ウクライナ事変の裏で進行している国際経済システムの大転換ードル基軸通貨体制自滅の見方も
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現在のウクライナ事変の裏で国際決済システムの大転換、つまりドル基軸通貨体制から石油や天然ガス、金を中心とした貴金属や穀物など「コモディティ」を裏付けにしたコモディティ本位バスケット通貨体制への転換が起こってきている。コモディティを裏付けにした中国の人民元が新たな国際決済システムの中心的な通貨になりそうな勢いだ。国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏が指摘を続けている。

ウクライナ事変の影で国際経済システムの大変動が始まっている

田中氏は昨日17日、同氏のサイト「田中宇の国際ニュース解説ー世界はどう動いているか」(https://tanakanews.com/index.html)に最新解説記事として「米欧との経済対決に負けない中露」と題する有料解説記事を投稿した(https://tanakanews.com/220417econwar2.php)。有料記事なので引用は最低限にして、内容をかいつまんで紹介させていただきたい。なお、本サイトでは田中氏の解説記事をヒントにした記事を投稿している。

最新記事のリード文は公開されているので、まずこちらを引用させていただきたい。

ロシアがウクライナで戦争を始めたことにより、世界は、ロシアを徹底的に敵視・制裁する米国側と、ロシアと付き合い続ける非米側に二分された。ロシアを敵視したくない国々は米覇権システムに頼れなくなって非米側に入る傾向だ。世界の79億人のうち、米国側は10億人ほどで、残りの70億人近くは非米側に入る。世界を一つの経済システムで統合していた米国覇権(注:軍事力を背景としたドル基軸通貨体制=ブレトンウッズ2=。ただし、ブレトンウッズ1のドル金本位制とは異なり、ドルの信用は詰まるところ軍事力=軍産複合体でしか裏付けられていない)は、世界の8分の1だけを統括する小さな体制に成り下がった。

米国を拠点とするディープ・ステート(DS)のグローバリズム(実態は弱肉強食の新自由主義と軍事侵略)で万年「発展途上後進国」になってきた低開発諸国の反撃が始まったわけだ。

ロシアのプーチン大統領は、米国ディープ・ステート(DS)が不当で非情なウクライナに対する内政干渉を行い続け、ステパン・バンデラを「開祖」とするネオ・ナチ勢力を掌握。そのうえで、ネオ・ナチ勢力を政府機関の要職につけたうえ、ウクライナのオリガルヒ(大富豪)であるイホル・コルモイスキーが創設したネオ・ナチ系列のアゾフ大隊など私兵軍事部隊をウクライナ国防軍の正規または非正規部隊とすることを「容認」し(軍隊の「民営化」)、マイダン暴力革命(暴力によるヤヌコビッチ政権の打倒)を起こさせたうえで、各種のネオ・ナチ部隊が東部ドンバス地方に居住するロシア系ウクライナ住民を大量虐殺してきた。

米国を拠点とするディープ・ステート(DS)はそのうえで、ウクライナを北大西洋条約機構(NATO)に加盟させようとしてきた。なお、NHKなどは公安調査庁が当初はネオ・ナチ勢力として認定していたアゾフ大隊を「義勇軍」として紹介している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220418/k10013586731000.html)。日本国民はNHKを始めとするマスメディアによって洗脳されていることに注意が必要だ。

既にスターリン主義型の社会主義とは決別して市場経済制度を導入しているロシアのプーチン大統領は、米国覇権一極体制の維持と冷戦思考を改めない米国ディープ・ステート(DS)の一連の動きに「騙され続けてきた」として、ウクライナ事変(特別軍事作戦=ウクライナへの軍事侵攻)に踏み切った。その結果として、国際社会(とは言っても、基本的には米欧日諸国、より具体的には米英側陣営だけだ。中立でいたい非米欧日諸国陣営は経済制裁が怖いから表向きロシアを非難している)は最大級のロシアに対する経済制裁を行っている。

田中氏によると、これに対してプーチン大統領側は、非米英陣営側に対して、石油や天然ガス、金を中心とした貴金属(IT産業に不可欠)や穀物など「コモディティ」を裏付けにしたコモディティ本位制への転換を促す動きを進めているようだ。田中氏の最新の解説記事から重要な箇所を引用させていただきたい。

