国民、「分党」から「解党」で合流新党結成へ−原発、消費税が新たな火種、「日米同盟」堅持も疑問(加筆)

本日19日付の朝日新聞が4面で報道し、朝日デジタルが午前8時00分に公開した、国民民主党が本日開く両院議員総会に関する記事によると、国民の執行部は①分党ではなく解党②立憲との合流新党結成ーを提案する予定だ。ただし、事実上の立憲民主党による国民の吸収になることから、立憲寄りの新党綱領案に基づいて合流新党の綱領が決定されることになる。実質的に立憲の合流新党綱領案では、合流新党の原発、消費税(税制)への対応があいまいだ。また、「日米地位協定」の改定には触れないまま「日米同盟」を基軸としたまま「国際協調」と「専守防衛」に取り組むとあるが、そんなことが可能だろうか。思い切った新基軸を打ち出さなければ「確かな野党」の共闘は実現せず、政権奪還は難しい。

◎追記1:朝日デジタルが2020年8月19日15時20分に公開した報道によると19日の新型コロナウイルス新規感染者は、東京都では186人と発表されたが重症者は1人増えて31人になった。全国的に重症者が増加している。全国の新規感染者は午後18時30分の時点で1024人。沖縄県では県民だけで71人。大阪府は187人で人口が少ないにもかかわらず東京都を上回った。日本感染症学会は舘田一博理事長が「今、日本は第2波のまっただ中にいる。この先、どう推移するのか注意が必要だ」と危機感を表明した。臨時国会の召集は待ったなしの状況に来ている。

◎追記2:国民民主党の両院議員総会が行われ、午後19時30分ころ、執行部の提案どおり同党を解党したうえで極力全員で立憲民主党に合流、新党を結成することを原則としつつも、不可な場合は希望者が立憲民主党に合流して新党を結成することが可決された。新党に合流しない国会議員については執行部に対応を一任する。出席者59人(総国会議員62人)のうち、賛成57人の賛成多数。軍資金の問題もあるため、多数派工作が激しくなる(https://www.youtube.com/watch?v=NG2Pobo_TSI)が、9月にも新党結成の見込み。コロナ第二波襲来の中、行うべきではないが安倍政権が衆院解散・総選挙を強行する可能性があることを見越したもの。

朝日新聞の「国民 きょう両院議員総会ー立憲との合流、了承の見通し」と題する記事によると、「18日午前の臨時役員会には玉木氏や平野博文幹事長らが出席。19日に東京都内のホテルで開催される両院議員総会で①国民の解党②立憲と合流新党を結成――を「執行部提案」として諮ることを決めた」という。玉木雄一郎代表が8月11日に突然打ち出した「分党」構想は、合流を求める国民の衆参両院議員の手によって潰された。

国民民主党の分党を提唱したが退けられた玉木雄一郎代表

国民民主党の分党を提唱したが退けられた玉木雄一郎代表(https://news.yahoo.co.jp/byline/azumiakiko/20200812-00192828/による)

国民の衆参国会議員のうち、合流を支持する執行部を加えると少なくとも30人以上の国民国会議員が新党に合流する見込みだ。これに立憲、国民と統一会派を組んでいる旧民主党系の無所属議員らも含めると、150人規模の合流新党が結成される見込みだ。日本共産党、民主党の国会議員を合わせると形だけでは180人規模の「野党共闘体制」が出来るだろう。話を元に戻すと、立憲所属の国会議員と国民のうち合流新党結成に積極的な国会議員が、50億円程度とされる軍資金の争奪もあり、多数派工作を行っているから、実態としては立憲が国民を吸収して合流新党を結成することになる。

最も重要である立憲の福山哲郎幹事長と国民の平野博文幹事長がまとめた合流新党綱領案では、新自由主義政策の決別があいまいになったいる。第一に、原発については、「原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現します」と玉虫色の表現になっていることだ。日本労働組合総連合会(連合、神津里季生会長=新日鉄出身)傘下の電力総連と連合出身の国会議員に配慮した形だ。というより、連合の圧力を受けた表現だろう。

原発については、国際的に不可というのが偽らざるところだ。理由としては、①安全性を含めなくてもコストは他のエネルギーに対して電力生産コストは高いが、安全性を考慮すればコストは最も割高になる②原発から排出される放射性廃棄物の最終処理法が分からない(もんじゅの失敗により、歴代の自民党政権が夢として描いてきた核燃料サイクルは破綻した)③福島第一原発事故の処理が終わっていないどころか、溶解した原子炉を冷却するための冷却水の貯蔵タンクを建設・設置していた敷地に空きがなくなり、2021年〜2022年ころに福島県沖に垂れ流すことがほぼ決定しているうえ、「原子力緊急事態宣言」も未だに解除されていない(現時点で考えられる最もましな方策は、旧ソ連時代に発生したチェルノブイリ原発事故で採用された石棺方式と言われる)

④安倍政権の原子力プラント輸出政策はことごとく失敗し、東芝はゾンビ企業、日立と三菱重工も経営が極めて厳しくなっているし、福島第一原発事故に加えて、電力自由化もあり、東京電力もやはりゾンビ企業になっているーなどの重大な問題がある。

