいく(諜報力ゼロの日本でさえ)。(Pentagon Chief ‘Blew Up’ as Israel Shortly Notified US of Strike on Nasrallah – Reports)
ということで、今回のイランによるイスラエルに対するミサイル攻撃に関して言えば、「イスラエルは諜報力の高さを誇示しつつ、ヒズボラをガンガン潰している。イランが手を出すと、イスラエルはイラン本土を攻撃してくる。イランは、イスラエルと果たし合いの戦争をして負けたくないので、沽券(こけん:プライド)維持のミサイル攻撃だけしつつ、中東の安定を優先すると言って、最愛のヒズボラが潰されるのを黙認している」ということになるのだろう。
【10月5日正午:追記】田中氏は4日に投稿・公開した「イランの失敗」(https://tanakanews.com/241004israel.htm、無料記事)と題する分析・解説記事の追加で、米欧はイスラエルの傀儡なので、イランが米欧と和解し、場合によってはイランに対する報復攻撃を行うことも辞さないイスラエルを抑制してくれると期待したことは大きな間違いだと述べている。現時点でイスラエルが報復攻撃の対象として考慮していると考えられるのは、石油精製設備か核施設(恐らく、軽水炉の原子力発電所)、それに、イランの三権分立制度を超えた最高指導者のハメネイ師。
一昨日の記事で、イランはイスラエルと本格戦争する気がないので、中東の戦争は拡大していかないという趣旨を書いたが、私はその後、見方を変えている。
イランの姿勢についての自分の分析は間違っていないと思う。4月にイランとイスラエルが報復攻撃を繰り返した際も、双方が敵対を縮小していき大戦争にならなかったので、その演技が今回も繰り返されるなら大戦争にならない。だが今回、イスラエルはおそらく4月の演技を繰り返さない。イランは本格戦争する気がないが、イスラエルその気がある。イランが軟化するほど、イスラエルは硬化する。だから、中東の戦争は拡大していく可能性がある。(Biden Is Pushing Israel Towards Larger War)(中略)隠れ多極主義が強い米国は、(注:米国単独覇権主義体制を終わりに導くため)イランや露中を敵視し続けて結束させてきた。イスラエルは、米国のイラン敵視に便乗して過激な戦争を展開して敵をへこましている。それは今後もずっと続き、米国の覇権を自滅させる。イランは米欧を無視して中露とつきあっていけば良かったのに、いまだに米欧リベラルへの幻想があり、愚策をとってしまった。それらの流れは、ちんけな市井の私にさえ見える。だが、ペゼシキアンの和平案に乗ってしまったハメネイには見えていなかった。これは外交素人のペゼシキアンでなく、ずっと最高指導者をやってきたハメネイの失策だ。自業自得。「イランの馬鹿」。(After Iran’s missile salvo, will Israel bite or fold?)
ただし、イランがアシュケロンにあるイスラエルの海底ガス田の産出設備を10月1日の空爆対象にしていたことなどを受けて、イスラエルが場合によってはイランの石油精製設備を攻撃することも辞さないとしている。そして、次のような事態がやってくることも考慮に入れておかなければならないという。
イスラエルは間もなくイランの石油施設を空爆するのか??。たぶん今回はしない。イランがどんな再反撃をしてくるか。それによって、イスラエルの再々反撃の対象に石油施設が入りうる。イスラエルがイランの石油施設を攻撃したら、イランは報復として、イスラエルのミサイルが自国の上空を通過するのを黙認した諸国(サウジアラビアやUAEなど)の石油施設も攻撃すると言い出している。(Iran Will Consider Any State Providing Airspace to Israel As Enemy)
サウジなどが、米国を通じてイスラエルに圧力をかけてくれることを期待しているのか。無駄だろう。各地の石油施設が相互に攻撃されて原油相場が急騰するかもしれない。そこまでの事態にはならないかもしれない。脅されても、原油相場は大して動いていない。相場は麻痺しているので、本当に破壊されてから高騰するのだろう。世界的に、麻痺とか善悪逆転とか歪曲とか超愚策ばかりになっている。
なお、イラン大使を勤めた孫崎享氏によると、ホメイニ師が主導した1979年1月のイランでのイスラム革命の時代から、イランは米国との関係改善を望んでいたという(https://www.youtube.com/watch?v=ER-1i7fsK28、最後の15分間程度)。つまり、欧米の事情を無視したイスラエルの本格的なイラン報復攻撃も、考慮に入れておかなければならないということだ。もっとも、イランが外交戦略を欧米諸国との関係改善から、非米側陣営との関係強化に切り替える可能性は考慮しておかねばねならない。
ただし、そういう外交政策の大転換が起きる可能性もある。イスラム教シーア派(ゾロアスター教が混在していると言われる)のリーダー国であるイランは、引用された科学技術論文数(1年単位)で日本を上回っており、イスラム教徒の中でも女性の理工系大学への進学が多い。ドローン攻撃機の製造でも世界有数の国である。人口も約9千万人であり、石油など資源エネルギーも豊富に保有していることから、将来は科学・技術を踏まえた経済大国になると思われる。イスラエルがイランに対して報復攻撃を行えるのは、今だけだ。イスラエルは米側陣営(旧西側諸国)が瓦解した際には、BRICS(2024年1月からエジプト、エチオピア、イラン、UAE、サウジアラビア=ステルス加盟=が新規加盟)など非米側陣営に加盟するか、うまく付き合っていくのではないか。G7の時代はとうの昔に終わっている。なお、ウクライナでは軍が東部の要衝・ウフレダル(ブフレダル、ウグレダル)から撤退した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241003/k10014599311000.html)。最大の要衝・ポクロウシクも陥落するだろう。
なお、イスラエルは古代ローマ帝国時代に、イエス・キリストを十字架につけて殺害した。宗教的にみると、その「罪(連帯罪)」の「罰」としてイスラエル=ユダヤ人は欧米を中心に、「ディアスポラ(撒き散らされた者、離散者)のユダヤ人になった。宗教的には、ナチス・ドイツからホロコーストに遇うことによって、その罪に対する罰を甘受したのかも知れないが、田中氏は誇張と見ておられる。イスラエルがネタニヤフ首相の目論見通り中東地域で新たな地位を得ることが出来るかどうか、まだ、断定は出来ない。
さて、ネタニヤフ首相・政権が「戦争犯罪」とも言える戦闘行為を急いでいるのは、米国(とりわけ、バイデン大統領・ハリス副大統領政権)が頼りにならないからだ。その理由としては、米国の衰退・覇権崩壊、さらに言えば、欧米キリスト教文明の崩壊がある。民主党左派を中心に広まっている生命の尊厳性を否定する人工妊娠中絶やLGBTの激流は、旧新約聖書の価値観を根本的に否定するもので、米国では「黄金の時代」の1950年代を過ぎて、1960年代から急速に広まった。
並行して、朝鮮動乱に決着がつかなかった(現在は露朝同盟が結成され、非米側陣営の柱である中露が北朝鮮の面倒を見ている)し、ベトナム戦争では敗北、大量破壊兵器があると嘘をついて行ったイラク侵攻の大失敗、イスラミック・ステート(IS)の正体を明らかにされたこと、アフガニスタン統治の大失敗と米側の情けない撤退など、現実的にも米国と欧米キリスト教文明の衰退・崩壊は進んでいる。人工妊娠中絶やLGBTを大推進する「もしハリ」が実現すれば、米国は崩壊する運命にある。それがいやなら、ディープ・ステートの「隠れ多国主義者」は正体を表すとともに、米国民はトランプ氏を次期大統領に選出して、大精神革命を推進することが必要だ。
Polymarketの大統領選の勝敗を決すると言われるペンシルバニア州で共和党が逆転
米国大統領選挙予測市場最大手のPolymarketでは、日本時間17時の時点で、大統領選の勝敗を決すると言われるペンシルバニア州で共和党が逆転した。ただし、まだまだ安定的ではない。
