年金の支給開始年齢の引き上げを目論む安倍政権

昨日2018年1月17日の読売新聞朝刊一面トップ記事は大略、「安倍政権が年金の支給開始年齢の引き上げ」を目論んでいるというものだった。超少子・高齢化社会を切り抜けるためには、日本の経済社会の大変革が必要だが、公的年金の支給開始年齢の引き上げというのは最も安易な考え方であり、同政権がいかに経済無策であることを証明するものだ。日本の経済社会の真の活性化なくして、超少子・高齢化は乗り切れない。

記事ではとりあえず、自発的に国民の受給開始年齢(現在は満65歳の翌月から。後払いで2カ月毎に年6回本人の届け出口座に振り込んでいる)を引き上げさせ、引き上げる期間に応じて支給年金額を割増するというものだ。もっとも、割増幅が小さくなれば、生涯の受給公的年金額はかえって減少する可能性すらある。そうした状況の中で、ある程度の時点で強制的に満70歳程度に引き上げる公算が大きい。読売の記事は、「観測気球」だろう。

現在は、ほんのひと握りの大企業(一部上場企業)の株価が、日銀の超金融緩和政策による円安ドライブを受けて上昇しているに過ぎない。国民の大層を占める被雇用者の実質賃金指数はアベノミクスの失敗から、下がり続けている。

株価の意図的なつり上げより、国民のふところを暖かくするのが先決で、生きがいもあり高齢者が就労を望めば、高齢者の経歴にあった職種に着き、かつ、賃金も相応のレベル(水準)が必要だ。公的年金受給開始年齢の引き上げは、そうした雇用環境が整ってからの話のはずである。

しかし、現実的には高齢者の雇用は非常に困難である。ハローワーク(公共職業安定所)でも、求人の年齢政権はもうけていないが、全く意味をなさない。隠れたところに、高齢者求人の資料があるが、みすぼらしく、見てもため息しか出ない内容である。大多数は、寒い中を夜暗くなっても工事現場の手伝い(照明)とかマンションの掃除、夜間の警備程度しかなく、高齢者の経歴を活かせる安定的な職場ははっきりいって、ない。

まず、①超少子の解決(晩婚や離婚、生涯独身の激増を抑制すること)②健康な高齢者にふさわしい雇用環境づくりをすることーが先決で、公的年金支給開始年齢の自主的または強制的引き上げなどは、もってのほか。新古典派自由主義で日本の経済社会を破壊尽くしている安倍晋三政権に、公的年金制度の改革を語る資格はない。国民も、御用新聞とかしている読売新聞など大新聞は、はっきり言って購読する必要はもうなくなった。

※追記

「アベノミクス」なる似非経済政策では消費者物価上昇率を前年比2%程度にすることを謳っており、そのため日銀が量的超金融緩和政策、マイナス金利政策、市中からの大量の国債引き上げを行ってきたが、失敗した。

1996年から1997年にかけて、バブル崩壊後の長期不況脱出の機会はあったが、政府が逆噴射政策(財政・金融双方の引き締め)を無理矢理に強行したため、デフレ状態は今日まで続いている。分からやすくするため、物価指数を物価上昇率になおすと、

時事通信社によると

「総務省が12月26日発表した11月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が100.7となり、前年同月比0.9%上昇した。プラスは11カ月連続。電気・ガス代などが上昇し、上げ幅は14年4月の消費税増税の影響を除くと、同年10月以来、3年1カ月ぶりの大きさだった。項目別にみると、電気代が7.3%、都市ガス代が7.5%、ガソリン代が10.5%それぞれ上昇。生鮮食品を除くビールやコメなどの食料も1.1%上昇した。生鮮食品を含む全体の総合指数は0.6%上昇、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は0.3%上昇した。
全国の先行指標とされる12月の東京都区部の消費者物価指数(中旬速報値)は、生鮮食品を除く総合で前年同月比0.8%上昇した」

普通、物価上昇率は変動の大きい生鮮食品とエネルギー価格を除く総合指数で計るものだが、前年同月比0.3%に過ぎない。上記の記事は混同しており、生鮮食品を除く総合指数は前年比0.9%の上昇だが、生鮮食品・エネルギー価格も入れた総合指数は0.6%上昇、肝心要(かなめ)の生鮮食品・エネルギー価格を除いた真の総合消費者物価指数は既に記したように0.3%である(総務省統計局)。要するに、安倍「首相」の忖度で、日銀がデフレ脱却のため「大規模な量的金融緩和政策」を続けたのだが、消費者物価指数は相変わらず横ばいを続けている。近年の「上昇」は円安によるエネルギー価格の上昇と、高コストの原子力発電の電力料金の相乗効果が主な原因である。アベノミクスは完全に破綻した。

なお、日本の政経評論家としてトップクラスの植草一秀氏によると「2012年の第2次安倍政権誕生以降、マスコミは『アベノミクスの成功』をもてはやしたが、本当か。日本の実質GDP成長率(年率換算)の平均値は、民主党政権時代の2.0%に対し、安倍政権発足後は0.8%にすぎない」と厳しく批判している。経済政策の成否の評価は各政権時代ごとの実質経済成長率ではかるのが、王道である。重ねて述べるが、アベノミクスは日本の経済社会を破壊し尽くし、大失敗を収めた。

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