経済活動最優先に踏み切った安倍政権、新型コロナ拡大防止は事実上無視−「一兎も得ず」(23日東京都・全国感染者数追加)

7月22日の全国での新型コロナ感染確認者数は緊急事態宣言下を越えて過去最多の795人に上った。各種マスコミの報道によると、同日開かれた政府のコントロール下にある政策分科(尾身茂座長)は、現在の感染拡大状況について、「漸増であって爆発的な感染拡大には至っていない」として、「Go To キャンペーン」など政府の進める経済活動の積極的再拡大を容認した(お墨付きを与えた)。しかし、現在の感染拡大の原因になっている首都圏型のコロナウイルスについての、ゲノム解析(遺伝子構造の解析)がないため、これまでに拡大したウイルスと同じものか、また、強毒性か弱毒性かも不明で、今後のことは説明できない。単に、休業補償をしたくない政府=安倍晋三政権の、政策のレベルに達していない「コロナ禍」対策の容認にとどまっている。

まずは、全国での感染者の推移のグラフと7月22日の午後20時30分に公開された東京都のモニタリング指標をあげておきたい。全都道府県で最多とされる東京都のPCR検査などの検査数は7日間の移動平均で3339.9人(人口100万人当たり239人)と極めて少ない。参考サイトhttps://www.worldometers.info/coronavirus/

※NHKが2020年7月23日15時25分にサイトに投稿した「東京 小池知事『感染確認366人 4連休は外出できるだけ控えて』」と題する記事によると、小池百合子都知事は23日の「都公式」の新型コロナウイルス新規確認者が過去最多で東京都初の300人台の366人に上った。朝日デジタルが2020年7月23日14時27分に投稿した「東京都で新たに366人の感染確認 過去最多を更新」と題する記事によると「検査件数が4千件を超える日が増えた一方で、週平均の陽性率も6・7%(21日時点)と1日時点の3・9%から上昇傾向にある」という。

NHKのサイトによると7月23日22:00時点で、全国では981人に上っている。後に述べる新型コロナウィルス抗体検査機利用者協議会幹事会アドバイザーの児玉龍彦東大名誉教授の指摘を参考に、詳細な現状の把握と今後の見通し・抜本対策が必要な段階だ。

東京都のサイト(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200723/k10012529841000.html?utm_int=all_contents_just-in_001)による。
ヤフーニュース(https://hazard.yahoo.co.jp/article/20200207)による

本来、感染症拡大防止の「専門家会議」は政府からの強い独立性(政府の干渉を受けない独立組織であること)を保ち、会議の議事録は必ず作成し、常に公開しておくべきものだ。まだコンセンサスの乏しい新型コロナウイルスであるから、専門家の意見が一致するなどということはそもそもあり得ない。

対立点を鮮明に公開し、そのことで現実の状況と比較することで、誤った意見は淘汰され、コンセンサスが形成されていくものだ。政府(閣僚)と内閣府、厚生労働省(行政官)は政府の専門家分科会に入るべきではないが、安倍政権が過去の専門家会議を廃止し、政府に迎合する政策分科会を設置したことで、政府のコントロールはより鮮明になった。

こうなると、マスメディアも政策分科会の見解を垂れ流しするだけでなく、民間の専門家による「専門家会議」の自由闊達な意見も積極的に報道すべきだ。日本記者クラブで東京大学を始め多数の大学や民間の研究所が集まって結成した「新型コロナウィルス抗体検査機利用者協議会幹事会」の事実上の中心人物(アドバイザー)である児玉龍彦東大名誉教授の研究成果について議論が行われ、国会でも同教授が参考人招致されてその発言が報道されたが。児玉教授は無症状化感染者のコロナウイルスが変異して「武漢型、欧州型とも異なる首都県圏(東京都・埼玉県)」のウイルスが発生、首都圏が新たなエピセンター化(感染の震源地化)している」と警告。

そのうえで、今月上旬から中旬にかけて、今週以降の「感染拡大爆発」に警戒を促していた。現実の状況に照らせば、児玉東大名誉教授の指摘の方が、「正鵠を得ている」感じである。下図は日本記者クラブで行った講演の結論部分である。無症状感染者を含め、実際の感染者数は10倍に上ると警告している。

児玉名誉教授の提案は基本的には、エピセンター化している地点の全員検査を実施し、①財政による支援措置を前提に、保健所中心の検査体制を抜本的に改め、買い額の研究機関や民間の研究機関で簡単かつ大規模検査を実施する検査体制に転換する(改正新型インフル特措法で新型コロナウイルスは指定感染症に指定され、行政検査の対象になっているが、政令指定によって検査体制の抜本的転換は可能のはずだ)②感染者の隔離と適切な「医療機関」での症状に合った医療措置の実施③経済活動は大規模検査の結果によって、徐々に拡大し、その間の休業補償は政府が責任をもって行う−ということだ。「政府補償」については、サイト管理者(筆者)の考え方である。

遺伝子解析レベルの感染症学、制御工学(ロボット工学)、情報工学など先端科学技術を駆使した精密医療体制を構築しない限り、全国の新型コロナウイルス感染状況は望めない。財政措置を行ってこうした体制を早期にきずくべきだったが、①安倍政権が旧態依然のプライマリー・バランス論に象徴される緊縮財政の落とし穴に落ちたままである②2012年に発足した安倍政権は発足疑惑のデパートと化しているが、検察も「巨悪」を追及しないから、不祥事も黙認されている③マスコミが「社会の木鐸」ではなく、政府の広報機関と化している④野党側が水面下で与野党と取引を行い、政治屋としての利権確保しか念頭にない−ことなどから、国民が政治に信頼を置いていない。だから、国政選挙の投票率も劇的に低下したままだ。

巣ごもりを続ける安倍晋三首相(毎日新聞のサイトhttps://mainichi.jp/articles/20200721/k00/00m/010/222000cより)

このままでは、新型コロナウイルスの感染者は拡大する一方で、経済社会も大混乱に陥ることは目に見えている。例えば、政府の内閣府はやっと「2012年12月に始まった景気の回復局面は2018年10月に終わった」ことを認定する方向である。しかし、景気後退局面入りした昨年10月に安倍政権は消費税増税を強行し、10−12月期の実質国内総生産は年率換算7.1%減になった。これに今年に入ってからのコロナ禍が深刻な追い打ちをかけている。最早、安倍政権に日本の危機を克服する能力はないと断定せざるを得ないことが、改めて確認された。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう