予算措置を伴わない政府の新型コロナ感染阻止対策は無意味(追記)

政府は2月25日、「新型コロナウィルス感染症対策本部」(本部長・安倍晋三内閣総理大臣)の会合を開き、感染症対策を発表した。しかし、予算措置が明確でない対策を発表しても無意味である。中でも問題なのは、同本部も認めている感染の判断を行える唯一のPCR検査を実質的に抑制していることだ。

基本方針では現状認識として、「これまで(ざるに水を汲むような)水際での対策を講じてきているが、ここに来て(中略)一部地域には小規模患者クラスター(集団)が把握されている状態になった。しかし、現時点では、まだ大規模な感染拡大が認められている地域があるわけではない」として、患者クラスターが次の患者クラスターを生み出すことを抑制することに主眼を置いている。いわゆる、日本国内でのエピデミック(一国内での流行)の阻止である。

25日に開かれた新型コロナウィルス感染症対策本部。中央は安倍晋三首相。

そのための最も重要なことは誰でも気づくことだが、新型コロナウィルス感染者の早期発見と感染症対策の整った病院など施設の拡充と隔離・経過観察・治療(現在ではHIV抗ウィルスが初期段階で効く場合があるとされているが、根本的な抗ウィルス免疫力を獲得するためのワクチンの開発は時間がかかる=朝日デジタルが、米国で初期のものが開発されたがワクチンとして承認され、一般に使用できるまでには1年程度かかると=か、困難とされている。このため現状、対症療法を施し、罹患患者の免疫力に期待するしかない)である。

ところが、対策本部では現状として、「感染症法に基づく医師の届け出による疑似症患者を把握し、医師が認めるPCR検査を実施する」とし、今後については「地域で患者数が継続的に増えている状況では、入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のためのPCR検査に移行」すると記載している。大差はない。要するに、PCR検査に必要な医療検査施設や医療装置が不足していることを理由に、PCR検査を抑制しているわけだ。

これは、対策本部が発表した対策が、予算措置について一言も触れていないからだ。2019年度予算の予備費103億円を含む153億円程度ではまことに心もとない。対策本部に責任を持った対策を打ち出す能力があるなら、PCR検査のための医療検査施設、医療検査器具の増加のために思い切った予算措置を講じるべきだ。そして、多少の時間はかかるにしても、➀院内感染対策のための病院②高齢者介護施設③小・中・高校・大学などの教育機関④新型コロナウィルス感染患者が発見された地域・自治体-などを中心に、PCR検査の普及を図るのが筋だろう。

また、➀現状、医療関係者等に対して、適切な治療法の情報提供を行うとともに、治療法・治療薬やワクチン、迅速診断用の簡易検査キットの開発等に取り組んでいるが、今後も一段と取り組みを強化する②今後、地域で患者数(感染した者か感染症を発症した者か不明だが、後者らしい。感染しても発症をしない者も存在するので、国内での見かけの感染者数を少くできる)が大幅に増えた場合、地域の医療機関で相談した上で受け入れ医療機関を決定、受け入れ体制を強化する②マスクや消毒液の増産や円滑な供給を関連事業者に要請する③発熱等の風邪症状が見られる場合の休暇取得、外出の自粛等の呼びかけを強化する④患者・感染者との接触を減らす観点から、企業に対して風邪症状が見られる職員等への休暇の取得、テレワーク(要するに自宅での勤務。新型コロナウィルス感染者が見つかった電通では既にテレワーク体制に入っている)や時差出勤の推進等を強力に呼びかける-などとしている。

しかし、これらの対策には少くない、あるいは思い切った予算措置(財政出動)が必要である。特に、休業した場合の補償措置が問題になる。通常、有給休暇が考えられるが、有給休暇を会社が勝手に決めることは出来ない。昨年の超大型連休などで有給休暇を使い果たした社員も多数、存在する。また、会社が休業を命じた場合は、少なくとも給与の60%程度の休業補償をしなければならないが、勤務開始前に契約しているからと言って、非正規社員には休業補償をしない会社もある。

