5月の米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数が市場予想に反して低下したことから、QE3の終息見通しが後退、米国の金利が低下した。このため、日米金利差縮小の見通しから、円が1ドル=98円台後半まで上昇、円安誘導を狙っているアベクロノミクスは東京株式市場の調整局面入りとともに、破綻が次第に鮮明になってきた。
NY株式市場では金利低下を受けてダウ平均が上昇しているが、日本では円高を嫌気して、株価がさらに乱高下しながら傾向的に低落していく公算が大きい。
大手企業の夏のボーナスが前年比で過去二番目の伸びになったことで、アベクロノミクス(アベノミクス)が本格的に始動してきたと大手マスコミははしゃいでいるが、①250兆円規模の内部留保の一部取り崩し(政府からの強要の可能性がある)②企業の理由なき円安予想―などによるものでしかない。
もともと、円安➤輸出増➤内需拡大という図式には無理がある。日本は加工貿易国であるから、円安による資源・エネルギーの価格の急騰で円ベースでの輸出価格を引き上げざるを得ず、為替の円安分が相殺されてします。そこに、円安バブルが崩壊となると、輸出大企業はかなり厳しくなる。下図のように貿易赤字傾向は変わらないだろう。
アベクロノミクスを無批判に礼賛する立場からは、円安による景気浮揚効果が今後本格化し、日経平均は2万円を突破するとのいい加減な「予測」があるが、机上の空論で話にならない。現に起こりつつあるのは、「異次元の金融緩和=異常な金融緩和」の副作用(政府と通貨の番人であるべき日銀に対する不振)による長期金利の上昇、世界的な金融緩和競争での敗北(米国がドル高を許さない)による円安バブルの崩壊、株式市場の調整、暴落局面入りであり、アベクロノミクスの破綻でしかない。
これを反映して、06月02日の岐阜県美濃加茂市長選で自民推薦の候補が敗北するなど、地方自治体の首長選では自民敗北が相次いでいる。また、昨年末の総選挙で実質、環太平洋連携協定(TPP)に断固反対と訴えながら政権を握ると手のひらを返したようにTPP参加を表明、国民を騙した安倍晋三政権に反発して、山形県の山形JA(農協)が今夏の参院選でみどりの風の現職を支援することを決定するなど、政治の面でも潮目が変わりつつある。
ただし、民主党の海江田万里代表―細野豪幹事長が腹を固め、日本共産党が対米隷属政策(自主孤立路線)を変更しない限り、政治の潮目が大きく変わることは期待できない。