
トランプ大統領は25日に続けて30日にも、エジプトとヨルダンはガザ(とヨルダン川西岸)のパレスチナ難民を受け入れるべきだと主張した。トランプ氏の主張は国際情勢解説者の田中堺氏が早くから予想していたもので、本サイトでも参考にさせていただいてきた。「パレスチナ国家構想」は、英米ディープステート(諜報系)の中で、英国・リベラル系が画策、主張していた現実離れした構想でしかなく、もとはと言えば、大英帝国時代を築いた英国のまやかしの策である。米英ディープステート内の暗闘がロックフェラー家などの国際経済情勢の分かる財閥系とシオニスト系(ネタニヤフ派)とトランプ系の勝利で決着した現在、英国系・リベラル系は敗北しているが、その結果として「パレスチナ国家構想」も消滅し、中東はイスラエル(ユダヤ教)とアラブ諸国(イスラム教)が国交正常化へと動き、和平が訪れる流れになるだろう。
英国の三枚舌で作られた「パレスチナ国家構想」を消し去るトランプ大統領
トランプ大統領は25日、ガザ地区(とヨルダン川西岸に追い込まれている)パレスチナ人について、生活環境の改善のためにエジプトとヨルダン王国が受け入れるべきだと発言した(https://www.bbc.com/japanese/articles/cj48ydjjen8o)。
アメリカのドナルド・トランプ大統領は25日、パレスチナ・ガザ地区に住むパレスチナ人について、エジプトとヨルダンが受け入れることを望むと述べた。当事者らは反発している。トランプ氏は大統領専用機エアフォース・ワンの機内で、記者団に考えを明らかにした。トランプ氏は、ヨルダンのアブドラ国王にはすでに要請したと説明。エジプトの大統領にも26日に要望を伝える予定だと述べた。
トランプ氏はガザを「解体現場」と表現。「おそらく150万人ほどの人がいる。私たちはすべて一掃する」と述べた。また、こうした動きは「一時的かもしれない」し「長期的かもしれない」とした。また、「ほぼすべてが破壊され、そこで人々が死んでいる」、「だから私はアラブ諸国と協力し、人々が違った環境で、うまくいけば平和に暮らせるような家を、別の場所に建てられればと思っている」と述べた。
トランプ大統領は「clean」という言葉を用い、これが「一掃」と翻訳されたため、アラブ人を中心に世界中に非難の声が広がったが、ガザやパレスチナ西岸は破壊し尽くされており、人間が住むような居住区ではなくなっているため、「私はアラブ諸国と協力し、人々が違った環境で、うまくいけば平和に暮らせるような家を、別の場所に(パレスチナ人の居住区を)建てられればと思っている」というのが、ホンネだろう。これについては、幸福の科学出身で国際情勢アナリストの及川幸久氏がYoutubeの「The Core」チャンネルで説明している(https://www.youtube.com/watch?v=DA095Kj6gSo)。
パレスチナ人はもとより、アラブ諸国家から非難の嵐が吹きまくる中の30日、トランプ大統領はまたも、エジプトとヨルダン王国がパレスチナ人を受け入れるべきだとする旨の発言を繰り返した(https://www.sankei.com/article/20250131-V2TY3CB6TNOSJGAYAWIA47CPHA/)。
トランプ米大統領は30日、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの停戦が続くパレスチナ自治区ガザの情勢を巡り、エジプトとヨルダンがガザ住民の移住を受け入れるべきだとの考えを改めて示した。両国は住民をガザ外へ移住させる案をすでに否定しているが、トランプ氏は両国への外交圧力を強めていく構えだ。トランプ氏はホワイトハウスで記者団に、エジプトとヨルダンに対して「多くのことをしてやる。そして彼らは(移住受け入れを)やることになる」と語り、両国とのディール(取引)に自信をみせた。