  1. プーチンは今回、ウクライナで戦争(特殊軍事作戦)を始めるとともに、米国の経済覇権体制から完全排除される制裁を受けたことを逆手にとって、米国側のバブル膨張したドルや債券金融システム、金融ツールから完全に離脱し、代わりにバブルのない「現物」主導の「金・資源本位制」の経済システムに非米諸国をいざなっている。ウクライナ戦争によって世界が米国側と非米側に分裂し、非米側が金・資源本位制を採用して台頭し、米国側が従来の債券金融システムとともに凋落していく、というシナリオを最初に示したのは、私が知る限り、元米連銀・元クレディスイスのアナリスト、ゾルタン・ポズサーだった。
    米国の連邦準備制度(FRS)のあるワシントンDCのエクスビル
  2. いま米国側が採っている債券金融システムは、それ以前の「現物」だけで成り立っていた経済システムの発展形として出てきた。(ケインスが提唱した現在の管理通貨制度から、第二次世界大戦前の金本位制度などの)現物重視(の通貨・決済システム)に戻るのは後退だ。しかし同時に言えるのは、債券金融システムが今後破綻するとしたら、それはロシアや非米側に「負ける」からでなく、リーマン危機以来金融システムを一本で支えてきた米連銀などのQE(Quantitative Easing=量的金融緩和政策=)策が限界に達して金融バブル崩壊を引き起こして自滅するからだ(注:ウクライナ事変に対するロシアの経済制裁が資源価格コスト・プッシュインフレをもたらし、自滅を加速させつつある)。世界経済が米国側と非米側に分裂した後、今後いずれかの時点で米国側が金融崩壊してブレトンウッズ2が自滅的に終わり、残っている非米側の経済システムが世界の主導役になる流れだ。

石油や天然ガス、金を中心とした貴金属(IT産業に必要)や穀物など「コモディティ」を裏付けにしたコモディティ本位制で採用される基本的な通貨は、購買力平価(各国間の金利差などで変動する現実の為替レートは中長期的に購買力平価=象徴的に言えば、世界各国でのビッグマックの価格で算数で計算できる為替相場=に収束する)では米国の国内総生産(GDP)を追い抜いており世界第一位、世界に公表される科学技術論文数でも米国と並ぶなど高度な先端技術を有し、最先端技術を使った軍事大国でもある中国の人民元だ。なお、ウクライナがロシアとの戦闘で巧みに使っているドローンの最先端技術は中国のDJI(https://www.dji.com/jp)が握っている。

公式的には人民元が決済通貨として使用される割合は3%に過ぎないが、これは米欧日諸国陣営側で使用されている決済通貨だけを見ているからで、非米欧日諸国陣営側も含めた世界全体では既に20%に上るというのが、田中氏の見立てだ。中国は金の生産大国ではあるが、それ以外の石油や天然ガス、IT産業に必要な貴金属や穀物など「コモディティ」の生産大国ではない。これに対して、ロシアやウクライナは石油や天然ガス、金を中心とした貴金属(IT産業に欠かせない)や穀物など「コモディティ」の生産大国だから、決済通貨を人民元にしていくらでも購入できる。人民元とルーブルをリンクすれば、ルーブルの価値も上がる。中国とロシアが本格的に手を握れば、非米英陣営は米英陣営に勝つだろう。

なお、コモディティを裏付けにした中国の人民元やロシアのルーブルなどを中心とする新たな国際決済システムの基軸通貨(バスケット通貨)体制は、ケインズの一般理論やその発展形態である現代貨幣理論(MMT)を踏まえたものにすることが必要だ。国際通貨基金 (IMF) が加盟国の準備資産を補完する手段として、1969年に創設した国際準備資産(SDR=Special Drawing Rights=、特別引き出し権)が参考になる。IMF加盟各国は出資比率に応じてSDRの配分を受け、SDRは各国の通貨と交換できる。

今後、急速な経済発展が見込まれるインドなどもロシアを必要としているだろう。インドはまた、中国との対抗上ロシアから軍事兵器を購入しているから、その面でもロシアからの輸入を断つことはてきない。インドは、対中経済包囲網であるQUADに参加しているが、米英豪のアングロ・サクソンの対中軍事同盟であるAUKUS(Australia・United Kingdom・United Statesの頭文字を取っている)には入らないだろう。また、ロシアのセルゲイ・ヴィクトロヴィチ・ラブロフ外相が3月末から4月初めにかけて中国とインドを訪問した(https://www.cnn.co.jp/world/35185774.html)。ロシアを仲介して中国とインドが経済・安全保障問題で関係を深めているようだ。

