加藤勝信厚生労働相が15日の記者会見で事実上、新型コロナウィルスの水際対策に失敗したことを認め、国内での感染を阻止する対策に切り替えたことを明らかにした。果たして、可能なのか。大型クルーズ船のダイヤモンド・プリンセス号の乗客・乗員対策も、米国など諸外国が猛抗議し、チャーター便を出してきている状況で、日本の政府=安倍晋三政権を信頼していない。
朝日デジタルなどによると、政府=安倍政権は16日開いた新型コロナウィルス感染症対策本部を開き、「国内の感染状況について先日来、新たな感染例が確認されている」との厚生労働官僚が用意していた作文を読み上げ、米国などとは異なり湖南省武漢市を含め中国全土に感染が拡大している中国人の入国を野放しにしていたことなどで、水際対策が事実上失敗したことを認めた。
そのうえで国内対策としては、➀武漢市に次ぐ新型コロナウィルス感染の震源地になっている大型クルーズ船に対しては、米国を始めカナダやオーストラリア諸外国の政府がチャーター機を手配するなど政府の対応を全く信頼していないことを踏まえ、これまで発熱などの症状が出ている乗員・乗客に限りPCR検査を行っていたのを止め、乗員・乗客3711人全員に検査を実施する方針転換を余儀なくされたことを暗に表明②全国536の相談センターの24時間対応②診療体制が整った医療機関を726カ所から800カ所に拡大する-ことなどを発表した。
17日には、新型コロナウイルス感染症専門家会議が開かれ、さらに詳しい当面の対策公表することになっている。ただし、ダイヤモンド・プリンセス号では3711人の乗客乗員のうち14日までの検査で930人の検査が実行され、うち285人の感染が確認された。感染率31.3%である。三分の一である。最終的には、感染者が1000人を超す可能性を否定できない。現在判明している感染者のうち10人19人を超える重篤患者が発生しているとされるが、この数字もどの程度信頼性があるのか、疑わしい。
感染源は横浜港で乗船し、香港で下船した中国人1人と見られているが、この中国人には湖南省・武漢市への滞在履歴はないとの報道だ。1人で1000人を超す感染を引き起こす疑いが出ている原因は、第一に新型コロナウィルスの感染力が非常に強いからだろう。しかし、第二に政府=安倍政権がダイヤモンド・プリンセス号対策に対し、オリンピック、パラリンピック開催への影響を恐れ、感染力の強さにもかかわらず、発熱などの症状が出ている乗客・乗員(全員の10分の1以下)以外には検査を行わなかった完全な初動態勢発動の誤りにある。
米国はじめ各国のメディアは、「安倍政権の対応のまずさで、ダイヤモンド・プリンセス号が新型コロナウィルスの第二の感染源になっている」と酷評している状況だ。さらに、日本の心臓部である東京23区内で、個人タクシーの業界が1月18日に屋形船で開いた新年会に、中国人と濃厚な接触(接待と見られる)した人物がおり、この人物が感染源となって屋形船に乗っていた1000人のうち少なくとも10人が感染。このため、その家族にも感染し、千葉県に在住していた個人タクシーの運転手の義母(80代)が重篤な肺炎にかかり、亡くなられた。高齢者の死亡原因のトップレベルを占めるのが肺炎だ。
また、2月15日現在で感染者数は全国で338人に及んでいるが、感染経路の分からない道、県は北海道、神奈川県、愛知県、和歌山県などだが、和歌山で感染が確認された外科医師の勤務する同県湯浅町の済生会有田病院では、同僚の外科医師や外科の患者が肺炎にかかっており、医師の家族や患者の家族にも感染の疑いがかかっている。院内感染は明らかであり、院内感染が次の感染源になる恐れがあり、早急な院内感染対策が必要だ。診療体制が整った医療機関を726カ所から800カ所に拡大しても、日本の人口、個人医院を含む病院数からすれば極めて少ない。
全国の医療機関での対処法を通達し、院内感染防止の徹底化に務めることが急務だ。もちろん、基本的にはマスクやうがい薬、条毒液などの準備が必要だが、これらは薬局などで品薄、品切れになりつつある。医療検査器具を始め、汚染防止に必要な美品などの増産に急ぐ必要があり、輸入も必要だ。
さらに、日本が中国に次ぐ汚染国になったことで、安倍政権が自慢していた外国からの観光客が激減し、観光業界が大きなダメージを受けているのをはじめ、東京都区内では交通業界その他の関連業界にも今後、大きな影響がでてくることが予想され、国内経済の被害も甚大になる恐れがある。安倍政権が国民の生活と財産を守る政権なら当然、これらのための予算を計上しなければならない。わずか150億円程度の予備費で足りるのか疑問が残るが、場合によっては1月30日夜に成立した総額2839億円の2019年度補正の再補正予算案を編成しなければならなくなることも視野に入れる必要がある。安倍政権は逆手に取って、新型コロナウィルス対策費を計上した2020年度予算案の 早期成立を求めてくるかも知れないが、予算案の審議は国会の第一の仕事であり、十二分の議論を尽くさなければならない。補正予算の補正も可能なはずである。第一次補正予算案には、経済対策も含めた新型コロナ対策費は計上されていない。
根本的には、➀新型コロナウィルスで引き起こされた肺炎に対する治療方法の確立②病原体から作られた無毒化あるいは弱毒化された抗原を投与することで、体内に病原体に対する抗体をつくることを促し、感染症に対する免疫を獲得するための、遺伝子レベルの解析に基づく新型ワクチンの開発-が急務である。
本日17日に新型コロナウイルス感染症専門家会議に参加している「専門家」と称する委員の専門家チームの当面の対策が公表されるが、これまでの安倍政権の「実績」や「忖度政治」からすると、サイト管理者にはあまり当てにできないように思われる。なお、夏の東京オリンピックやパラリンピックに対する影響も十二分に考慮しておかなければならない。5カ月程度しか残されていない。