従来、英米両国が提唱した「パレスチナ国家構想」は、民主党のクリントン大統領(当時)の仲介で、イスラエルで労働党のラビン党首が首相の座についていた時代、パレスチナ解放機構のアラファト議長との間で「オスロ合意」が結ばれ、実現に向けてのスタートを切ったが、イスラエルの右派青年のラビン党首暗殺事件をきっかけに、結局、失敗するに至った。大英帝国時代の第一次世界大戦当時に、三国協商側(英国、フランス、ロシア)の主導国・英国が、三枚舌外交を使ってシオニストのユダヤ人、パレスチナのアラブ人の双方に、三国同盟国(ドイツ、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマントルコ帝国)を構成するオスマントルコ帝国が支配した土地を、国家として分け与えると約束する外交政策を展開してしまった。「パレスチナ国家構想」は、英国がその後始末として「苦肉の策」として提案してきたものだ。このことの経緯については、次の投稿記事を参照して下さい。
国際情勢解説者の田中宇氏は、今回のトランプ大統領の提案に関して、「パレスチナ(国家構想)抹消に協力するトランプ」と題する、従来の分析記事のまとめ的な記事を投稿・公開している(https://tanakanews.com/250130gaza.htm、無料記事)。主要な分析を引用させていただくと、次のようになる。
イスラエルでは、かつて労働党系が、英米覇権の要求に素直に従って2国式のオスロ合意を結ぶことで問題解決しようとした。だが、2国式で作られるパレスチナ国家はイスラエルを攻撃するイスラム主義勢力を強め、イスラエルを恒久内戦に引きずり込んで潰す英国系の新たな謀略になりかねないとわかった。そのためネタニヤフら右派のリクード系がラビンを暗殺し、労働党系を追い出して政権を握り、米国をゆすって協力させ、ガザ西岸からの市民追い出しや市街の破壊など、パレスチナの抹消を試みる今の流れになった。(Israel tasks UAE with governing post-war Gaza: Report)
トランプは、米中枢(諜報界、DS)を支配して覇権運営してきた英国系(民主党、マスコミ権威筋リベラル)を潰すために政界に入った。トランプは、英国系に対抗して1970年代から米諜報界に入り込んで暗闘・席巻してきたイスラエル(リクード)系と組んで大統領になった。トランプは米国を英国系の支配から解放し、イスラエルはパレスチナ問題のくびきから解放するのが目標、というウィンウィンな結束になっている。トランプは、イスラエルをパレスチナのくびきから解放するだけでなく、イスラエルとアラブやイランとの間を緊張緩和して中東を安定させようとしており、ガザ市民のエジプト移住を今後もしつこく求め続ける。(Trump would like Gazans to live in places without ‘revolution and violence’)(中略)
イスラエルは、ガザを破壊して市民をエジプトに追い出すために、2023年10月にハマスを引っ掛けて攻撃を誘発してガザ戦争を開始した。そして今回、トランプが大統領に返り咲くとともに停戦した。開戦と停戦の時期から考えて、イスラエルはトランプと協議してガザ戦争を起こしている。トランプが2023年夏に選挙活動を再開するとともに、イスラエルはトランプの了承を得て開戦の準備を始めた。(Israel launches ‘counterterrorist operation’ in West Bank)
トランプはイスラエルに、戦争するなら自分が大統領になる前に終わらせろ、と言ったはずだ。ガザ市民を追い出すには時間がかかるのでイスラエルはすぐ準備を開始し、2か月後に開戦した。イスラエルはガザを北部と南部に分断し、南部に避難した市民が北部に戻ることを許さなかった。ガザ北部の人口は、150万から50万以下に減ったと推定される。市街地は完全に壊された。イスラエルはガザ北部の抹消・民族浄化を達成したかに見えた。(State Department issues immediate, widespread pause on foreign aid)
ただし、サイト管理者としては、右派リクードの党首であるネタニヤフ首相が言葉の狭い意味で、パレスチナ人の民族浄化・抹消を行おうとしたわけではないと思う。パレスチナ人もアラブ人だ。ネタニヤフ首相は、ハマスとの停戦協定を結んで実行に移すとともに、南部に逃れた北部のガザ住民の帰還を認めた。その理由として田中氏は、第一に、「ガザ北部市民を帰還させて瓦礫の山となった市街を見せ、再定住や再建は無理だと実感させること」があることを挙げている。第二の理由としては、本格的な「アブラハム合意」を実現すること、つまり、イスラエルとサウジアラビアの公式和解と国交樹立が挙げられる。