だとするなら、綱領では少なくとも「原発の再稼働は認めない。稼働中の原発は原則即稼働停止とするが、再生可能エネルギーを基本とする分散型エネルギー社会の構築も視野に入れて、原発受け入れ自治体の財政の補償と従業員の雇用は保証する」と明記すべきである。第二に、社会保障の充実はうたっているが、その財源が不明だ。消費税廃止を含めた抜本的税制改革に言及すべきだが、少なくともコロナ禍の時期においては消費税率の5%への引き下げと企業(特に、価格転嫁できない赤字企業)の代理納税の廃止くらいは打ち出して当然である。

(追記:8月20日午前7時00分)消費税について言及がないのは、連合の中核を占め、消費税の多額の還付を受けられる輸出大企業の労組である自動車総連や電機連合に配慮したものだ。もっとも、コロナ禍で大手自動車メーカーや電機メーカーの経営は非常にくるしくなっている。日本のIT産業が米国、中国に比べてAIなどで総統に立ち遅れているから将来、これらの輸出大手企業がその状態を維持できるかも不明だ。また、自民党も若手議員を中心に消費税減税を総選挙で「シングルイシュー」にして有利に立とうとしている。安倍政権としては支離滅裂の極みとしか言いようがないが、合流新党としてもより高度な消費税減税策(少なくとも税率を5%に引き下げ、消費税を価格に転嫁できない企業の代理納税を減免する)を打ち出さざるを得ないのではないか。

第三に、新党綱領案では未だに「健全な日米同盟」を基軸にするとしていることだ。「健全な」という言葉は何を指すのかこれも玉虫色の表現である。ドイツなどと比べて在日米軍基地を治外法権扱いさせている法的根拠である「日米地位協定(旧安保条約の日米行政協定を名前だけ変更したもの)」の改定くらいは明記するべきだ。この日米協定のため、沖縄県は在日米軍基地の交代要員(軍人)とその家族が無検疫で自由に沖縄県に入り込めるため、米国型コロナウイルスを持ち込み、コロナ禍でも全国都道府県の中で最悪の状況になっている。

また、輸入先として日本の企業の期待を集めているベトナムが世界の生産拠点になり得るわけでもない。新たな「米国対中露冷戦」が激化しつつある中、日米地位協定を素通りして、「日中・日韓」関係をどう処理して、東アジアに平和と安定を作り出すことができるのか、合流新党綱領案に現実的な処方箋の内容を伺わせる、それらしきものは記載されていない。

第四に、「象徴天皇制のもと、日本国憲法が掲げる『国民主権』『基本的人権の尊重』『平和主義』を堅持します。(中略)未来志向の憲法論議を真摯に行います」としているが、未来志向の憲法論議を真摯に行うためには、過去の日本の近現代史についての真摯な考察が必要だ。これに対する文言が見当たらない。

1995年(平成7年)8月15日の戦後50周年記念式典に際して、自社さ連立政権の村山富市首相(当時)が閣議決定に基づいて発表した村山談話(「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」」が重要な部分)を真摯に考慮することを示す程度の内容は盛り込んでしかるべきではないかと思う。

もちろん、第一次世界大戦後の世界恐慌から太平洋戦争の敗戦、連合国総司令部(GHQ)の民主化路線の遂行と米ソ冷戦によるその挫折に至る現代史過程は極めて複雑・難関なものであったことから、その歴史的評価は複雑かつ何回である。ただし、真摯に向き合うことは新しい東アジアの世界を切り開いていくうえで、重要なことのはずである。

立憲と国民の合流新党結成と、連合の神津里季生会長が国民所属議員の合流新党結成へのプッシュを高く評価している法政大学法学部の山口二郎教授でさえ、昭和天皇の問題については下図のように厳しく指摘している。

デモクラシータイムスのインタビュー番組に出演した法政大学法学部の山口二郎共助の指摘

デモクラシータイムスのインタビュー番組に出演した法政大学法学部の山口二郎共助の指摘

こうした合流新党綱領案では、歴史的激動期にある世界史の中の日本を舵取りし、国民の生活生存権の保証と国際社会の平和への貢献をしていけるのか疑問である。また、野田佳彦衆院議員や岡田克也衆院議院など公約(マニフェスト)に書いてないことまで行い、消費税10%への引き上げを提唱したり、沖縄県普天間基地の海外・県外移設に協力せずに、自民党に「大政奉還」した旧民主党系の無所属議員らも、どれほど反省しているか不明だが、合流新党に加わる見込みだ。

「確かな野党」が重要政策で一致して「野党共闘」を組むなら、「無党派層」という名の政治不信層、無関心層の琴線に訴えるところがあり、野党に対する信頼を再び回復して投票に行く力を与える。その結果、投票率が上昇して安倍政権を打倒することができるだろう。だが、単なる数合わせと「軍資金(血税である政党助成金が原資)」狙いに終始するなら、評判を落としているとはいえ、自民党の補完勢力である日本維新の会が存在する。

活動を再開しつつあるれいわ新選組も合流新党には心良く思わないだろう。かくして、「確かな野党の共闘」形成は不可能になる。週刊文春最新号の報道などを受けて安倍晋三首相の体調不良説が急速に広まる中、首相が辞任して内閣総辞職し、新たな自公政権が樹立される可能性もある。総選挙の洗礼は必要だが、玉虫色の頼りない合流新党綱領案ではどうしようもない。
※大手マスメディアの報道によると安倍首相は19日午後、記者団に対し公務に復帰する旨の内容を語ったが、それ以上のことは語らなかったという。





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