カマラ・ハリス氏とドナルド・トランプ氏の差は1ポイント以上あったが、このところ、0.5ポイントに縮まっている。大統領選挙の勝敗を決すると言われるペンシルバニア州では、共和党が勝つとの予測が民主党より1ポイント上回り、逆転した。「世論調査の集計サイト『270ToWin』のデータによると、ペンシルベニア州とミシガン州は過去7回の大統領選で、2016年を除いてすべて共和党に投票している。1980年代は、ロナルド・レーガン大統領の人気により、この2つの州は常に共和党支持だった。これは、レーガン大統領の後継者ジョージ・H・W・ブッシュ氏の明確な勝利につながった」(https://news.yahoo.co.jp/articles/dc3b259dea0817ddd7b322080b60729b253fc3ec)。
11月5日まで1カ月になったが、副大統領候補のバンス氏とウォルツ氏の討論会から、大統領選挙戦は外交・内政の政策に移ってきているような様相を帯びている。ただし、民主党による不正選挙の可能性や司法(検察官)を使ったトランプ氏攻撃も考慮しなければならない。
【追記】日本時間、11月6日午後14時30分の時点では、トランプ氏返り咲きとハリス氏当選の予測は同じ49%になっている。これより先にトランプ氏に対する返り咲き予測がハリス氏当選の予測を上回ったことがあったが、その後、予測が逆転したこともあった。ハリス氏が正式に民主党の大統領候補になった当時は、トランプ氏に対して4.5ポイント程度の差を付けたが、その後、ハリス氏当選予測とトランプ氏返り咲きの予測の差は縮小し、現在、トランプ氏返り咲き予想がハリス当選予想を上回る状況が出てくるようになっている。
次図は午後23時20分の2人の当選予測。このキャプチャ図もトランプ氏の返り咲きを予想する参加者の割合が、ハリス氏の当選を予想する参加者の割合が上回っているので、トランプ氏が上に表示されている(https://polymarket.com/event/presidential-election-winner-2024)。賭け金もトランプ氏が多くなっている。
米国の大統領選挙は、選挙人の総取り合戦なので、7つの激戦州の勝敗で決まる。7つの激戦州は、アリゾナ州(選挙人11人)、ジョージア州(16人)、ペンシルバニア州(19人)、ノースカロライナ州(16人)、ネバダ州(6人)、ウィスコンシン州(10人)、ミシガン州(15人)。このうち、アリゾナ州、ジョージア州、ペンシルバニア州、ノースカロライナ州と言った人口が多く、選挙人数が多い州ではトランプ氏が優勢だ。トランプ氏がこの4州で勝てば選挙人を62人獲得できる。これに対して、ハリス氏は残りの3州で優勢だが、獲得できる選挙人は21人にとどまる。2020年の大統領選挙時は基礎選挙人で民主党の選挙人が始めから10人多かったが、今年はこの「基礎選挙人」の多さはは5人に縮小している。
このため、現時点での予想だが、トランプ氏が激戦7州のうち4州で勝てば、民主党の基礎選挙人の当初からの多さを考慮しても、62人対26人になり、民主党による不正選挙や司法(検察)を使ったトランプ弾圧がなければ、トランプ氏の返り咲きになる。日本貿易振興会(Jetro)も、「南部激戦州でトランプ氏優勢、自身の支持層を取り戻す、米大統領選挙世論調査」と題するレポート(https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/10/949a045532454594.html)を出した。
ここでは、Polymarket(注:例えば、参加者が50セント賭けた候補が大統領に当選すれば、掛け金の2倍の1ドルが手に入る。当選予測が当たらなかった参加者は掛け金をすべて失う)の勝敗予想(参加者は信頼できる世論調査その他の重要な情報をもとにして予測している)を参考に、トランプ氏、ハリス氏の選挙人獲得数を予想してみた。なお、日本では石破茂政権が誕生し、10月内にも解散・総選挙・投開票を行うが、日本は対米隷属国であるので、選挙後の日本の政権(必ずしも石破政権とは限らない)の動向は米国の大統領選挙の結果に左右される。