論議は横道にそれるが、日本はAUKUSに入るよう水面下で米国に強要されている。日本は1972年の日中共同声明で「台湾が中華人民共和国(中国)の領土の不可分の一部である」という中国の主張を、「recognize(承認)」していて、台湾が中国の重要な領土であることを認めている。しかし、米国は1979年に中国との間で発表した「米中共同声明」の中では、「台湾が中華人民共和国(中国)の領土の不可分の一部である」という中国の主張を「acknowledge(認知する)」として、台湾の帰属問題は曖昧にしている。そのうえで、「台湾関係法」を成立させ、台湾との間に「相互防衛条約」を結んでいる。

だから、理論上は「台湾有事」も有り得る。もし、「台湾有事」の事態が発生すれば、中国は高性能中長距離ミサイルで日本にある米軍基地を使用不能にしてしまうだろう。「敵基地攻撃能力」確保・強化とか核兵器のコントロール権を米国が手放すわけはない「核シェアリング」とか言っている場合ではない。円の実質実効為替レートが激落(2010年を100として今年1月は67.55で、変動相場制へ移行した時の1972年6月の67.49程度の水準)しているなど、戦後最悪の経済情勢に陥っている中で、国防費を国内総生産(GDP)の二倍にするとかの論議も不毛だ。

米国を盟主とするNATOはなりふり構わずウクライナのネオ・ナチ勢力に対して高性能軍事兵器を供与しているが、ロシアがNATOがウクライナ事変に参戦したと見做せば、対米隷属でNATOを支持する日本は、ロシアからもこれまた超音速中長距離ミサイルで日本の米軍基地を破壊されかねない。日本は平和憲法に基づいて、独自の平和外交を推進する秋(とき)だ。

突っ込んで言えば、長期デフレ不況から脱却し、共生共栄友愛のための政策(①消費税廃止を中心とした税制の抜本改革②財政・金融政策の抜本転換③原子力発電所稼働ストップ・廃止=ただし、地域の雇用は守る=②最低賃金の1500円への引き上げ④奨学金徳政令の宣言と実施⑤安保法制の廃止、など)を無視して、野党の数合わせ(実際は国民民主党との再統合)だけを優先させてきた立憲民主党と、その支援組織である「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(略称:市民連合)」はもはや、あてにはならない。市民連合を指導してきた山口二郎法政大学法学部教授の認識が甘かったと言わざるを得ない。

捨て身の覚悟で衆院議員を辞任して参院選選挙区に出馬するれいわの山本太郎代表(ウクライナ事変の深層・真相も熟知している=https://www.youtube.com/watch?v=bF8d2YnsT0k&t=15s=)の戦術行動は正しい(https://www.youtube.com/watch?v=7YMYfKqt0xg)。もう、立憲民主党は分党して、共生主義の立場に立つ同党国会議員がれいわの国会議員と合流して「れいわ共生党」といった政党を立ち上げ、植草氏らが中心になって活動している「政策連合」が新党を支援し、主権者である日本国民の共感を獲得するべきだ。

余談が長くなったが話をもとに戻すと、米国側を代表するマスコミである英国のBBCは、米国側がロシアからの資源輸入を完全に止めれば数か月でロシアは崩壊すると報じている。数か月後に勝てるので、欧州諸国はロシアからの資源輸入を完全停止すべきだと言っている。これは自滅的な大間違いだ(田中氏)。ドイツやフランスなど大陸欧州諸国はアングロ・サクソンの米英連合軍に騙されてはいけない。

ロシアは中国やインド、イラン、中東産油国(オバマ政権時代にオバマ大統領はシリアの内戦問題についてはプーチン大統領に任せたし、サウジアラビアの「子分」とも言われるアラブ首長国連邦=UAE=が国連でのロシア非難決議を棄権した経緯がある=https://www.jiji.com/jc/v4?id=20220305com0001=)など、非米英陣営と経済・安保問題で接近しつつある。一時的ではあったが、ロシアとウクライナの停戦交渉を仲介したイスラエルも米国ディープ・ステート(DS)にとっては不穏な動きがあるようだ。ロシアが経済的に破綻するというのは、ディープ・ステート(DS)が流しているデマ情報だ。ロシアが経済的に破綻するなどのことは、起こり得ない。

