米露首脳会談は米露の経済協力、正常な外交関係確立で合意ーウクライナ終戦条件の合意は欧宇の壁で明確にされず(暫定投稿)
記者会見終了後握手するトランプ大統領とプーチン大統領=ANAのYoutube

米国アラスカ州の州都・アンカレッジ近郊で行われたトランプ大統領と米露首脳会談では結局、第二次大戦後の冷戦構造から脱却し、ロシア東部の北極圏の共同開発を含む米露両国の経済協力の開始と建設的外交関係の確立が明らかにされた。ただし、オールドメディアの間では最大の焦点と見られていたウクライナ戦争の停戦から終戦に至る両国の認識は明らかにされなかった模様だ。プーチン大統領としては、ウクライナ東部の戦線ではロシア軍がウクライナ軍に対して、ウクライナ東部最大の要衝ポクロウシク陥落へ向けての大攻勢など圧倒的優位に立っていることもあり、「紛争の根本原因の除去」という終戦条件で妥協するつもりはないと語った。また、トランプ大統領としては、ウクライナのキエフ政権を支援する英仏独など北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国とキエフ政権の了解が必要であることを考慮したと考えられる。同大統領のホンネとしては、終戦条件が受け入れられなければ、米国はNATOから脱退してウクライナ支援は欧州NATO加盟諸国にまかせることにより、欧宇が疲弊して、とくにウクライナでゼレンスキー氏率いるキエフ政権が解体するのを待つということだろう。いずれにしても、米露首脳の共同会見は、世界が本格的な文明の多極化時代に本格突入したことを、世界に向けて発信する結果になった。

文明の多極化時代の本格到来を公言した米露首脳会談ーウクライナ終戦の条件についてはぼかす

トランプ大統領とプーチン大統領による米露首脳会談は現地時間で15日午前11時半ごろ、日本時間の16日午前4時半ごろから。米国はアラスカ州の州都であるアンカレッジ市の近郊にあるの米軍基地内で始まった。当初は最初に、通訳だけを交えて両大統領の一対一での会談を行うことが予定され、その後、両国政権の高官も同席して全体協議を行う予定だったが、何故か急遽変更され、米国側からはトランプ大統領に加え、ルビオ国務長官とウィトコフ特使、ロシア側からは原則を絶対に崩さないプーチン大統領とともに、プーチン政権の意図を正しく伝えるラブロフ外相とウシャコフ大統領補佐官が同席して、三対三の協議が行われることになった。

ユーリー・ウシャコフ大統領補佐官。駐米大使を務めた=Wikipedia

「平和を追求する」と書かれた共同記者会見の場での両首脳発言内容の全文と(出されたとすれば)共同声明の全文を読む必要があるが、とりあえず、日本のオールドメディアの代表格であるNHKの共同記者会見要旨を紹介しておく(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250816/k10014895001000.html)。NHKはウクライナ戦争停戦問題に力点を置いているが、会談の長さ(2時間半程度)からすればそれだけではなく、米露両国の経済協力の開始を含め、冷戦構造からの脱却も協議の重要な議題になったように思われる。なお、要約が追記されたので、そちらも追加しておく。

両首脳の対面での会談はロシアのウクライナ侵攻後、初めてで、アメリカ側からルビオ国務長官とウィトコフ特使がロシア側からラブロフ外相とウシャコフ大統領補佐官が同席しておよそ2時間半に及びました。両首脳はこのあと共同で記者会見にのぞみました。この場でまずプーチン大統領が発言し「建設的な会談だった。非常に有益だった」と述べました。また首脳会談の主要な議題がウクライナ情勢だったとしたうえで「すべての根本原因が取り除かれなければならない。ロシアの懸念が考慮される必要がある」と改めて主張しました。

