○ 内需主導の経済政策への転換

次に経済について伺います。本年4月から6月期のGDP(国内総生産)は、年率換算で7.1%の大幅減となり、これ以外でも各種経済指標が軒並み悪化し、日本経済崩壊の懸念が国内外で指摘されています。

GDPが予想以上に落ち込んだのは消費税増税の影響ももちろんありますが、それだけが原因ではありません。日本のGDPの6割を個人消費が占めていますが、その国民の大多数の所得が平成8年をピークに減り続けているわけですから、GDPが拡大するはずがありません。

安倍政権が推し進める物価高、すなわちインフレを良いものであるとする偏向した経済政策は、生産性の高い、競争力のある大企業の利益成長を後押しして、その企業が拡大させた利益を国民に分配すれば国民全体の所得水準拡大に繋がるというものです。

今年の春闘でベースアップが観察されましたが、それは一部大企業のしかも正社員だけのことであり、それ以外の、全労働者の7割近くを占める中小企業の社員や、全国に約2千万人いる非正規社員はその恩恵に浴するに至っていません。さらに、消費税増税だけではなく、医療や年金などでは負担増と給付減が生活者の暮らしを容赦なく苦しいものにしています。

つまり、大多数の人にとってのアベノミクスとは、所得拡大を伴わない、単なる物価上昇・負担上昇だけをもたらす、百害あって一利のないものになっているというのが実態であります。7月の勤労者の現金給与総額は増加しましたが、一時的にボーナスが増えただけで所得環境の基調が好転したわけではありません。

このような経済環境にもかかわらず、安倍政権は消費税率をさらに8%から10%に引上げようとしています。消費税が上がれば、個人消費はますます冷え込み、さらにGDPを押し下げていくのは明らかです。安倍総理、このような景気状況の中、どの経済指標がどのような数値を示すなら、消費税再増税が可能であると判断するのか、具体的かつ明確なご見解を伺います。

また、安倍政権が後押しする円安政策の下でも輸出は伸びず、むしろ国内産業の空洞化が加速しています。自動車産業をはじめとする日本の輸出企業と呼ばれる大企業は、為替の影響を避け、利益を上げるために海外へ工場を移転してきました。国内で生産して海外へ輸出するという今までの貿易立国という形ではなく、外国で直接生産するスタイルが進んできたため、国内産業の空洞化が顕著になってきています。

アベノミクスは、こうした日本経済の構造変化を的確に捉えることができずに輸出を主導する大企業の短期的な利益拡大だけを支援しており、国内経済に新たな投資を呼び起こすための施策を提示したり、新たな国内需要を生み出すための新規産業を創出し、これを育成したりする経済政策をほとんど示していません。

その一方で、地方の、重要ではあるが競争力の乏しい農林漁業や零細な商工業などが、どんどん切り捨てられ弱体化し、内需がますます委縮、縮小しています。内需の縮小に歯止めをかける施策が示されぬなかで、企業の海外への転出がさらに進行し、国内産業の空洞化と内需減退がスパイラル的に進行するという悪循環が形成されてしまっています。

この状況が強まるなかで、安倍政権の拙劣な外交政策が日本と近隣諸国との経済関係を冷却化させて、2013年の日本から中国への輸出額は前年比8.7%減の約1620億ドル、貿易総額は2013年に5.1%減の約3130億ドルに落ち込んでしまいました。同年の韓国への輸出も前年比6.7%減の約600億ドル、貿易総額は8.2%減の約947億ドルへと落ち込んでいます。アジアの成長を取り込むと意気込みながら、日本の貿易相手国として第1位の中国、第4位の韓国との経済活動をこのように低迷させては、とても成長実現どころではありません。

これら一連の経済問題を解決するには、安倍内閣が推進している労働者の非正規化推進政策、非正規社員を増やす政策を抜本的に改めるべきです。また、先に述べましたように、中央に集中している財源と権限を地方に移譲し、中央集権から地方分権・地域主権へと、国家統治の基本を根本から改める必要があります。これらの施策により、国内雇用の拡大、家計所得の増大、内需の振興を実現していくことができます。内需拡大による成長実現こそが、国内産業の空洞化、輸出に振り回される日本経済の脆弱性を取り除く最良の方策であると考えます。

