新型コロナウイルス感染防止対策の中間総括と手付かずの巨額の内部留保

複数の大手メディアによると世界保健機構のテドロス・アダノム事務局長は8月21日(ジュネーブ時間、日本時間22日)、新型コロナウイルスパンデミック収束の時期味と音について、スペイン風邪と異なり医療技術の進歩とワクチン開発で、2年未満との趣旨の発言を行った。しかし、考えようによっては長いとも言える。東大先端科学技術研究センターの児玉龍彦東大名誉教授ら非政府系の専門家の間でもコロナパンデミック収束には2年はかかるとの見通しを示している。ただし、適切な対策を講じるのが前提だが、無症状感染者をほったらかしにしてコロナ第二波の襲来を招くなど政府=安倍晋三政権のコロナ禍対策は適切とは言い難い。ここで、児玉東大名誉教授の指摘に従って、サイト管理者(筆者)の考えも盛り込みながら、コロナ禍対策の中間まとめを行っておきたい。

◎追記:8月23日の新型コロナウイルス感染新規確認者は、NHKのサイトの報道では、東京では4日連続の200人超の午後15時時点で212人。PCR検査などの検査人数は報道されない。朝日デジタルによると4141件の検査が行われた。瞬間陽性率は5.1%、20代〜30代以外の感染者の割合は49%。東京都基準の重症患者は前日比2人増加して39人になった。足立区内では23日に区内の等潤病院で入院患者7人のクラスター感染が発生した。全国では午後20時30分時点で744人、亡くなられた方9人。20日には速報値で1日に2万1913件のPCR検査が行われた。

本投稿記事は、デモクラシー・タイムズが8月20日夜公開した児玉東大名誉教授と立教大学の金子勝特任教授の対談番組「コロナと闘う処方箋」によるものだ。

テドロス事務局長はワクチン開発に大きな期待を抱いているが、短期間で変異し続ける新型コロナウイルスに対して、すべての人種・民族に有効で安全なワクチンを開発するのは非常に困難であると言うのが、非政府系専門家の共通した見解だ。こうした場合の基本対策は、地方自治体(保健所含む)と民間が協力してまず、地域を無症状感染者が集積してウイルスの発生源になっている「感染集積地・震源地(エピセンター)」と「エピセンターの周辺地帯」、未集積地に三分類することが、最初の重要な課題になる。そのうえで、それぞれの地域に応じた対策が必要になる。

新型コロナ対策は地域に応じた対策が必要

新型コロナ対策は地域に応じた対策が必要

エピセンターでは、PCR検査(朝日新聞22日付3面、唾液抗原検査は精度が低いとされるが、東京都はPCR検査数と抗原検査数の双方を検査数にしている。厚労省も入国審査での検疫で、時間がかからないため唾液抗原検査を積極的に使っている。なお、PCR検査は飛躍的に技術革新が進み、検査時間の短縮と精度が向上している)の大規模な検査を行い、感染者(特に、新型コロナウイルスを大量に放出する無症状感染者)を発見・保護・隔離・治療のできる適切な「医療施設」での適切な治療を行うことが必要だ。

中国・湖北省の武漢の都市封鎖(ロックダウン)は、感染集積地とそうでないところを分け、集積地からの移動を禁止し、臨時の大型医療施設をニ棟、突貫工事で建設。それ以外の地域から5万人の医療従事者を投入し、膨大なPCR検査を行って感染者を発見・保護・隔離し、コロナを制圧した。

中国河北省・武漢市で10日間で緊急に作られた火神山病院

中国河北省・武漢市で10日間で緊急に作られた火神山病院(https://digital.asahi.com/articles/ASN227TTJN22UHBI01G.html)

なお、武漢市当局は当初、新型コロナウイルス・新型肺炎の報道を禁止したが、SNSなどで李克強首相の知るところになり、習近平国家主席にコトの重大性を報告。このため、習近平国家主席は、中国国内の感染症研究・対策の第一人者として知られ、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)が中国で猛威を振るった際、現場で対策に奔走し「英雄」と称された鍾南山現国家衛生健康委員会専門家グループ長(1936年生まれ)を武漢市に派遣。上記の対応は、鍾氏が指揮したものである。