欧州大陸のドイツやフランスは米英陣営に従属すべきではない。弱肉強食の新自由主義政策を打ち出している欧州連合(EU)は改革が必要だし、米国の支配下にあるNATOも見直さなければならない。その意味で、来週日曜日24日のフランス大統領決選投票は非常に重要だ。ディープ・ステート(DS)はあらゆる手段を使って、マリーヌ・ルペン候補の勝利を阻止しようとするだろうから、結果がどうなるかは分からない。

現地時間で17日、ロイター通信が「フランス検察、大統領候補ルペン氏のEU資金流用疑惑巡り(欧州不正対策局=OLAF=の報告書を)精査」と題する報道記事を流した(https://jp.reuters.com/article/france-election-lepen-probe-idJPKCN2MA00N)。これに対して、マリーヌ・ルペン大統領候補が党首として率いる国民連合幹部は「フランス大統領選に介入し、(マリーヌ・)ルペン候補を陥れようとするEUや欧州当局の企てに国民はだまされない」と語り、「OLAFを相手に法的措置を取った」と言う。フランス大統領選決戦投票の最中にこうした報道がなされるのは、さすがの日本でも有り得ない。真偽不明だが2017年4月の前回大統領選挙でも同じような問題があった。ディープ・ステート(DS)側に属するマクロン現職大統領側の選挙妨害の可能性を否定できない。

また、国連憲章の「敵国条項」にしばられていることもあり、欧州の中核国であるドイツの不甲斐なさが問題だ。この意味で、アンゲラ・メルケル元首相がゼレンスキー大統領に対して、ミンスク合意Ⅱの履行を求め続けなかった罪は重い。彼女もやはり、グローバリストでしかなかったと言える。ロシア側としては、プーチン大統領の公約通り、ドイツ経済に不可欠な天然ガスの支払いをルーブル建てにしてはどうか。「ロシアからドイツへの天然ガスの供給が止まった場合、ヨーロッパ最大のドイツ経済はおよそ30兆円にのぼるダメージを被り、深刻な景気後退に陥る」という(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220414/k10013581391000.html)。田中氏は最新投稿記事を次のように結んでいる。

ロシアは、ウクライナとともに世界的な穀物との産地であるだけでなく、ベラルーシとともに世界的な肥料(窒素、リン酸、カリ、硝酸アンモニウム)の産出国でもある。今回の戦争でロシア周辺から世界への、食料と肥料の輸出が滞っている。このままだと、今年の食料生産は世界的に急減する。北半球では、今はまだ昨年とれたものが市場に出回っているが、今秋以降、今年の収穫が市場に出回る時期になると、昨年よりも大幅な供給減となり、あちこちの途上国などで飢餓が発生する。米国もロシアの肥料に依存している。ロシアだけでなく中国も、国内生産された穀物を米国側に輸出せず、国内消費に回す政策をとり始めている。この状態が続くと、ロシアは非米諸国に対してのみ穀物や肥料を輸出するようになり、米国側で食糧不足が起きるように仕向ける。これからの米国側と非米側の経済対決で、両側の庶民が激しい生活苦に見舞われる。すべてプーチンのせいにされつつ、プーチンが勝つ。

日本では岸田文雄首相が「食料自給率の向上や農業の国際競争力強化」を訴えている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220417/k10013586171000.html)が、米国ディープ・ステート(DS)に対する従属・隷属外交を続ける限り、むなしい訴えだ。いずれにしても、ウクライナ事変をきっかけに、国際システムは大転換を余儀なくされている。それを成功させるには、ユダヤ・キリスト教の問題点を克服した新しい理念と政策体系が必要だ。なお、基本的人権(良心・信仰・思想・報道・結社の自由と生存権)は普遍的価値として全人類に保証されなければならないから、米国では2024年大統領選挙でトランプ前大統領が出馬し、合衆国大統領に返り咲くことが最善の道だろう。



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