アブラハム合意はトランプ氏が第一期目の大統領の2020年8月13日、イスラエルとサウジアラビアの弟分であるアラブ首長国連邦(UAE)との間に結ばれた関係正常化と国交回復合意である。しかし、アブラハム合意の最終的な狙いは、イスラエルとアラブ諸国の盟主であるサウジアラビアの関係正常化と国交回復での合意だ。イスラエルはサウジとの間にアブラハム合意を結ぶことができれば、中東地域における安定的な独立・自立と中東和平を確立できる。
そのため、田中氏によるとイスラエルは当面、①ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府(PA)に、ガザ南部とエジプトの国境にあるラファ検問所の管理を任せる②イエメンの反政府勢力であり、イランの支援を受けているフーシー派を昨年末から攻撃を開始、さらに強化して、イエメンを同国の傘下に置く(https://jp.reuters.com/world/us/MK7CYPB76VJOFCVPQLZ7YU7RHM-2024-12-26/)ーことなどを行っている。イエメンはサウジアラビアをイスラエルと挟むアラビア半島南端の国であり、事実上、内戦状態にあるイエメンの支配的な立場にいるフーシー派が打倒されると、サウジアラビもイスラエルとイエメンに挟撃されることになり、無言の圧力を受ける。

イスラエルは硬軟両用の手を使って、本命のサウジアラビアをアブラハム合意に誘い込もうとしている。また、イラン系のヒズボラなどのイラン派(シーア派)民兵はイスラエルによって大幅に弱体化されており、さらには、シリアもイスラエルの傘下に入りつつあるようだ(「シリア新政権はイスラエルの傀儡」https://tanakanews.com/241217israel.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=)。
エルドアン大統領率いるトルコは表向きイスラエルを厳しく批判しているが、経済支援は止めていない。トルコが匿(かくま)っていたシャーム解放機構(イスラム解放機構、HTS)ら反体制派によって昨年12月、シリアが簡単に政権転覆され、シャーム解放機構の指導者アハマド・シャラア(通称ジャウラニ)氏が暫定政府を結成、立法議会も創設しつつあるようだ(https://jp.reuters.com/world/mideast/6GWJCCLWCVN6ZJFKRX6MXKKIDY-2025-01-29/)が、その新生シリアの旧シリア政権の軍事基地を中心にイスラエルが空爆しても、ジャウラニ暫定政権はあまり抗議しない(https://www.bbc.com/japanese/articles/cy7kxm4lrplo)。
イスラエルは10日、シリアの海軍艦隊を攻撃したと発表した。バッシャール・アル・アサド政権の崩壊を受け、シリアの軍事資産を無力化するためだとした。また、シリア全土で数百回にわたって空爆を実施したとした。(中略)
旧シリア・ラタキア港海軍艦隊をイスラエル空軍が攻撃 IDF(イスラエル軍)はまた、シリア全土で空爆を350回以上実施したとした。イスラエルが占領しているゴラン高原とシリアの間にある非武装地帯にも、地上部隊を移動させたとした。さらに、シリアの首都ダマスカスやホムス、タルトゥース、パルミラでも、飛行場や軍用車両、防空兵器、兵器生産施設、武器倉庫、弾薬庫、「多数」の艦対艦ミサイルなどを標的に攻撃を実施したと説明。それらが「(注:イラン系)過激派の手に渡るのを防ぐ」ためだとした。(中略)
一方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はビデオ演説で、アサド前大統領を失脚させた反政府勢力「ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS、「シャーム解放機構」の意味)」に向けてメッセージを発し、イランが「シリアに再び定着する」のを許すなら、イスラエルは「強力に対応する」と述べた。ネタニヤフ氏はこれまで、シリアの新政府と平和な関係を望むと表明している。シリアへの介入については、自国を防衛するためのものとしている。
トルコのエルドアン大統領は表向き、ガザ地区を猛攻撃してきたイスラエルのネタニヤフ政権を批判しているが、カスピ海の西側にあるアゼルバイジャン(トルコやイラン=25%=にも住んでいるテュルク系民族が多数派で2009年の調査で総人口の91.6%)を起点とするパイプラインで石油をイスラエルに送っている。これは、「アルメニアを捨てアゼルバイジャンと組んだイスラエル」(https://tanakanews.com/250126azeri.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=)に詳しい。こうしたことから、田中氏はトルコとイスラエルは裏で組んでおり、シリアのアサド政権を打倒したようだ(イスラエルのモサドがシャーム解放機構にアサド政権の軍事機密などを伝え、アサド政権打倒に貢献したと言われている)。

なお、ディアポラのシオニストユダヤ人、従って、現イスラエルはロシアとも関係が深い。旧シリアの後見国だったロシアのプーチン大統領はアサド政権に対して、軍制改革や内政改革の必要性を強くアドバイスしてきたようだが、アサド大統領がまともに取り組まなかったため、ロシアはアサド政権を見捨てたとの説もある。こうしたことから、田中氏はシリアはイスラエルの勢力下にあると見ているようだが、サイト管理者としてもその可能性は高いと思う。
そして、アラブ諸国のもうひとひつの大国イラン(シーア派)は、いまのところ、イスラエルによって傘下のヒズボラ、フーシー派など民兵団が重大な打撃を被っても、思い切った反撃はできないでいる。イラン派昨年から加盟したBRICSの最重要国の一国として、次の時代に備えているのだろう。こうした軍事情勢から考えると、「もし今後イエメンが転覆されてイスラエルの傀儡国になると、サウジは、北と南の両方からイスラエルにはさまれる。サウジは安全保障上も、イスラエルと和解した方が良くなる」(田中宇氏「パレスチナ(国家構想)抹消に協力するトランプ」)ということになるだろう。サウジの今後の動きを田中氏は次のように予想している。
ガザの停戦と同時に、すでにイスラエルと国交を結んで仲良しになっているサウジの弟分のUAEが、ガザの再建に協力する態勢を整えている(という演技をしている)。UAEは、ガザが停戦して再建されていくかのような幻影を世界に見せ、兄貴分のサウジがイスラエルと国交正常化できる状態を作る策略を始めている。イスラエルは、パレスチナ抹消策をやめていない。だが、サウジとの国交正常化を実現するため、今だけ停戦し、PAがガザを管理し始めたかのような(おざなりの)構図を作り、UAEもガザ再建に協力する演技を開始した。(Israel and UAE agree on 'Day After' plan in Gaza)(Trump-Netanyahu to meet Tuesday as Witkoff heads to Israel)
準備が整ったら、トランプがサウジとイスラエルを仲裁する策を再開する。まず2月始めにネタニヤフが訪米する(注:https://www.jiji.com/jc/article?k=2025012900290&g=int#goog_rewarded)。イスラム諸国の盟主であるサウジがイスラエルと和解したら、パキスタン、バングラデシュ、インドネシア、マレーシア、アルジェリア、リビアなどのイスラム諸国が追随してイスラエルと国交正常化する。トランプは、1期目にすごくイランを敵視したのに、最近はイランと和解すると言い出している。アラブやイスラム諸国がイスラエルと和解したら、イランも追随していく。その際にトランプがイランと和解して「ご褒美」を与える。プーチンは、先日すでに「前払いのご褒美」のようなイランとの戦略協定を結んでいる。(Is Trump really ready to negotiate with Iran?)
すべての和解が具現化して一段落したら「頑張ってガザを再建してもなかなか進まない。ガザ市民をエジプトなどに移住させた方が現実的で良い」というトランプの説が蒸し返される。みんなイスラエルと和解し、パレスチナの大義に固執する勢力は小さくなり、ガザ市民が移住するしかないねという話になる。ガザが終わると、西岸市民をヨルダンに移住させる話になる。ヨルダンから東エルサレムの神殿の丘に行くための巡礼用道路の周辺だけがパレスチナ(もしくはヨルダン領)になる。(Abraham Accords-II?)