さらに、対策本部の基本方針には、新型コロナウィルス感染の拡大による経済活動の萎縮という重大な事態が予想されることにまったく触れていないことだ。景気はすでに消費税強行増税後に後退局面入りしており、新型コロナウィルス管制拡大は景気後退をさらに深刻化させる。事実、25日の平均株価は暴落し、26日も不安定な動きを示している。こうなると、新型コロナウィルス感染症対策本部の現在での構成はどうにもならない。本部長は安倍晋三首相だが、副本部長は菅義偉(すがよしひで)内閣官房長官、加藤勝信厚生労働大臣、本部員は残りの閣僚だ。当初は危機意識なく、新型コロナウィルス感染症対策専門家会議に任せて対策本部の会合から逃避していた(2月16日の対策本部会合には、小泉進次郎環境相、森雅子法相、萩生田光一文科相の3人が政務を理由に欠席し、代理に副大臣、政務官を出席させていた)。

しかし、ことは感染者だけの対策では済まない。日本の経済活動はもちろん、ありとあらゆる分野に影響を及ぼす。このため、本部長代理(格)として財政面からの予算措置を編成する麻生太郎財務大臣を置くべきだ。そして、水際対策に失敗した責任を取らせるべきである。もっとも、そうはしないだろうから、この対策本部が基本方針が明確にしている今後1ないし2週間以内に感染拡大が収まる気配がなくならなければ、内閣は総辞職し、さすがに総選挙は不可能だから、自公両党はよりマシな内閣を編成すべきである。フジ・サンケイグループなど嫌韓派が文在寅(ムン・ジェイン)大統領率いる韓国政権の崩壊を笑っているときではないのである。

対策本部の発表では、ここ1週間から2週間がエピデミックの段階に移行するか否かの瀬戸際と判断しているが、感染しているか否かが判明できる唯一の検査方法であるPCR検査には極力消極的であり、予算措置を伴伴わない対策ではエピデミックに移行する公算の方が大きいと考えられる。

もとはと言えば、政府の初動対策、ざるに水をためようとするような水際対策(アベノミックス自慢の観光客が減るからと言って中国人や中国に滞在・経由した外国人の入国に対して適切な措置をしなかった。米国は入国を拒否している)や第二の武漢市にした大型豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナ感染防止対策の大失敗(1人の外国人から691人が感染。うち高齢者4人が既に死亡)。政府=安倍政権の刑事責任が追及されてしかるべきだ。

政府=安倍政権のこんな「対策」では、夏のオリンピック、パラリンピックの開催もいよいよ危うくなってきた。植草一秀氏の指摘通り、ダイヤモンド・プリンセスは2月1日に沖縄県・那覇港に寄港しており、この段階で検疫と入国手続きを終えている。つまり、那覇港に寄港して以降のダイヤモンド・プリンセス号は日本国内の扱いとなっているはずだ。しかし、厚生省は同船での新型コロナウィルスの感染者数は日本国内での感染者数に入れない。同省のサイトの数字はそうなっている。だから、政府=安倍政権は、新型ウィルス感染拡大防止対策ではなく、「国内新型ウィルス感染者数抑制策」を行っているに過ぎないのが本当のところだ。

世界保健機構(WHO)も新型コロナウィルスの危険性の認識が遅く、初動態勢がまずかった。朝日デジタルによると初動態勢を反省してか、WHOのテドロス・アダノム事務局長は現在のところ、パンデミック(世界的大流行の段階)ではなく「感染拡大の阻止はまだ可能な段階だが、チャンスは減ってきている」と各国に重大な警戒を呼びかけている。また、ダイヤモンド・プリンセス号で感染が異常に広がったことについては、検討の重要性を強調したという。WHOは東京オリンピック、パラリンピックの開催について、適切な判断をするだろうか。強行すれば、世界中から多数の人々が訪れる可能性があり(訪問しない可能性もある)、無償のボランティアも10万人存在するから、重大なことになる恐れが強い。

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