一方、トランプ大統領は「非常に生産的な会談だったと思う。意見が一致した点はたくさんあり、大部分では一致した。いくつかの重要な点ではまだ完全な合意に至っていないが一定の進展はあった」と述べました。そのうえで「この後、NATOに連絡をとる。もちろんウクライナのゼレンスキー大統領にも電話をかけ、きょうの会談について伝えるつもりだ。最終的には彼ら次第だ」と述べました。ただどのような点で一致したのか具体的な内容は明らかにしませんでした。

また会見の場でトランプ大統領がプーチン大統領に「おそらくまたすぐ会うことになるでしょう」と述べるとプーチン大統領が「次回はモスクワで」と英語で答え、トランプ大統領は「それは興味深い。少し批判を受けるかもしれないが、可能性はあるかもしれない」と述べました(注:米露首脳の政権高官会議の協議を踏まえたシャトル外交)。

トランプ大統領「合意にたどりつく可能性は非常に高い」
アメリカのトランプ大統領は記者会見で「非常に生産的な会談だった。多くの点で意見が一致した。わずかに残されたものがある。いくつかはそれほど重要ではない。1つはおそらく最も重要だが、合意にたどりつく可能性は非常に高い。われわれは合意には至らなかったが、そこにたどりつく可能性は非常に高い」と述べました。また「この後、NATOに連絡をとる。もちろん、ウクライナのゼレンスキー大統領にも電話をかけ、きょうの会談について伝えるつもりだ。最終的には彼ら次第だ」と述べました。

プーチン大統領「建設的な会談で非常に有益だった」
ロシアのプーチン大統領は記者会見で、首脳会談の主要な議題がウクライナ情勢だったとしたうえでトランプ政権は解決に向けて協力する意向があるとした一方、「すべての根本原因が取り除かれなければならない。ロシアの懸念が考慮される必要がある」と改めて主張しました。また、「トランプ大統領はロシアには独自の国益があることを理解している」と述べアメリカとの間でウクライナ危機の解決だけでなく、実際的な関係を築いてきたと強調しました。「ロシアとアメリカの関係は冷戦以降最も冷え込んだが、遅かれ早かれ対立から対話に移る必要があった」、「建設的な会談だった。非常に有益だった」と述べました。

【上記の改訂版】
ロシアのプーチン大統領は記者会見で、ウクライナ情勢をめぐり「こんにちの状況では変に聞こえるかもしれないが、われわれはいつもウクライナの人々を兄弟と思っている」と述べました。そのうえで「起きていることはすべてわれわれにとって悲劇であり、つらい痛みだ。したがってわが国はこれを終わらせることに強い関心がある」と主張しました。また「トランプ大統領との間には非常に良い信頼関係が築かれてきた」としたうえで、「この道を歩み続けることでウクライナでの紛争の解決に早く到達できると確信している」と述べ、ロシアとしては、ウクライナではなくアメリカと歩調をあわせてウクライナ情勢をめぐる事態の打開を図りたい考えを示しました。

「トランプ大統領はロシアには独自の国益があることを理解している」とも述べアメリカとの間でウクライナ危機の解決だけでなく、実際的な関係を築いてきたと強調しました。そして「ロシアとアメリカの関係は冷戦以降最も冷え込んだが、遅かれ早かれ対立から対話に移る必要があった」と述べています。

【追加版】プーチン大統領「投資やビジネスの協力 潜在性や可能性」
プーチン大統領は会見で「アメリカとロシアの投資やビジネスの協力にはさまざまな潜在性や可能性がある」と述べたうえで、「デジタルやハイテク分野のほか、宇宙の探査や北極圏での協力も可能だ。われわれは新しい協力関係を築くことが必要だ」としてトランプ大統領に対して経済協力などの必要性を訴えたことを明らかにしました。

【追記】米国のトランプ政権は、ハイテク産業やエネルギー転換分野に欠かせないレアアース(希土類元素:スマートフォン、電気自動車、風力タービン、液晶パネルなど、現代社会を支える様々なハイテク製品に不可欠な17種類の元素の総称)の世界最大の埋蔵量・産出量を誇る中国の対米輸出規制に悩んでいる。トランプ政権が進めている最先端の防空システムである「ゴールデン・ドーム(イスラエルのアイアン・ドームの性能を上回ると言われる米国本土ミサイル防衛システム)」の開発・構築には、レアアースが不可欠。