しかし、残念ながら安倍政権はこれとはまったく正反対の政策をとっています。日本は、一日も早く現在の経済政策を軌道修正し、雇用政策、税収再配分、産業政策などのすべての政策を総動員して、一人一人の国民所得を増やし、内需の底上げを図る方向を目指すべきではないでしょうか。総理のご所見を伺います。

○ 集団的自衛権と北東アジア外交問題

7月1日、安倍政権は集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の閣議決定を行いました。これによって、我が国と直接かかわりのない国や地域の紛争に自衛隊を派遣することを可能にしようとしています。これは明らかに国是に反し、国民の生命と日本の将来を危うくする道であります。

まず、決定のあり方に問題があります。憲法は、日本が直接攻撃を受けた場合、すなわち正当防衛にのみ、自衛権の行使を許しています。それ以外の紛争に自衛隊を派遣するということは、憲法第9条で固く禁じられています。条文に書かれてないところに、解釈が生まれますが、憲法に集団的自衛権を認めない旨が明記されている以上、解釈する余地がありません。

今後、閣議決定に基づく憲法解釈の変更に基づく、集団的自衛権の行使として、海外に自衛隊を派遣するならば、それはもはや、日本において、憲法は有名無実であることを意味することになります。この点について、総理の見解を伺います。

さて、安倍政権は集団的自衛権の行使容認によって、日本をより安全かつ平和にできると強弁しています。しかし隣国である中国、韓国は、地域の緊張が高まると強い懸念を示しています。
私たち生活の党は、9月3日から5日まで日本の政党としては初めて、韓国で研修会を行いました。その目的は、安倍政権下で戦後最悪とも評されるほど日韓関係が冷え込む中、韓国の政治家や有識者らと直接対話し、相互理解と信頼関係を深め、日韓関係の正常化に少しでも貢献するためでありました。

セヌリ党代表をはじめ韓国の与野党の政治指導者は一致して、安倍総理の政治姿勢、歴史認識を批判していました。同時に日本と韓国との間には、長い友好交流の歴史があり、両国は民主主義と市場経済という普遍的価値で結ばれており、日韓の友好協力関係の発展は、両国、アジア、世界の平和と安定に不可欠であり、早期に関係改善すべきであるとの認識において、私どもと見解の一致を見ました。

ナチスドイツに占領されていたフランスも、現在はドイツと非常に仲良くやっています。かつて覇権争いをしてきたイギリスとフランスも、今では英仏海峡トンネルを掘ってドーバー海峡を越えてユーロスターで繋がっています。こうした仏独や英仏の関係に倣い、21世紀の日本も大きな視点に立って日韓関係を考えれば、必ず良い方向に向かっていくはずです。

1990年に訪日した盧泰愚(のてう)大統領が日本の国会で演説した際、「来る世紀には東京を出発した日本の青年が海底トンネルを通過して、ソウルの親友と一緒に北京とモスクワに、パリとロンドンに、大陸を結び世界をひとつに繋ぐ友情旅行を楽しむ時代を共に創造しましょう。」と述べました。私は今こそ、民族的、文化的、言語的にも最も近い隣国である韓国と日本は、このような夢を実現するためにお互いに力を尽くすべきではないでしょうか。韓国と中国との関係改善の進め方について、総理の見解をお伺いし、質問を終わります。

※サイト管理者注:
新自由主義=逆所得再配分政策=掠奪主義は、①自然環境②教育制度③社会保障体制④社会資本(インフラストラクチャ)ーといった故・宇沢弘文東大名誉教授が提唱された市場原理に基づく資本主義社会のセーフティ・ネットワークである社会的共通資本を破壊するものである。日韓海底トンネルはそのひとつであるが、東アジアから社会的共通資本を再構築する大運動を展開していかねばならない。

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