本日7月11日、政治経済評論家の植草一秀氏から「25%の人が政治を私物化する国」(詩想社新書)が発売になった。「25%の人」は「今だけ、金だけ、自分だけ」の「3だけ信者」のことであり、こられのエゴイストたちが自分だけの利益を貪るため、安倍晋三政権に代表される自公政権を動かしている。そのことが本書で詳細に分析されている。
参議院選挙目前に出版、発売されたことは、安倍政権の「実績(実際は、政治・経済・金融・外交・国防政策をめぐる大弊害の累積)」を明らかにすることを通じて、選挙権に代表される国民主権を自ら放棄しないよう、来る参院選挙で投票を放棄しないよう、強く訴えることに狙いがあるのだと思う。
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朝日新聞が社説で「アベノミクス」という言葉はもはや使われなくなったと糾弾したように、安倍政権の経済の「成果」は惨憺たるものである。こういう中で、最悪の課税方式である消費税の増税を強行する。金融政策も超金融緩和政策で日本の経済は良くなるという嘘を繰り返し、日本銀行が市中の国債を大量に買い上げたため、同行が日本最悪の不良銀行化している(金利が上昇すれば、国債の価値・価格は暴落する)。欧州から金融恐慌が勃発しそうな雲行きである。
経済・金融政策がそうなら大多数の国民がいやがる原子力発電所を次々に再開するなどエネルギー政策も一部の利権集団のためでしかない。大事な社会政策も大懸案の超少子化を食い止めることはできなかったし、公的年金問題も金融制度審議会の答申の受け取りを拒否するなど、「臭いもの(厚生年金、国民年金の支給額が極めて少く、後期高齢化時代の世代の生活に対する保証が皆無であること)、汚いもの(元本保証のない確定拠出年金制度の大推奨すること)には蓋をする」やり方で、抜本的改革を考える姿勢は皆無である。
外交政策もイラン外交の大失敗に示されるように世界の物笑いである。戦争の出来る国にする安全保障法安保・外交政策にいたっては、日本国憲法の平和主義の理念などはまったく無視して戦争(先制攻撃)の出来る国に作り変える「安全保障法」を強行採決したうえ、朝鮮半島情勢が大きく変化しようとしている中、不必要な沖縄県辺野古に米海兵隊用の基地を建設を強行したり、米国から言い値で戦闘機やイージス・アショアを豆腐を買う間隔で購入するなどアナクロニズムそのものである。
本書はそうした内容が事実、公式データを多用し、国民に分かりやすく伝えている。是非、一読をお薦めしたい。本書では、消費税増税が社会保障政策の充実のためになされてきたという安倍政権を始め自公政権が繰り返して説明してきた内容の嘘を詳しく説明し、糾弾しているが、2018年度補正後のデータを挙げておきたい。
1989年度 | 2018年度 | 増減額 | |
所得税 | 21.4兆円 | 19.5兆円 | 1.9兆円減少 |
法人税 | 19.0兆円 | 12.3兆円 | 6.7兆円減少 |
消費税 | 3.3兆円 | 17.8兆円 | 14.5兆円増加 |
つまり、消費税増税は主として高所得者の減税、法人税の減税に使われてきたのである。これに加えて、営利法人企業の税引き後利益から株主配当、役員報酬などを差しいた残りの内部留保は、2019年3月末時点で466兆7703億円もある。
これらのことを考えると責任野党は、➀消費税の減税(多くとも3%が妥当)②平均賃金の1500円程度の引き上げ(10年程度は財政で企業を支援する)③原発即廃止によるエネルギー政策の抜本転換-で一致し、資本制民主主義社会の再建への第一歩を踏み出すべきである。
※新著のアマゾンリンクはまだ作成されておらず、作成を確認しましたら上の著書と併せて掲載します。
※加筆
新著では138ページから139ページにかけて、悪税である消費税を廃止できることを明確に指摘している。具体的には、➀利子所得や株式譲渡益に適用されている大不公平税制である分離課税(20%)は、5%の引き上げで2.5兆円の税収増が可能である。従って、20%を40%に引き上げれば、10兆円の税収増が可能になる②利権まみれの(安倍)政権の裁量支出(特に、このところ急増している国防費と称する軍事費)50兆円の2割カットで年間10兆円③消費税増税が財源になった法人税の適正化-である。
なお、欧州ではインボイスの発行を義務付け、消費税を前転させることにより、生活必需品の消費税率に軽減税率(基本はゼロ%)にしている。日本では、輸出企業を除いて(輸出企業が消費税の還付を受けるようにしてあげるため)インボイス発行を義務付けしていないから、消費者に代わって納税すべき小規模事業者が着服するなどの問題が生じている。
もっとも、2023年10月から「複数税率」に対応するため」と称してインボイス制度を導入することにしているが、10%の税率に対して8%の軽減税率(複数税率)を導入するなどとは笑止千万でしかない。インボイス方式を導入するのなら、高額商品にのみ消費懲罰税として高率の消費税を課し、生活必需品に対してゼロ税率制度を導入するなどの真の意味での複数税率制度を導入するなら、消費税は残す価値はあると思う。
ただし、国税の柱はあくまでも応能原則に基づき、新古典派新自由主義が否定した累進所得税制の再構築を前提とした所得税と法人税である。