ロシアは埋蔵量では中国に次ぐ世界第二位の国であるが、開発・生産が遅れている。このため、米国の企業がロシアのレアアース開発に関心を示しており、共同開発に向けた協議が開始されている(GoogleのAIによる)。なお、ロシアは中露同盟、中朝同盟を結んでおり、米国や日本に対して、中国、北朝鮮との「橋渡し」をすることができる立場にある。ゴールデン・ドームについては、笹川平和記念財団に解説がある(https://www.spf.org/iina/articles/nagashima_22.html)。

 「ゴールデン・ドーム(Golden Dome for America)」は、トランプ米大統領が発表した米本土を守るための領域横断的な次世代型ミサイル防衛構想である。その実体は、従来の弾道ミサイル防衛(BMD)にとどまらず、極超音速滑空体(Hypersonic Glide Vehicle : HGV)や巡航ミサイル、人工知能(AI)を搭載する数百機単位のドローン群(スウォーム)など多様化・複雑化する「経空脅威」に対処するための統合防空ミサイル防衛(Integrated Air and Missile Defense : I AMD)システムの一形態である。

AIを利用した米国本土防衛システムのゴールデン・ドーム。かつて同じく共和党のレーガン大統領が提唱した

参政党から「さや」の芸名で参院選東京選挙区に立候補し、東京都の男性から圧倒的な支持を受けて二位で当選した塩入清香(さやか)は、広島市に原爆が投下された8月6日を前にした3日、「核武装が最も安上がり」と言って物議をかもしたが、日本の政府は世界情勢の多極化の流れを認め、トランプ政権と協力して「ジャパン・ドーム」を構築したほうが、国内産業への波及効果がはるかに大きい。【追記終わり】

日本政府関係者の反応(一部省略)
政府関係者はNHKの取材に対し「両首脳の発言からでは会談の内容の詳細が分からないので、情報収集や内容の分析を急ぎたい。引き続きロシアが前向きな対応をとることを期待しつつ、関心を持って注視していきたい」と述べました(注:この政府関係者は、ウクライナ戦争は米国がオバマ政権の時代に50億ドル程度の資金を投入し、2014年2月にマイダン暴力クーデターを引き起こして、ヤヌコーヴィッチ親露政権を打倒し、2015年2月にドイツのメルケル首相(当時)らが仕掛けた「内戦を停止させる」ことを目的に結ばれたミンスク合意Ⅱでも時間稼ぎを目的にロシアを騙したことが直接の原因であることを認識していない)。また、石破政権の幹部の1人はNHKの取材に対し「合意点や一致点の内容など会談の中身はまだわからないが対話の糸口にはなったと言えるのではないか。両首脳は次回の会談にも言及しており、その時期にも注目したい」と述べました。

プーチン大統領の発言とされる文言のうち、最後の部分は、朝日系列のYoutubeの同時通訳付きの共同記者会見(https://www.youtube.com/watch?v=Rad6Fl8kxSA)を視聴していたサイト管理者(筆者)からすると、「ロシア東部の北極圏の共同開発を含む米露両国の経済協力の開始と建設的外交関係の確立」を意味するものであろう。これは、米国とソ連・その後継国であるロシアの第二次世界大戦終了後の、これまでの冷戦構造から完全に脱却して、現在の世界秩序の再編と新たな世界秩序の構築(注:世界秩序の多極化=多極化文明の創造=)に共同で取り組むことを世界に向けて発信したものと思われる。