結局、好戦的な英国が作り上げた「パレスチナ国家構想」は崩壊する。そして、ヨルダン王国やエジプトはパレスチナ人を受け入れることになる。これらの国々では、ムスリム同胞団の影響力が強い。ムスリム同胞団は、「1929年にエジプト王国のイスマイリーヤ(スンニ派)で、ハッサン=アルバンナーが結成した、ムスリム(イスラーム教信徒)青年の啓発をめざす社会団体として始まった。その後、シャリーア(イスラーム法)の実施と、イスラム教にもとずく宗教国家『イスラーム国家』の樹立をめざす政治組織に成長していった。その組織は、エジプトで最大の動員力を有し、さらにアラブ諸国にも広がっていった。このイスラーム同胞団(ムスリム同胞団)が、20世紀から21世紀にかけて、様々なテロ活動を展開して世界を大きく揺り動かしたイスラーム原理主義の源流となった」(https://www.y-history.net/appendix/wh1503-129_1.html)。
しかし、ムスリム同胞団はいつまでも単なるテロ組織ではない。現代では、政治(政党)・経済・社会・軍事基盤が強く、エジプトやヨルダン王国でも基盤を持っているようだ。イスラエルが猛攻撃したハマスも、正式名は「ムスリム同胞団パレスチナ支部」であり、2006年1月に行われたパレスチナ暫定政府立法評議会(議会に相当)選挙では、「ハマスが定数132議席のうち74議席を獲得して第一党となる一方、アッバス大統領率いるファタハ(PLO=パレスチナ解放機構=の主流派政党)は第二党(45議席)に後退した」(https://x.gd/7DRLz)。これは、ハマスがガザ地区のパレスチナ人を支援できる経済社会的な力を保有していたためである。ただし、ハマスとファタハが対立したためその後、パレスチナ暫定政府は有名無実になっており、この面からも、「パレスチナ国家構想」は既に有名無実になっている。
田中氏は、「アラブ人は現実主義で、教条的な大義・善悪に拘泥しない。良い理由があれば、大義から離れていく。(Trump signals he may defy hardliners and talk to Iran)」と見ている。サウジアラビアの弟分のアラブ首長国連邦にイスラエルとのアブラハム合意を許したくらいだから、同国もゆくゆくはイスラエルとの関係改善による中東和平を望んでいるのだろう。好戦的な英国が作り上げた「パレスチナ国家構想」実現への道がないことを確認し、一定の「現実」が整えば、イスラエルとサウジアラビアの「アブラハム合意」が成立して、イスラエルとアラブ諸国の公式和解と国交樹立が進む方向に至るだろう。そして、トランプ大統領はトランプ2.0で、アブラハム合意への道を推進するだろう。ただし、何故、「アブラハム」合意なのか、その意味をよく理解する必要がある。
新約聖書・マタイ伝によると、アブラハムの血統からイエスが誕生、古代ユダヤ教の律法学者らの手によってイエスが磔の刑にかかりながらも、当時の旧約聖書の解釈を乗り越え、イエスの復活によってキリスト教が広宣流布が開始された。また、庶子のイシュマエル(旧約聖書創世記第16章4節)からイスラム教唱導の道が築かれる。アブラハムの息子・イサクは、ユダヤ教を信じるユダヤ民族の先祖。そして、旧約聖書によると、アブラハムの象徴献祭の失敗(旧約聖書創世記第15章9節〜11節)と嫡子イサク献祭の成功(旧約聖書創世記第22章12節)で、アブラハムは「信仰の父」と呼ばれるようになった。宗教的視点から言えば、これらが同じ唯一神を持つユダヤ教、キリスト教、イスラム教の出自ということになる。
これらの三大宗教が何故、誕生したのか、その理由が明らかになることが、中東に真の平和が訪れるための必要条件になるだろう。