武漢市当局(中国共産党の幹部クラス)が中央政府を恐れたことが初期の失政(新型コロナウイルス・新型肺炎をネットで流した感染症対策の専門家=医師=らを逮捕・拘束、言論弾圧などを行った)を招いたが、後に処罰されている。習近平氏の強権統治が根本的な誤りであるが、武漢市当局の中国共産党幹部にも責任があるのは明らかだ。習近平国家主席の強権体制は中国国内で習政治不満勢力の台頭を招いており、政権側は対策に苦慮している。同主席は国内矛盾を海外に責任転嫁することなく、「正しい」対応を取ることを迫られている。中国共産主義青年団(共青団)出身の李克強首相の手腕が問われる。

なお、人口800万人の北京市でコロナ感染が起こり始めたが、200万人のPCR検査を行い、400人程度の陽性者を割り出して、保護・隔離し感染拡大を防いだ。

また、イタリアでは、重症者を中心に病院の診療を重視した地域では院内感染が多発した一方、街中の軽症者も含めた感染者の発見を重視した地域もある。結果は、前者の方が後者よりずっと多くの感染者が出て、死亡率も5倍になった。

なお、ミラノ市や初期のニューヨーク州など都市封鎖だけしか行わなかった都市・地域は悲惨な結果になった。今年2月1日に那覇港で入国手続きを行った豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号も、乗員・乗客を船内に閉じ込め、感染症対策の専門家を追い出し、支離滅裂な「対策」の試行錯誤を重ねたため、悲惨な結果になった。この間、厚労省の副大臣と政務官が不倫を重ねていたことも後に明らかになった。

エピセンターを放置しておくと、店舗での対面販売活動が行えなくなったり、保育園なども休園を余儀なくされたりと、地域の経済社会活動は一切行えなくなり、感染も極度に拡大していく。このため、エピセンターでは地域住民全員に対するPCR検査を実施することが基本的になる。

対面販売ができなくなった大手デパートやコンビニエンスストア

対面販売ができなくなった大手デパートやコンビニエンスストア

また、社会インフラを担うエッセンシャルワーカーやテレワークが不可能な製造業酒でも全員に対するPCR検査が必要になる。社会の安全や経済全体の生産力を落とさないためだ。経済社会の安全性や生産力が極端に低下すると、インフレが高じてしまうため財政政策が効かなくなる。

第二は、エピセンターの周辺地帯での対策だ。これについては、児玉東大名誉教授(世田谷区在住)の助言で保坂展人世田谷区長(社民党副幹事長)が進めている「世田谷方式」が代表的な対策事例になる。周辺地帯でもPCR検査を行うことが基本的だが、「誰でもいつでも」低コストで行えるようにすることが重要だ。そのため、高精度で一度に多数の検体を検査できる工夫が必要になる。

精度の高い検査機器の導入や複数の検体の検査を一度に行うプーリング方式の検査方法を導入する準備が進められている。また、保健所や地方衛生研究所だけではなく、世田谷区の医師会と保健所が共同で設置しているPCRセンターを補完する役割もある。また、検査を民間検査機関に委託するなどして、検査能力を高めることが必要になる。検査能力を1日300人から3000人へと10倍引き上げる目標だ。

世田谷方式その1

世田谷方式その1

世田谷方式その2

世田谷方式その2

第一、第二のエピセンターとその周辺地帯でPCR検査を大規模に行うためには、政府による財政支援措置が欠かせない。そのためには、「Go To」政策など不要不急で、特定の業種に対する「利権供与」「買収」になるばかりか、感染を東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県など首都圏から全国に拡大していると見られる不適切な政策は即中止し、これらに注がれている財政措置や第二次補正予算で憲法違反の10兆円の予備費を充てる必要がある。

また、現在では厚労省もPCR検査を妨害することはかなり諦め、Cocoaアプリで短時間でも陽性者と接触した住民はだれでも指定病院で検査を受けることが出来るようにしている。ただし、これは厳密に言えば、「非濃厚接触者」までを行政検査の対象とする感染症法に抵触する。

そもそも、政府=安倍政権が新型コロナウイルス感染症を感染症法の「指定感染症第Ⅱ類」に政令指定したのが間違いだ。また、改正インフル特措法に、「十分な休業補償措置」を講じることが明記されていない。このため、本日23日付の東京新聞が1面で報道したように、家賃の高い東京都では家賃が払えなくなり、東京都を離れる(元)都民が多くなり、東京都から脱出。このため、東京都で初の人口減少が起きている。本日の大手紙ではコロナ禍に関する記事の扱いが小さくなっているが新型コロナウイルスは国民の生命と暮らし(職業)を厳しく脅かしている。