ANNのYoutubeより

サイト管理者としては、トランプ政権が欧州とウクライナに提示する条件を受け入れなければ、ウクライナ戦争は欧州NATO加盟諸国(右派政権のハンガリーやイタリアは除く)に任せ、ウクライナ戦争終結の仲介役から手を引くつもりではないかと思う。その場合、英独仏のNATO加盟リベラル左派政権は、欧州各国で台頭している右派勢力に取って代わられ、ウクライナはキエフ政権が内部から崩壊して、ウクライナ戦争終結になる公算が大きい。

なお、プーチン大統領が受け入れられる条件(紛争の根本原因の除去)としては、次の三点が挙げられる。第一に、ロシア軍が、緩衝地帯を築いているウクライナ北東部のスミ州やハリコフ州から撤退することで、欧州NATO加盟諸国とウクライナが、フルシチョフ政権の時代にウクライナに強制的に渡したロシア系住民の多いクリミアはもちろん、クリミアと同様に住民投票によってロシアへの編入を決定したウクライナ最大の工業地帯であり、天然資源の埋蔵量もウクライナで最も多いドネツク、ルガンスク、ザポリージャ、ヘルソン州の、ウクライナ東南部のノボロシア地帯の併合を承認する。

第二に、ゼレンスキー氏率いるキエフ政権などネオ・ナチ傘下の政治勢力を解体し、ウクライナ憲法上、厳密に言えば任期(5年間)切れの大統領選挙を実施し、ウクライナ国民を守るためのキエフ政権を樹立する。第三は、最低でもウクライナの中立化を実現(NATOへの非加盟を明らかにする)し、中長期的には欧州(西欧・東欧・北欧)とユーラシア大陸にまたがるロシアの全域にわたる安全保障体制を確立するーことだろう。なお、ソ連時代に結成されたワルシャワ条約機構が解体されているから、NATOの本来の存在意義はない。

ウクライナの各州=Adobeによる

米露首脳のトランプ大統領とプーチン大統領が協調関係を示したことで、世界は本格的な多極化時代(文明の多極化時代)に入ることになる。

ポクロウシクでウクライナのアゾフ軍団が反撃かー航空万能論が伝える

軍事プログ「航空万能論」によると、ウクライナ東部の最大の激戦地帯になっているポクロウシクで、ウクライナのアゾフ軍団が反撃を開始したようだ。今回の米露首脳会談についても、このことが影響したと述べている(https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/ukrainian-forces-counterattack-in-the-pokrovsk-area-successfully-cutting-off-the-russian-militarys-salient/)。

DEEP STATE(注:軍事ブログ)はポクロウシク方面について12日「ロシア軍がゾロティ・コロディアズ方向に突破した」と報告、これを受けてウクライナ軍はアゾフ軍団を投入して反撃を開始し、DEEP STATEも16日「ウクライナ軍がロシア軍の突出部を分断することに成功してゾロティ・コロディアズを奪還した」と報告した。

DEEP STATEはポクロウシク方面について12日「ロシア軍がゾロティ・コロディアズ近郊まで前進した」「ロシア軍がヴェセレ・フルヅケ近郊まで前進した」「グレーゾーンがノヴォボジアン近郊まで伸びた」「グレーゾーンがペトリフカ近郊まで伸びた」と報告、ウクライナ軍も国家親衛隊第1軍団=アゾフ軍団の部隊をポクロウシク方面に投入して反撃を開始し、ゾロティ・コロディアズ方向に伸びた突出部を含むポクロウシク方面で広範囲の反撃に成功したようだ。(中略)

追記:トランプ大統領とプーチン大統領は会談後の記者会見で「大きな進展があったものの正式合意には至らなかった」「合意が成立するまで合意はない」「合意出来なかった事柄は極わずかだが、その中には重要なものが1つある」と述べ、ウクライナとロシアの停戦は発表されなかった。

キエフ政権が精鋭のアゾフ軍団をポクロウシク防御に回したため、ウクライナ東部の他の要衝はウクライナ軍にとって戦況が不利になっている。これによって、ロシア軍が圧倒的に有利な戦況が変わることはない。米国のトランプ政権は、ウクライナでの戦況を詳細に分析しているはずだ。

 

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