政府=安倍政権がこれまでの世界的には常識から外れたPCR検査妨害やアベノマスク配布、Go To政策などの支離滅裂な政策を改めない限り(改めることは有り得ないが)、コロナ禍は日本の経済社会に巨大な悪影響を及ぼす。今年第2・四半期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率27.8%も落ち込んだが、政府や一部の民間シンクタンクでは、「V字型」回復を夢見ている。しかし、金子特任教授の指摘するようにそれは幻想に過ぎない。休業者は失業者になり失業率は、どんどん高まるだろう。加えて、世界的なサプライ・チェーンも寸断される。つまり、経済の供給力が大きく削がれる可能性が大である。

特に懸念されるのは、食糧の確保である。コロナ禍大不況が大恐慌、さらには大規模スタグフレーションに暗転することも想定しなければならない。

こうしたことを考慮すれば、憲法違反の臨時国会非召集の不作為を止め、政府=安倍政権は直ちに臨時国会を召集すべきだ。アベノマスクからベツノマスクに切り替えた安倍首相の健康悪化で、臨時国会の任に耐えられないというのなら、明日に連続首相在任期間の最長記録を更新することを花道にし、河井克行前法相衆議院・河井案里参院議員の自民党議員逮捕・河合氏への法相への任命責任を理由に辞職し、内閣総辞職して、自公政権としては新たな内閣を構築すれば良い。健康不安説が正しいのなら、解散・総選挙も行えないはずだ。

さて、第三の非集積地帯では、秋の健康診断の際に抗体検査を行い、感染履歴を調べることが中心になる。抗体検査で陽性であっても、健常であれば有効な中和抗体が産生されている可能性が高い。もし、抗体検査に異常があれば、PCR検査を行えば良い。

感染の少ない地域でのコロナ禍対策

感染の少ない地域でのコロナ禍対策

やみくもにPCR検査を行っても仕方がないが、全国の地域をエピセンター、周辺地帯、非エピセンター地帯とマップ化すれば、現実的な対応策が見えてくる。これに個人情報が漏れないよう、最高管理責任者の明確化、最大限のセキュリティ対策を整えて、Cocoaアプリを使えば良いだろう。また、通常の医療法(医療保険による診察・治療)で、かかりつけ医もしくはその紹介の医療機関で身近にPCR検査や抗体検査を行えることができるようにすることも大事だ。なお、陽性と判明した場合は、現在の治療策としては次のものが基本とされている。

新型肺炎へのステージ治療

新型肺炎へのステージ治療

最後に、軽々しくワクチンに期待するべきではない。新型コロナウイルスと言っても変異しやすく、武漢型、欧州型、日本首都圏型などいくつもの種類がある。どの型のウイルスに対応したワクチンなのか、また、有効性と安全性が確認されたものかを確認しなければならない。強制接種ということになる可能性があるが、その場合は事前に、首相をはじめ内閣閣僚および厚労省の高級官僚がテストをしておくべきだ。

◎追記:企業の当基準利益から法人税、役員報酬、株主配当を差し引いた残りの金額を当期純利益という。通俗では内部留保と言われる。財務省が7月27日に発表した法人企業統計によると、今年第1・四半期は資本金一千万円以上の企業(金融・保険業を含む全産業)の当期純利益(内部留保)の総合計は534兆7240億円と巨額に上る。主として、企業が利益を従業員(勤労者)に還元してこなかった結果である。コロナ禍で大企業の経営状況が厳しくなるため、これまでのように当基当期純利益(内部留保)を積み上げていくことは困難になることが推察されるが、巨額の当基純当期純利益(内部留保)は、世紀・非正規雇用者の賃金の引き上げが不十分であったことも意味する。

当基純当期純利益(内部留保)に課税することは、二重課税になるので難しい面はある。しかし、①法人税への累進課税制度の導入する②賃上げに利用するーなどのことは可能だろう。特に、法人税への累進課税制度の導入は最低賃金の引き上げの財源になり得る。税制渡の抜本改革で巨額の内部留保の累計をコロナ禍による経済危機の脱出に活用するべきだろう。自民党では衛藤 晟一(えとう せいいち、参議院議員比例区選出)内閣府特命大臣(少子化担当)が内部留保を財源にして、第三子の子ども手当を月額6万円に引き上げるなどの子ども手当ての改革を主張している。自民党のことだからバラマキと言えるだろうが、超少子・高齢化の中で襲ってきたコロナ禍を考慮すれば、バラマキでない有効な税制改革のひとつの方法として適正に見当するべきだろう。